セミナー副会長はとにかく巻き込まれたくない   作:ピンク髪大好きニキ

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何か書けたんで連日です

いや、寝て起きたら評価もお気に入りも凄い来てて椅子から転げ落ちた。 何キミ、すっごい幸先良いんとちゃう?

本当にありがとうございます、めっちゃ励みになってるんで今後も見てくれると嬉しいです


2話「静かに過ごしたい巻き込まれ娘」

 

 

 

 

シャーレ奪還……に、ランが巻き込まれてから早数日。 発電施設やその他の設備も正常に稼働するようになって、目立った問題は少なくなっていた。

 

そんな中ランはどうしていたかと言うと……

 

 

「ノアちゃん、こっちの書類終わったよ」

 

「お疲れ様です、今確認しますね」

 

「ラン先輩、この書類なんですけど……」

 

「あぁ、これは確かあそこの……」

 

「ラン先輩! 休憩にチョコ食べませんか!?」

 

「コユキちゃんの好きなメーカーのチョコが冷蔵庫に入ってるから、休憩の時に食べようか」

 

 

差し迫った問題事が無くなった為、実にのんびりと通常業務をこなしていた。 何時もの面子で書類を捌き、休憩になったら中身のない雑談で盛り上がる。 実に平和な一幕である。

 

尚その空間にいないといけない会長の姿が全く見当たらないのだが、何時もの事なので誰も何も言わない。

 

 

「そう言えばラン先輩、最近ゲヘナに美味しいお好み焼きの店が出来たってSNSで話題になってましたよ」

 

「それなら知ってる、時間が空いたら行こうかなって思ってた」

 

「あ、それならこの後みんなで行きませんか? 幸い提出期限が迫った書類はありませんし」

 

「行きましょうよラン先輩! 私お好み焼き食べたいです!」

 

「……そっか、ならみんなで行こうか」

 

 

みんなも乗り気なこともあり、ランは二つ返事で噂の店へと向かうことにした。 すっかり愛着の湧いてしまった自慢の車を運転し、目的地であるゲヘナへと向かう。

 

因みにこの車、毎回何かしらに巻き込まれることもあって購入当初から付いている部品は一切ない。 修理に修理を重ねて実に38回、エンジニア部の改良も既に23回も行われている。

 

それでもなお被害が無くならないのは、果たしてランの運の悪さが原因なのかはたまた巻き込まれるランが悪いのか。

 

 

────────────────

 

 

 

「ここがその場所みたいですね……」

 

「不思議ですね、噂になったはずなのに行列が見当たりません」

 

「定休日って訳じゃないんですよね? なら何ででしょう?」

 

 

近場に車を駐車してやってきた店。 表通りには面していない、少し奥まった場所にあるその店には行列などの人影が見当たらなかった。

 

単に空いてる時間帯……であればいいのだが、これまでの経験からして何かあるのではないかとランの中で不安が募っていく。 こういう時の勘はよく当たるのだ、悪い方向に。

 

 

「……準備中や定休日の札は出てないし、とりあえず入って確認してみるしかないと思う」

 

「それもそうですね、私ももうお腹ペコペコですし……」

 

「ふふ、ユウカちゃんは食いしん坊ですね。 では早速お店に……」

 

 

お腹をさするユウカを見てクスクスと笑うノア。 逸る気持ちを隠しつつノアが店の中に入ろうと引き戸に手をかけ今まさに開けようとした瞬間……

 

 

 

────────ドカァァァァァァンッ!!!!!!

 

 

「ミ゛ッ」

 

「のっ……ノアせんぱーい!!???」

 

 

店内で起きた大きな爆発と共に、ノアが後方へと吹き飛んでいった。

 

ノアの安否が気になってランは素早く駆け寄る。 意識はあるのかと抱き起してみると、実に安らかな顔をして鼻血を流しながら気絶していた。 なんて顔して寝てやがるんだ。

 

「え、えっ?? 一体何が起きたんですか? というかお店爆発しちゃいましたよ!!?」

 

「ちょっとは落ち着きなさいコユキ!! ラン先輩!」

 

「大丈夫、気絶しているだけ。 命に別状はない」

 

まぁノアは(運動神経は)貧弱ですけど(身体能力は)頑丈ですから、そこは心配してないです

 

 

