セミナー副会長はとにかく巻き込まれたくない 作:ピンク髪大好きニキ
いや忙しい中本編じゃなくこんなの書いてるのはどうかと思うけどもね
「────────トリニティの襲撃が、失敗した?」
『は、はい……潜入した仲間からその旨が伝えられた後から連絡が繋がりませんし、監視していた仲間は聖園ミカが倒されたとも』
「聖園ミカ……戦闘力は知っているが、そんな容易に倒されるとは……誰が倒した?」
『聞くところによると、ミレニアムの天海ランと言う生徒だと』
「ラン、か……」
『どうかしましたか?』
「いや、何でもない。 ……ご苦労だった、失敗したものは仕方のないことだし、次の手を考えるしかないだろう」
『了解です。 一応マダムにも伝えはしますが』
「伝えたところで反応は目に見えてるが、な」
『ですよねぇ……では、私はこれで』
「ああ。 ……ふぅ」
キヴォトスに存在する廃れた廃ビルの中にて、今しがたトリニティの襲撃に関与していた生徒からの報告を聞いた錠前サオリは、自分の内心を現すかのように溜息を吐いていた。
成功しろとは、そこまで思っていなかったことではあるが、でもいざ失敗したとなると安心したと同時に不安感が募ってしまう。 最悪の結果は免れたわけではあるが、次にどのような手をマダムが打つか予想出来ないからだ。
あのマダムが穏当な手段をとるとは思えない、次はキヴォトスを巻き込んだ一大騒動になるだろう……そう考えると、サオリの心はドンドン重く暗いものが積み重なっていく。
(私は、そんな事の為に……)
サオリは徐に懐に手を伸ばし、中から端末を取り出す。 画面を点けると、そこには在りし日の自分たちの姿……まだ笑顔が絶えず、大切だったみんながいた時の写真が、待ち受けとして映し出されていた。
サオリやミサキ、それにアツコにヒヨリ……そして、そんな自分たちの肩を抱いて笑う、姉と慕った一人の女の子。
「姉さん、貴女がいたら今頃は。 もっと違った未来があったんだろうか」
自分よりも小さな背、透き通るように綺麗な蒼い髪。 何時も明るく皆を励ましてくれた彼女は、もういない。 あの日、マダムが満身創痍になりながらも持ってきた千切れた髪の束を見てから、サオリはある種の諦観を抱いてしまっていた。
ラン、と呼ばれたミレニアムの生徒に一瞬感情が揺らいでしまったが、それはあり得ないことだと首を振る。 何せ彼女は背が小さかったし何より……その、あんなに大きなものは無かった。 何が、とは言わないが。
髪の色も、眼の色も違う。 名字だって、自分の知らない物だ。
「姉さ……サオリ、電話は?」
「襲撃に失敗したとの報告だ。 恐らく、次の指示があるまでは何もないだろう」
「そう」
「……ミサキ、お前は」
「……何?」
「いや、何でもない」
「いや、そこで止められると逆に気になるんだけど」
「う、む……ミサキは、姉さんが生きていたら」
「あり得ないでしょ、マダムがとり逃すと思う? あの束縛と躾が大好きな異常者が」
「……そう、だよな」
「らしくないね。 私も、そうであったならって考えなかったわけじゃないけど」
何時の間にか傍に来ていたミサキに、サオリはらしくない質問をしてしまう。 腹のど真ん中に穴を開けながらも忌々しそうに千切れた髪の毛を踏みにじっていたマダムを見ているからか、希望的観測をしてしまったのは言うまでもない。
