セミナー副会長はとにかく巻き込まれたくない   作:ピンク髪大好きニキ

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なーんかこっちがドン引くくらいUAとかお気に入りとか増えまくってて何事? と思ったらランキングに入ってたみたいです。 マジでありがとうございます。

このクソ雑魚メンタルゴリラ女書いてると楽しいんですよね、ついつい連日書き終わっちゃう

もっと天海ランの情けない姿を見てくれ、お前らが楽しんでくれると俺も嬉しい


3話「仲良くしてもらいたい巻き込まれ娘」

 

 

 

トリニティ総合学園内には、三人の派閥の代表と複数の行政官で運営される『ティーパーティー』と呼ばれる組織がある。 これはミレニアムにおけるセミナーのような組織であるが、セミナーと違うところがあるとすれば……それは一定期間毎にホストの役回りが変わることだろう。

 

現在は代表の一人が長期休養状態になってしまっているため、残り二人のうちの片方がホストを専任している状態であった。

 

 

「ふう……今日の紅茶は特別良い味ですね。 そうは思いませんかランさん?」

 

「ええ、美味しく頂いてます」

 

「ふふ、お気に召して頂けたようで嬉しいです」

 

 

そんなティーパーティーがお茶会で、否その他の運営でもよく使われるテラス────街並みが一望できる景色のいい席────その場所に、ランはティーパーティーのホスト【フィリウス分派】代表の桐藤ナギサと【パテル分派】代表の聖園ミカ、そして複数の行政官と共にティータイムと洒落込んでいた。

 

ここまではいい、ここまでなら普通のお茶会として別段おかしなところはなかった。

 

 

「ランちゃん! 私ランちゃんの為にカヌレを作ってみたの。 食べてみて?」

 

「……うん、美味しいよ。 ミカちゃん上手だね……私未だに外側と中身で触感が違う状態になるのに」

 

「えへへ、どうしてこんなに上手く作れたと思う? ランちゃんの為にって一杯気持ちを込めて作ったんだ

 

オッ、オゥ……ソナンダ

 

「ミカさんのだけではなく私のも是非食べてください。 私もランさんへの思いを込めてマカロンを作ってみたのです」

 

「こっちも美味しいね。 ミカちゃんもナギサちゃんもお菓子作りが上手で羨ましいな……ところで、ピンクと赤が多いのは何で?」

 

「ふふ、特に意味はないですよ? 偶然……ええ、本当に偶然です

 

ソナンダネ……オイシイヨ

 

 

何で二人してランの隣に密着するように座っているのだろうか? ランは不思議で不思議で仕方なかった。

 

何でこんなに長く大きいテーブルがあるのにわざわざ隣に? しかも少し腕を動かせば肘と肘がぶつかるような超至近距離に。 そしてそのことを誰も指摘しないのは? 代表がやってることは絶対だとでも? 行政官を名乗るのであれば失礼を覚悟で聞いてみるものでは? ランは訝しんだ。

 

しかし内心で色々と考えても事態が変わることはない、ランは若干味の分からなくなった紅茶を流し込み、敢えてスルーすることにした。

 

 

「そう言えばランちゃん、シャーレ……だっけ? あの良く分かんないところについて何か知ってる?」

 

「あぁ……ユウカちゃん程じゃないけど、ある程度は知ってる、かな?」

 

 

唐突にミカから問われた質問に、ランは頭の中で内容を整理する。

 

シャーレ────正式名称は【連邦捜査部シャーレ】又はエンブレムに記入された【独立連邦捜査部】……連邦生徒会長が直々に指名したらしい先生と呼ばれる大人の女性が顧問となり、一つの学園に限らず全ての学園、そしてその学園の部活、その生徒を所属させることができ、あらゆる規約や規則、罰則を免れることが出来るらしい……説明からして出鱈目すぎる超法規的組織。

 