サラッと流されるノアの安否。 ノアは泣いた、仲のいいユウカに毛ほども心配されなかったその薄情さに。

 

だがそれも信頼があるからこそのものだと自分の中で結論付けるしかない、ノアは安らかに眠ることにした。

 

 

「────もう、何なのよ!! 私たちちゃんと請け負った依頼はこなしたのに!!」

 

「ふふ、でも見つけた猫を爆発に巻き込んじゃったのは事実だから何も言えないんだけどね~」

 

「そうじゃないでしょ、問題なのは店を爆破しちゃった方」

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……アル様の期待を裏切ってごめんなさい」

 

「何でお店に仕掛けちゃったのよ!」

 

「普通にお好み焼き食べに来ただけなのにね~」

 

 

黒煙燻る店内から出てきた四人組には見覚えがあった。 彼女達はゲヘナの生徒でありよく問題を起こしている『便利屋68』……社長の陸八魔アルに、室長の浅黄ムツキ、課長の鬼方カヨコ、平社員の伊草ハルカ。

 

面識は、ある。 と言うか凄いある、めっちゃある、かなりある。 それも悪い方面で。 何なら今回みたいに爆発に巻き込まれた事がある、それも両手の指で数えきれないくらいには。

 

と、そんなことを考えていたランの視線とカヨコちゃんの視線が合ってしまった。

 

 

「……あっ」

 

「くふふ、どうしたのカヨコちゃん明後日の方向なんか……あっ」

 

「何よ二人して変な方向……を……」

 

………便利屋68

 

カヨコの視線を追っていった他のメンバーが、こちらを睨みつけているランの姿を確認してしまったその瞬間。

 

────────お前らは、存在してはいけない生き物だ。 アル達の耳には、そんな言葉が幻聴として聞こえた。

 

 

 

────────────────

 

 

 

「こ……こっ……」

 

(ころ……殺す……ッ! コイツら今度こそは絶対に許せない……!!!)

 

 

私は激怒した。 必ず、かの悪逆の限りを尽くす便利屋68をしばき倒さなければならないと決意した。 私にはお好み焼きの味が分からない、何故ならまだ食べてすらいないからだ。 何なら店にすら入ってないが?

 

楽しみにしてたのに……もう既にお好み焼きのお腹になっててお腹いっぱい食べる気満々でここまで来たのに……こ、コイツら……ッ!!!! よりにもよってもう少しと言う所で店ごと爆破しやがって……!

 

 

コユキちゃん

 

ヒャイ

 

銃、持ってきて。 その後ノアちゃんを車に

 

ヒャイ……ドッチヲ

 

確実に殺せるほうを

 

ヒャイ

 

ユウカちゃん

 

「何でしょう?」

 

風紀委員会に連絡を、私はこのまま追うから

 

「分かりました、お気をつけて!」

 

 

私の指示で各自行動に移る。 ノアちゃんには申し訳ないが、彼女にはここでこのまま寝ててもらうことにしよう。 流石に背負ったままアイツらを追うわけにはいかないしね。 ノアちゃんの目から涙がこぼれた気がするが、もしかしたら見間違いかもしれない。

 

安心してくれ、必ず食べられなかったお好み焼きの仇は取ってあげるから。

 

私はゆらりと立ち上がり、近くに設置されていた道路標識を手に取る。 そしてそのまま力を込めていき……

 

 

────────メキメキメキィ……バキッ!

 

 

「う、嘘ぉ……?」

 

「地面から抜くんじゃなくて途中から捻じ切る普通?」

 

「と言うか、あんなことが出来るんですねアル様」

 

「いやいやいやいや、出来ないわよ普通!? どんな握力してるのよ!」

 

 

キヴォトスの治安上頑丈に作られているはずのそれを、まるで飴細工かのように半ばから捻じ切る。 ニ、三度振り回してみて取り回しを確認し、一歩ずつアルちゃんたちに近づいて行った。 身の危険を感じたのか、アルちゃんは青い顔をして後退っていく。

 

ふふ、ダメだよアルちゃん。 そんなに怯えなくても良いよ、タダスコシオハナシシタイダケダカラサァ? ニゲンナヨオマエ。

 

 

「ご、ごごごごごめんなさい!! 私たち悪気はなくってぇ……」

 

