セミナー副会長はとにかく巻き込まれたくない   作:ピンク髪大好きニキ

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キリのいい所で切りたいと思ってる時、大体「あぁ、思ったより短くなった」って時と「うおっ思ったより長くなった」の時が多くて丁度いい文字数の時がほとんどない

こう言う所に管理の出来なさが露呈している気がしてまだまだだな……俺、って心情になってくる


34話「深夜の攻防と副顧問」

 

 

 

「深夜にこんなことをしているなんて、とっても悪いことをしているみたいでワクワクしませんか?」

 

「その気持ちに関しては分からなくもないけど、声はもう少し控えめにしてね?」

 

 

試験勉強や休日をそれなりに謳歌した日の翌日、私達の姿は深夜のトリニティ自治区内にあった。 と言うのもハナコちゃんが「合宿の醍醐味と言えば、こっそり抜け出して遊ぶことではありませんか?」等と言ったから。 その意見に関しては賛同するけど、一応合宿中なんだけどなぁ……でも先生も乗り気だったこともあり、私達は深夜徘徊をすることになった。 まあ遠出するわけでもないし直ぐに言って帰るくらいならば問題はないでしょ。

 

 

「皆乗り気だったから出かけてるけど、これハスミちゃん辺りにバレたら面白いことになりそうだね」

 

「怖いこと言わないで下さいよ……怒ると怖いんですよ」

 

「あら、そんなに怖いんですか?」

 

「前にゲヘナとの一件で……」

 

「あー、アレか」

 

 

その話なら知っている。 何なら本人から聞いたくらいだ。 確かゲヘナで会議した時にマコトちゃんにデカ女って言われて「今……デカ女って言ったか……?」ってなったハスミちゃんが暴虐の限りを尽くして会議自体を台無しにしたはずだ。 それからダイエットをし始めたとは聞いているけど……正直ダイエット出来るとは微塵も思ってない。 だって気を抜いたらすぐにパフェとか食べるんだもん。

 

 

「……そうなんですね、そんなことが」

 

「まあ、大丈夫じゃない? ハスミちゃんはダイエットをするって堂々と宣言しておきながら陰でスイーツを頬張る程度には決心もクソもないから」

 

「い、言い方……」

 

「でも食べ物の話をしてたら私達が何か食べたくなって来ますね」

 

「この辺り、確か限定パフェのお店がありませんでしたか? そこで食べると言うのも」

 

「この深夜に、甘いもの……体重管理が」

 

「まだ気にするような体重じゃないでしょ? 私も食べたくなったし行ってみる?」

 

 

深夜のカロリー摂取に恐怖を感じているヒフミちゃん達だったが、小腹が空いたのもまた事実。 欲望には抗えなかったみたいで、みんなで件のお店に向かうことにした。

 

深夜にもかかわらず店自体はやっており、気にすることなく店内へと入る。 受付を済ませて店員にパフェの有無を確認してみたのだけど……

 

 

『申し訳ございません、限定パフェの方は先程別のお客様が3つ注文したのが最後でして……』

 

「あらら、なら仕方ないか」

 

”こんな深夜でも注文する人がいるんだね、それも3つも”

 

「3つも!? 食べちゃうんですね」

 

「ここは温泉郷ではないんだよ」

 

「ま、無いのは仕方ないから他の物を注文しようか。 私モンブランで」

 

”あ、私はチーズケーキで”

 

 

席に座って思い思いの注文をし始める。 少しだけ楽しみだったパフェが食べられないのは悲しいが、ここまで来たのだから何も食べないで帰ると言うのは癪だ。 食べてもあんまり太らないし、ここは先生の奢りだと聞いたのでこれでもかってくらい食べて先生の財布を死滅させることにシフトしようかな?

 

しかし何だねアレは、パフェの容器で顔が見えないってどれだけ大きいのを食べてるんだ。 こんな夜中の、しかも高カロリーであろうパフェを3つも……控えめに言って猛者だな? でもあの姿、どこからどう見ても……

 

 

「………あっ」

 

 

今こっちをチラッと見てすぐに目を逸らしたな? 私達の姿を見つけて何でここにいるのかと言いたくなって、すぐさま今の自分の状況を理解したのだろう。 ダイエットすると言っておいてダイエットもクソもないカロリー摂取をしているところを見られたら何を言われるか分からないと瞬時に判断して思い止まったのだろう。

 

その判断は的確だね、賞賛に値するよ。 私に見つかったこと以外はね……それと

 

