セミナー副会長はとにかく巻き込まれたくない   作:ピンク髪大好きニキ

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水曜更新できなくてすまんなぁ……別の奴書いてたせいで遅くなった

土曜の更新は微妙ですが、なるだけ更新できるようにがんばる


42話「束の間の平穏と副顧問」

 

 

 

 

「……んあ、ここは……」

 

 

見知らぬ天井だ、と何故か言いたくなったけどこの天井は知ってる。 トリニティの医務室の天井だ、と言う事はこの後の展開が読めるわけで……

 

 

「お目覚めになられましたか、ランさん」

 

「ミネちゃん、おはよう」

 

「おはようではありませんよ……もう」

 

 

頬を膨らませて私を睨みつけるミネちゃん。 怖さより可愛さが勝るよと言いたいところだけれど、それを言ったら確実に藪蛇なので何も言わない。 私は賢いからね。

 

何でここに私はいるのだろうか……と直前までの記憶を何とか振り絞って思い出す。 確か試験の為にナギサちゃんを拉致して、襲撃してくるであろうアリウスに偽の情報を掴ませて、それで私は一番の障害になるであろうミカちゃんを足止めするために囮になって……

 

 

「ああそっか、やる事やってガス欠になったのか」

 

「言葉で言うのは簡単ですが、実際のところ怪我で大変なことになっていたんですよ? 肋骨にはひびが入っていましたし腕は骨折、腹部は内出血で頭部は裂傷。 怪我のオンパレードです」

 

「私が気絶してからどれくらい経ったの?」

 

「凡そ2日と言った所でしょうか」

 

「それで、怪我の方は?」

 

「腕の骨折がまだ治ってない以外は粗方治りましたね。 どうなってるんですかその回復力は」

 

「それは私も知りたいところだけど」

 

 

ツルギちゃん程じゃないけど、この尋常じゃない回復力には私も首を傾げるばかりだ。 まあ不便じゃないからそこまで深堀するつもりもないけど。

 

っと、そうじゃなかったね。 私の事なんてどうでもいいんだ、それ以上に大切なことがあったんだった。

 

 

「ミネちゃんは、補習授業部がどうなったか聞いてる?」

 

「それに関しては連絡がありましたよ? 全員合格のようです」

 

「ッ、はぁ~……良かった」

 

「随分と入れ込んでいた様子でしたからね、私も嬉しく思います」

 

 

そう言って微笑んでくるミネちゃん。 そうだね、本当に良かった……これで一安心、と言いたいところだけど。 残念ながら問題がすべて解決したわけじゃないんだよねぇ。

 

目下一番大事なことが終わったからこそ、細々とした問題が浮かび上がってくるともいえるけど。 いやそんなに細々としてないか。

 

 

「で、ミカちゃんはどうなった?」

 

「……そちらの方はシスターフッドの方で身柄を拘束、現在は監視下に置かれているとは聞きました」

 

「ま、それしか無いよね。 よりにもよってティーパーティーの重要人物が学園の転覆を目論んでた、みたいな状態になってるんだし」

 

「後処理が落ち着いたら事情聴取をする流れにはなっているようですが」

 

「問題は、ミカちゃんがどの程度関わっているかにもよるかな」

 

 

ミカちゃんの話しぶりだと、ナギサちゃんやらセイアちゃんの事柄には関わっていたようだけど、肝心のエデン条約自体への関係をほとんど話していなかったし。 それにミカちゃんからしたらナギサちゃんをどうにかした時点でほぼやるべきことは終わってる。 エデン条約の方はアリウスが主体となって動く……なんて事になっていてもおかしくはない。

 

そこに関しては一緒に拘束したアリウス生に聞いてみるしかないけど、あっちはあっちで何かありそうなんだよね。 あっさり降伏したところから見ても、一枚岩じゃなさそうな匂いがプンプンする。

 

 

「どの道、話が終わるには日数がかかると思われるのでランさんは安静にしていてください」

 

「関わった以上は私も話を聞かないといけないと思うんだけど?」

 

「ケガ人がバカなことを言わないで下さい」

 

「さいで……」

 

 

骨をパキパキ鳴らし始めたミネちゃんを見て私は即座に毛布を頭の上まで被る。 ゴリラは怒らせたらこえーんだ、わたしよくしってる。

 

ある程度の話は、先生が聞いてくれるだろうし私に情報共有してくれるとも思う。 なら私はさっさと怪我を治して復帰することに勤しんだ方が良いのかな?

