セミナー副会長はとにかく巻き込まれたくない   作:ピンク髪大好きニキ

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すみません、今回めっちゃギリギリで書き終えたんで多機能フォーム使ってないです

明日の更新はないので、時間を見つけて修正すると思うので把握してもらえるとありがたいです


36話「不穏な気配と副顧問」

 

 

 

「ご無沙汰しております。 あれからお変わりはありませんでしょうか?」

 

”うん、何も問題はないよ。 今日は何か用事でもあったのかな?”

 

 

二次試験まで残り一日と差し迫っているトリニティにて、先生はナギサに呼び出されテラスへと足を運んでいた。 本来ならばこの場にランもいたはずなのであったが……

 

 

「残念です、ランさんが来られないとは」

 

”ランから伝言だよ。 『人狼ゲームに興味はない』だって”

 

「……そうですか、嫌われてしまったようで」

 

”あと『テメェとの仲もこれまでだ』って”

 

「冗談ですよね? 冗談だと言ってください」

 

”……普段あんまり表情を崩して笑わない子が満面の笑みをするとね、獲物を前にした捕食者みたいな感じになるんだなって実感したよ”

 

「意味深な言い方をしないでもっと具体的に言ってくださいませんか?」

 

 

直前で断りを入れた為に不在となっていた。 実際は後半のセリフは先生が勝手に入れたものであるのだが、その事をナギサが知るはずもなく。 実は先生も頭に来ているのでは? 先生の頭の中にいるイマジナリーランは訝しんでいた。

 

震える手で紅茶を飲んで精神を落ち着かせつつ、ナギサはこの場に先生を呼んだ用件を伝えることにした。

 

 

「……合宿は生徒をよく観察できるようにと配慮したうえで手配したものですが。 如何でしたでしょうか、何か実りのあるものは得られましたか?」

 

”(流れるように話を無かったことにしたなぁ)”

 

「もっと具体的に言いましょう、裏切り者に関して進展はありましたか?」

 

”前も言ったけど、私は私のやり方で対処する。 それだけだよ”

 

「先生の言いたいことは理解しています。 ただあと一日もすれば二次試験です、改めて確認をしたかったと言う私の気持ちも理解していただけると幸いです」

 

「そして、恐らくではありますが先生にはミカさんも接触したはず……何を、お話になったのかお聞きしても?」

 

”…………”

 

 

ナギサの一言に、先生は眉をピクリと動かすだけだった。

 

ナギサの言う通り、ランが休日を謳歌する──先生から強制的に言われたからなのだが──となったあの日、ミカからの接触によって先生は話をした。 その場で言われたのだ、トリニティの裏切り者は白洲アズサだと。 先生はそれを聞いてもなお、表立った行動をするつもりはなかった。 誰かの発言で行動を変えようとするつもりが一切なかったと言うのが理由の一つではあるのだが。

 

 

”誰かを疑う、そんなことで時間を費やす腹積もりはないからね”

 

”彼女達の頑張りが報われるように最善を尽くす、ただそれだけだよ”

 

「どうやら、何故彼女達なのかを今一度説明したほうがいいみたいですね。」

 

「コハルさん、彼女はハスミさんを統制するための存在です。 ハスミさんのゲヘナ嫌いは先生が良く知っているはずです。 何時何があってその爆弾が爆発するか私ですら判断できません」

 

「ハナコさんは……以前は優秀だったのに今はわざと手を抜いている。 恐らく模擬試験でその事を先生もご理解していると思います」

 

「アズサさんもです。 彼女は出自自体が謎ですし、度々他生徒との暴力事件を起こしています。 統制が難しい存在程厄介なものはありません」

 

”その理論で行くとヒフミにも理由があるんだろうけど、ナギサはヒフミの事を好ましく思っているんじゃないのかな? いやランから聞いた話だとランにも似たような感情を持っているとは思うんだけど”

 

「そう、ですね。 二人への感情は、特別と言ってもいいでしょう。 いえ、濁さずに言いますと愛情の類だと認識しています。 日々業務で疲れた体で自宅のドアを開けた時、二人のお帰りなさいがあるだけで私は疲れが一気に無くなる感覚に陥ってしまいます」

 

”ごめんね、水を差すようで悪いんだけど記憶の捏造はダメだと思うんだよね”

 

「いいえ、捏造ではありません。 二人は確かに私の家にいた、いたんです」

 

”……”

 

 

これ以上突っ込んでも面倒くさいだけだろうなぁ、と思った先生はそれ以上突っ込む事を止めた。 メンヘラと自己中に何言っても理解してくれないのはこれまでの経験で明らかとなっているからだ。

 

 

「ですが、そんな私に恐ろしい情報が舞い込んできたのです。 ヒフミさんが……犯罪集団のリーダーと言う情報が」

 