セミナーのユウカや正義実現委員会のハスミ、風紀委員会のチナツや自警団のスズミなどが既に所属していることを知っているし、今もなお所属する生徒は増え続けているはずだ……整理していたはずがいつの間にか口に出して説明をしており、その言葉を聞いてナギサとミカは難しい顔をしていた。

 

 

「出鱈目……確かに、今の内容を聞くだけでもその権限は計り知れないものです」

 

「それに所属する生徒も特に問わないってところが怖いね、どんなに因縁があってもシャーレに所属していれば我が物顔で入ってこれるって事でしょ?」

 

「まあ、概ね間違ってはいないかな」

 

「そうなるとその先生と呼ばれる人物の人間性が重要視されますが……ランさん的には、どう見えましたか?」

 

「先生? うーん……一言で言うなら、安心感のある人、かな?」

 

 

ランは先生と最初に会ったシャーレ奪還の時の事を思い出す。 キヴォトスの外から来た大人であるが、受け答えは丁寧だし作戦指揮も的確。 更にたまに見える子供のような感受性もあり、少なくとも危惧するような事態を引き起こすとは、現時点では考えられなかった。

 

ランとしてはその手腕で如何にかキヴォトスの治安をより良いものにしてくれと切に願っている。 先生の頑張り次第で自分が厄介事に巻き込まれる確率が減るのだから。

 

 

「ランさんの観察眼には私も一目置いています。 ……少なくとも、今の段階では危険視する必要はないと考えておきましょう」

 

「そうだね、こういう時には全く私情を挟まないって知ってるし」

 

…………………ありがとう

 

 

どうしよう、半分以上は自分の私情が混じっているなんてとてもじゃないけど言えない。 背中を伝う冷や汗に勘付かれないよう誤魔化しつつ、ランはまた紅茶を啜る。 少しだけ冷えた紅茶が、今はとてもありがたい。

 

 

「それよりも、最近はどうかな。 忙しくしてない?」

 

「仰る通り忙しさはありますが……こうしてティータイムを楽しむ程度の余裕は確保しているつもりです」

 

「あれ、ナギちゃん今日のティータイムの為に徹夜で仕事終わらせたって」

 

ミカ、黙りなさい

 

ヒャイ

 

(ひえっ……)

 

 

突如降りかかる絶対零度の眼差しに、ミカとランの背筋が凍った。 選択肢を間違えれば口にロールケーキを突っ込まれそうな気がして、ランは必死に話題を変えようと思考を巡らす。

 

 

「……せ、セイアちゃんの様子は、どうかな」

 

 

ランの放ったセイアの一言に、ナギサとミカは硬直する。 どちらも気まずそうな様子を見せつつも……ややぎこちなく、ナギサの口が開いた。

 

 

「芳しくは、ないですね。 ……まだ休養が必要と聞いています」

 

「そ、っか。 早く元気になるといいね」

 

「せ、セイアちゃんなら大丈夫だよ! きっともう少しすれば元気な姿を見せてくれるって!」

 

「そうなんだ、じゃあそれまで体に気を付けて過ごさないとね」

 

「そ、そうですね。 ……体に、気を付けないと」

 

「あは、は……そう、だね」

 

「…………」

 

「…………」

 

「「「…………」」」

 

 

どうしよう、また何か地雷を踏んでしまったような気がする。 二人のぎこちない返答に、いよいよランの額から汗が流れるのを止められなくなっていた。

 

地雷回避を狙って更に地雷を踏みぬくなんて不幸すぎる、ランは心の中で叫んでいた。

 

 

「……あ、あぁ! モウコンナジカンダ! ワタシカタヅケナイトイケナイシゴトノコッテタ!

 

「ランさん……私達のティータイムに付き合ってくださるために……」

 

「もう、気持ちは嬉しいけど仕事をほっぽって来るのはダメだよ?」

 

ソウダネ! ゴメンネフタリトモ!