 

「あらぁ???? そこにいるのはかの有名な正義実現委員会の羽川ハスミさんではありませんかぁ????」

 

 

「これは弄れば弄るほど面白い反応をするおもちゃを見つけたぞ」ってテンションのハナコちゃんに見つからなければ、だね。 見なよ、あの顔。 弄る気満々の満面の笑みでハスミちゃんを見てるぞ。

 

他のみんなも驚いてハスミちゃんを見ているが、その中でも特に酷い顔をしているのは言うまでもなくコハルちゃんである。 それはもう「ハスミ先輩……そんな……」と信じられない物を見たような顔で見ている。 信じてたのに裏切られた的なリアクションをしてるけど、別にそこまでのリアクションをする必要はなくないかな?

 

 

「こ、これは、その」

 

「分かりますよ、気の迷いと言うものですよね? あれだけ周りのみんなにダイエットすると言っておきながらもスイーツを食べたいと言う己の欲望に抗えずについ魔がさして食べに来てしまったのですよね? 自覚があるからこそこんな深夜に! 誰にも見られないように! 計画的な行動に違いありませんね、悪いことしているという自覚があるからこその思考には違いありませんが詰めが甘かったと言わざるを得ませんね!!!!」

 

「う、うぅ……」

 

「ここぞとばかりに言葉攻めするじゃん、そんなに恨みでもあったの?」

 

「いえ、そんなことはありませんよ? 私はただこの現場から見えた事を推測して話しているだけです。 ええ、別にこの機会に規律に厳しいハスミさんに自分を律すると言うのはどういうものなのか懇切丁寧に説明をいただきたいなと思っているだけですよ」

 

「うーんこの」

 

「わ、私の話は棚に上げますが……補習授業部の皆さんは合宿中の外出は禁止されているのでは?」

 

「……あ、やっぱり禁止なんだ」

 

「その反応……いえ、そうですね。 ここはお互い、見なかったことにするのが良いのでしょうね」

 

「ええ、そうですね。 私もあの、あの!! ハスミさんが深夜にクソデカパフェを3つもドカ食いしていたなんて正義実現委員会の皆さんに知られたらとんでもないことになるのは火を見るより明らかなので私も細心の注意を払って黙っていることにしましょう」

 

「う、うぅ……」

 

「いじめないであげてよ、ハスミちゃんだって大きくなりたいんでしょ」

 

「かふっ……」

 

”ランの一言の方がとどめ刺してないかな?”

 

 

ソンナコトナイヨ、ワタシワルイコトシテナイ。

 

まあそこは兎も角、注文した物も届いたので私達も食べることにしよう。 深夜のスイーツは罪の味だね、これが全てカロリーとして体に入ると思うと怖くて怖くて仕方ないなぁ。 ねぇ? ハスミちゃん?

 

 

「ランさん……それ以上いじめないで下さい」

 

「別にそんなつもりはないんだけど」

 

「……コホン。 それでコハル、勉強は順調ですか?」

 

(露骨な話題逸らしだね)

 

(そうですね)

 

「じゅ、順調です! 最近はランさんのおかげで成績も上がってて……」

 

「そうでしたか……ふふ、それは何よりです。 以前ランさんからも伺いましたが、その調子で頑張るのですよ。 背中を任せられるような頼もしい存在になることを期待していますよ」

 

「は、はいっ! ハスミ先輩の期待を裏切らないように頑張ります!」

 

「その意気です。 ですが無理だけはいけませんよ? あくまでも自分の出来る範囲で、無理のない範囲で頑張るのです」

 

 

ハスミちゃんとコハルちゃんは良い感じの雰囲気を出してスイーツを食べている。 片方はもうなんか色々とデカくてサイズ感に戸惑うけど。

 

とか考えてたら、何やら電話のかかる音が聞こえて来た。 私かと思って端末を取り出すけど、どうやら私ではなかったらしい。 ハスミちゃんが端末を取り出すと、受話器の向こうから聞きなれた声が聞こえて来た。

 

 

『ハスミ先輩、ちょっと問題が発生しちゃって……今大丈夫っすか?』

 

「……ええ、問題ありません。 どうしましたか?」

 

『今来た話によると、どうやらゲヘナらしい生徒が学園郊外に侵入。 更に無差別で銃撃して設備を破壊している、と』

 

「……何ですって?」

 

 

