セミナー副会長はとにかく巻き込まれたくない 作:ピンク髪大好きニキ
気が向けば次も閑話、筆が乗らなかったらパヴァーヌに入ります
毎度の事誤字報告ありがとうな……盆休み終わってから文を見返す時間減って誤字出しまくりですまなんだ
ある日の昼下がり、ミレニアムやアビドスから離れたD.Uのとある場所にて……ホシノは普段の様相からはとても予想出来ないくらい着飾った姿で立っていた。
「うへ……待ち合わせの時間より早く着いちゃったかな」
真っ白なワンピースを着て、尚且つ普段はしないメイクまで完璧にこなし、洒落た腕時計で現在時刻を確認する。 今日はランと事前に約束していた水族館に行く日であり、この日の為だけにホシノはノノミに私服のコーディネートを頼み込んでいた。
ノノミからは「ホシノ先輩にもこんな乙女心があったんですね♧」と茶化されていたが……頬を緩ませて今日の事を話し始めたホシノに、若干頬が引き攣っていたのは言うべきではないだろう。
「あんまり早く来て、変に思われないかな……いや、ランちゃんなら大丈夫か」
ランと休日に遊びに行くのは、一体何時振りになるだろうか。 思えばあの日からお互いの距離が離れ、会ったとしてもアビドスで……それも後輩がいる中でほんの少しの雑談をしたのみ、だったと思う。
あの日のランの顔を思い出すたびに胸が苦しくなる。 それほどまでに大切だったのだ、梔子ユメと言う存在は。
「……ううん、今はそんなこと考えちゃダメか」
今日は楽しむために待ち合わせをしているのだ、そういう暗くなる話は別の時に考えるべきだろう。
そう考え待ち続ける事十数分……待ち合わせ10分前に、ホシノの背後から声がかかった。
「ごめんホシノちゃん! 待たせちゃった?」
「ッ、ううん私も今……き、た……?」
逸る気持ちを抑えて振り返ったホシノ。 しかしやって来たランの姿を見て言葉が詰まってしまう。
「あの……うん? ランちゃん?」
「どうしたのかな、ホシノちゃん」
「その姿……何? それ」
ホシノが困惑するのも無理はなかった。 何故ならランの服自体は私服なれど、顔面が煤にまみれておりどう頑張って言い訳しても何かあったことが明白だったからだ。 何なら私服も少し破れている。
「さっき道端のヘルメット団の戦闘に巻き込まれてね、爆弾がね……」
「あぁ……うん」
そうだった、この子は道を歩けば厄介事に巻き込まれる可哀想な子だったなと直ぐに思い当たった。 これからお出かけだというのに目が死んでおり、哀愁漂うその姿にホシノは涙を禁じ得なかった。 いや実際には涙は出ていなかったが。
「……行こっか」
「う゛ん」
あぁ泣かないで、ほら手繋ごうか? ほら私と恋人繋ぎでね? 涙拭こうね? 鼻水は……自分でどうにかしてね?
そんなことを二人で話しつつ、ランとホシノは漸く水族館へと向かうことにした。
────────────────
「ズビッ……」
悪ぃ、やっぱつれぇわ。 何でこんな大事な日に限って……いや限ってないな、何時もの事だった。 ヘルメット団の戦闘に巻き込まれるなんて割とあることだったな。
水族館デートだから武器とか持たずに来ちゃったから全員素手で潰すしかなかった。 道行く生徒がドン引きしてたけど、もう見慣れたから何も感じないぞ。
「ほら、ランちゃん機嫌直しなって。 折角二人っきりで遊びに来てるんだからさ」
「そうだね……ごめんね?」
「うへ、私は気にしてないから大丈夫だよ」
ホシノちゃん優しい……しゅき……
と、そんなことを言ってるうちに私達は目的の水族館へと辿り着いた。 入口で券を買って中に入ると、すぐそこは幻想的な空間が広がっていた。
「わぁ……凄いね、ホシノちゃん」
「いやぁ……これは私も驚いたよ。 こんなに綺麗だなんて」
暫しその空間に見惚れる。 水槽の中に魚が泳いでいるのは当たり前のことだが……それだけじゃない、天井部分も水槽になっていて魚を下から見上げられるのだ。 これは思った以上に迫力がある。 こんなに純粋に魚を眺めるなんて初めてじゃないかな?
