セミナー副会長はとにかく巻き込まれたくない 作:ピンク髪大好きニキ
パヴァーヌ編は一章で一旦終わる分短いんですけど、そこからデカグラマトン編に入ると思うんでミレニアム関連で括ればちょい長めかな?
そこから閑話挟みつつエデン条約編に入ると思う……来月一杯はミレニアム一色ですかね
「はぁ……辛いわ」
所変わり今はミレニアム自治区。 目的地は自宅、つまるところ私は帰宅している最中だった。
何てことはない、単に私の話を聞いたゲーム開発部が割とマジな顔をして「休んで」と言って来たのだ。 モモイちゃんは「ラン先輩、流石にその状態は……」なんて言ってたしミドリちゃんは「正気を疑うのでちゃんと休んでください」だしユズちゃんに至っては「わ、私がラン先輩の分まで頑張るので……!」と言っていた。 後輩に心配をかけるダメな先輩でごめんな……
ユウカちゃんが去った後また廃墟へ赴いて今度こそG.Bibleを入手するという話になっていた。 まあ今回はユズちゃんにアリスちゃんもいるから戦力的には問題ないだろう、私はお言葉に甘えて寝ることにする。 何日ぶりの自宅だろうか、すっかり忘れてしまった。
「もう少しで自宅に……あれ」
自宅に着く、と言う最後の曲がり角を曲がった時だった。 自宅の前に誰かがいる、遠目だからまだ誰なのかは分からないけど、ずっと家の前に立っているから目的は私の家で間違いなさそうだ。
誰かな? モモトークを覗いてなかったから誰から連絡が来ているのか把握してないや。
「あれ、チヒロちゃん?」
「……あぁ、やっと帰って来た」
そこに立っていたのはチヒロちゃん。 珍しいな、彼女が私の家にまでくるなんて。
昔はよく家に泊まりに来てたけど、ヴェリタス所属になってからはあんまり家に来ることが無くなってしまったんだよね。
「どうしてここに?」
「聞いたよ、碌に休まないで仕事三昧の後にまたまた碌に休まないままゲーム開発部の面倒事に首突っ込んでたんだって? あの時連絡してくれた時点で何日家に帰ってなかったのさ」
「ちょっと分かんない、カレンダー確認してもいい?」
「いや、その返答で分かった。 確認はいいから家に入るよ、そして休んで」
「まだ何も、成し遂げてないんです……」
「変にカッコ付けて話さなくていいから。 目が凄いことになってる」
「具体的には?」
「ランの全裸写真を盗撮したヒマリみたいになってる」
成る程、それは重傷だ。 一刻も早く休んだ方がいいらしい。
「同列になりたくないから早く帰るね」
「もう既に同列みたいなもんだから。 ほら、鍵外して」
ものすごく心外だけど、文句を言う前に施錠をどうにかしよう。 よく見たらチヒロちゃんの両手には買い物袋がぶら下がっているし、私のために買い物までしてくれたらしい……チヒロちゃん……しゅき……
鍵を外して中に入る。 季節的に暑くなってきたからか、家の中は少しだけ蒸し暑い。 無駄に高性能なシステムを導入(ヒマリちゃん自信作)しているためか、手を翳しただけで空調が作動し始めた。
「ランは座ってて。 適当にカレー作ろうと思ったけど」
「カレー!!? チヒロちゃんのカレー大好きだから嬉しい!」
「……そう、まあそういうことだから」
素っ気なく言ってキッチンに向かって行くチヒロちゃん。 ふふ、でも私は見ていたよ。 頬を赤くして速足でキッチンへ向かって行くチヒロちゃ……痛ぁ!!?