「そうそう! ちょおっと依頼で嫌なことがあったからむしゃくしゃしてやったって言うか」

 

「火に油を注がないでムツキ、ランさん……争うつもりはないから」

 

「……ん」

 

「え?」

 

「昼ごはん……お好み焼きにしようって……セミナーのみんなと話もして……前から気になってたここにやっと来て……もう少しで食べられた、そのはずなのに……ッ!」

 

「ヒエッ」

 

 

ハルカちゃんが喉から零れたみたいな声を出してる。 でも店に爆弾仕掛けたのハルカちゃんだよね? お前も逃がさないからな覚悟しろよ。

 

「漸く気になってた店に行けると喜んでた私の気持ちが、分かるか? あぁん?」

 

「ひぃ! 口調まで変わってる!?」

 

「ありゃ……これはちょっと、まずいかも?」

 

「返して……私の時間、返して……!」

 

 

それと平穏もな、今日こそ何もない一日を過ごせると思ってた私の気持ちも返してほしい。 結局今日も厄介事に巻き込まれる羽目になるじゃん!!!! クソ!!!! ホント人生ってクソゲー過ぎる!!!! 何で毎回毎回巻き込まれなきゃいけないんだ!!

 

と、そんなことを考えていた私へと急接近する人影が写りこむ。 誰かと思って視線を向けると、それはハルカちゃん。 愛用のショットガンを構え、まるで自爆覚悟の接射を試みているみたいだ。

 

 

「あ、あぁアル様の妨げになるのなら死んでください……ッ!!」

 

「あ、ちょっ……ハルカ! 戻ってきなさい!!」

 

「死んでください!!!!」

 

「嫌です」

 

「へぶっ!!?」

 

 

私は構えるでもなくただ腕を横に振るう。 ブォンと言う空気を裂くような音が響き、標識は寸分違わずハルカちゃんの側頭部へと叩き込まれる。

 

思った以上に鈍い音が響き渡り、ハルカちゃんの体は勢いよく真横へと吹き飛んで……別のテナントビルの外壁を貫通して建物内に入っていってしまった。 しまった、力みすぎた。 あの破壊した部分私が弁償しないといけないかな?

 

 

「ひえっ……」

 

「あはは……相変わらず凄い威力」

 

「ふぅ……社長、ハルカを助けてすぐに逃げるよ。 このままじゃ風紀委員会が来るのも時間の問題だし」

 

「そ、そうね。 私とムツキが抑えるから、カヨコはハルカを!」

 

「分かった」

 

 

今しがた壊した建物内に入っていくカヨコちゃんを何もせず見送り、私はアルちゃんとムツキちゃんを見据える。 まだ私の怒りは収まってないからな、今もなお持ち手の部分はメキメキ音を立てながら変形していってるし。

 

 

「今日が命日にならないことを祈るしかないね、アルちゃん」

 

「そんな縁起でもないこと言わないでよ!? もう! ラン、一旦落ち着いて話し合いをしましょう!?」

 

「話し合いをして、私の食べたかったお好み焼きは戻ってくるの?」

 

「も、戻っては来ないけど……そ、そう! 代わりに美味しいお店を紹介するから!」

 

万年金欠で外食をほとんどしない便利屋68が?

 

「……お、美味しいご飯を作ってあげるから!!」

 

万年金欠でまともな食事をしない便利屋68が?? 舐めてる?

 

「……お」

 

「お?」

 

お金、出してくれたら腕によりをかけて作ってあげるからぁ……!

 

は? 殺すぞ?????

 

 

あっ、つい出ちゃった。 アルちゃん白目剥いちゃってる……ムツキちゃんは、って!!

 

 

「隙あり!!! ほらアルちゃん時間稼ぎは出来たから逃げるよ!!」

 

「あっあっ……待ってよムツキ!!」

 

 

放物線を描いて私の頭上へと降ってくるバッグに、私は思わず後ろへと飛びのく。 直後私が今の今まで立っていた場所を中心に大きな爆発が起きて、周囲が爆炎に包まれてしまう。

 

私を倒そうと言う訳ではなく本命は────視界を奪うこと、か。 でもそんなことでアルちゃんたちを逃がしてあげるわけにはいかない。

 

 

「逃がすか……!」

 

 

私はその場でしゃがみ込み、勢いよく跳躍して街灯の上へと昇る。 まだ少し煙で見辛いけど……見えた!!