”…………”

 

「先生は、信じているが故の盲目と言う事象をご存じで?」

 

”まあ、意味合いは理解できるかな”

 

「今回の件が正にそれです。 相手の事を知っている、理解しているつもりでも……実際は、その殆どを知らない。 形の無いモノを理解しろ、証明しろ等と言われても出来ないのです。 当然ですよね、人は所詮他人の見たいものだけを見ているに過ぎないのですから」

 

”私が何を言っても、それは証明に値しない……と”

 

「ええ。 だからこそ退学させると言う方法しかないのです。 火のない所に煙は立たぬと言うのなら、その元となるものを排除すれば解決します」

 

 

頑なな態度を取るナギサに、先生は何故ここまで強引な手法を取らざるを得ないのか、その原因の一端を垣間見た。 まあまあ言いたい放題で面倒くさくて自分から関わりたくない感じのメンヘラクソ女でも、生徒であるのなら手を差し伸べるに値すると言うのが先生なのである。

 

 

”疑心暗鬼の闇の中”

 

「……はい?」

 

”ナギサの事だよ。 自分でも言ったでしょ? 見たいものだけを見て信じたいものだけを信じてる……正に、今のナギサだ”

 

「……」

 

”補習授業部を絶対に合格させる。 そして、君をそこから救い出す”

 

「……ふふ、ふふふっ」

 

 

突如、ナギサは堪えきれないと言った様子で笑い出す。 メンヘラクソ女は何が琴線になるのか分からない、とは思っていない物の一体何がそんなにおかしいのかと先生は首を傾げてナギサの様子を窺っていた。

 

 

「そうですか、なら頑張ってください先生」

 

「貴女がそう言うのならそうなんでしょう。 であるならば私も私なりに頑張らせていただきますね」

 

”……そっか”

 

 

その言葉を聞いたのであればもうこれ以上この場にいる理由もない、そう考えて先生はテラスを後にする。 後に残ったナギサはただ一人、紅茶を飲みながら外の景色をただじっと見つめているだけだった。

 

ナギサが一体何を考えているのか。 それは他ならぬ本人しか知りえないことなのだろう。

 

 

 

────────────────

 

 

 

「補習授業部、でしたでしょうか? そちらの方は順調ですか?」

 

「今のところは問題ないかな? こうしてお茶を嗜む程度には余裕があるとは思ってるよ」

 

「それは良かったです。 奮発して高いケーキを買った甲斐がありました」

 

(……サクラコ様のあのケーキ、先着順で早いうちから並ばないと買えない物でしたよね?)

 

(噂になってましたよ? 早朝から店先に座り込むシスターがいると)

 

(あぁ、やっぱり……)

 

 

ナギサと先生が語らいをしている同時刻、ランはサクラコに呼ばれシスターフッドにてお茶会に参加していた。 尚片隅ではマリーがサクラコの行った凶行に頭を抱え、いつぞやの猫ミームみたいなことになっている。

 

何でそんなことをしたのかと言われれば、ぶっちゃけランとのお茶会が楽しみ過ぎて前日の夜から張り込んでいただけである。 0か100でしか物事を考えない(丁度いい塩梅を知らない)、言い方を考えれば可哀想なシスターなのである。

 

 

「先日はアズサちゃんが迷惑をかけちゃったみたいで。本当にごめんね?」

 

「いえ……不用意に入ろうとした私にも責任があるので」

 

「そう言ってもらえると助かるよ。 注意はしたから今後はないとは……断言はできないけど私も注意してみるようにするから」

 

 

ランが来た一番の目的は、先日別館にまで足を運んだと言うマリーの身を案じての事だった。 話によると、アズサの設置していたトラップにマリーが引っかかり爆発に巻き込まれた……らしい。 幸い大きなけがになるような事にはならなかったようではあるが、それはそれとして補習授業部がかけた迷惑なので副顧問である自分が謝罪に伺わなければ……と考えていた矢先の誘い。 ランが参加するには十分である。

 

 

「要件がアズサちゃんへのお礼なのに、そのアズサちゃんにトラップで攻撃されるなんてとんだ……うん」

 

「そ、その事は良いんです! きちんとお礼も出来たので……」

 

「そっかそっか。 ……ハナコちゃんとは、話せた?」

 

「少しだけ、ですが。 話をすることは出来ました」

 

「そっか」

 

「ランさんは、ハナコさんの事は」

 

「知ってはいるよ? サクラコちゃん達とどの程度の差があるかは分からないけど」

 

 

何処か探るような視線を向けて来たサクラコに、ランは気付かないふりをしながら紅茶を啜る。 ハナコに関しての何かしらの情報が欲しいように感じるが、本人のいないところで話すつもりは毛頭なかった。