「死体を見たわけではない」その一点だけでも、彼女達が僅かな希望を残すには十分すぎる物だった。 表立って言う事は決してないのだが。
「失敗の報告を聞いたら次の手段をとるのは明白だけど、何をすると思う?」
「分からない。 まだ切っていない手札があるのは明白だが……」
「調印式の襲撃って言うのは間違いないのは分かるんだけど、その他に何かある?」
「精々が各学園の攪乱だろうが……」
「やっぱりいいや。 こういう時のリーダーは壊滅的に作戦会議が出来ないし」
「ミサキ……?」
思わぬ一言にサオリはショックを受けてしまうが、事実であるためそれ以上の追及は止めた。 と言うか妹分的立場の人間にボロクソ言われるのは心が痛い。
「……」
「姫。 ああ、その話は既に通っているはずだ」
「……」
「私は詳しいことは聞かされていないが、協力者が話をするとは聞いたな」
「……」
「アズサが上手くやってくれた、いや何とかしてくれたと言い換える方が良いか」
マスクを付けて一言も喋らないアツコの手話に答えつつ、ここにはいないアズサを思い浮かべて笑みを浮かべる。
サオリ達アリウススクワッドにとって、トリニティの要人を襲撃すると言うのは避けたいものではあった。 バレるとリスクではあるが、もっと別の方法を模索してトリニティに……或いはキヴォトスに、自分たちの居場所を作り出そうと考えてはいた。 マダムに知られたら不味いことになるので細心の注意を払っていたが。
百合園セイアの時はヒヤッとしたが、ヘイローを破壊する事はなかったしその事実も隠蔽された。 そして今回桐藤ナギサの襲撃も失敗に終わってくれたため、決定的な溝を生んでしまったと言うことはないだろう。 印象は悪いだろうが、その点はこれまでに集めて来たマダムの情報である程度緩和されてくれることを祈るしかない。
「まだ安心はできないが……最初に比べて色んなものが揃った。 マダムをどうにかする情報も、洗脳された仲間を開放する方法も」
「まだ楽観視は出来ない状況だけどね」
「そうだな。 ……エデン条約、調印式が始まってしまったら後戻りはできない。 確実に他の生徒からは裏切り者だと言われることだろう」
「今更でしょ? それに言ってないだけで事を起こそうとしている生徒は私たち以外にもいるんだし」
「ああ……」
サオリ達のように、マダムの支配を脱しようとする生徒はいる。 「あの日」マダムに制約がかけられた時から、直接的な暴力の支配をされなくなった生徒の大半は協力関係を築けている。
どっちつかずの仲間もいるが、支配から逃れたいと言う気持ちは同じであるらしく表立って何かをしようとする気はないらしい。 反対にマダムに支配されている生徒は敵対関係となってしまうが……そこは全てが済んだ後に時間をかけて洗脳を解いて行くしかないだろう。
「私は、奇跡を信じたい。 あの日救われた時から、その思いだけは少しも変わっていない」
「……ま、乗りかかった船だし異論はないよ」
「……」
「ああ。 ……取り戻すんだ。 みんなで笑い合っていたあの頃を、姉さんが夢見た未来を」
(あぁ……話しかけるタイミングを逃したせいで話に入っていけないですぅ)
硬く決意を誓うサオリ達。 尚ヒヨリは雑誌に夢中になっていたせいで部屋の片隅でサオリ達をチラチラ見ることしか出来なかったのだが。
(……でも、そうですね。 そうしたらまた■■■■のカレーが食べられるんでしょうか?)