 

街灯から街灯へと飛び移るように移動して、今もなお全力疾走で私から逃げているアルちゃんを追いかける。 時折アルちゃんから狙撃が飛んでくるあたり技術はあるのだ。 それが何故アウトロー等と言う方向性に走ってしまったのか……風紀委員会にいれば、確実に部隊長になれるだろうに。

 

 

『────ラン先輩、聞こえますか!?』

 

「ユウカちゃん、どうかした?」

 

『たった今ゲヘナの風紀委員会との連絡が完了しました。 現在ヒナさんを筆頭に部隊を率いて向かっているそうです!』

 

「ヒナちゃんが……分かった。 今の現在位置と逃げてる方向を送るから、向こうに予測できる逃走経路を共有させて」

 

『了解です、ラン先輩もお気をつけて!』

 

 

ユウカちゃんとの通信を終えた私は、静かにガッツポーズをとる。 やったぜ、ヒナちゃんが来たならもうこれは勝ち確でしょ。

 

直ぐにユウカちゃんに位置情報を送り付け、更に速度を上げる。 既に向こうは四人全員が集合しており、こちらをチラチラと確認しつつ逃走を続けている。

 

 

「いい加減、諦めたらどう?」

 

「あ、諦めるわけにいかないでしょ!! 捕まったら酷い目に遭うんだから!」

 

「逃げなかったらそこまで酷くならなかったよ?」

 

「どの道酷いことになるなら逃げきる可能性に賭けるわよ!!」

 

「いい啖呵だね、嫌いじゃないよ」

 

 

啖呵はいい、事実今は逃げることが出来ているのだから。

 

でもいいのかな? もう既に便利屋68を追いかけているのは……私だけじゃ、なくなったんだよ?

 

 

 

「────────そうね、可能性に賭けること自体は嫌いじゃないわ」

 

 

「でも、そう易々と逃がすわけにはいかない」

 

 

「……へ?」

 

 

ほら来た さぁ、天を見上げなよアルちゃん。

 

────そこに、便利屋68にとっての死神が飛んでいるんだから。

 

 

「お待たせ、ラン」

 

「待ってたよ、ヒナちゃん」

 

 

ゲヘナが誇る最高戦力、風紀委員長の空崎ヒナが……

 

 

「ずっと会えなくて寂しかったわ」

 

「……うん?」

 

「ランは私と会えなくて、寂しかった?」

 

「え、それはまぁ……寂しいなとは思ったけど」

 

「そう、そうなのね……ふふ……」

 

えぇ……?

 

 

おかしいな、何か雲行きが怪しくなってきた。 今日はカラッとした空模様のはずなんだけど? 何かここだけ湿ってない?

 

しかもアルちゃんたちを追いかけてるのにわざわざ私の隣を一緒に飛ぶようにして追いかけてるし。 人数増えた利点を有効活用する気は? あ、ない? そうですか。

 

 

「ひ、ヒナちゃん」

 

「何かしら」

 

「便利屋68を、追いかけないと」

 

「今追いかけてるわ、一緒に」

 

「いやあの、それはそうなんだけど」

 

「それにイオリ達にも指示は飛ばしてる。 進行方向上に部隊は展開させてるし、後は包囲して叩くだけよ」

 

「そう、なんだね、うん」

 

「それとも……私と一緒にいるのは、嫌?」

 

 

なぁんでそんな悲しそうな顔するのぉ???? 気まずい、罪悪感で心が痛い!

 

こちとらメンタル豆腐の不幸女ぞ!!? 何かやったって思うだけで胃が痛くなるわ!! その顔はやめろ!!!! 泣くぞ? 私がな。

 

 

「い……」

 

「い?」

 

嫌じゃ……ナイヨ?