 

 

今日はこれで解散、と言う雰囲気に何とか出来たランは二人に見えない角度で息を吐いた。 ついでに胃の内容物もぶちまけそうになったが、そこは気合で飲み込んだ。 若干喉の奥に違和感を感じるが、ぶちまけるよりはましだろう。

 

丁度時間的にもティータイムを終えるには十分すぎるくらい経っているし、二人も納得してくれた。 後は帰るだけである。

 

 

「名残惜しくはありますが、今日はこれで解散としましょうか」

 

「そうだね、変に引き留めてもランちゃんに悪いし」

 

「ごめんね、二人とも。 そしてありがとう、ティータイムに招待してくれて」

 

「いえ、ランさんであれば何時でも歓迎でしたし。 また開くときは是非ご参加くださいね」

 

「次も腕によりをかけて作ってくるからね! じゃあねー!」

 

 

手を振って見送ってくれるナギサとミカに手を振り返し、ランはその場を後にする。 トリニティは生徒の数が膨大な為、校舎内はとても広く初見では絶対に迷ってしまうほどだ。 そんな校舎内を、ランはゆっくりと歩いていく。

 

 

「帰る前にハスミちゃんに挨拶でも……いや、この間スイーツ店で会ったな。 それじゃあヒフミちゃん? それともサクラコちゃん……ハナコちゃんもいたなぁ」

 

 

それなりに交友関係の広いランは、折角トリニティにまで来たので知り合いに挨拶でもしていこうかと迷う。 だが誰がどこにいるか候補が多すぎて中々決められずにいた……そんな時だ。

 

 

「──ッ! ────ぃ」

 

「……うん?」

 

 

ふと、ランの耳に誰かの声が聞こえたような気がした。 距離が離れているためか何と言っているのかは分からなかったが……どうにも穏やかな感じではない、と途切れ途切れに聞こえた声のトーンからして思わせる。 先程まで眠たげに閉じられていた瞼が、一気に開かれる。

 

 

「……挨拶は後にして、様子を見に行こうかな」

 

 

他校の問題事に首を突っ込むのに何かを言われるかもしれない……そんなことが脳裏に浮かんだが、困っていたりするのをただ見過ごすということがランにはできない。 目に入る、耳に入る範囲で何かあったら動かずにはいられない性分であった。

 

高尚な何かがある訳ではない、ただ単に『黙って見なかったことにして、その後のご飯が美味しくなるわけがないから助ける』……自分の行為に罪悪感を覚えたくないが為の行動である。

 

 

「位置的にはこっちのはずなんだけど……あっ」

 

 

やがて目的地に着いたランが見たのは、一人の小柄な生徒を複数人の生徒が取り囲む様子だった。 取り囲んでいる生徒の表情は凡そ団欒しているといった様子ではないし、何より取り囲まれている生徒の表情は今にも泣きそうであった。

 

いじめ……そんな単語が、脳裏に過る。

 

言い方は失礼ではあるが、トリニティはゲヘナと違って暴力や喧嘩と言った表立った出来事が見当たらない物の────いじめや陰口といった、陰湿な行為が度々見受けられる。 お嬢様と言うのはやはりそう言うものだろうか? 若干お嬢様に対しての偏見が見受けられるが、ランはそういう認識を覚えていた。

 

なんかこう、わざと足を引っかけて「あら、ごめんあそばせ?」とか扇子を口元に当てて微笑みそうだし「鈍臭いこと、ちゃんと足元を見たらどうかしら?」と取り巻きと一緒に笑ってそう。 いや今はそんなことを考えている場合ではなかった。

 

 

「そこの子たち……何をやってるのかな?」

 

 

一度見てしまった以上、見過ごすわけにはいかない。 ランはそう考え、躊躇うことなくその空間へと割り込むことにした。

 

 

 

────────────────

 

 

 

「ちょっと、何か言ったらどうなの?」

 