イチカちゃんの話に、ハスミちゃんの表情が見る見るうちに変わっていく。 内容的にもただ事ではないようで、私達の警戒心も一気に上がっていく。 一体誰が……

 

 

「相手は風紀委員会ですか、それとも万魔殿ですか!? いや誰にせよこのタイミングでそんな騒動を起こすと言うことはきっとエデン条約を妨害しようと……!」

 

『いや、落ち着いて聞いてほしいっす。 数は4人、襲撃しているのはアクアリウムみたいっすね』

 

「4人? それにアクアリウム……」

 

『何か展示していたゴールドマグロを強奪して逃走しているみたいで』

 

「あっ」

 

 

その話に、私は思わず声を出してしまう。 何か心当たりがある、それも滅茶苦茶。 そう言う事をしそうな4人組ってなると候補が一つしか無い。

 

 

「ランさん、何か心当たりが?」

 

『え、ラン先輩がいるんすか? こんな深夜に一緒にいるって珍しいっすね』

 

「ある、と言うか候補が一つしか無い」

 

『あ、こっちにも追加情報が来たっすね。 その4人組は……』

 

『「────────美食研究会」』

 

 

そう、あの4人以外でそんなことをするとは思えない。 あいつらなら美食の為なら爆破やテロ行為だって何の躊躇いもなくやるからな、アレのせいで何度巻き込まれた事やら……ぐぎぎ。

 

でも多分ハルナちゃんの事だからフウカちゃんを拉致してる気がする。 美食研究会は問答無用で〆てもいいけど、フウカちゃんだけは助けてあげないと可哀想だろう。

 

 

「そ、その。 私今は私用で外出しておりまして……」

 

『あ、もしかして深夜の夜食でも食べてましたか? でもハスミ先輩じゃないとツルギ先輩が暴れだしそうで……』

 

「う、うぅ……」

 

「そのセリフ今日だけで何度も聞いたよ。 無駄な抵抗は止めて出撃したほうがいいと思うよ?」

 

「ですがまだ残って」

 

『あぁ、ツルギ先輩そっちは壁で……あー、ハスミ先輩。 とりあえず私達も出ますね』

 

「あ、切れた」

 

「…………」

 

 

尚も言い訳をしてパフェを食べようとしていたみたいだが、そんなハスミちゃんの願いも虚しく電話は切れてしまった。 ここで動かなければハスミちゃんの深夜の私用は何だったのかと怪しまれるだろうし、正義実現委員会としての面子的にもよろしくない。

 

暫く呆然と立ち尽くしていたハスミちゃんだったが……やがて覚悟を決めたかのように表情を引き締め、私達の方に振り返る。

 

 

「……皆さん、突然ではありますが力を貸していただけないでしょうか?」

 

「それは、今の電話の件で?」

 

「ええ、そうです。 ……ご存じだとは思いますが、今はエデン条約を目前に控えている関係上正義実現委員会がゲヘナと衝突すると言うのはあまりよろしくありません」

 

「だけど、補習授業部とシャーレが介入して事件を解決すればその限りではない。 そう言いたいのかな?」

 

「話が早くて助かります。 お願いできますでしょうか?」

 

「と、言う事らしいですが。 どうしますか?」

 

”勿論、困っているなら手伝わないとね”

 

「了解です。 やるだけやりましょうか」

 

 

私と先生はお互いを見つめながら同時に頷く。 ヒフミちゃんは「えぇ!? 今からですかぁ!?」みたいな顔をしているけど、アズサちゃんはやる気満々らしい。 ハナコちゃんも特に問題はないようだから、正義実現委員会……いやハスミちゃんの為にも一肌脱ぐことにしようか。

 

 

「……まさか、こうまで早いとは思いませんでしたが」

 

「? ……あ、前の話か」

 

「そうですね。 コハル、コハルはコハルなりに、私の事を手助けしてください。 ……背中は任せました」

 

「ッ!!! はいっ!」

 

「先生の指揮下で作戦をするのは初めてだけど、存分に使ってほしい」

 

「あら……♡ それでは私も真面目にやりましょうか」

 

 

皆の気合も十分と言う事で、イチカちゃんに伝えられていた指定場所へと急いで向かうことにした。 正直ゴールドマグロに関してはどうなろうが構わないと思っているけど、私達が動くことによってハスミちゃんの負担が減るのであれば恩を売れるわけなので……口には出さないがいい機会だとでも思っておこう。

 