凄い速度で飛んできたニンジンが私の額にぶち当たる。 しかも先端の部分が当たったから痛みが倍増してる。
「痛った!? 何でニンジン投げたの!?」
「何か邪な念を感じたから」
「理不尽すぎる、私は何にも」
「ニヤニヤしてたのに何もないはないでしょ」
にやけていたのか、それは失敬。 今度はバレないようににやけることにするよ。
チヒロちゃんがキッチンで調理している間、私はボーっと天井を見上げる。 学校にいた間は何とも感じていなかったけど、いざソファーに座って気を抜いていたら一気に疲労が襲ってくる。 あぁ、私思っていた以上に疲れてたのか。
「今にも寝そうな顔してるよ、やっぱり疲れてたんじゃん」
「いや、気が抜けたら一気に疲れがね……」
「正直、そこまでランが疲れてる感じになるのって珍しいね。 普段ならリオやヒマリが止めに入ると思うんだけど」
「あの二人は今忙しいみたいでね。 ストッパーは……」
いないって訳じゃないけど、ユウカちゃんやノアちゃんは私が本気で集中してると止められなくなってしまう。 根が真面目な分、集中している私を止められなくなってしまうんだ。
そんな時ドローン越しに私の集中を途切らせるようにリオちゃんかヒマリちゃんが話しかけてくるんだけど……今回はいなかったからなぁ。 これは反省だ。
「でもヒナちゃんは5徹くらいは余裕なんだけどなぁ」
「あのね、他人が出来るからって自分も出来るってのは違うからね?」
「でも私が実質セミナーのトップだから」
「でもでも五月蠅い、トップだからってラン一人が頑張らなきゃいけないってルールは無いんだけど」
「それはそうだけども」
「……本当は言わないつもりだったけど」
「うん?」
「私に連絡してきたの、ユウカなんだよね」
驚いた、ヴェリタスとセミナーなんて水と油ってレベルで仲の悪い印象なのに。 まさかユウカちゃんが連絡をするとは……
「絶対休むって言って休まないと思ったんだろうね。 丁寧に、いや懇切丁寧に状況説明してきてお願いされたよ」
「入学当初からの仲だって言うのは把握してるからね、その繋がりでどうにか止めてもらおうと思ってたみたいだよ」
「……そっか」
「あんまり心配させちゃダメだと思うよ」
「それは、そうだね。 ごめん」
……思っている以上に心配をかけてしまっていたみたいだ。 ユウカちゃんには後で謝らないとね。
私がボーっとしている最中もチヒロちゃんは黙々とカレーを作っていく。 あぁ、この匂い。 昔はリオちゃんやヒマリちゃん、それにウタハちゃんも集まってカレーパーティーを開いたっけ。
……私が壊れかけたあの時以降、みんな重要な役職に就くことになって徐々に集まる頻度は少なくなってしまったけど。
「あと少しで出来るよ。 今のうちにお湯溜めておいたら?」
「そうだね、今いれるよ」
だらけていたい気持ちを抑えて風呂場へ向かう。 浴槽にお湯を張りつつ、冷たくならないように床にシャワーでお湯をかけていく。 多分作り終わったら一旦置いておいて、お風呂に入ってから食べる算段なのだろう。
と、そんなことを考えつつシャワーを止めた時だった。 インターホンの音が室内に鳴り響いた。
「ラン、今日誰か来る予定でもあった?」
「んー? さっき見た時は誰からも来てなかったけど……宅配か何かかな?」
そう答えるけど、直近で何かを頼んだ覚えもない。 ならば訪問販売か事前連絡なしで家に来た誰かだろう。 私は落ちかけた瞼を開きつつ、玄関へと向かった。
「はーい、どちら様……って、あれ?」
「あ、在宅だったんですね。 入れ違いにならなくて安心しました」
「ハナコちゃん! 家に来るのは凄い久しぶりだね!」
玄関に立っていたのはハナコ……浦和ハナコちゃん。 トリニティ所属の生徒で、彼女とも知り合ってそれなりの時間が経っている。
でも連絡もなしに来るなんて珍しい、何かあったのかな?
「連絡来てなかったみたいだけど、何かあったの?」
「いえ、偶然近くを通りかかったのでついでに立ち寄ってみようかな、と」
「そうなんだ」
……嘘だな、と私はそう思う。 だってハナコちゃんの住んでるところはトリニティの……私の家とは反対方向にあるんだから。
見た感じ何も持ってないし、買い物帰りだとしたらおかしい。 本当にフラッと立ち寄ったって可能性も無くはないけど……
「今チヒロちゃんって人も家にいるけど、中に入ってよ」
「……良いんですか? 前から約束でもしていたのでは?」
「ううん、帰ってくること自体……何時振りか、カレンダー見ないとちょっと分からないけど。 チヒロちゃんも今日突然来る事になったから問題ないよ」