「こんなのが正義実現委員会の一員なんて、あそこも随分と耄碌したわね」

 

「黙ってては何も分かんないのよ、それとも口がきけないの?」

 

「う……うぅ……」

 

(何で、どうしてこんなことになったの……)

 

 

トリニティの校舎、その中でも端の方にある廊下の一角で────正義実現委員会に所属する『下江コハル』は背を丸め、周りから降りかかってくる暴言から自分の身を守っていた。

 

切っ掛けは何てことはない……何やら怪しい動きをしていた二人の生徒を見かけて、その後を追いかけていただけだった。

 

やがて人通りの少ない廊下の片隅で立ち止まり、懐に隠していたらしい何かを物色している。 目を凝らしてみてみるとそれは筆箱や教科書であり、それを破いたりしていることから彼女達は誰かの私物を壊している……つまりは、そう言うことなのだろう。

 

 

(許せない……ッ! 私が注意しなくちゃ!)

 

 

コハルは正義実現委員会。 トリニティ内の治安維持のための組織……違反とは違うが、いじめと言う陰湿な行為を見て義憤を覚えずにはいられなかった。

 

いざ指摘しようと物陰から飛び出そうとした時────背後から強めに背中を押され、コハルは勢いよく倒れこんでしまう。

 

 

「えっ……きゃあっ!!」

 

「ッ!? 誰よ!!」

 

「あっ……何、が」

 

「もっと周りに気を配りなよ。 正実に見られたら面倒なんだからさぁ」

 

 

コハルの登場に驚いた二人の声の他に、今しがたコハルを押したらしい三人目の生徒がゆっくりと歩いてくる。

 

取引に夢中になっていたコハルは、背後から近づいてくるもう一人の仲間に気付かなかった。 生徒はコハルが取り落とした銃を手に取り、他の二人の所へと歩いていく。

 

 

「しょうがないでしょ……こっちは神経すり減らして取って来たのよ?」

 

「それよりも、これ……どうにかしないと不味いでしょ」

 

「そうね。 ……言いふらせないくらい、甚振った後に写真を撮りましょう? そうしたら嫌でも喋れなくなるでしょ」

 

「あはは、いいじゃんそれ! ホラ立てよ!」

 

「うっ……」

 

 

生徒の一人に腹を蹴られ、コハルは短く呻く。 そこからどうにか体勢を整えたものの、背後は壁になっており逃げることは難しそうだった。

 

現在コハルは背中を丸め、どうにか急所を隠すように俯くことしかできなかった。

 

 

(うぅ……武器があれば、こんな奴らなんか倒してやるのに!)

 

 

嘘である。 コハルはお世辞にも戦闘が出来るとは言えない、事あるごとに不良生徒の反撃を受けていたし正実同士の連携でもタイミングを逃すこともしばしば。

 

下江コハルは確かに弱い。 だが憧れであるハスミのようになりたいと努力してきた……努力は、してきたのだ。

 

 

「無駄に抵抗しないでね? したらもっと酷いことになるから」

 

「私的にはしてもらっていいよ? 甚振り甲斐があるから」

 

「ひっ……」

 

 

惜しむらくは、努力をしてもなお相手の方が有利だということ。 数的にも不利で、尚且つ武器すら奪われている。 素手で抵抗しようにも圧倒的不利なのは明らかだった。

 

 

「どうせなら助けでも呼んでみる? ま、来ないだろうけど」

 

「ちょっと、そんなこと言ってもし来たらどうするのよ」

 

「来るわけないでしょ、この時間こっちの方向に来るような部活はないし。 なら哀れな子に慈悲を~ってやってもいいでしょ?」

 

「あはは、シスターフッドの真似? 似てないじゃん」

 

「……い」

 

「あ? 何言ってるか聞こえないんだけど」

 

「もっとみっともなくえーんえーんって泣いたらどうですかぁ?」

 

「……い、絶対……」

 

「何て?」

 

 