心に残ったあのカレーの味を、また食べられればいいなあと。 ヒヨリは肩身が狭い中そんなことを考えていた。
────────────────
「……本当に使えない。 この程度の事も出来ないとは」
何処かもわからない薄暗い部屋の中、マダムと呼ばれるベアトリーチェはそう零す。
ゲマトリアでありアリウスの実質的なトップでもある彼女は、アリウス生たちを使ってキヴォトスに混乱を巻き起こそうとしていた。 あくまでも副産物の一つに過ぎないのだが、あえて彼女はその事を言わない。
トリニティの襲撃が失敗した旨を伝えられた彼女は最初こそ苛立たし気にしていたが、時間が経つごとにその怒りを鎮めて次の案を模索していた。 ……そんな彼女の下に、複数の人影が近づいてくるまでは。
「おや、これはまた随分と機嫌が悪そうですねぇ。 日を改めたほうがよろしかったですか?」
「一つも思っていないようなことを……不要です。 今ここで要件を済ませていきなさい」
「ええ、是非そうしますよ。 私もカルシウムの足りてない年増にそう何回も会いたくはないので」
「あ゛?」
「おっと、失礼。 つい本音が」
「……済まないが、本題に入っても良いかね?」
ベアトリーチェの下へやって来たのは黒服。 そして見慣れない者が二人……黒服にマエストロとデカルコマニーと呼ばれるゲマトリアの二人である。 後ここにゴルコンダと言う者もいるのだが、ただの遺影なので特筆することは何もない。
黒服とベアトリーチェの喧嘩で場が滅茶苦茶になりそうになったが、そんな事の為にこの場に来たわけではないと極めて理性的にその場を収めようとする。 その事を黒服達も理解はしているらしく、やや間をおいて二人は距離を離した。
「……それで、ここに何の用ですか? 冷やかしに来たのであれば即刻帰ってください」
「いえ、私は特に要件はありませんよ? ようがあるのは此方のお二方で」
「私は、計画の変更がないかを確認しに来たまでだ」
「私も似たようなものですね。 今回の件に関しては直接関わっていませんので」
「そう言う事ですか。 ……計画に変更はありません、調印式のその日、事前に通達したとおりに事を進めます」
マエストロからの質問に、ベアトリーチェは静かに答える。 調印式があるその日、現場となるであろう古聖堂の地下────────そこでロイヤルブラッドの血を以って、守護者の複製を作り上げる。
エデン条約を乗っ取ることが出来れば、無限ともいえる複製は全てアリウスの思うがままに操ることが出来るだろう。 ……尤も、計画していることはそれだけではないのだが。
「ふむ、ならば問題ないだろう。 私もその方向で進めさせてもらう」
「ええ、是非そうしてください。 話は以上ですか?」
「これはまた、随分と苛立っているご様子で。 何か嫌な事でもありましたか?」
「白々しい……分かってて言っていますね?」
「ええ勿論。 まあ失敗するとは思っていたので」
まるでさも当然とでもいうような反応を返してきた黒服に、ベアトリーチェは訝しげな表情を浮かべる。 その言い方は失敗する要因が分かっていたとでも言うような言い方だ。
「勿体ぶらずに言いなさい。 計画を妨げる要素でもあるのですか?」
「計画を妨げる、と言うよりは妨げたでしょうか……シャーレの先生はご存じで?」
「貴方がうんざりするくらい話していたのを覚えていますので」
黒服の言葉に、ベアトリーチェは頭が痛いとでも言うようにこめかみを抑える。 個人的には絶対に好きになれない……相容れないと断言できる大人。 黒服が何もしなければ様々な計画を立てて始末する気満々だったその人物に、ベアトリーチェは溜息を吐く。
(またあの大人ですか……忌々しい)
「それと、もう一人」
「先生の他にまだいると言うのですか」
「ええ、いますよ。 ミレニアムの副会長、天海ランさんが」
「天海、ラン……」
ランと言う単語に、過剰なまでの反応を示すベアトリーチェ。 フルネームは聞き覚えのないものだが、ランと言う単語だけは覚えがある。 それも悪い方向で。
無意識のうちに、ベアトリーチェは己の腹部に手を当てる。 そこには何もないが……大きな穴が開いたような鈍痛が生じた気がして、小さく舌打ちを漏らす。
(折角忘れていたと言うのに、あの小娘の事を)
それは、ある日の記憶。 アリウスに住む生徒を支配しようとしたあの時の事。
思えば、彼女は最後まで自分に歯向かった。 何度痛めつけても起き上がり、何度骨を砕こうが即座に治して喉元に噛みつこうとしてきた。 特に変な神秘でもない少女のどこにそんな力があるのかと目を見開いたことだけは覚えている。