「そう、ですか。 ではお言葉に甘えても?」
「いいよ! チヒロちゃーん! もう一人増えるからお皿もう一つ!」
キッチンから了承の声を聞きつつ、私はハナコちゃんを引き連れて中へと戻っていく。 リビングに戻ると、ソファーに座っていたチヒロちゃんが私とハナコちゃんを見て口を開いた。
「話しか聞いたことないけど、ランの友達でしょ?」
「ええ、浦和ハナコと申します」
「私は各務チヒロ。 ランの……まあ、友達?」
「何で疑問形? 友達でしょ?」
「友達だって言っちゃうとあの二人と同類みたいで何か……」
「良いでしょ、一年の頃からの仲でしょ」
「ふふっ」
私とチヒロちゃんの会話を聞いて、思わずと言った様子でハナコちゃんが噴き出す。 その反応にこれ以上の言い合いは何の得にもならないよねと言った感じで、チヒロちゃんが咳払いをする。
「んんっ、カレーは完成したから先にお風呂。 ほらラン、着替え持ってきて」
「分かったよ。 ハナコちゃんは私のパジャマでもいいよね?」
「良いんですか? 私はこの服でも……」
「折角お風呂に入るんだし、着替えたほうがいいでしょ? 今日は泊まっていってよ、服は洗濯するからさ」
「……では、お願いしますね」
私は手早く着替えの服を持ってきて、三人でお風呂場へと直行する。 脱衣所でパパっと服を脱いで浴室に入ると、素早くチヒロちゃんがシャワーヘッドを持ち出した。
「ランは座ってて、後はハナコ……さん?」
「呼び辛ければ呼び捨てで結構ですよ?」
「それじゃハナコで。 二人で洗うからランはそのまま」
「え、いや私普通に」
「良いから。 もう半分も目が開いてない状態で何言っても説得力ないから」
あぁ、そんなに目が閉じちゃってたのか……言われて初めてその事実に気付いたよ。
人肌に丁度いい温度のお湯が私の頭に降り注ぐ。 程よく濡れたと思ったら、すぐにチヒロちゃんが泡立てた両手で私の頭を洗い始める。 ……あー、気持ちいい。 チヒロちゃん洗うの上手いね……
「では私は背中を洗ってあげますね。 ……ふふ、痒い所はないですか?」
「ふえ、ハナコちゃん気持ちいいよぉ……」
「それはよかったです。 はい、両手を挙げて……ばんざーい、ですよ?」
「ばんざーい……」
言われるがままに両手を上げたり、首を傾けたりして全身をくまなく洗ってもらう。 強すぎず弱すぎない絶妙な力加減で洗われるうちに、私はまたウトウトし始めてしまう。
「うむ……んん……」
「もうかなり寝そうだね。 でももう少し我慢して」
「そうですよ? せめて湯船に浸かるまでは起きててくださいね?」
「うん……おきてる…」
「こりゃ駄目そうだ」
「急いで流しましょう、せめて泡だけは流し終わらないと」
ふたりがなにかいってるけど、なんていってるかわかんない。
それよりも、あったかいのがここちよくて……すごいね……む……
────────────────
「あー、寝ちゃった」
何とか湯船まで運んで、一人で入るにはやや大きい浴槽の中に三人で浸かる。
その時には、もうランの目は完全に閉じ切ってしまっていて微かに寝息を立てていた。 ……言わんこっちゃない、疲労を溜めすぎたんでしょ。
「あらら……ふふ、とてもいい顔で寝ていますね」
「ごめんね、当の家主が先に寝ちゃって」
「いえ、構いませんよ。 それだけ疲労が溜まっていたんでしょうし」
その通りだ。 ……正直、ユウカから電話が来たときは驚いた。
仲がいい、とは嘘でも言えないくらい犬猿の仲なセミナーの、それも一番バチバチに何か言ってきそうなユウカからの電話だ、何を言われるのかと頭を抱えたけど……
『あの、チヒロ先輩。 急にこんな頼みごとをするのはお門違いだとは思ってますけど』
『ラン先輩を、休ませてあげてもらえませんか?』
まさか、ランを休ませるためにわざわざ連絡を入れてくるなんて。
『驚いた、ユウカからそんな言葉が出てくるなんて思わなかった』
『虫のいい話だとは私も思ってます』
『ですが……ラン先輩、ここ最近ちゃんと休んでいなくて。 家にも帰ってないみたいですし』
『……まさか、ランに限って。 あの二人が何も言わないなんてありえないでしょ』
『その二人に連絡が繋がらないんです。 だから私達が止めようとしても反応しなくて』
ユウカのその言葉に、私は自分でも驚くくらい目を見開いた。 あの過保護が服着て歩いてるような二人が何の反応もしないでランを放置している?
それだけの案件を抱えているのか、だとしても二人同時に?