 

「────────絶対に呼ばないって言ったの!! 私だって……私だって正義実現委員会の一員なんだから! 貴女達の事だって、絶対に逃がさないから!!」

 

 

 

腹の底から叫ぶコハルに、少しだけ怯む生徒たち。 しかしすぐに取り繕うように笑みを浮かべ、余裕の表情を取り戻した。 何故なら人数はこっちの方が上、武器も奪った以上どう抵抗されたところで痛くも痒くもないからだ。

 

 

「は、ははっ……強がっちゃって」

 

「その顔ムカつくわね、まだ自分の立場を理解してないの?」

 

「そんなに甚振られたいなら……お望み通りにしてあげるわよッ!」

 

「……ッ!」

 

 

振り上げられた手を見て、反射的にコハルは目を閉じてしまう。 自分を襲ってくるであろう衝撃に体を強張らせるが……3秒、6秒と経っても自分の身に衝撃は訪れない。

 

一体どうしたのかと思いコハルが目を開けると────

 

 

 

「────────良い啖呵だったよ。 気に入った」

 

────1人のミレニアム生徒が、振り上げられた手を背後から抑え込んでいた。

 

 

「い、痛っ……ちょっと、放しなさいよ!」

 

「断るね、聞き入れる理由が見当たらない」

 

「何よアンタ、しかもミレニアムじゃない。 他校の生徒に暴力振るって、許されると思ってるの?」

 

「逆に聞くけれど、自校の生徒に暴力を振るっても許されるの?」

 

「っ、うるさい! いちいち頭にくるヤツ……名前を言いなさいよ!!」

 

「天海ラン」

 

 

ここまで勢いのあった生徒たちの動きが、ぴたりと止まった。 そして数秒もすれば体をカタカタと震わせはじめ、一歩後退る。

 

その名前は、コハルでも知っていた。 ミレニアムの生徒会、その副会長……様々な異名のある、有名な生徒。

 

キヴォトスでは、度々最強談義が巻き起こる。

 

 

────ゲヘナ最強、風紀委員長の空崎ヒナ。

 

────トリニティが擁する正義実現委員会、委員長の剣先ツルギ。

 

────同じくトリニティのティーパーティー、パテル代表の聖園ミカ。

 

────ミレニアムに存在するC&C、コールサインOOの美甘ネル。

 

そして、そんな名だたる名前に入り込む……キヴォトス最強談義に必ず名前の挙がる生徒の一人、セミナー副会長の天海ラン。

 

 

「な、何でこんなところに」

 

「ナギサちゃんたちにお茶に誘われて。 帰りにこんな場面に会うなんて思いたくなかったけど」

 

「なら見なかったことにして帰ればよかったじゃない。 何でわざわざ」

 

自分の信念を曲げたくないから。 理由はそれだけで十分

 

「────────あっ」

 

 

ランの一言に、コハルは目から涙がこぼれ落ちる。 ハッキリと言い切ったその目が、その堂々とした振る舞いが、自分の憧れる先輩にとても良く似ていたからだ。

 

自分の信じるものを貫く固い決意。 コハルの憧れに、この日もう一人追加されることになったことを、コハルは一生忘れることはないだろう。

 

 

 

────────────────

 

 

 

(言っちゃったぁ~~~~~!!!!! 何かそれっぽいこと言ったけど単に見過ごせなかっただけです!!! そんな深い理由はないんだよ!!!)

 

目の前で戦慄している生徒はまだいい、ネームバリューにビビってるだけで特に困ることはない。 こういう奴は押しに弱いからな、なんか凄んでれば勝手に逃げるもん。

 

……問題は囲まれてた女の子だよ!!! なんだそのキラキラした目は!! やめろ! そんな目で私を見るんじゃあないッ!! ちょっと良い感じに腕止められて調子に乗った少し前の自分をぶん殴ってやりたい! なーにカッコつけて『自分の信念を曲げたくないから(キリッ)』だよ!! おめーのメンタルなんてグニャグニャの茹ですぎた麺みたいだろ!!!