 

 

「そんな睨まなくても私は安静にしてるって。 それよりも良いの? こんな場所にいて」

 

「セイア様の事は問題ありません。 危険視していた襲撃の実行犯が軒並み捕まったので……今は救護騎士団と正義実現委員会から人員を募って警護を行っています」

 

「なら良いんだけど。 ナギサちゃんは?」

 

「ナギサ様は……その、何と言うか」

 

「なんか歯切れが悪いね」

 

「その、意識は取り戻されたのですが。 『ヒフミさんが、ヒフミさんが』と憑りつかれたかのように繰り返し呟いていて」

 

「あー、うん、その、そうだね?」

 

 

トラウマになっちゃったんだろうなぁ。 自業自得と言ってしまえばそれでおしまいなんだけども。 でも今後も学校生活で顔を合わせる機会はあるだろうから早い所誤解を……誤解か? 割と本気で思ってそうだな? ヒフミちゃんアレ演技でやってたんだよね? 割と本気で言ってて関係修復が出来ませんなんて洒落にならないぞ。

 

そっちの方も先生に投げてしまおうか、いやでもなぁ……先生も怒ってそうだし。

 

 

「ま、治ったらやらないといけないことはある程度把握できたからいいや。 私はもうちょっと寝て怪我を治すことにするよ」

 

「是非そうしてください。 私もやらなければいけないことがあるのでこれで失礼しますね」

 

「うん、事が落ち着いたらまたサクラコちゃんも混ぜてお茶会しようね」

 

「ええ、それも是非」

 

「因みに前回お茶会した時さ」

 

「はい」

 

「時系列的にあの時もセイアちゃんって寝てたと思うんだよね」

 

「……そうですね」

 

「ハナコちゃんは確か救護騎士団の団長が傍で見守ってるみたいなことを」

 

「では私はこれで」

 

「話聞けよ」

 

 

旗色が悪くなったのを察知したのかミネちゃんは足早に医務室から立ち去っていく……お前仮にもトリニティの重要人物を放置してお茶会したとか言わないよな? 大問題だぞ、バレたらの話だけど。

 

パタリ、と扉が閉まった音が聞こえて、医務室の中に私だけが存在する状態となってしまった。 私は静かに溜息を吐き……次の瞬間には顔を思い切り顰め、右腕を痕がつくくらい強く握りしめた。

 

 

「ぐ、う……ッ!」

 

 

外傷がないはずなのに、内部からジクジクと滲むような痛みが生じてきて意識がそればかりに収束される。 まるで「お前には過ぎた力だ」と誰かに言われているようだ。

 

分かっている。 元来特別な存在でも何でもない私が扱っていいようなものじゃない。 ましてや何が由来で、何を代償に使えているのかすら分からない物なんだから。 今まで数えるくらいしか使った事はないが、使った力のそのどれもが埒外のナニカ。

 

 

「引くに引けない場面だったから使ったけど、やっぱり慣れないな……」

 

 

極力使いたくはないが、この先似たような場面がやって来た時……使わざるを得ない状況が来た時、私は又使うことになるのだろう。

 

気が重い……こんなことしなくても勝てるくらい強かったのなら良かったんだけど、残念ながら私はそんな大層な存在なんかじゃない。 最強格とか言われてても、結局は負ける機会の方が多いんだから。

 

 

「あーもう、やめやめ。 寝る前に気が滅入るような思考なんてしてちゃいけないよね」

 

 

私はそう言って今度こそ毛布を被りなおす。 眼を閉じて呼吸を落ち着け、睡魔が襲ってくるのを待ち続けた。

 

次に起きている時には怪我も治っているだろう。 そしたら各方面に顔を出して、話を聞いて、やるべきことを羅列して……

 

 

 

────────────────

 

 

 

「先生? ボーっとなされている様子ですが……何かありましたか?」

 

”ううん、ちょっと夢を見てたみたい”

 

 

所変わってシスターフッドの会議室、日数は少し経ちランも既に医務室のお世話から抜け出していたその頃、先生はサクラコたちと話をしていた。

 

今回起きた事件の顛末、そしてそれに伴う始末書やら資料のまとめを行っていたのだが……如何せんその量が多すぎたため、少々寝不足気味になっていた。

 

 

「確かにここ最近は資料を纏めるために睡眠時間を削っておられた様子。 ですがもう少し頑張って頂きませんと」

 

”そうだね、分かってる”

 

「……あまり良いとは言えない表情ですね」

 

”今回は、力不足を痛感していると言うか、そんな感じかな”

 

 

サクラコの言葉に、先生は苦虫を嚙み潰したような表情をする。

 

今回の件に関しては、先生は後手に回りっぱなしだった。 その上相手の予想以上の戦力に、肝心な部分をランに頼りきりになると言う……教え導くはずの生徒に大きな比重を持たせてしまった事に申し訳なさが湧いてくる。

 

 

「ポストモーテム」

 

”……?”