 

「そう、嬉しいわラン」

 

 

何だろう、このメンヘラかヤンデレ少女が攻略対象のギャルゲーをやってるような錯覚に見舞われているこれは。 何時からヒナちゃんはこんな子になったんだ? もしかして普段着地雷系ファッションになってないよね? あ、いやそれはそれで似合うとは思うんだけどね? 大事なのはそこじゃなくて今は便利屋68を追いかけている最中で私達は捕まえなくてはならなくてね? そのためには別方向とかから挟み撃ちのようにした方が効率がいいと思うんだよね? それをこうして人数の優位性を捨てているような状態はいけないと私思うんだ? だからこう、もう少し離れて追いかけない? 私アルちゃんに一発入れないと気が済まないしヒナちゃんだって日頃から便利屋68には手を焼いてるわけでしょ? ここは利害の一致だと思うんだ、だから離れてくださいお願いします……

 

長々と心の中で思いを吐き出したけど、こんな顔をしているヒナちゃんに言うなんてとてもじゃないけど私にはできない。 他人を傷つけるのが怖い臆病な私を許しておくれ。

 

 

「……ん」

 

「へ?」

 

「絶対に許さないぞ……陸八魔、アルぅッ!!!」

 

「なんでよぉ!!??」

 

 

うるさい、ただの八つ当たりだよ悪いか!? そもそもアルちゃんが店を爆破しなかったらこんなことにはならなかったんだからアルちゃんがすべての原因と言っても過言じゃない!

 

あ、でもそうしたらヒナちゃんと会うことが出来ないのか。 その点だけは感謝するよアルちゃん、それ以外は絶対に許さないけどな?

 

 

「この……いい加減に、ッ!?」

 

「ちょっ……ラン!?」

 

「えっ、なになに!?」

 

「何かわかんないけど、今がチャンスだよアルちゃん!」

 

 

突如進行方向を変えてアルちゃんを追いかけるのをやめた私を見て、驚いた声を出すヒナちゃん。 アルちゃんたちも何事かと目を見開いていたが、それもすぐに止めて逃走することを優先したらしい。

 

見る見るうちに姿が小さくなっていく便利屋68。 でもそんなことはもう今は関係ない、もっと急を要するであろう出来事を偶然とはいえ見てしまったからだ。

 

 

「間に、合って……ッ!」

 

「きゃっ……」

 

 

信号無視かつスピード違反をしていたトラック、その進行方向上で動けなくなっていたゲヘナの生徒を、間一髪のところで救出する。 お姫様抱っこになってしまって済まない、こんなのにされても嬉しくないだろうに。

 

ポーっと頬を染めてこちらを見つめてくる彼女に、私は安心させるように微笑みかける。

 

 

「……大丈夫? 怪我はない?」

 

あっあっ、はい、だいじょうぶれしゅ……

 

 

陰キャ仲間かな? 同じ匂いを感じるぞ。 とりあえずそっと降ろして……いや降りて? いやしがみ付いてる場合じゃ無いのよ、もう安全なんだから降りていいのよ。 だから降りろって!! 往来のど真ん中で女の子をお姫様抱っこしてるとかどんな羞恥プレイなんだよ!

 

 

「ランッ!! だいじょ……ッ!!!!」

 

 

そして違反してたトラックを大破させてきたヒナちゃんが合流する。 いやそんな物理で制裁するとは思わなんだ……それとその顔はやめて、何か『好きだった女が他の男と抱き合ってる現場を目撃してしまった』みたいな妙に具体的なイメージが湧いてくるその顔はやめてね。 そもそういう関係性ではないでしょ? 仲は良いと私が一方的に思ってはいるけどね?

 

 

「ラン、その生徒(めぎつね)は……」

 

「変なルビ振ってない? 彼女はトラックに轢かれそうになってた……ヒナちゃんもさっき見てたよね」

 

「そんな女に興味なんてないわ」

 

「話を聞いてね? 危ないところを助けたって……」

 

────言い訳しないでッ!! そ、そう言って誤魔化すんでしょ……本当の事を言ってよ!!

 

話聞けよ

 

 

すっごいめんどくせぇなこの女????? もしかしなくても5徹はしてるな???

 

 

「言い訳じゃないよ、本当に今助けただけの子で……そうだよね?」

 

わ、私の大事な人に何か用ですかッ!!

