セミナー副会長はとにかく巻き込まれたくない   作:ピンク髪大好きニキ

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更新遅れてすまんの……時間がない、というよりは息抜きの時間欲しくてウマ娘やってるからともいう

良いだろウマ娘やったって、執筆もゲームも趣味の範囲なんだから

とは言うものの仕事忙しいのも本当なのでこの章からは週に1回か2回更新出来たら御の字だと思って、年末まではいそがしーんだ

ってなわけで今回から新章です。 エデン条約編3章にあたるけど4章分も混ざって一気にエデン条約編終わらせるつもりです
カルバノグに間に合う程度の時系列で3と4章の話を詰め込むぞ、後半はほぼオリチャーなのでおかしな点があったら指摘しつつ「でもこれオリチャーだからそんなもんか…」くらいに納得してて


【伸ばした手が紡ぐモノ】(TESTAMENT)
44話「楽園喪失/1」


 

 

 

『────────皆さん、如何お過ごしでしょうか? クロノススクール報道部の……え、そのフリはもういい? 何言ってるんですかこれが私の』

 

『はい、映像に乱れがあったようですがもう大丈夫ですね。 クロノススクール報道部の川流シノンです!』

 

 

午前11時、キヴォトス全域でその映像が流される。 今日はエデン条約調印式の為か、各地で生徒がその映像を眺めていた。

 

あの仲の悪さで定評のあるゲヘナとトリニティがよもや足並み揃えて……!? と言う驚愕の感情が一番多いものであるが、注目の的には変わりないだろう。 特に双方に在学する生徒の関心はとても強く、これからの変化に期待しているようであった。 まあ大半の生徒は悪感情を持っていない訳ではなかったのだが。

 

 

『今私は調印式の会場に来ているのですが……いやぁ、凄いですね! 見てくださいあの顔! どう見たってこれから仲良くしましょうって言う顔じゃないですよ! 今にも衝突が起こりそうな……』

 

 

途端に画面が乱れ、しばらくの沈黙が生じる。 次に映像が復活した時には、不満げな顔をしたシノンが画面に映り、現場の映像を流し始めた。

 

シノンが言っていた通り、会場に待機している生徒たちの表情は良いとは言えない。 メンチを切っていると言うか、睨み合いをしていると言うか、まあそんな感じだ。 画面越しにでも銃を握り締めている音が聞こえてくるかのようなその様相に、果たして本当に調印式が行われるのかと不安にもなるのだが、やると言っている以上はやるのだろう。

 

 

『一歩間違えれば惨事が起こりそうですね、現場にいる私は緊張で一杯です! 私の知っているゲヘナとトリニティの通りとも言えます!』

 

『調印式が行われるこの古聖堂ですが、何でも歴史のある場所なんだとか。 何故この場所を選んだのか、と言われると……ある筋からの情報ではゲヘナ側からの提案らしいです、意外ですね? 第一回公会議の現場となった場所、と言うのも理由の一つにあるのでしょうか?』

 

 

如何にもな理由がある、と言われれば現実はそうではない。 この場所を選んだ理由はただ一つ、マコトが「こういうのをやるならデカくて見栄えの良い場所だろう」とあんま考えなしに言ったからである。 この言葉にイロハはクソデカい溜息を吐いたと噂されているが、あながち間違いではないだろう。

 

 

『話は第一回公会議の方にそれますが、その時はユスティナ聖徒会と呼ばれる組織が定められた戒律を守り続けていたと言われています。 そのせいですかね? この場にはシスターフッドの方もいるようです』

 

『シスターフッドは対外的な行動をしていたとは……私の方では覚えがないのですが、これは一体どういった目論見なんでしょうか? 私達はこれから────────』

 

 

その後もシノンが画面の前で様々な話をしていたのだが、難しい話に移っていったためか生徒たちの関心は若干ながら薄れていくのであった。

 

SRT特殊学園の閉鎖、以前起こったサンクトゥムタワーの騒動、それから連邦生徒会への不満……様々な内容が報道されていたが、正直なところエデン条約を前にすればそのような内容は些事に過ぎない。

 

 

「結構同接は多いみたいだね。 ま、それ相応に話題性はあるから特段おかしな話ではないけども」

 

「ああ。 ……それにしても、この辺りも騒がしいな」

 

「この手の話の時にはね、野次馬が何処にでも湧いてくるんだよ。 お祭りの時に意味もなくぶらついて無駄に高いのにそんなに美味しいわけでもない焼きそばを食べるあの感覚と同じだね」

 

「ごめんなさいランちゃん、その例えは微妙に分かり辛いです」

 

「そう? ならどんな例えが……」

 

