セミナー副会長はとにかく巻き込まれたくない 作:ピンク髪大好きニキ
最初に言っておきますが、こっちの方は不定期更新です。 週一くらいの更新頻度だと思ってください(筆が乗ればもうちょい早いけど)
転移だの転生だのそういう要素を抜いたオリ生徒モノのブルアカ二次創作です、コメディ色がとても強くなると思うのでそこは把握お願いします
私な、綺麗な女の子が鼻水垂れ流しながらギャン泣きしてるの見ると飯が進むんだ
1話「ノーと言えない巻き込まれ娘」
数千の学校が密集し構成される学園都市────『キヴォトス』
そんなキヴォトスには三大校と呼ばれる学園がある。
【自由と混沌】を校風とし、日夜銃撃戦が繰り広げられる『ゲヘナ学園』
ゲヘナ学園とは正反対に優雅で清楚な、所謂お嬢様系の生徒が通う『トリニティ総合学園』
そして──先に挙げられた二校とは違い、新興でありながらもその最先端で最新鋭な技術力を用いて三大校に名前の挙げられる『ミレニアムサイエンススクール』だ。
そんなミレニアムの一角にて……一人の少女が、デスクに向かって書類を書き込んでいた。
全くない、とは言わないがミレニアムでは珍しさが勝る紙媒体。 それに一糸乱れずに文字を書き込んでいき……一段落済んだのであろう、軽く伸びをして目頭を揉んでいる。
「記入完了……残りは、後日」
言葉少なく椅子から立ち上がる。 180に届きそうなその長身に、灰色多めのアッシュブルー……その髪をウルフカット状に切り揃えている。 切れ長の目は青く、その瞳孔は左右で違う色をしていた。
天海ラン。 ミレニアムにおける生徒会──『セミナー』の副会長である。
「ランさん、お疲れ様です。 コーヒーは?」
「ありがとう、是非いただきます」
「ふふ、只今お持ちしますね」
タイミングよく通りかかったセミナー書記の生塩ノアに声を掛けられ、ランは少しだけ微笑みつつ返事をする。 コーヒーを淹れに行ったのであろうノアと交代するようにして、少し小柄な少女がランの前へと小走りでやって来た。
「ラン先輩ラン先輩ッ! やることが終わったなら私と遊びましょうよ!!」
「……ふふ、良いよ」
「やったぁ!! じゃあ私ゲーム持ってきますね!」
セミナー庶務、黒崎コユキの元気な姿に笑みが零れつつ、ランはセミナー内に設置されているモニターを移動させる。 そこにコーヒーを淹れてきたノアが戻ってきて、ランが何をしようとしているのか分かったのだろう……少しだけ困ったような顔をしつつ、コーヒーをデスクの上へと置いた。
「ランさん……コユキちゃんに甘すぎませんか?」
「……そうかな?」
「ええ、そうです。 調子に乗ったら何をやらかすか分からないんですから」
「そうなったら、私がまた話を聞いてあげるから」
「もう……でも、それがランさんのいい所なのでしょうね。 コユキちゃんが悪さをあんまりしなくなったわけですし」
ノアが淹れたコーヒーを飲みつつ、ランはセミナーに入ってからの事を思い出す。 ノアは業務を忠実にこなしてくれるし、コユキだって最近は真面目……とは、断言できないが少なくとも業務自体は手伝ってくれる。 ユウカは小言が多いながらも仕事には真面目で好感が持てる……肝心の会長は、副会長であるランに業務を丸投げ状態で滅多に姿を現さない。
そこでふと、ここにいないユウカの事を思い出す。 時間五分前には既に到着し業務をこなしている彼女がこんな時間にセミナーにいないのは珍しいな、と考えたところで……
「……連邦生徒会」
「はい?」
「ユウカちゃんは、連邦生徒会に?」