 

無論サクラコも無理に聞き出そうと言うつもりはない、早々に視線を逸らして別の話に繋げる。

 

 

「シスターフッドとしてはトリニティの政治闘争に関与するつもりはないのですが、今のトリニティの空気を鑑みるにとても良くない方向に向かっているような気がしてなりません」

 

「強ち見当違いな発言ではないのがまたなぁ……」

 

「出来ればみなさんが手を取り合って協力出来れば良いのですが……中々、上手く行きませんね」

 

「トリニティの長い歴史を見れば一目瞭然だよ。 排斥や暗躍を繰り返して今の形になったと言っても過言じゃない」

 

「過去の行いは、間違っていたのでしょうか」

 

「他校の私がその答えを知ってるわけじゃないけどさ。 その時の生徒たちにとってはそれが正解だったのかもしれない、どの道出来上がってしまった歴史を指でなぞって話すことしか出来ないんだし」

 

 

ランの脳裏にはその過程で消え去ったアリウスの事が過っていた。 分派の行った行為で消え去ったモノ、そしてアズサの制服に取り付けられていた校章……このタイミングでその校章が浮かび上がるのは、果たして偶然か否か。

 

仮に偶然ではなかった場合、何が目的か? 公会議の結果を考えれば自ずと選択肢は限られてくる問題ではあるが……

 

 

「本人の口から直接聞きたいものだけどね」

 

「? 何か言いましたか?」

 

「ううん、独り言だよ。 ところで話は変わるけど……調印式の準備ってどうなってるの?」

 

「今のところ目立った問題などは見当たらないですね。 場所も決まっていますし必要な物は粗方運び終わっています」

 

「なら良いんだけど」

 

 

調印式の場は事前に決まっている。 即ちその情報が外部に漏れたら罠だって容易に貼る事だって出来ると言うことだ。

 

古聖堂……そこはかつて、第一回公会議が開催された歴史的な場所。 今現在はゲヘナとトリニティのごく限られた者にしか知らされていない話だ。 今の会話で簡単に漏らしてしまったあたりサクラコの危機管理能力に苦言を呈したいところではあるのだが、その情報を既に持っているヒマリもヒマリで一体何なんだと言いたくもなる。

 

 

「このまま何事もなく調印式まで進んでほしい所ではあるけど」

 

「そうですね、私もそうは思っているのですが……」

 

 

そうあってほしいと思うものほど上手く行かないのが世の中である。 まだ解決していない問題が山積みである以上、事が上手く運ぶ等と言う楽観的な考えはしない方が良いのだろう。

 

 

 

────────────────

 

 

 

「今日はこの辺りで終わろうか。 みんなお疲れ様」

 

「お疲れ様です! この一週間本当に……みんな頑張ったと思います」

 

”そうだね、傍でずっと見ていたからみんなの頑張りはよく理解してる。 後は本番でその頑張りを発揮するだけだよ”

 

「任せてほしい、必ず期待に応えるから」

 

 

先生や私が語らいをしたその後。 遂に二次試験が迫った前日の晩の事である。 最後に行った模擬試験も全員が危なげなく合格ラインまで達することが出来て、自分たちの成長を実感しているところであった。

 

本当に最初に比べたらみんな勉強が出来るようになって……特にコハルちゃんとアズサちゃんの成長が素晴らしいね。

 

 

「きっと皆合格できます。 みんな笑顔で……補習授業部を卒業出来るように頑張りましょう!」

 

「!!!」

 

「どうしました、アズサちゃん?」

 

「いや……そうだな、うん。 合格出来たら補習授業部は無くなってしまうんだなと思って」

 

「過程は色々ありましたが、居心地のいい日々を過ごすことが出来ましたからね。 寂しさを感じるのも無理はありません」

 

「それは分かるけど……最初から決まってたことでしょ? それに、補習授業部が無くなってもつながりが無くなる訳じゃないんだから」

 

 

コハルちゃんは精神的にも成長できたと思う。 最初は自分の事で一杯一杯な感じが見て取れてたんだけど、今では周りを気にする余裕だって出来た訳だし。

 

ハナコちゃんの笑顔も随分と違う。 きっと彼女なりにこの空気が好きでたまらないんだなって見ただけで分かるようになった。 その調子で私へのじっとりとした視線もなくなってくれればいいなって思わなくもない。

 

 

「そうですね。 あ、じゃあ試験に合格したら皆でご飯でも食べに行きませんか? 私良い店知ってるんですよ」

 

「それ、モモフレンズのコラボ店って言わないよね?」

 

「…………」

 

「その沈黙が答えだね、もうちょっとこう言う時だけでも普通にご飯を楽しもうって気持ちはなったのかな?」

 