鯛、鯵、鮃、鯖……よく見る魚から、鮫や海月といった様々な生き物が泳ぐトンネルを抜け……私達はイルカの泳ぐ水槽へと辿り着いた。
「イルカも泳いでるねぇ」
「広々とした場所で泳ぐのは気持ちよさそうだね。 海……そう言えば最近は行けてなかったな」
「ウチも同じだ、近々行こうって話は出てるんだけど、候補地に迷ってるんだよね」
「良かったらミレニアムで行く場所なんてどう? 比較的治安もいいし泳ぐにはもってこいだよ」
「お言葉に甘えてもいい?」
「いいよ、リオちゃんに確認とっておくね」
「もう、私とのデート中なのに他の女の名前出さないでよ」
「理不尽過ぎない????」
ならどうやって伝えればいいんだ……女心って分かんない、私も女だけど。
気を取り直して次はふれあいコーナーである。 ウニやヒトデと言った水族館あるあるな生き物とのふれあい……ナマコもいるのか、このうねうねした感じ昔は苦手だったなぁ。 今はそれほどでもないんだけど。
「うへ、ランちゃんよく触れるね」
「慣れれば結構かわいいもんだよ? ホシノちゃんも触ってみる?」
「わ、私はヒトデで十分かな……」
どうやらナマコ信者にすることは無理なようだ、これは機会を改めるしかない。
「この水族館、クジラはいないんだね」
「むしろいる方が凄いと思うんだけど。 ホシノちゃんってクジラ好きだった?」
「私は好きだなぁ」
クジラかぁ……確かに、あの大きい海を巨体で悠々自適に泳ぐというのは、楽しいんだと思う。
私はどちらかと言うとイルカ派かな。 スイスイ泳ぐのには憧れるものがある。
「自由って、いいよね」
「そんな社畜の願望みたいなことを言われても……」
「上の立場になると思えてくるよ、ホシノちゃんにもわかるって」
「ごめんね、私はそういうのは丸投げでいいや」
責任から逃げるな、アヤネちゃんが泣くぞ?
「そう言えばなんだけどさ」
「うん? 何かな?」
「ほら、その……ミレニアムの、会長」
「リオちゃん?」
「そそ、それとあの車椅子の……」
ヒマリちゃんだね、どうかしたのかな?
「やけに距離が近いなって思ったんだけど……」
「まあ、流石に三年もいれば距離感が分かってくるものだよ」
「ふーん……」
「? 何その、意味深なやつ」
「別にぃ? 特に意味はないよ?」
それは何かある時の言い方なんだけど……本当にどうしたんだろう?
「……その、笑わない?」
「それは内容によるんじゃないかな?」
道順通りに進み、ペンギンやアザラシが泳ぐ水槽へと進んでいる時だ。 少しだけ潤んだ瞳が、私を見つめてくる。
「……ランちゃんと一番仲がいいのは、私だって思いが心のどこかにあったんだ」
「そ、そうなんだ」
「でもやっぱり敵わないね、同じ学校じゃ分が悪すぎるや」
「……どれだけ長く一緒にいるかも大事な要素だと思うけど、どれだけの密度で過ごしたのかも大事だと思うよ」
「密度、かぁ」
「私は、ホシノちゃんとはそういう過ごし方をしたと思ってるけど……ホシノちゃんは違うの?」
「……どうなんだろ、そうだって、思いたいかな」
そう言って、水槽をじっと見つめるホシノちゃん。
……うーん、私程度の人間じゃホシノちゃんが何を考えてるのか分からない。 人の機微には疎い、とまでは言わないけど奥底まで覗けるわけじゃない。
何せこうしてオフで遊びに行くのなんて久しぶりなんだ、分からないことが多くてもおかしくない。
「……ごめんね? 今話すことじゃなかったね」
「ううん、言いたいことは言ってくれた方が嬉しい。 だってこういう時じゃないと話せないでしょ?」
「……そっか、それもそうだね」
はい、湿っぽい感じの空気はこれで終わり! ちゃんと水族館に来たこの喜びを噛みしめないとね。
だってお次は目玉の一つ、ゴールドマグロの展示なのだか
────────ドカァァァァァンッ!!!!