「あ、はい。 ユウカちゃんは今の自治区の問題を連邦生徒会に直訴しに行くと言って朝からサンクトゥムタワーに行ってるはずです」
「そう……」
持っていたマグカップを置き、ランは窓の傍へと近寄る。 ミレニアムだけではない、キヴォトス全域で様々な問題が起こり始めて早数週間……その間、全く連邦生徒会長の姿を見ることがなかった。 治安は悪くなっていく一方だし、各部活や保安部の様子も芳しくない。
「────嵐、か」
何かが起こっている……そんな現状に、つい言葉が漏れてしまった。
「嵐……? ッ、嵐の前の静けさと言いたいのですね」
「エッ」
「治安が悪くなり、不良生徒も暴動を繰り広げている今の現状ですら……これから起こる嵐のような出来事の前触れでしかない、そこまで見据えているのですね!?」
「エッ……エッ?」
「申し訳ありません。 ランさんの先見の明に見えている物を推し量れず……」
何か自分で言って自分で納得しているノアに、ランは何と言っていいか分からなくなっていた。 何と答えればいいか……この空気をどう変えればいいかと思案を巡らせ、ランは天啓を得た。
「迎えに」
「はい?」
「ユウカちゃんを、迎えに行きます」
「ユウカちゃんを……? いえ、分かりました」
「────何かが、起こるのですね」
「エェ……?」
「コユキちゃんの事は任せてください。 私が代わりにゲームに付き合いますので」
「えっあ、うん。 行ってきます」
またもや何か納得したノアを直視できずに、ランはそそくさとセミナーを立ち去る。 その数分後、うきうきとした様子でセミナーへと戻って来たコユキは、何やら難しい顔をしたノアだけがセミナーに残っているのを見て首を傾げた。
「あれ、ラン先輩は?」
「ランさんはユウカちゃんを迎えに行きました。 何かがあるのでしょう」
「えぇ~? 私とゲームで遊ぶって言ってたのに……」
「代わりに私がコユキちゃんに付き合ってあげますよ。 何のゲームをしましょうか?」
「えっノア先輩が一緒に遊んでくれるんですかぁ!? でもこれ……」
若干気まずそうな様子でコユキがゲームを差し出してくる。 そこにはゲームソフトだけでなく、何やら輪っかのような形をしたコントローラーもあり……
「ミレニアムアドベンチャー、スポーツ系のゲームですけど大丈夫です?」
「……ふふ、良いでしょう。 私だって日々成長しているんですよ」
この後ノアは滅茶苦茶体を動かした。 尚ゲームはクリア出来なかったし数日は引きずるくらいの筋肉痛も生じた。
ノアは泣いた。 ステージ一つすらクリアできない自分のふがいなさに。
だがいい、これでランの代わりが出来たのならと。 彼女の予測しているであろう出来事の助けになれたのならと。
そんなランはどうしていたかと言うと……
────────
(なんでぇ~???? なんでこんなことになるのぉ????)
泣きたい、いや泣いた。 何で私こんなとこでこんなことに巻き込まれてるの?
やっぱあの変な空気を我慢してコユキちゃんと遊んでいればよかった!! その方が絶対何も起きずに平和に過ごせた!! 私のバカ!! ホントおバカ!!
「ランさん、もうすぐ作戦区域です。 そろそろ車両から徒歩に切り替えましょう」
「了解です、今路肩に停めます」
助手席に乗っていたリンちゃんの声にハッとし、すぐに路肩へと車を停める。 後部座席からは他に乗っていた生徒たちや大人の人が降りて行って、皆各々の武器をチェックし始めている。 ……これ、私も行かないといけないかなぁ? ここまで送ったから十分じゃない?