 

メンタルだけに麺ってか? やかましいわ!!!!

 

「あ……うぅ……」

 

「まだやる?」

 

「う、うるさい! こっちは三人よ! 三人に勝てるわけないでしょ!」

 

「ぐぎぇっ」

 

 

三人がどうこう言ってる内に腕をつかんでた生徒の鳩尾を殴りつけ、廊下の隅に吹き飛ばす。 一瞬で傍にいた仲間が消えたことに疑問を感じたのかもう一人が周囲を見渡し……壁に叩きつけられて気絶している生徒を見つけ、ぴしりと体を硬直させた。

 

 

「……これで二対一だけど」

 

「は、はぁ? 不意打ちなんて卑怯じゃない!!」

 

「ブーメランって知ってる?」

 

 

それ三人で一人の生徒を囲んでたお前らが言うことか??? まさか自分たちが行ったことを覚えていらっしゃらない? 痴呆にしては早くない?

 

これ以上喚かれても面倒でしかないので、私は何も言わず残った二人の頭を鷲掴みにする。 何とかして逃げようともがいているが……ふははすまんね、その程度では拘束から逃げられないのだよ。 今誰かゴリラって言ったか? お前夜道には気をつけろよ。

 

ギリギリギリ……と軋む音が鳴り響き……やがて、白目を剝いたのとヘイローが消えたのを確認して手放した。 まあこのままにしておけばいいだろう、後はハスミちゃんにでも頼もうかな?

 

 

「……怪我はない?」

 

「あっひゃい、大丈夫、です……」

 

噛んだから顔真っ赤になっちゃった。 可愛いね♡ 持ち味を活かしていけ。

 

見た感じ外傷はない。 もしかしたら制服に隠されてる部分にはあるかもしれないけど……初対面の子のボディーチェックはハードルが高すぎるんじゃ。

 

 

「ごめんね、急に割り込んじゃって。 でもどうしても見過ごすことが出来なかったから」

 

「あ、いえ……ありがとう、ございます」

 

 

たどたどしくお礼を言う……何ちゃんだ? あ、生徒手帳が落ちてる……下江コハル、これかな?

 

 

「コハルちゃん、何度も言うようだけどさっきの啖呵はとても良かったよ」

 

「あ、名前」

 

「ごめんね、落ちてる生徒手帳が目に入ったからつい」

 

「いっいえ、私こそ名前言ってなくて……せ、正義実現委員会の下江コハルです! 一年生です!」

 

「これはご丁寧に。 ミレニアムサイエンススクール、セミナー副会長の天海ランです」

 

「ミレニアム、最強……」

 

 

ちゃうねん、ウチの最強はネルちゃんなんだよ。 私はネルちゃんみたいにメンタル強くないしネルちゃんの間合いで勝てるとは思わないし。

 

人見知りっぽいけど、礼儀正しい子だなぁ。 それにさっきの啖呵も、アレは自分を鼓舞するための空元気じゃなくて元から正義感が強いからこそのものだろう、その勇気分けてほしい。 切実に思う、それがあったらリオちゃんやヒマリちゃんにギャン泣きして鼻水擦り付けることないと思うし。

 

 

「さて、ハスミちゃんに連絡入れて対処してもらおうか」

 

「は、ハスミ先輩にですか?」

 

「正実なら問題ないだろうし、ツルギちゃんは……そもそも校内にいるかどうか」

 

 

ツルギちゃんは真面目だからなぁ、特別用が無くても自治区内のパトロールに勤しんでるし。 その勤勉さというか真面目さを分けてほしい。 でも毎回会ってそのことを褒めても「フヒェヒェ……ソウイッテクレテウレシイ、アリガト」って片言でしか話してくれないからもしかしたら嫌われている可能性すらある、泣きそう。 いや実際泣いた。

 

私は電話ではなくモモトークでハスミちゃんに事情を説明する。 すると一分もしないうちに既読がついて『すぐ其方へ向かいます』と返事が来た。 ハスミちゃん反応早いね、何か毎回1分、遅くても5分以内に既読と返信が帰ってくる。 今度ド深夜にパフェの画像送り付けてどうなるか試してみようかな?