私個人としても美食研究会にはお灸を据えたいからね、覚悟しろよお前ら。

 

 

 

~~~~~

 

 

 

「もー!! 早く帰ってゴールドマグロを食べたいのに!!」

 

「存外早い到着ですわね……フウカさん、もう少しの辛抱ですからね」

 

「むぐぐっ!! もがあっ!!!」(もう少しも何も、私何もしてないから!!)

 

「ふふ、分かっていますわ。 必ずやこのゴールドマグロを……あら?」

 

 

ハルナはそこで言葉を区切る。 その様子にフウカは何事かと静かにするが、様子がおかしくなったのはハルナだけではなかった。 イズミやジュンコ、アカリまでもが静かになり周囲を見渡して何かを確認しているようであった。

 

しかし荷台部分に縄でぐるぐる巻きにされた上で横たわっているフウカには何も見ることが出来ない。 見えないからこそ美食研究会の様子の変化に不安感が増していく。

 

 

「これは……囲まれたようですね」

 

「えぇ!? 大丈夫なの!?」

 

「うーん……このまま固まって行動しても一網打尽、と言った所でしょうか★ どうします?」

 

「折角食べようと思ってたゴールドマグロもあんなミンチに……うぅ」

 

「ふむ……ここは大胆に行きましょうか」

 

「大胆って?」

 

「バラバラに逃げて、各自指定ポイントで合流……と言った所でしょうか」

 

 

そんな美食研究会の会話を、フウカは荷台の上で聞くことしか出来ない。 と言うかこの車だって美食研究会ではなく給食部のものであり断じてハルナ達が乗り回して良いものではないのだ、いやもっと根本から突っ込むとなぜ自分はこんな場所で縛られながら放置されているのか? これ絶対共犯者だと思われるのでは?? フウカは静かに涙を流していた。

 

しかしフウカには何をすることも出来ない、縛られ口もふさがれた彼女には弁解も抵抗も出来るはずが無いのだ。 せめて捕まった後トリニティの生徒に話が通じてくれれば……そう願わざるを得なかった。

 

 

「では私は向こうから。 皆さん後程お会いしましょう」

 

「絶対逃げ切ってやるんだから!! まだゴールドマグロの事諦めたわけじゃないんだからね!」

 

「その件のマグロはミンチですが……まあ、ミンチはミンチで美味しく頂けますよね★」

 

「えっ!? ちょ、ちょっと……置いて行かないでよ~!!!!」

 

 

(────────あぁ、終わった……)

 

 

美食研究会の気配が次第に遠ざかっていくのを感じながら、フウカはまた別の気配が近づいてくるのを察知する。 きっとトリニティの正義実現委員会であろう彼女達に、話が通じてくれればいいのだがと切に願いつつ抵抗するのをやめて、ただ静かに目を閉じてなるようになれと……

 

 

(……ん? 何だろうこの音?)

 

 

静かにしていたからこそだろうか? フウカの耳にその音が聞こえたのは。 まるで高速で空気を切るようなその音は、徐々に此方へと近づいているようで……その聞きなれない音に、今しがた閉じていた目を再び開けて音の方向へと視線を向けた。

 

 

「────────ぁ、────────!」

 

 

『それ』は、最初は小さな光点のようであった。 豆粒のように小さな光点であったが、それが徐々に近づいてくるのを荷台の上から見つめていた。

 

 

「逃げ─────ぁ、美──────ぃ!」

 

 

『それ』はどうやらミサイルの類ではなく人のようであった。 周囲に響き渡る声が、それの怒りの大きさをよく表している。 声が響くたびに、ビルの窓ガラスがビリビリと揺れていく。 どのような速度と声量ならあのようになるのかとフウカは困惑を通り越して冷静になってしまっている。

 

 

「────────逃げるなぁ!!! 美食研究会ぃ!!!」

 

 

『それ』は、フウカも良く知っている人物であった。 フウカの視界に映ったかと思えば一瞬で消え────────視界外で大きな衝突音が鳴り響く。 一体どうなってしまったのかと思えば……ザリザリと何かを引きずるような音と共に、何者かがフウカへと近づいてくるようであった。

 

 

「……やっぱりフウカちゃんも一緒だったか。 怪我はない? 大丈夫?」

 

「むぐぐう!! んー!!(ら、ランさんー!!)」

 

 