「皆さん、点検は済みましたか?」
「ええ、問題ありません」
「此方も。 ……それにしても、タイミングが良かったですね」
「本当ね、まさかラン先輩が来てくれるなんて思ってなかったです」
あっ、これ逃げられない奴だ。 完全に私も戦力に数えられてる。
本当に逃げたい……戦う必要がないなら、それに越したことはないのに。 みんな好戦的すぎるよぉ……
”ごめんね、急に巻き込んじゃって”
「……いえ、大丈夫です」
”何かあったら言ってね、可能な範囲で要望は聞くから”
あ、この人いい人だ。 何よりもまずこっちの身を案じてくれてるし。
正直逃げたいです、って言いたいけどなぁ。 でもこの空気で言えないし……何より、後輩を見捨てて逃げるのは、何かやだ。
私は諦めてトランクに積んであった自分の得物を取り出す。 それを見た先生は目を大きく見開き、口をあんぐりと空ける。 ……驚くよね、でも女の人がそんな顔をしちゃいけないと思います。
”え、何それ”
「初見はそうなりますよね……私達はもう見慣れましたけど」
「何時見ても心臓に悪いですけどね」
見慣れているはずの彼女達でもそんなこと言う私の武器はと言うと……一言で言い表せば、デカい鉄の塊だろうか?
厳密に言えば鉄の塊じゃない、そう見間違えるような幅と長さの……一応、銃だ。 対戦車ライフルの弾薬を装填して至近距離からぶっ放す、下部に備えられたパイルバンカーで戦車の装甲を破壊する、上部の持ち手を用いて相手をぶん殴る。
相手をぶん殴る事の方が多いため、鈍器としての運用を重視して作られたこの頭のおかしい銃こと【アドミニストレーター】……通称アドミちゃん。 リオちゃん、ヒマリちゃん、そしてウタハちゃん……みんなの中では私の事ゴリラか何かと思ってない?
そんな銃を片手で持って背中に背負う辺り、否定できないのが悔しい。
「準備完了です」
「了解しました。 私はオペレーターを務めます……皆さんは先生をシャーレまで安全に連れて行ってください」
「全く……自治区の話をしに行っただけなのに、何でこんなことになるのよ」
「その問題を一遍に解決するためにこうしてシャーレへと向かっているのです」
「だからってこんな……きゃっ!?」
既にこちらに気付いていたらしい不良生徒の放った銃弾を、私はユウカに当たる前に叩き落す。 何が起こったのか分かったらしいユウカが私に頭を下げている最中、銃撃してきた不良生徒が私を見て震えているのを見てしまった。
「み………ミレニアムの【破壊姫】……ッ!!」
オイ止めろ、そのこっ恥ずかしい二つ名は。 不名誉にもほどがある。 先生はそんな言葉に目をキラキラさせないで、そして他の子もウンウン頷かないで。
「噂になるくらいには貴女の名が広まっているようで……」
トリニティの治安維持組織『正義実現委員会』の羽川ハスミちゃん。 よく私が作って来たスイーツを嬉しそうに食べてくれる良い子だ。
「無理もないですね。 貴女は色んな所で治安維持をしていますし」
ゲヘナ学園の治安維持組織『風紀委員会』の火宮チナツちゃん。 委員長のヒナちゃんとよくお話をするけど……何か毎回怖がられてるような気がするけど、私何かしたかな?