(私は、彼女に……いえ、そんなことがあるはずがない)
恐怖を感じたのだ、ベアトリーチェが、彼女に。 最後には自慢であった髪の毛を引きちぎり全身の骨と言う骨を砕いた筈が、最後の最後に痛いしっぺ返しを喰らって腹に大穴を開けてしまった。
その余波で彼女はカタコンベの奥底へと吹き飛ばされていったが……あの怪我で生きているとは到底思えない。 何よりヘイローを砕いたのだ、生きてていい訳がない。 そのはず、なのだ。
「急に静かになりましたね。 何か心配事でも?」
「ある訳がないでしょう。 ……それと、マエストロ」
「何かね」
「アレをもう少し用意してください」
「……正気かね? まだ足りないと?」
「少なくて困るよりは多くて困る方がいいでしょう。 それにアレは持っているだけでも力になります」
マエストロは不満げだが、しぶしぶ納得したらしい。 安心とはいかないが不安要素はかなり減るだろうと少しだけ肩の荷が軽くなったベアトリーチェは、他に何かないかと考えて……やがて何もないと結論付けた。
「後は特にないでしょう。 何時までもそこにいられたら邪魔です」
「これはこれは……なら我々は退散するとしましょうか」
「ふむ、そうするとしようか」
~~~~~
「……黒服よ」
「はい? 何でしょうか」
ベアトリーチェの下を去った黒服達。 だがその道中、何か引っかかるものを感じたのか途中で足を止めたマエストロが、黒服へと向かって語り掛ける。
それに疑問を感じつつ、黒服もまたその場に立ち止まってマエストロの言葉を待つことにした。
「先程の話、アレにはまだ続きがあるのではないか?」
「どうしてそのようなことを?」
「決まっている、自分の気になる対象の事を簡潔に済ませるような性格ではないだろう?」
「……クックック、随分と買ってくれてますね」
「それなりの付き合いではあるからな。 それで、先生はどうなのだ? 天海ランと言うのは大体知っているが」
「先生は先生ですよ。 生徒を第一に考える、立派な大人……我々とは真逆の存在と言っても過言ではないでしょう。 そして彼女は同時に、我々の同志足りえる」
「ふむ、だがその言い分だと断られたようだが」
「ええ、残念ながら。 ……先生はそんな感じですが、天海ランさんの事は?」
「アレは好かん。 いや、人柄自体は好意的だが……」
人柄は好意的。 そこまで言ったマエストロは不自然に言葉を区切り、静かに佇む。 はて、そこまで溜めるような事柄でもあったのかと黒服が思案していると、それまで話に入ってこなかったゴルコンダが急に話に入って来た。
「私は彼女を好意的にみることが出来ません。 何よりあのテクスト……見ているだけで吐き気がします」
「そこまで言います?」
「あぁ、成る程……私も、彼女のアレは一種の芸術だとも言えますが、見る人によってはそう思うのも理解できます」
思ったより辛辣なマエストロとゴルコンダの言葉に黒服が心外とでも言うような表情を浮かべるが……何を言っても二人に届きそうにない。 黒服は小さく息を吐き、気を取り直そうとする。
「成る程、二人からの評価は分かりました。 ですが私は、彼女を好意的に見ていますよ」
「それは実験対象と言う意味で、か?」
「いえ、その方面も無いとは言いませんが……彼女は先生と同類ですよ」
「とてもそうには思えないが」
「彼女を観察していると興味が尽きませんので。 ……良く彼女のような存在が、キヴォトスに留まり続けているとは思いますがね」
「逆に聞きますが、何をどうすれば彼女のような存在が生まれると言うのでしょう? あそこまでバラバラになったテクストを歪に貼り付けられた存在、見たことがありませんね」
「そこに関してはまだ何とも。 ですがそうですねぇ……」
「────────際限なく神秘を吸収し続ける特異な体。 それに様々な権能……遅かれ早かれ、彼女がキヴォトスにおける癌になるのは明白です。 そう言う点だと、彼女は先生以上に我々の同志と成り得ます」
黒服の目が、怪しげに光り輝く。 彼女が今後どのような道を辿り、そしてどんな結末に落ち着くのか……それは、まだ誰も分かっていない。
しかし、その道筋がどうしようもなく悲惨なものであるかは、目に見えて明らかだろう。
小説の書き方、どっちがいい?
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これまでの書き方でいいよ
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新しい書き方でお願い