 

「ごめん頼むからこれ以上話をややこしくしないで????」

 

 

何でお前まで乗るんだよ。 乗るな、戻れ。 さっさとどっかへ行かせてアルちゃんを追いかけなければ……と、そう思っていた時だ。 急に端末が鳴ったので出ようとすると、私のじゃなくてヒナちゃんのだったらしい。

 

 

「……もしもしイオリ、どうかした?」

 

『ひ、ヒナ委員長……』

 

「便利屋は捕まえたのかしら?」

 

『そ、それが……その、……た』

 

「ごめんなさい、よく聞こえなかったわ。 もう一度言ってちょうだい」

 

『逃げられましたッ! 美食研究会も同じ進行方向上で爆破をして包囲の網を抜けられたんだ!!』

 

「…………そう」

 

 

何でだろう、ヒナちゃんの背後でオレンジ色の髪をした男の人が『終わりだ』って言ってるように見える。 ヒナちゃんも似たような顔になってる、それ今まさに睡魔の限界が来て寝落ちしそうになってるとかじゃないよね?

 

ヒナちゃんはそのままギギギ……と油の注されていない部品みたいな挙動でこちらに振り返る。 あー、その顔は知ってる、わたししってるよ。 その顔はマジで泣く5秒前の顔だね。 あ、この後の出来事が容易に想像できたからキミは帰ってね。 だからしがみつくなって、吐くぞ?

 

 

ら、ラン……

 

「ヒナちゃん」

 

もうやだぁ……仕事が終わらないぃ……

 

「おぉうよしよし」

 

 

そのまま私に倒れこむようにして抱き着いてくるヒナちゃん。 ごめんな、私も今道路のど真ん中でギャン泣きしたい気分だよ。

 

 

「ヒナちゃん、寝よう。 何も言わずまずは寝ることを優先しよう、ね?」

 

「でも、仕事が……」

 

「そんな精神状態じゃ出来るものも出来ないよ。 寝たら私も手伝うから」

 

「でもランはミレニアムの生徒で……」

 

「何も手伝うのなんて今回が初めてじゃないでしょ? マコトちゃんが何か言ったら私が謝るから」

 

うぅ……ありがとう……しゅき…

 

わたしもいっぱいしゅき……

 

 

ズビズビ鼻を鳴らして抱き着き続けるヒナちゃん。 かわいいね♡ でも鼻水を私の制服に擦り付けるのだけはやめてほしいかな。 あと深呼吸もしないでね。

 

 

「良い匂いがする」

 

感想言うのやめーや

 

 

頼むから感想を言うのもやめてね?

 

 

 

────────────────

 

 

 

「────と、言うことがあったので私がヒナちゃんの代わりに業務を行います」

 

 

あれから大体1時間後、ゲヘナの万魔殿に私の姿はあった。 とりあえず手土産として持ってきたケーキを渡し、先程まであった出来事を説明し業務の手伝いを申し出る。

 

 

「キキキッ……ああ、別に構わんぞ。 好きにすればいい」

 

「ありがとうございます」

 

「お礼などいい、お前はイブキとよく遊んでくれるからな」

 

 

気分がよさそうに椅子にふんぞり返っているマコトちゃん。 毎回私と会うとき上機嫌だけど……何か理由があるのだろうか? 私には心当たり無いんだけどなぁ。

 

 

「早速向かうといい、風紀委員会には既に通達してるからな」

 

「ええ、では失礼しますね」

 

「ラン先輩、また今度遊ぼうねー!」

 

 

此方を見て手を振っていたイブキちゃんに手を振り返し部屋を後にする。 ヒナちゃんがいない分私が頑張らないとな……ただでさえ徹夜しすぎだから寝させたままだし。

 

 

「……マコト先輩、ランさんと会うとき毎回機嫌がいいですけど何か理由があるんですか?」

 

「イロハには分からんか……いや、無理もない。 私とミレニアムの生徒くらいだろうからな。 アレに気付いているのは」

 

「何の話です?」

 

「天海ラン、アイツの未来予知に等しい先見の明についてだ」

 

「? はぁ」

 

「ランが向かう先では必ずと言っていいほど何かが起こる。 巻き込まれていると一見勘違いしてしまうだろうが……それは違う」

 

────予測しているんだよ。 キヴォトスで起こる問題を、高い確率でな

 

「……いや、単に巻き込まれているだけでしょう?」

 

「チナツがシャーレの先生と共にシャーレの奪還をした時を覚えているか?」

 

「ええ、それはまぁ。 つい最近の話ですし」

 

「いざ奪還しに行こうと外に出た時、そこにランが待機していたのもただ巻き込まれただけだと?」

 