「今は心強いということにしておきましょう、事実に変わりはないのですし」
トリニティ総合学園の非公式組織『トリニティ自警団』の守月スズミちゃん。 彼女とはそこまで面識はないけど、レイサちゃんとはよく遊びに行ってる。
……ええい、このやり場のない怒りは全部不良生徒にぶつけてやる。
「────総員配置に、先生を護衛しつつシャーレへと向かいます」
「分かりました!」
「先生は指揮をお願いします。 私は先頭で蹴散らすのが得意ですので」
”うん、分かったよ。 みんな、お願いね”
私の一言でみんなの気が引き締まる。 先生も準備が出来たみたいだし、早速暴れてやりましょうか。
足に力を籠め、一気に駆け出す。 一番近くにいた不良生徒へと近付き、その懐へと入り込んだ。
「えっなっ、はやっ」
「────死ね」
物騒な言葉が出ちゃったけど仕方ない、これは私は悪くない。 腹にアドミを押し付け、持ち手に付けられた引き金を引く。
────ズガァァァァァンッ!! と轟音が鳴り響き、予想だにしなかった威力に不良生徒が地面と平行に吹き飛んでいった。 更にその傍にいた生徒には、アドミで直接殴りつける。 ゴリッと言う鈍い音と共に地面へと倒れこんだその姿を最後まで見ることなく、戦場を一瞥した。
”す、凄いね……”
「普段は寡黙ですけど、いざ戦闘になればあれほど頼りになる人はいないですよ」
「その分、敵になった時が一番恐ろしいんですけどね……」
先生の驚愕する声に、自慢げに答えるユウカちゃん。 チナツちゃんはブルっと震えてるけど……私が敵対するって、余程の理由がないと起こらないと思うんだけどなぁ。
まだ敵は沢山、シャーレまでは距離もある。 止まっている時間はない、私はさっさと終わらせてヒマリちゃんの膝にしがみついて泣きわめきたいんだ……「もうやだ何で毎回厄介事に巻き込まれるの怖いし泣きたいし帰りたい」って。
────────────────
『────そのまま聞いてください。 たった今、この騒動の首謀者が判明しました』
『狐坂ワカモ……この騒動に乗じて矯正局から脱獄した生徒です』
インカム越しに聞こえたリンちゃんの言葉に、私は思わず目を見開く。 ワカモちゃん脱獄したんだ……これはまた、困ったことになりそうだなぁ。
「七囚人ですか……厄介ですね」
「そもそも、何でこんな騒動を引き起こしたのでしょうね」
「捕まった腹いせ、にしては短絡的にも思えますが」
各々自分の考えを話しつつも、足は止めない。 もう少しでシャーレへと辿り着く────そんな時に、私の耳に駆動音が聞こえてきた。
「止まって」
「ラン先輩? どうかしたんですか?」
「駆動音。 これは……クルセイダー?」
「戦車まで投入ですか、何処から……」
「ブラックマーケットでしょうね、改造武器の大規模な取引が先日行われたと報告が上がってましたし」
私の眼で分かる範囲に戦車が入り込んでくる。 それだけならよかったのだが、更にその上に立っていた人物によって私の背筋に寒気が走る。
「────あら? ふふふ……ランさん、お久しぶりですね♡」
「ワカモ、ちゃん」
「ええ、貴女の狐坂ワカモ、です」
「狐坂ワカモ……ッ!」
今しがた話していた件の人物が現れたことにより、場に一瞬で緊張が走る。 この場にいるということは、要件は私か……それとも、シャーレか。
シャーレの入り口がすぐそばと言うこともあり、候補が絞られる。 色々考えている私の事を気にすることなく、ワカモちゃんは静かに口を開いた。
「それと連邦生徒会の子犬の皆様も、揃いも揃って……」
「狐坂ワカモ! 一体何を企んでいるのよ!?」
「ふふ、正直に答える理由がありませんね。 元より貴女方に興味はありません……ランさんは、別ですが」
別にしないで、一緒くたにしていいから。 私の事はそっとしておいて下さい……
「ラン先輩は渡さないわよ」
「貴女の意見は聞いていませんが……いえ、とりあえずは放っておきましょうか」
ワカモちゃんはそう言うと、戦車の上から飛び降りる。 突撃してくるのかと思いきや……そのまま、後ろに振り返ってしまった。
……私達じゃ、ない? ならシャーレかそれに準ずる何かに、用事がある?
「元より貴女方の相手は此方です。 精々頑張ってくださいな」
「ちょっ……待ちなさい!」
「ユウカちゃん、優先順位を間違えないで。 今はこっちが優先」
「う、分かりました」
「目標、クルセイダーⅠ型。 対抗手段は……」
「私の射撃か、ランさんのパイルバンカーですね」
”それを組み入れた作戦にしよう。 みんな、指示通りに動いてくれる?”
「分かりました、タイミングはお任せします」
先生から大まかな作戦を聞き、私は戦車の前面へと躍り出る。 背後にはユウカちゃんがついてきており、主に陽動の役目を担うことになる。
そんな時、私が何を思っていたかと言うと……
(あぁ~~~~~!!!!! 何で戦車なんて出してくるの!? 何で私はアドミちゃんの方を持ってきてたの!? パイルバンカーついてなかったらハスミちゃんだけで事足りたのに!! こうなるならリーベちゃんの方を持ってくればよかった!! リーベちゃんなら作戦の要に配置されずに済んだのに!)