「……あはは」

 

「笑って誤魔化しても既に遅いと思うんだけど」

 

「で、でも本当に美味しいんですよ?」

 

「味の感想は良いからさ、先ずは皆の意見を聞くところからでしょ」

 

「……わ、私は別にいいと思うけど」

 

「私も構わない、寧ろ行きたいな」

 

「……まあその、行っても、良いんじゃないんでしょうか」

 

 

ハナコちゃんがすっごい言葉を選んで言ってる。 しかも頑張って作りましたって感じの笑顔で。 ハナコちゃん、そう言う時は遠慮しないで本音を言っても良いと思うんだ。 「興味はないけど、皆が行くって言ってしまったから言いました」感が満載だぞ。

 

 

「って、それは良いのよ! 今すべきことは最終確認でしょ? ちゃんと明日の試験の為に確認しないと」

 

「そ、そうでしたね……えっと、告知……えっ」

 

 

ヒフミちゃんの予想外と言ったリアクションに、一体何事かと集まる補習授業部。 一方の私は、恐れていたことが現実になったのではないかと視線を鋭くした。

 

あのナギサちゃんだ、簡単に試験を終わらせてくれるなんて楽観的な考えはしていないつもり、何だけど。

 

 

「そ、そんな……嘘ですよね?」

 

「残念ながら現実のようですね。 ……試験範囲の拡大と、合格ラインの引き上げですか」

 

「冗談じゃないわよ……90点なんて、私まだ一回も……」

 

”……そう来たか”

 

「何かするとは思ったけど……そこまでするんだ」

 

 

バキッと、何かが砕ける音が教室内に鳴り響く。 音の発生源を見れば、今の今まで私が持っていたペンが圧し折られた音だったらしい。 無意識のうちに力んでしまっていたのかと反省する一方で、補習授業部の顔色は芳しくなかった。

 

無理もない、この土壇場で不意打ち気味な変更なんだから。

 

 

「何かしらの方法で、私達の模擬試験の結果を入手。 それを見てこのような方法を取ったのでしょう。 私達を、確実に退学にするために」

 

「た、退学……? 何でそんな話になるのよ」

 

「……」

 

 

退学と言う末路を今知ったと言った感じでコハルちゃんが呟く中、アズサちゃんは下を向いて拳を握り締めている。 何故このような暴挙に至ったのか……その理由を知っているからなのだろう。

 

何を考えているのかは知る由もないけど、明るい考えを持ってないのは明らかだ。 私はその反応を見て見ぬふりをしつつ、掲示板に掲載されている内容をじっくりと確認していく。

 

 

「試験場所と時間帯も変更になってるみたいだね。 ゲヘナ自治区? この不安定な情勢で、よりにもよってゲヘナに、か」

 

「厭らしい手段ですね。 未受験の場合は問答無用で不合格、受験するにしてもこの緊迫した状況下で敵地に向かうような状態、と」

 

「コハルちゃん、退学の話は後で腰を据えて話すから……今は落ち着いて」

 

「うっ……すみません、取り乱しちゃって」

 

「仕方ないよ。 コハルちゃんの立場なら私だって同じようになってたはずだから」

 

 

コハルちゃんはそう言って落ち着きを取り戻したが、正直なところこんな事を話している場合じゃないだろう。

 

よく見たら試験の時刻は深夜3時……時間的に、今から向かわないと間に合いそうもない。

 

 

「先生、車両の手配は?」

 

”ごめん、流石にこの時間帯だと厳しいかもしれない。 ランの方は?”

 

「残念ながら、自家用車はトリニティに無いんですよね」

 

 

こんな事態になるなら自宅に置いてこなかったのに。 「トリニティ生に悪戯されたら切れる自信しかない」って言って置いてこなきゃよかった……

 

後悔しても事態は好転してはくれないんだし、今できる最善の方法を……

 

 

「……兎に角、行けるところまで行こう。 皆は先に向かってて、私はダメもとで電話してみるから」

 

”分かった、みんな準備が出来次第すぐに向かおう”

 

「わ、分かりました!」

 

「銃火器の点検は既に済ませてる、みんなも点検は済ませておいて」

 

「ふふ、笑い事じゃないですけど……障害がある程、燃えてきますね」

 

 

各自各々の私物を持って、教室から足早に去っていく。 先生も最後尾に付きながら、私を見て頷いた後にタブレットに視線を向けていた。

 

先生も先生なりに出来る事をするのかもしれない、なら私だって可能性が少しでもあるのなら縋るしかないだろう。

 

 

「────────もしもし? 夜遅くにごめんね……少し頼みごとがあって」

 

 

幸運にも繋がってくれた電話が、光明になってくれることを信じるしかない、か。

 

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