やがてフウカの視界に、ボロボロになったハルナを引きずったランの姿が写った。 勝手に巻き込んだハルナが当然の末路になっている様を見て心が軽くなるのを感じつつ、助けに来てくれたランの姿に思わず涙が零れてしまった。

 

しかしその涙は全て安堵から来る涙……と言う訳ではない。 ハルナのであろう返り血を顔に付けたまま満面の笑みで近寄ってくるランは控えめに言って魔王の風格である。 これが自分が対象じゃなくて本当に良かった、フウカはそう思うも口に出すことは決してしないようにと思った。

 

 

「フウカちゃんは縄を解いたらハスミちゃんの指示に従ってね。 終わったらすぐにゲヘナに送ってもらうように頼むから」

 

「うん……本当に酷い目に遭った」

 

「今回は災難と言うかなんというか……ハスミちゃん、彼女は被害者だから」

 

「……言われなくても、いくらゲヘナの生徒だからと言って無抵抗の生徒にまで手を出すような野蛮な真似は致しませんよ」

 

「知ってるよ、でも一応口に出さないといけないってのがあるの。 人間伝えたいことは口に出さないと伝わるわけないんだから」

 

 

ハスミとランはそんな会話をしつつ、流れるような動きでフウカを連れていく。 やがて補習授業部と先生がいる場所に辿り着いた時には、既にランは他の美食研究会を捕縛するために飛び出して行ってしまっていた。

 

「この機会にお灸を据えないとね。 いやお灸じゃなくて杭か」等と物騒な言葉を残しながら。

 

 

 

────────────────

 

 

 

「……ランさん。 この度は死体……いえ、ゲヘナの生徒の引き渡しにご協力いただき感謝します」

 

「セナちゃんもお疲れ様。 こんな夜分遅くにごめんね?」

 

「いえ、それが業務ですから」

 

「うーん相変わらずの仕事人間」

 

 

美食研究会の……イズミちゃんを除いた三人を確保(粛清)した後、私はゲヘナとトリニティを繋ぐ外郭付近に存在する橋の真ん中で風紀委員会を待っていた。 やって来たのは救急医学部のセナちゃんに、遠くにはヒナちゃんの姿もうかがえる。

 

遠目にしか見えないけれど、ヒナちゃんの顔色はそこまで悪いようには見えず一先ずは徹夜三昧の日々を過ごしているようではなくて良かっ「ラン、そんな熱い視線を向けてくると私も我慢出来なくなるわ」いや近い近い近い。

 

 

「先生も久しぶり。 このタイミングで先生もいるのは予想してなかったけど……」

 

「ま、美食研究会の捕縛に出向くことになったからね」

 

”そうだね。 それにしても久しぶりだ”

 

「そうね……あぁ、それと。 今ここにいるのは風紀委員会ではなく救急医学部と言う事にして頂戴。 公的にここに風紀委員会がいるとなると色々と面倒なの」

 

「エデン条約の絡みで、双方がピリピリしてるからって事かな」

 

「そう言う事。 私の事はただの付き添い程度に思っておいてほしい」

 

”だけど、それだとどうして救急医学部……?”

 

「政治的観点だとゲヘナでも関りが薄い部活、だから?」

 

「話が早いわね、つまりはそう言う事」

 

”成る程、理解したよ”

 

 

セナちゃんが次々に救急車に死体、ではなく美食研究会を突っ込んでいる中私達は談笑をしていた。 最早作業とでもいうように突っ込んでいるセナちゃんは、さながら魚市場の業者のようである。 ジュンコちゃんがバタバタ動いている様が活きのいい魚のようだね。

 

何やらハルナちゃんがセナちゃんに話しかけて……あ、バールで側頭部を殴りつけられてる。 活き締めだね、鮮度のいいまま運ばないと価格に響くからね。

 

 

「…………まあ、今のは見なかったことにして」

 

「それでいいんだ……」

 

「良いのよ、事あるごとに迷惑をかけられる風紀委員会の身にもなってほしいわ」

 

”あはは……”

 

「それで一つ聞きたいのだけれど、先生たちはトリニティで何をしているのかしら?」

 

「ヒナちゃんの事だから情報は知ってると思うんだけど」

 

「ええ、その通りよ。 でも腑に落ちないわ、シャーレは中立的立場のはず……ランは今に始まった事じゃないしマコトも『まあランなら……うん』とか納得してたし」

 

「待った、マコトちゃんまでそんな認識なの?」

 

「貴女は胸に手を当てて自分の行いを振り返った方がいいわ」

 

 