めっちゃ喚いてた。 まさか戦車が出てくるなんて思わないじゃん、不良生徒が持ってるなんて治安はどうなってるの? あ、元から治安はよくなかったな。
因みにリーベちゃんとはアドミちゃんの屋内運用版みたいな武器だ。 正式名称は【リベレーター】こちらにはパイルバンカーは付いていないし、全長も半分程度になっている。 取り回しが楽な分、選択肢が銃撃か鈍器運用になっちゃうけども。
”ユウカ、そこでシールドを”
「了解です、シールド展開します!」
”ランはそのまま突っ込んで! 一発なら砲撃を耐えられる”
「承知しました」
ユウカちゃん、マジでお願いね。 耐えられなくて二人で吹き飛ぶのは嫌だよ?
そんな不安は的中することなく、クルセイダーから放たれた砲弾はユウカちゃんのシールドに阻まれてその軌道を逸らす。 猶予はそんなにないが、再装填までのその空白は────私が距離を詰めるには、十分すぎる。
「ハスミちゃん、合わせて」
「お任せを、ランさんにとどめは任せました」
いや、そこは任せなくても良いよ? ハスミちゃんだけで事足りるし。
と、心の中では思いつつもクルセイダーに肉薄。 機関部のある個所へアドミを押し付け、全ての準備が整った。
「ちょ、まって」なんて声が中から聞こえてくるが、そんなの私には関係ない。 さっさと終わらせて帰りたいんだ私は。 そんな思いを込め
「────────ぶち、抜けぇ!!!!」
ごめん半分以上私怨が入った。 そんな掛け声とともにパイルバンカーを射出。 綺麗に入ったそれは機関部に直撃し、黒い煙と共に機能を停止する。 ダメ押しと言わんばかりに砲塔もアドミで叩き折れば、もう周りには抵抗する不良生徒はいなくなっていた。
「う、うぅ……やっぱりミレニアムの破壊h」
「当て身」
「ぷぎぇっ」
不名誉な称号を口に出した無抵抗な不良生徒は必要な犠牲だった、うん。 これで本当に作戦は終了だろう、先生の指揮も終わり何を言うでもなく私の周りにみんなが集まって来た。
「ラン先輩! お疲れ様でした!」
「ユウカちゃんもお疲れ様、さっきはありがとう」
”みんな、お疲れ。 怪我はない?”
「大した怪我は見当たらないですね……これが、先生の力というものですか」
”みんなの協力もあっての事だよ”
みんな口々にそう言う。 確かに、先生の指揮は凄かった。 私達の指揮とは違う、もっと戦場を広く見た戦い方というのだろうか? その調子で指揮をし続けてほしい、あわよくば私がこれ以上厄介事に巻き込まれないようにキヴォトス全域の治安維持に努めてほしい。
本当に、切実にそう思う。 本当にお願いします先生……もう巻き込まれたくない……
『シャーレの奪還、お疲れ様です。 私ももう少しで到着予定ですので、先生は先に地下でお待ちしていて下さい』
”分かった、それじゃあみんなとはここでお別れだね”
「大丈夫ですか? 誰かを護衛に付けたほうが……」
”ううん、ここまで付き合ってもらったから大丈夫だよ。 今日はここで解散ってことで”
あぁ……ようやく解放される……先生には申し訳ないけど、私の心は安堵で一杯だ。
「分かりました、それでは私達はここで……今度時間がありましたら是非トリニティへお越しください」
「ゲヘナへも是非、来訪をお待ちしていますね」
「ミレニアムにも来てくださいね、それではまた! ラン先輩、行きましょう」
「うん。 ……帰り、寄り道してもいい?」
「良いですけど、何処に行くんですか?」
「前に見つけたドーナツの美味しい店に。 落ち着いたら小腹が……」
「良いですね、コユキやノアのお土産にもしましょうか」