「近所で起きた火事に、行かなくてもいいのに野次馬に行っちゃうあの心理と同じ、とかですかね」

 

「あぁ、その方が何となくわかるかも」

 

 

それまで端末で放送を見ていたランが、そうぼやきながらパフェを口に運ぶ。 ここはトリニティ自治区にある店の一つであり、今日補習授業部が集まってお茶会をするために予約していた店でもあった。

 

当然ながらランはミレニアム所属の為調印式には呼ばれていない。 故にこうして補習授業部と時間を気にせず楽しんでいる、筈だったのだが。

 

 

「先程からずっと見ているようですが……」

 

「あ、ごめんね? でも何か気になっちゃって」

 

「まあ、特別な催しですから気になるのは仕方のない事だと思います」

 

「それとは、ちょっと違う感じなんだよなぁ」

 

 

何が、とは具体的に言う事が出来ないのだが。 漠然と違和感のようなものを感じていまいちお茶会に集中できていないラン。 そんなランの事をハナコは不安気に見ているのだが、彼女が何かをすることはない。 いや出来る事がなかったと言った方が正しいだろうか。

 

アズサはランよりはヒフミたちと話をすることで普通の様子を醸し出しているのだが、此方もまた今一つ話に集中できていないと言った様子がうかがえる。 その事にヒフミは気づきつつも、時がたてば自然と解消されるだろうと思い何も言う事はなかった。

 

 

「あぁ、先生が写ったね。 傍にサクラコちゃんが見える」

 

「古聖堂内で待機していたのでしょう。 調印式まではまだ時間的余裕はありますが」

 

「本当は先生もここにいたらよかったのですけど、参加しなければいけないとなっては仕方ないですよね」

 

「その時はまた計画を立ててみんなでお茶会をしましょう。 先生もまた補習授業部の大事な仲間に違いありませんし」

 

 

残念ながら、先生は調印式への参加と言う大事な役割の為にこの場に来ることが出来なかった。 その事に補習授業部は残念な気持ちになりつつも、この場にいない先生の分もお茶会を堪能しようと思い思いに注文をしていく。

 

このまま何事もなく平和に調印式が終わり、キヴォトスに新たな風が吹けばいい。 それが一番平穏で、幸せで、誰もが悲しまない結果につながる……その、筈なのだが

 

 

「────────ッ!!?」

 

 

────────残念ながら、世の中は上手い方向に話が進むことはない。

 

 

「きゅ、急に何!? ……もしかして、トイレ?」

 

「いえ、店の外に出てる時点でその線はないでしょう」

 

「アズサちゃん、一体何が……」

 

「……ごめん、気になるから追いかけるね」

 

「あっ、ランさん!?」

 

 

急に血相を変えて店の外に飛び出していったアズサを追いかけるべく、ランもまた店の外へと出た。 その瞬間、甲高い音と共に何かが急速に接近する感覚に見舞われる。

 

音のする方向へとランが視線を向けると、そこには……上空を通り過ぎていく、巨大なミサイルが映り込んだ。

 

 

「……何事もないなんてありえない、とは思ってはいたけど。 まさか本当に何かがあるとは」

 

 

アズサはこれを察知していたのだろう。 いや、もしかすればこれすらも知っていた可能性も……そこまで考えて、ランは首を振る。

 

知っていた知っていないは今は重要な事ではない。 今最優先で行うべきことは「アズサの行き先の確認」と「調印式の現場の現状」である。 閉じていた端末を開くが、調印式が映るはずの画面は真っ暗になっており、現場に何かあったのは間違いないだろう。 あのミサイルの行き先が、言葉を発さずも察することが出来る。 別チャンネルを確認すると、そこには古聖堂が爆撃されたと言った内容と共に少し離れた場所からの映像が流れていた。

 

先生の安否は気になるところだが、日頃使っていたタブレットの不思議な能力を思い返す限り少なからず無事ではあるだろう。 あの能力が何処まで続くかは不明だが。

 

 

「ミカちゃんからの補給が無くなったから大々的なことは出来ないとは思っていたけど、まさかあんな隠し玉があるなんて」

 

 

裏に控えていたのは余程の大物か、またはミカに教えていなかっただけで物資に余裕があったのかは今は知ることが出来ないが、その結論を出す前にランは走り出していた。 既に遠くにいて後ろ姿すら辛うじて視認出来る程度の距離まで離れてしまったアズサの行き先は、果たして何処なのか。

 

背後から聞こえたような気のするハナコの制止する声も、今のランには聞こえていなかった。

 

 

 

────────────────

 

 

 