 

「何が起きたか、どのようなことがあったのかを纏めるものです。 ここは一回出来事を整理して考えを纏めてみましょう」

 

”分かった、お願いするよ”

 

「ええ、承りました。 ……先ずセイアさんの部屋の爆破に関して。 爆破は夜中の3時ごろに発生、その現場に最初に辿り着いたのはミネ団長でした」

 

「ミネ団長は現場を確認して、即座にティーパーティーへと連絡。 混乱に陥ったようでしたが、その後は情報の隠ぺい工作や犯人探しに奔走したと聞いています」

 

”うん”

 

「ティーパーティーがそうやって行動する中、ミネ団長はセイアさんの遺体と共に姿をくらませました。 救護騎士団の生徒が探してもその姿は見つけられなかったそうです」

 

”……あの、ちょっといいかな?”

 

「はい? 何でしょうか」

 

”ランから聞いたんだけど、ミネとサクラコってランとお茶会を”

 

「姿は、見つけられなかったそうです」

 

あっうん、そうだね

 

 

有無を言わせないサクラコの発言とその剣幕に、先生はそれ以上の追及をすることが出来なかった。 もうちょい粘れよお前。

 

 

「ティーパーティー側の視点だとこうなりますが、実際のところは違いました。 ミネ団長はセイアさんのヘイローが破壊されたと言う偽の情報を流し、セイアさんを安全な場所に隔離した、それが真相です」

 

”この選択は、セイアにとっては良い結果だった、んだよね?”

 

「そうですね。 ヘイローが破壊された生徒をわざわざ見つけて襲撃すると言う可能性は低いですから。 信じられる人物が少ない中、ならば自分の手でと言う思考に走ったミネ団長の最善の策だったと言えるでしょう」

 

”……”

 

 

確かに、今回の件に至っては黒幕が同じティーパーティーのミカであったことから、この時のミネの選択は正しかったと言えるだろう。 ……同じ仲間同士で疑い合うと言う、あってはならない事態を除いては、だが。

 

 

「唯一残念に思う事とすれば、今もなおセイアさんの意識が戻らない事でしょうか。 ミネ団長も原因が分かっていないと言ってましたし」

 

”……今も、ミネとセイアは安全な場所に隠れてる、んだよね?”

 

「そうです、隠れているんです」

 

”う、うん”

 

 

実際のところ、先生はミネから「ランさんの様子が気になるので彼女の処置は私が行います」と言われていたので全然隠れてない。 お前重要人物放っておいて良いのか、とも思ったが信用のおける生徒に警護を頼んでいると言われたのでそれ以上言う事はなかった。 だからもっと強く言えと言っているのだが。

 

 

「……あら、此方にいたのですね」

 

”ハナコ、来たんだね”

 

「先生がサクラコさんと面白みのない話をしていると思ったので、お邪魔しに来ました」

 

「ハナコさん……今はそんな冗談を話している場合では」

 

「相変わらず硬いですね……今度一緒に過激な本でも読まれますか?」

 

「であるならば、以前生徒から聞いたラン×ユウカの薄い本と言うのを」

 

「すみません、話を振った私が言うのもなんですが解釈違いなので今からあなたを殴ります」

 

「なんっでっへぇっ!!???」

 

”あぁ……”

 

 

聖母のような表情から一変修羅のような顔になりサクラコを殴りつけるハナコ。 これは第三者から見たらシスターフッドのトップを殴っているわけで問題にならないのかと疑問には思ったが、会議室の隅で様子を窺っていたマリーがサムズアップをしているので問題はないのだろう。 本当にそれでいいのかシスターフッド。

 

 

「は、ハナコさん……」

 

「何でしょうか? 助命の嘆願は聞き入れませんが」

 

「ち、違います。 私との約束は忘れていないかと」

 

「……勿論、忘れていませんよ」

 

”???”