そうと決まれば早速行こう、早く車に戻って帰ろう。 これ以上ここにとどまって何かに巻き込まれたら私は今度こそ道路のど真ん中でみっともなくセミナー副会長の肩書なんてクソとでもいうようにギャン泣きする自信しかないぞ。
────────────────
シャーレ奪還と言う事態に巻き込まれはしたものの、特に怪我をすることもなくミレニアムへと帰ることが出来た。 私はお土産に買ってきたドーナツを持って、セミナー……ではなく別の場所へと向かう。
その場所は特異現象捜査部、ヒマリちゃんのいるところだ。
「あら、ランちゃん? 一体どうし……」
「……ひ、ヒマリちゃん」
「ふふ、そんな顔をして立ってないでこちらに来ても良いんですよ?」
「ヒマリち゛ゃ゛ん゛~~~~!!!!」
まるで聖母のように微笑むヒマリちゃんの顔に、私は耐え切れず汚い鳴き声を出しながら突進していく。 しかしヒマリちゃんに激突するでもなく、私は車椅子に座った状態のヒマリちゃんの太ももに顔を押し付けた。
私は泣いた、もうそれはそれはみっともないくらいのギャン泣きである。
「うふふ……よしよし、今日も巻き込まれたみたいですね」
「なんでぇ??? 何でこんなに巻き込まれるのぉ?? 私悪いことしたかなぁ?」
「強いて言えば……ランちゃんが悪いのではなく、ランちゃんの運が悪いと言いますか……」
「ひぐっ……うぅ…もう少し優しくしてくれてもいいと思うんだ。 私何時も頑張ってるのに……」
「そうですね、ランちゃんは何時も頑張ってますね。 とても偉いと思いますよ?」
「もっと褒めて……慰めてぇ……」
「あの下水道がいないセミナーをしっかりと運営してて偉いですよ。 困っている後輩を見たら放っておけないランちゃんはとても優しいですね。 巻き込まれても一人だけ逃げようとせずに事態を解決するランちゃんは責任感があって偉いですよ」
「ずびっ……」
「あっちょっ、私のブランケットで鼻をかむのはダメですよ」
「スゥ────────」
「私の匂いを嗅ぐのはもっとダメですよ!? ダメですはしたない」
「蒸れてる……」
「冷静に感想を述べるのもやめなさい!!!」
私の行動に怒ったような素振りを見せるヒマリちゃんだけど、頭を撫でる手は止めない。 しゅき……ヒマリちゃん優しい……
「…………」
そんな私とヒマリちゃんをものっすごい顔で見てるエイミちゃん。 毎度のことだけど、この光景は中々に強烈なのだろう。 気持ちは分からなくもない、他の生徒からはクール美人だとか立ってるだけでも絵になるとか言われてる私がみっともなくギャン泣きしてヒマリちゃんに泣きついてるんだから。
でもしょうがないだろ、こっちは泣きたくなるくらい厄介事に巻き込まれ続けてメンタルボロボロなんだから。
「……相変わらず、凄いねこれ」
「ふふ、エイミ。 貴女は光栄に思わなければならないのですよ」
「その返事、何回も聞いた気がするけど……どうして?」
「何故ならば……このミレニアムが誇る超天才清楚系美少女ハッカーであるこの明星ヒマリが唯一と言っていいほど友愛と親愛を注ぎ慈愛の籠り聖母のような心で一心に支えるに値する天海ラン……そんなランちゃんと私の人の目を気にせず睦言を交わす貴重な瞬間を、その目で見られるのですから」
「あー、うん。 そうだね」
「つれないですね……そうは思いませんかランちゃん?」
「スゥ────────」
「だから私の太腿の間で深呼吸をするのはやめなさい」
「ヒマリちゃんの汗と柔軟剤が混ざった良い匂いがする」
「そうハッキリ言われると照れますね……いえそうではないのです!」
「でもどんな匂いでも私はヒマリちゃんの事が好きだよ」