『……いや、理由は今考えても無駄か』
『分かった、私の方で何とかするよ』
『ありがとうございます。 セミナーからは出て行ったんですけど、今はゲーム開発部の方に顔を出していて』
『正気? さっきの言葉を聞く限り碌に寝てもいないみたいだけど』
『仮眠も見える範囲で確認できてません。 と言うか目がやばいです、ラン先輩に踏まれてる時のリオ会長みたいでした』
『少しも想像したくない例えをどうも、それは重傷だ』
人として一緒にいたくないレベルの目をしてるのは流石に見てられない。 そう考えて私はランの面倒を見るためにランの家へと向かった。
結果的に言えば、その判断は正解だったと言うべきか。 本人は何ともないような様子で会話をしてるけど……傍から見れば、目がまともじゃないのが一目でわかる。
一体どれだけ休んでないのか……あんたが一人で頑張ったって、限界があるでしょ。
「……そういえば、なのですが」
「ッ、何?」
ここに来る事になった出来事を思い浮かべていたら、ランを挟んで向かいに座っていたハナコから声がかかる。 話でしか聞いたことはなかった彼女だけど……大き、いや今は良いか。
「ランさんは、普段私の事を何と言っていましたか?」
「ハナコの事を? えっと……」
以前話していたことを、頭の中で思い出す。 ランは何と言っていたか……あぁ、そう言えば。
「とても優しい子、そう言ってたね」
「優しい子、ですか」
「うん。 ……何にでもなれたのに、何も選ばなかった」
「ッ」
「私にはできなかったことを、ハナコは進んでやった。 私にはその覚悟が眩しいし、その意志を私は笑うことはない」
「確か、そんな事は話してた気がする」
「そう、ですか」
ハナコはそう言って、膝に顎を載せて俯く。 ……話だけじゃ全部は分からないけど、きっとランくらい、いやそれ以上に何かがあったのだろう。 トリニティなら尚更だ。
私が何か言うことはない。 何かできるとすれば……ランしか、いないんだろう。
「私には何も分からないけどさ」
「……はい」
「ランを見てれば、大抵のことはどうでもよくなってくる」
「はい?」
「見てれば分かるでしょ? バカみたいに心が弱いのに、それでも困ってる誰かのためにバカみたいに突っ込んでいく」
「嫌いなんだよ、目の届く範囲で誰かが泣いてるのが。 助けてって言ったら自分の事を無視して手を伸ばす」
「ランさんは、そういう人ですからね」
「一度それで、ランは目も当てられないくらい心が壊れかけた」
「…………え?」
きょとんとした様子でハナコがこちらを見つめてくる。 あぁ、もしかしたら彼女は知らないのかもしれない。
「伸ばした手が、届かなかった。 あの時は本当に困ったよ……目を離したら、消えちゃいそうなくらい、小さくなって」
「……そんなことが」
「だから、誰かのためにって今も立ち続けてるランの事は正直好きだよ」
「それ、は……その、そういう意味で?」
「ふふ、想像にお任せする」
「そういうハナコこそ、そうなんじゃない?」
会って間もないけど、すぐわかる。 ハナコの目は優しいんだ、慈しみの籠った目で、ランの頭を撫でていたあの目。
それが友愛だけの感情じゃないってことも、何となくわかる。
「……そうですね。 確かにそうかもしれません」
「ランさんがいれば、いえ、ランさんもいれば……」
「……」
「何時も残念に思います。 部屋にランさんがいればいいのにと」
何だろう、何か流れが変わってきた気がする。
「ランさんの手が、ランさんの顔が、ランさんの体が、何時も傍にあったらどれだけ楽しく過ごせるんでしょうって」
「学校に一緒に、なんて贅沢は言いません。 家に、彼女がいれば、彼女さえいてくれれば」
「────────きっと、毎日が楽しいのでしょうね」
ぞわり、と背中が総毛立つ。 見ちゃいけないと分かっているのに、ハナコの目を見てしまう。
どろりとしたその目が、ランを見つめて離れない。
「……そこまで思われるランが羨ましい限りって言えばいいのかな?」
「ふふ、良いんですよ正直に言ってくださっても」
「自分自身でも分かってます、この感情はとても歪んでいると」
「でも、だからこそ伸ばし続けたいじゃないですか」
彼女の両手が、ランの頬を撫でる。 ランの顔に、ハナコの顔が近づいていく。
まるで眠れる姫に、王子様が口付けをするように。 愛しい人にする親愛のキスのように、ハナコの唇がランの唇に────────当たる、寸前で止まった。
「一体どれ程の
……ラン、もうちょっと友達との距離感と言うか、そういうのを見直した方が良いと思うんだけど。
「ふふ、冗談ですよ」
「私としては、冗談に見えなかったけどね」
「気持ちは本当ですが、この偏愛を受け止めてもらおうと言うつもりはありません。 でも少しでも、彼女の心の隅にでも……私がいてくれたら。 そう思います」
「いるね、絶対にいる。 ランが親しい人の事を心の中から無くすなんてあったらそれはキヴォトス終焉の日くらいだから」
「では、そうならないように気をつけないといけませんね」
先程までの目は無くなり、透き通った瞳が私を見つめる。 それなりに偉そうな人と交流はしてきたつもりだけど、さっきのは流石に肝が冷えた。
確かランの言ってた通りならハナコは特別な役職に就いていないって聞いたけど……噓でしょ、これで? いやだからこその『何にでもなれたのに』と言う言葉なのだろう。
「のぼせたらいけませんし、そろそろ上がりましょうか」
「そうだね、カレーもまだなんだしさっさと上がって食べようか」
二人でそう頷き、ランの上半身と下半身を分担して持ちつつ浴槽から上がる。 寝たままの体を拭くのは存外面倒なんだな、なんてしょうもない思考を払拭しつつ私達は服を着てリビングへと移動することにした。
────────────────
「んぅ……んん?」
後頭部に伝わる柔らかな感触と、顔面に伝わる更に柔らかな感触によって私の意識は急上昇し始めた。 何だ、この感触? 私さっきまでお風呂に入っていたと思うんだけどなぁ……?