ジト目でヒナちゃんにそんなことを言われたので素直に胸に手を当てて思い返す。 私がやった事と言えば……風紀委員会の業務を手伝って、正義実現委員会の巡回を手伝って、アビドスの借金返済に奔走して、オカルト研究会で降霊術をして、忍術研究部で何かグルグル回る弾を作り出して、連邦生徒会で業務の手伝いをして……って、思った以上に他校でやりたい放題してるな? 何も言えなかったわ。

 

 

「なんかすごい色んな所で頑張ってる、何で?」

 

「私が聞きたいわ、貴女は私の事だけ見てればいいのよ」

 

「うおっ急にジメジメして来たな……」

 

「……先生の事だから別に他意はないのだろうけど、今の話は忘れて頂戴」

 

”分かった。 でもこちらからも一つ聞いていいかな?”

 

「……何かしら?」

 

”うん、今の状況と……エデン条約について、ヒナの意見を聞きたいなと思って”

 

 

先生の言葉に、私は視線だけを先生に向ける。 すぐさま視線で制され、何かしらの考えがあるのだろうと余計な口を挟むことはせずに二人の話を黙って聞くことにした。

 

途中突っ込みたくなる回想があった気もするが、大まかな話は伝え終えたのだろう。 ヒナちゃんは難しい顔をしながらも、自分なりの意見をまとめているようだった。

 

 

「……成る程、そう言う事ね」

 

「結論から言えば、先生の言った見方も興味深いものではあると思うわ。 でも少なくとも、私の視点からだとエデン条約はちゃんと平和条約だと思ってる」

 

”そっか、ヒナから見るとそうなんだね”

 

「そうね、それにエデン条約機構……武力組織と捉えたとしても、その力をナギサ単身が制御できるとは思えない。 マコトなんて以ての外だし」

 

「辛辣だね」

 

「事実でしょ? それに権限に関しては他のティーパーティーや万魔殿にも分割されるのだから……全員の意見が一致でもしない限りあり得ない。 マコトが協力的とか明日は槍の雨よ」

 

”いや本当に辛辣だね”

 

「事実だから仕方ないのよ」

 

 

先生までもが呆れた目になってしまっているが、事実だから仕方ない。 絶対マコトちゃんならトリニティを焼き払えとか冗談半分で言ってもおかしくないのだ。

 

 

「となると、もしかしてゲヘナ側でエデン条約を推進したのってヒナちゃん?」

 

「そうよ。 だってもし締結されれば私が働かなくてもいいでしょ? そろそろ引退して専業主婦になるのも悪くないかなと思って」

 

「さも当然のように奥さんになるみたいなこと言わないでね」

 

「味噌汁の味は任せて頂戴」

 

「それは楽しみだけど、そうじゃないから」

 

「……あの、そろそろ出発したいのですが。 いい加減殴り続けて飽きてきました」

 

「ええ、今行くわ」

 

 

セナちゃんのバイオレンスな発言をスルーして、ヒナちゃんは車へと向かって行く。 そのまま乗り込むかと思いきや……視線だけをこちらに向けて、口を開いた。

 

 

「一つ聞いておきたいのだけれど」

 

”何かな?”

 

「さっき話に出た補習授業部、アレは先生が守るのよね? それにランも」

 

”当然”

 

「当たり前だよ」

 

「……そう、分かった」

 

 

何やら意味深な言葉を残して、今度こそヒナちゃんは去って行った。

 

ヒナちゃんが行った後も、しばらく私達はその場に立ち尽くしていたのだが……

 

 

”……帰ろうか、ヒフミたちも待ってるだろうし”

 

「そうですね、戻りましょう」

 

 

まるで何事もなかったかのように、二人してその場を後にする。 ヒナちゃんの視点から見た話も聞いて、先生の中でもある程度考えが纏まっているのかもしれない。 或いは、何かしらの情報を既に得ているのか。 どうなのかは私にも分からない事だけど、まだ問題が残っていることだけは確か。

 

全く、楽しい深夜徘徊のはずがとんだ厄介事に発展してしまったなぁ。

 




前回の感想でランの神秘に関しての言及しましたが、安心して下さい

ちゃんとランには望まない形で大きな力を授けます。 やったね、これで名実ともにキヴォトス最強を名乗れるよ!

その過程で犠牲が生まれてしまったら、まあしゃーない。 大いなる力には何とやらだよ

後感想やら評価やらお気に入りやらお待ちしてます

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