 

 

「……あ、あのっ! 一つ聞いても良いですか?」

 

「? 私に答えられることなら……」

 

 

ケツイ が みなぎった ような表情でこちらを見つめてくるコハルちゃんに、私は思わずそう答えてしまう。 いや本当に、答えられることならいいけど。

 

 

「どうすれば……強く、なれますか?」

 

「強く……」

 

「その、私……頑張っては、いるんですけど。 先輩たちの足を引っ張っちゃうし、不良生徒に負けちゃうし……お、落ちこぼれって言われて……それで……」

 

「……そっか」

 

「ら、ラン先輩の活躍は沢山聞きました! SRTのFOX小隊が七囚人の狐坂ワカモを捕まえられたのは、直前にラン先輩が戦ったからだとか……同じく栗浜アケミも、ラン先輩が真正面から殴り合いで倒したとか!」

 

「……そ、そっか」

 

「私、強くなりたいんです! 先輩たちの足を引っ張ることのないようにしたいんです!! お願いします!!」

 

 

そう言って頭を下げるコハルちゃん。 とても健気でいい子だ、つい応援しちゃう。

 

でもな、どうやったら強くなれるかなんて寧ろ私の方が聞きたいくらいなんだが???? どんな障害も正面から打ち破れるような圧倒的な強さが欲しいよ、私にくれよ。 それがあれば厄介事に巻き込まれようが笑顔でいられるんだから。

 

気まずい、この沈黙がとても辛いッ!!! これなんて答えれば正解なんだ……? とにかく何か答えなきゃめっちゃ幻滅されそうだから……

 

 

「……き」

 

「き?」

 

「気持ちで、負けるな」

 

「気持ち、ですか?」

 

「最初から、負けたらどうしようなんて考えながら戦う人はいないから」

 

 

ご、誤魔化せてるか……? 何かそれっぽくいってみたけど行けるか?

 

 

「そ、そうですね」

 

「それと……仲間を信じて」

 

「仲間……」

 

「貴女が求める強さと言うのは、自分一人が圧倒的な力を持ちたいの? それとも仲間と共に正義を貫ける強さが欲しいの?」

 

「……ッ!」

 

「力の意味を、履き違えちゃダメだよ。 強さだけを追い求めれば、必ずどこかで落とし穴にはまる。 はまった時、傍に誰もいなかったら?」

 

「……」

 

 

行けてるっぽい! 何か乗り切れてる、このまま名言っぽく貫くぞ!!

 

「強さにも色んな形がある。 ……まずはハスミちゃんに相談しなきゃ、どんな方向性に強くなればいいか分からないでしょ? ハスミちゃんに相談したことは?」

 

「し、したことないです……迷惑、かけたくなかったから」

 

「後輩の悩みを、迷惑だなんて思う先輩はいないよ。 先輩を頼って、そして強くなって、先輩に頼られる。 ……強さって、そう言うものじゃないかな?」

 

 

私だったら全部丸投げしたいけどな、副会長だから誰にも投げられない。 とても辛い。 逃げ場がない。

 

でもなんだかんだ言って自分の見える範囲で悲しむ人がいれば足が勝手に動いてしまうのは、多分私の数少ないいい所なんだと思う。

 

うんうん唸っていたコハルちゃんだったが、自分の中で考えが纏まったのだろう……相談する前より晴れやかな顔で私を見て来た。

 

 

「……ありがとうございます、私周りが見えてなかったみたいです」

 

「そっか、方針の助けになったのなら良かったよ」

 