 

 

突如殴る手を止めたハナコに怪訝そうな顔をする先生。 具体的な内容のない会話に一体何の話をしているのかと先生は疑問に思うが、特にそれに口出しすることはなかった。 まあ少しでもハナコにとって悪い話であるのならば即座に介入しようとは思っていたが。

 

だが先生の懸念は外れる。 先生には知らされていなかったが、サクラコがハナコと約束したことは────────「退学の撤回」だった。 以前からマリーがハナコに撤回してもらおうと何度も足しげく通っていたが、ハナコは首を縦に振ることはなかった。 それが撤回されたことにより、マリーは勿論サクラコも内心で安堵のため息を吐いていた。

 

……まあハナコの退学の理由はトリニティの内情もあるにはあるが、大半の理由は「これ私トリニティにいなくてもランちゃんの傍に行った方が絶対に良くね?」であることはマリー達も知らない。

 

 

「……ランちゃんの傍に常にいられないことは悲しい事ですが」

 

「………」

 

「……」

 

”……”

 

「無言で見つめないで下さい。 まあ何はともあれ、今の私は事を起こそうとする気はありませんのでご安心を」

 

「であるならば、良いのですが」

 

「それに補習授業部で学んだんですよ、足搔くことの大切さを。 ……ですよね? 先生」

 

”うん、そうだね”

 

 

何が何なのか先生には良く分かっていなかったが、自体が丸く収まったのであれば先生が何か言う事もない。 とりあえず頷いて分かっている風を貫く先生である。

 

 

「と、話が逸れましたね。 戻しましょう……セイアさんの襲撃ですが、実行犯はアズサちゃんでした。 侵入が夜中に2時とのことでしたので、およそ1時間の間、アズサちゃんとセイアさんは同じ部屋の中にいたと思われます」

 

”一体、何をしていたんだろね”

 

「詳しくは話してくれませんでしたが、暗い話だけ……と言う事はないでしょう」

 

 

アズサの聴取は、ティーパーティーの監査官を交えて行われていた、らしい。 その中で、アズサはアリウスの現状と、その為に行うべきことを考え……部屋の爆破を行って情報の攪乱を図ろうとしたようだった。 アリウス内でも派閥のように考えが二極化しており、アズサはその中でも穏健派……或いは、穏便な方法を模索してキヴォトス内に自分たちの居場所を作る、その為に動いているとは言っていた。

 

その中でもリーダー格の「サオリ」と呼ばれる生徒に遠回しに頼まれていた事をこなしただけに過ぎない。 まだ会えてはいないが、話をすれば解決の糸口が見えるかもしれない……先生はハナコから聞いた話によって、そんなことを思い浮かべる。

 

 

「情報が錯綜してはいますが、兎も角白洲アズサさんが転校して来たことによって最悪の展開は防がれたことだけは明白です。 私個人としては、補習授業部として退学を撤回するために試験に臨んだことも、そして合格したことも好意的に見ています」

 

「彼女の身元に関してはシスターフッドが責任をもって保証します。 異議申し立てなどさせませんよ」

 

「ありがとうございます、サクラコさん」

 

”私からもお礼を言うよ、本当にありがとうね”

 

「いえ、お礼を言われるまでもありませんよ」

 

”……となると、差し迫った案件は一通りこなしたと思っていいのかな?”

 

「そうですね、一先ずと言った所でしょうか? この場で私が行わなければいけないことも済みましたし、私はこの辺りで失礼するとします」

 

 

先生とハナコにお辞儀をしてその場を去っていくサクラコとマリー。 二人が去った後も、ハナコと先生はアズサの書類を纏めるために少しの間作業を行っていたが……それも済んで、今は二人でティータイムを楽しんでいた。

 

 

「……そう言えば先日、ヒフミちゃんがナギサさんと話をしたそうですよ」

 

”あっ”

 

「……その、先生の反応通りの事があったみたいで」

 

”それはそうでしょ……”

 

「その後、私の方にも謝りに来られまして。 反省はしているようですが些か……」

 

”そっちは私に任せて。 いやもしかしたらランが先に向かってそうだけども”

 

「そうですねぇ、ランちゃんの事ですから放っておくことはしないでしょう」

 

「私個人としては、ナギサさんの事も気にはなりますが」

 

”……?”

 

「一番気になるのは、ミカさんの事です。 気になりませんか?」

 

 

ハナコの一言に、先生は思案する。 無論気にはなる、ランからも聞いたがミカの動機は「ゲヘナが嫌い」だからだと。 ……本当にそれだけで、これほどまでの事を行ってしまうのだろうか?

 

その答えは、当人であるミカにしか分からない事だろう。 ハナコが行った時も、そしてその前にナギサが来た時も……ミカは頑なに話そうとしなかった。 本当にそれだけの理由か? もし真の答えを知ることが出来る、或いは隠された本音を聞き出すことが出来る。 そのような人物がいるのだとしたら────────

 

 

 

 

 

「やあ、ミカちゃん。 今ちょっといいかな?」

 

 

 

 

 

 

 

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