……おかしいな、似たような展開に心当たりがある。
「ランちゃん」
「言わないで」
「もしかしなくてもさ」
「言わないで……」
「厄介事、来ちゃったみたいだね」
「あぁ……」
平穏は、ここで終わりかぁ……泣きそう。
~~~~~
その日、美食研究会は水族館へと来ていた。
目的は言うまでもなく、ゴールドマグロの捕獲である。
「ふふ、待ちに待ったゴールドマグロですね」
「私今日すっごい楽しみにしてたんだぁ!! 早く食べたい!」
黒舘ハルナに獅子堂イズミといった面々は、今日の日の為にとっておきの準備をしてきた。
そう────────愛清フウカの確保である。
「うぅ……何でいつも私ばっかり」
「泣かないで下さいフウカさん。 ここを乗り切ればゴールドマグロ尽くしの料理が待っていますわ」
「それ作るの私だよね? 私を巻き込まないでよ」
「悲しいですわフウカさん。 私とフウカさんの仲ではありませんか」
「加害者と被害者の関係だけどね……!」
何故私は縛られてこんなところにいるのか? フウカは涙を流しながら水族館の中を見渡していた。
既に客だったであろう人達は逃げ始めており、警備らしきロボットは次々に美食研究会のメンバーに鎮圧されていく。 控えめに言って救いはなかった。
「ほら見て! こんなに沢山のゴールドマグロ! これならお腹いっぱい食べられるわ!」
「うーん、食べたい料理がありすぎて迷いますね」
赤司ジュンコや鰐淵アカリもまたゴールドマグロの群れを見て目を輝かせる。 先日入った店の料理が残念過ぎたという理由もあるが、美味いと噂されるゴールドマグロが群れで泳いでいるのだ、これは期待が高まる。
「では早速水槽を……?」
「あれ、ハルナどうかしたの?」
「いえ、何か悪寒が……ッ!?」
瞬間、何かを察知したハルナが勢いよくその場を飛びずさる。 何事かとイズミが驚く中……つい今までハルナが立っていた場所に、銃弾が叩き込まれる。 残りのメンバーも何事かと近づく中、その声は聞こえて来た。
「……本当にさぁ、ただでさえここに来る前に巻き込まれてるのに、ここでもこうなるの?」
「もうそういう運命なんだとしか……あ、ランちゃんそのショットガン頂戴」
「ホシノちゃんはそのマシンガンを……うん、雑に使う分には十分かな」
その声を聞いたハルナの額に、汗が垂れ落ちる。 片方の声は聞いたことがないが、もう片方の声には聞き覚えがある。 何ならつい最近聞いたばかりだ。
ゆく先々の店で、爆破するたびに聞こえてくる怨嗟の声。 次の瞬間自分の眼前に迫る鉄の塊……破壊の権化。
「折角の水族館デートをぶち壊した報いは、受けてもらうからね」
「ゴールドマグロは楽しみの一つだったからさぁ……覚悟してね」
────────天海ランが、幽鬼のように佇んでいた。
────────────────
「────────ではこれで。 この度はご協力いただきありがとうございました」
「いえ、私も偶々居合わせただけですので……」
サクッと美食研究会を締め上げ、ついでにフウカちゃんを助け出した後……やって来たヴァルキューレにハルナちゃんたちを預けて今まさに帰るところであった。
フウカちゃんは泣きながら何度も頭を下げていたし、水族館のオーナーには無料券を貰った。 これでまた来る丁度いい口実が出来てしまったな。
「何か最後は何時も通りにごたごたしちゃったねぇ」
「何時も通りであってほしくなかったよ……」
本当に、今日くらいは平穏に終わってほしかったんだけどなぁ……まあホシノちゃんが嬉しそうだから良かった……良かった、のか?
「折角のオフももうこんな時間に……」
「うーん、やっぱり次に遊びに行くときは一日中遊べるようにした方がいいかな」
「そうするよ。 日程はまた合わせて行こうね」
「そうだね……因みにランちゃん。 この後時間ある? 出来ればお泊り会でもしない?」
お泊り会か……まあセミナーに行く時間を考えればしても特に問題ない、かな。
「いいよ、家はどっちの家にする?」
「ランちゃんの家でもいい? 私明日は自由登校だから時間に余裕はあるんだよね」
「分かった、なら食材も買って帰ろう。 何食べたい?」
「ランちゃんのならカレーかな? 前に食べたカレーが忘れられなくてねぇ」
カレーか、懐かしいな。 暑い時に熱いものを食べて汗を流そうってなって大鍋で作ったっけ。 三人で汗ダラダラ流しながらカレーをかきこんだのは今となっては懐かしい思い出だ。
家の傍にあるスーパーで食材を買い込み、両手いっぱいに袋をぶら下げながら家へと入る。 季節故か少しむわっとした部屋に辟易しつつ、エアコンを点けてソファーへと座り込む。 すぐに料理を作りたいところだが、暑さのせいで急激に動く気が失せてしまった。
「ランちゃーん……そうやって座っちゃうと、後で動くのが億劫になるよ?」
「もう既に億劫になってるよー」
「ありゃ……」
やれやれ、みたいな表情で見てるけどホシノちゃんも対策委員会だとこんな感じだってノノミちゃんから聞いてるんだからな?