「私、ハスミ先輩に相談してみます。 一人でじゃなくて、みんなの助けになれるような、そんな生徒になれるように頑張ります!」

 

「うん、その意気だよ。 何かあったら言ってね、ハスミちゃんほど頼りになるかは分からないけど……」

 

「い、いえ! ラン先輩だってすごく頼りになると思います! だからセミナーの人たちは慕ってくれるんじゃないですか?」

 

 

いや、多分あれは慕ってるんじゃなくて「何かやらかさないように私達が見守らなくちゃ……!」って感じだと思う。 ユウカちゃん事あるごとに「何か困ったことはありませんか?」って聞いてくるしノアちゃんは私が言うこと深読みしてくるしコユキちゃんは事あるごとにゲームとお菓子を勧めて休憩を促してくるし……

 

リオちゃんは「何かあったら言いなさい、確実に消すから」って言うし、ヒマリちゃんは「私の可愛い可愛いランちゃんに手を出そうものなら二度とキヴォトスの表通りを歩けないようにして差し上げますね」って……あれ、何でだろう。 私がやらかすこと前提でみんな言ってない? 私そんなに信用無かった?

 

 

「そうだと、嬉しいなぁ……」

 

「絶対にそうですよ。 あ、ハスミ先輩!」

 

 

後ろから足音が聞こえて来たなと思ったら、やって来たのはハスミちゃんと複数の正実の生徒。 事前に事情を説明していたからかすぐに彼女達は拘束されて連れていかれ……最後に残っていたハスミちゃんが、私に向かって頭を下げて来た。

 

 

「ランさん、この度は本当にありがとうございました」

 

「お礼なんていいよ、偶然気付いたからこそだし」

 

「それでも、ですよ。 結果的にこうして解決できたのですから」

 

「……そっか、なら素直に受け取っておくよ」

 

 

そう言って私とハスミちゃんが話しているとき、ハスミちゃんの後ろでコハルちゃんがソワソワしていた。 話したいけど話しかけ辛い……分かるわぁ、その気持ち。 仲のいい三人が集まった時何故か一人だけ無口になるあの現象みたいだ。

 

しょうがない、ここは私が一肌脱ぐとしましょうか。

 

 

「時にハスミちゃん」

 

「? 改まってどうしたのですか?」

 

「今回の一件は確かに私が解決したんだろうけど、コハルちゃんの事も褒めてあげてね」

 

「ッ!!??」

 

「コハルが……ですか?」

 

「コハルちゃんが啖呵を切ったから、諦めなかったから……心が折れなかったからこそ、私は気づけたんだし助けようって思えた。 それは一番大事なことだと思う」

 

「……そうなのですね」

 

「だからコハルちゃんの話を聞いてあげてね。 コハルちゃんは、コハルちゃんなりにハスミちゃんの力になってくれるはずだから」

 

「そこまで、ですか」

 

「行く行くは、だけどね? ……でも道を示すのは、何時だって先輩の仕事でしょ?」

 

「……ふふ、そうですね」

 

 

ハスミちゃんは微笑みながらコハルちゃんへと話しかける。 コハルちゃん的には尊敬する先輩と話をしているから緊張しっぱなしみたいだ。 何か推しのアイドルと話すオタクみたいだな、どもる気持ちわかるよ。

 

後はコハルちゃんが勇気を出すだけだよ。 私なんかより凄い勇気があるんだから、頑張って強くなってほしいって切に思うよ。

 

 

 

だから私はクールに去るね。 人見知りに無言の空間は耐えられないんだ。

 




評価が赤バーでめっちゃビビってる

そりゃ書いてる以上は評価高い方が嬉しいよなぁとは思ったけどここまで評価さると逆に引く、お前そんなポテンシャルあったんだな……侮れない

読んでくださった方は本当にありがとうございます
その調子でお気に入りと感想と評価もよろしくね
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