「うっ……それは、まぁ? この澄み切ったミネラルウォーターのように清らかで美しい私の事を好きになるのは当然でしょう。 ランちゃんだって私と同じくらい清らかで汚れを知らない真っ白な百合のようにただそこにあるだけでも周りのみんなが振り返るほどの美貌を持っているのですからもっと胸を張って」
「ヒマリちゃんは私の事、好き?」
「いっぱいしゅき……」
(あぁ、また始まった……)
段々エイミちゃんの目がどんよりしていくのが見える。 でもごめんね、付き合いが長い分私とヒマリちゃんはこうやって毎度毎度漫才のようなことを繰り返しているのだよ。
本当はここにもう一人いるんだけど……
『────聞き捨てならないわね』
「ちっ、何しに来たのですか下水道」
『セミナーを確認したらランがいなかったからここだと思ってみたけれど……また貴女、ランに太腿の匂いなんて嗅がせてるのね』
「ふっ、残念ですね。 ランちゃんは自分から嗅ぎに来ているのですよ」
『そんな貧相な太腿なんて碌な感触しないでしょうに』
「は? しますが??? 少なくとも片付けのできない汚部屋の貴女よりはよっぽど良い匂いがしますが???」
『古い情報ね、私は自分で片付けが出来るわ』
「普通は出来て当たり前なのです、そんなことを誇るだなんて……随分器の小さいこと」
『ところでラン』
「ええい、今まで話を振っておいて急に無視するなんていい度胸ではありませんか!」
「どうしたの、リオちゃん?」
私はヒマリちゃんの太腿から顔を離し、リオちゃんへと視線を向ける。 ホログラム越しにではあるが久しぶりに見た彼女は相変わらずいいスタイルを誇っているみたいだ。
『………の、……は』
「え、何て?」
『………………わ、私の事は、どう思っているのかしら』
「もちろん好きだよ? リオちゃんは私の事、好き?」
『いっぱいしゅき……』
頬を赤く染めて視線を逸らすリオちゃんに、つい笑みが零れてしまう。 すると、急に頬を掴まれて私の視線が強制的にヒマリちゃんに向けられた。
見ると、頬を膨らませたヒマリちゃんがこちらを睨んできている……嫉妬かな?
「あんな自分の足で来ようとしない頑固者なんて見なくてもいいのですよ。 ランちゃんは私だけ見ていればいいのですから」
『それこそ聞き捨てならないわ、それを決める権利はランにあるのだから』
「まだ分かりませんか? 何度も言いますけど自分の足で来ていないのです、私と同じ土俵に立てていると思っている時点で滑稽ですね」
『ふ、饒舌ね。 まるでその言葉を繰り返さなければ自分の優位性を確立できないみたいだわ』
「事実として理解できない低能なものがいるからわざわざ何度も繰り返して言っているだけですが???? そんなことも分からないなんて」
『……粘着ナメクジ女』
「汚水で煮た雑巾女」
「『…………』」
「ふ、二人とも……そこらで」
「『ラン(ちゃん)は黙っていて頂戴(ください)』」
「アッハイ」
ふえぇ……また喧嘩になっちゃった。 喧嘩は絶対にするなって訳じゃないけど、もう少し仲良くなってほしいのに……
「……あのさ、ラン先輩泣きそうになってるからそこまでにした方がいいと思う」
「あっ……違うのですよランちゃん? これは……」
『……そ、そうね。 スキンシップよ』
「そう! スキンシップですから安心してください」
(これがミレニアムのトップとナンバーツーなんて、見ても誰も信じないだろうなぁ)
エイミちゃんが溜息吐いてる。 溜息を吐いたら幸せが逃げるよ。 私は吐いてないのに幸せが逃げて行ってるけど。
基本8000文字前後の更新を予想してるんですけど、もしかしたら1万越えも多いかも
あとキャラの立ち位置上パヴァーヌ以外のメインストーリーは途中参加とか多めです、しかも大体巻き込まれる形で参加です、お前は泣いていいよ。
感想、お気に入りなどお待ちしております