そんな事を考えつつ、私は未だに真っ暗なままの視界の理由を確認するために柔らかいそれに手を伸ばした。
「あんっ♡」
「んんんん?? ハナコちゃん?」
「ええ、私ですよ? それにしても……大胆、なんですね?」
「うお、でっか……」
どうやら私の視界を遮っていたのはハナコちゃんのハナコちゃんらしく、今はそんなハナコちゃんを両手で確認していた。 すっごいもっちり……神秘が詰まってると言っても過言じゃないね。
でも前に聞いたサイズを思い出すと私のサイズと何ら変わりないはずなんだよなぁ……
「ごめんね、途中で寝ちゃってたね」
「いいんですよ。 私はその分ランさんの可愛い寝顔を堪能できましたから♡」
「恥ずかしいにゃぁ……」
「ハイそこ、乳繰り合ってないで席に座って。 カレーよそったんだから冷めるよ」
「あ、ごめんチヒロちゃん。 私重くなかった?」
「……重いのは、まあ、うん」
「え、何その反応。 そんなに重かった?」
「ふふ、お気になさらなくて大丈夫ですよ」
いや、私が凄い気にするんだけど。 そんなに重かった? 私ここ最近体重計に乗ってなかったから分かんないけど、そんなに増えたのかな?
いや、私はあんまり太らない健康的な生徒。 たくさん食べたって問題ない、そう考えて私は椅子に座ってチヒロちゃんのカレーを堪能することにした。
「うん、美味しい! やっぱりチヒロちゃんのカレーが一番だよ!」
「私が特別上手いんじゃなくて、残りの面子がメシマズなだけだと思うよ」
「あの三人は調理への向き合い方がね……理論だけで上手に作れたら苦労しないんだよ」
レシピ通りに作るのは正しいけど、温度や品質によって微妙に変わってくる。 時間配分だって変わってくるのに、全部レシピのまま作ったら……うん。
暫し黙々とカレーを食べたりお代わりを所望したり、各々のスピードでカレーを食べ終えた私達は、満腹のお腹をさすりながらソファーへと座っていた。
「久しぶりに手作りの料理を食べた気がする。 あ、外食以外って意味でね?」
「料理好きなランが作らないなんて相当だね、詰めすぎるのも程ほどにしなよ」
「もしランさんが良ければ、私が今度作りに来てあげますね」
「おお、ありがとうハナコちゃん! 是非お願いするよ!」
「ふふ、分かりました♡」
ハナコちゃんも、もう問題ないかな? 最初の方は少しだけ張り詰めた雰囲気だったけど……今はもう弛緩してる。 お風呂で何かあったのかな? 本当に何があった?
「それじゃ、そろそろ寝るよ。 明日も早いでしょ」
「え、まだもうちょっとお話しようよ~」
「話すならベッドの中でも出来るでしょ? 文句言ってないで歯を磨くよ」
「ランさんの歯は私が磨いてあげますね」
「ハナコちゃん優しい~、ほら見てよチヒロちゃん。 こういうとこだよ?」
「私に何を求めてるのさ」
うふふあははと笑い合いながら洗面所に向かって歯を磨く。 そうしてベッドへ向かった頃には、三人とも眠気が結構来ていたみたい。
何か話をした気がするんだけど、気が付いたらみんな寝ちゃってたんだよね。 勿体ないことしたなぁ。
私思うんですけど、ハナコって絶対愛が重いと思うんです(願望)
この作品、ピンク髪が高確率で愛が重いし依存っぽくなってます。 単に作者の癖です