「…………それは」

 

「侮れない奴だ……でも同時に、相互関係になれば心強い存在でもある。 ならば下手に刺激せずに良好な関係性を築く事に注力するべきだと思わないか?」

 

「そう言われれば、まあ確かにと言うしかないですけどね」

 

 

────いや、本当に巻き込まれてるだけだから。 ランがいたらそう言うに違いないが、残念ながら本人がいない中勘違いは加速していってしまった。

 

 

~~~~

 

 

「と、言う訳で私がヒナちゃんの代わりをします」

 

「よ、よろしくお願いします……」

 

 

またまた場所が変わって風紀委員会。 眼の下に隈を作っているアコちゃんにまだまだ元気そうなイオリちゃんとチナツちゃん。 主要な人物はそろっているからある程度捌くことはできるでしょ。

 

 

「あの……」

 

「どうしたの?」

 

「毎度の事ですが、ありがとうございます。 ヒナ委員長、私達が何を言っても全然休んでくれないので」

 

「典型的な仕事人間だね」

 

「本当に……最近は『ランちゃんの姿がみえりゅ……あっ、手を振ってくれた』と虚空を見つめて笑っているんです」

 

「なんか変な薬やってないよね????」

 

「やってはいませんが、以前ランさんが渡していたハンカチは時折吸っていましたね」

 

「ちゃんと洗濯させてね?」

 

 

社畜かな? 今の段階でそんな社畜みたいなことしてたら人生楽しくないと思うけど。

 

学生の時くらいは青春を謳歌しようよ、巻き込まれ続けて謳歌できてないのは私なんだけども。

 

 

「とりあえず、急ぎのものだけ先に手を付けるから」

 

「あ、はい。 それならランさんが来る前にまとめておきました」

 

「手際がいいね、流石行政官」

 

「恐縮です……」

 

 

会話にいつものキレがない。 これは単に寝不足か……はたまたヒナちゃんがいないからか。 ヒナちゃんのこと大好きだもんねアコちゃん。

 

 

「イオリちゃんとチナツちゃんは修正箇所がないかチェックを」

 

「わ、分かった」

 

「了解です」

 

「アコちゃんは申し訳ないけど私と一緒に書類を捌いてね」

 

「勿論です、ランさんだけに任せっきりにしませんよ」

 

 

結局セミナーだけじゃなく風紀委員会でも書類作業に勤しむこととなり、早く終わった意味がほとんどなくなってしまった。 多分私はまたヒマリちゃんに泣きつくだろう。 いや泣きつく。

 

そう言えばノアちゃんは無事だろうか、コユキちゃんに忘れ去られて置き去りにされていないかな? 流石にコユキちゃんでもそんなことはしないか。

 

 

……書類を捌く手はとても軽いけど、なーんか忘れてるような気がするんだよなぁ。 そんなことを考えていた私の腹が、唐突にギュルルと鳴った。 何ならその瞬間空気が凍った。 殺せよ、私を。

 

そうだ、結局ご飯食べ損ねてるじゃん。 手土産はちゃんと買ってる辺り流石としか言いようがないけど自分のご飯の事を完全に忘れてるとかどういうことなの……

 

 

…………次会ったら覚えてろよ、便利屋68

 

 

ボソリと呟いたはずなのにアコちゃんたちがこっちが驚くくらい肩をびくりとさせていた。 ごめんね? 怖がらせるつもりはなかったんだって。

 

 

「……きゅ、給食部のフウカさんに何か作ってもらいますね」

 

「あ、わ、私が説明しに行くぞ」

 

「いえ、イオリはそのまま作業を続けていてください私が」

 

「御二方はチェックを続けてください、私が向かいますので」

 

 

なぁ、私泣いていいか? そんな怖がらなくてもいいじゃん。

 




以前はオリ生徒モノを書けない書けないって言ってずっと書かなかったんですけど、いざ書いてみると思いのほか筆が進んで驚いてる。 私今謎の全能感に襲われてる

この作品書くって決めた時に「やっぱキャラのイメージを固めるのは大事よな……せや、なんか作成ツール的なので大まかなイメージ図作ってみるか」って思ってキャラメーカーでそれっぽいのを作ったんですよ

そりゃ女が寄るよなって思ったね、女が惚れるタイプの女だコイツ

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