しかしそう言われると動かない方が負けな気がするので仕方なく立ち上がる。 カレーに使う材料以外をひとまず冷蔵庫に入れ、私は手早くカレーを作り始める。
カレーは楽だし慣れれば手間に思わないからね、テキパキとした準備をしていく中ホシノちゃんがソファーに寝そべりながら私の調理をのんびりと眺めている。
「相変わらず手際がいいねぇ」
「もう慣れたよ、今でもたまに泊りに来るのが多いからね」
「……セミナーの人?」
「だけじゃないね。 トリニティとかゲヘナとかも、それなりに?」
ナギサちゃんとミネちゃんがそこそこ、ミカちゃんとヒナちゃんがそれなり、サクラコちゃんとハナコちゃんがたまに? ウイちゃんとハスミちゃんが……稀に、来るかな?
「ふーん、そっか」
「どしたのホシノちゃん、そんな気の抜け、た……」
徐に立ち上がったと思ったら、私の背後に立って急に抱きしめて来た。 いや本当にどうした? キミそんなことする性格だったっけ?
「やけに積極的だね、どうしたの」
「別にぃ~? ちょっとムッとしたとかそういうのじゃないよ?」
それはもう答えを言ってるようなものじゃないだろうか。でも、そうか……モヤっとする程度には、私が他の人と仲良くしてるのを聞くのが気に入らないらしい。
可愛いな、乙女か?
「そうなるくらいならホシノちゃんもこれからは泊まりに来ればいいのに」
「……いいの? 私そう言われたら遠慮せずに来るよ?」
「良いよ、私なら大歓迎だし」
寧ろこれまで交流が少なかったくらいだ、これからはもっと来てほしいしもっと話をしたい。
会えてなかった分を補うくらい、これからは沢山話をしようね。
~~~~~
(……こう言う所、なんだよなぁ)
人の機微は分からない、何て言ってるのにさり気無い気遣いが出来るのは素直に凄いなって思う。
でも同時に、それを言わせてしまったような私の行動に、少しだけ嫌悪感。
(ありがとね、ランちゃん)
きっと、彼女は誰にでも……仲良くなった人になら誰にでも優しく接するんだろう。
それがランちゃんのいい所だ、それと同時にそうして交友関係を広げるランちゃんに危機感を覚えてしまう。
きっと、これは私の醜い感情だ。 私だけを見ていてほしい、私だけにその笑顔を見せてほしい。 ……私だけに、誰にも見せられない顔を、見せてほしい。
「ランちゃん」
「何、ホシノちゃん?」
ふふ、言ってみただけだよ。 そう言って、ランちゃんの首筋に顔を押し付ける。
身長差のせいで背伸びをしなければ届かない、ランちゃんのうなじ。 顔を押し当てて息を吸い込めば、少し汗ばんだランちゃんの匂いが鼻腔内に入り込んでくる。
「ちょ、ホシノちゃん私汗かいてるから臭うって」
「そんなことないよ、ランちゃんは……うん」
「ごめん、そこで言い淀まれると流石に傷付くんだけど」
良い匂いだよ、少なくとも私にとっては。 ずっと嗅いでいたいくらい、ランちゃんの匂いは癖になる。
この匂いも、感触も、ランちゃんの何もかもをずっと私だけのものにしてしまいたい。 でもそれは叶わないことも同時に理解している。 どうすれば彼女は私のものになってくれるだろうか。
「ランちゃん」
「だから何? これから炒めるから危ないよ?」
「もし私だけのものになってって言ったら、なってくれる?」
「えぇ? ごめん油跳ねたから聞き取れなかったんだけど。 もっかい言って?」
「二度目は言いませーん」
「いや何だその口調、本当にどうしたの?」
「なんでもないでーす」
そう言って、また首筋に顔を埋める。
この気持ちは、もう少しだけ私の中だけに留めておこう。 きっといつか、面と向かって口にする時が来るかもしれないし。
────────それまでに、私から離れられないくらい、彼女に私を刻み付ければいい。
重い女の書き方ってよくわかんねぇな
この作品、天海ランに激重感情向けてるやつらばっかりなんですけど、その肝心の重い部分を上手く書ききれないのではとホシノを書いた段階で戦慄してる、でも書きたい
先に言っておくと一番重い奴らはリオとヒマリとホシノとハナコです、その下で大勢がひしめき合ってる感じ
感想、お気に入りお待ちしております