(これは、巡航ミサイル? 対空防御も間に合わないほどの……)

 

 

時をほぼ同じくして、ヒナは古聖堂へと向かう道中でミサイルの爆撃を受けていた。 乗っていた車は大破してしまいヒナ自身も少なくない怪我を負っていたのだが……まだ自信の足で立てている辺り、その耐久性はすさまじいと言えるだろう。

 

そんなヒナは額から流れる血を煩わしそうに拭いつつ、現状の確認を行っていた。

 

 

(今のような技術を使ったミサイルを運用できる所は……ミレニアムならまだ可能性はあるけど、それは絶対にない。 何よりランがそんな物を許可するとは思えない)

 

(いや、それよりも。 爆撃だけで生じる被害とは思えない。 まさか最初から古聖堂に爆薬が? だとしたら……)

 

 

周囲で風紀委員の生徒が負傷しながらも指示を飛ばしている中、不意に銃撃音が鳴り響く。 何かと思ってヒナがその方向に視線を向けると、そこにはガスマスクを付けた生徒の姿があった。

 

 

「……アリウス? まだそんな余力があったって言うの?」

 

 

まさかの勢力に、ヒナは目を見開く。 トリニティで起きた一連の事件はヒナの耳にも入っていた。 と言うよりも先生やシスターフッド経由で聞いたのだが。 だからこそ、補給の絶たれたアリウス側がこれ以上の行動を起こすのは無理に等しいと思っていた……その判断が間違っていたと言う事に気付き、ヒナは苦々しい表情を浮かべる。

 

 

(古聖堂まではまだ距離がある。 此方の態勢は悪い、先生の安否も不明……本当に、面倒なことになった)

 

 

襲撃が起こった以上、自分が動かなければ事態は終息しない。 先生の安否や子の襲撃の規模がどれほどのものか、考えれば考える程多くなっていく内容に思考を放棄したくなるが、ここで止まっていても良い事は何もないと言う事だけは理解しているためかヒナはすぐさま愛用している銃を持ちアリウス生との迎撃を行っていく。

 

細かいことは良い、先ずはこの襲撃を切り抜けて古聖堂へと赴き、先生の安否を確認して安全な場所への退避を行うことが先決だろう。

 

 

「悪いけど、今は貴女達に構っている暇はないの。 そこをどきなさい……ッ!」

 

 

怪我はしているものの、その動きには精細さが欠けた様子は全くない。 いくら万全の準備を行って実行した襲撃とは言え、アリウス側の攻撃の手がすくなっていくのは時間の問題であった。

 

防御の手が薄くなった場所を即座に見つけ、ヒナは古聖堂への道を順当に進んでいく。 そんなヒナの前に、アリウス生徒が立ちはだかった。

 

 

「いい加減しつこい……ッ!」

 

「あわわ、ま、待って下さいぃ……! 私は何もしないですからぁ」

 

「……? 貴女、アリウスじゃないの?」

 

「アリウスですけど、複雑な事情で敵ではないと言うかぁ」

 

「意味が良く分からないわ、分かるように説明して頂戴」

 

 

立ちはだかるとともに意味不明なことを言い始めたアリウスの生徒に対し、ヒナは訝しげな表情を浮かべる。 そのアリウスの生徒は古聖堂の方向へと手振りを行い、駆け出していく。 罠かと一瞬躊躇うが、すぐさま生徒の後ろ姿を追った。

 

 

「わ、私はアリウススクワッドの槌永ヒヨリと言いますぅ。 ここにはリーダーの指示で来ました」

 

「リーダーが誰かは分からないけど、何の意図があって?」

 

「えっと、サオリ姉さんはアリウス以外の協力者が欲しいんだと思います。 アリウスは今二つに割れてて、今襲撃を行っているのはサオリ姉さんと反対の意見を持ってる派閥と言うか」

 

「……そう言えば、そんな感じの報告を聞いた覚えがあるわ」

 

「それと、これを」

 

「これは何かしら?」

 

「今アリウスを支配しているマダムの、これまで行ってきた所業と言うかそんな感じの物をまとめたデータです。 襲撃しているアリウス生徒は、マダムに逆らうことが出来ないと言うか、半ば洗脳みたいな状態なんです」

 

 

予想外の言葉に、ヒナは驚愕の表情を浮かべる。 だがまだ全ての情報が出たわけではなさそうと言う事もあり、手渡されたUSBメモリを懐に仕舞い込んで話の続きを促す。

 

 

「話を続けて頂戴」

 

「はい。 私達は元からトリニティや他の学園と歩み寄って、キヴォトスに居場所を作りたいと思ってたんです。 でもそれを良しとしないマダムが、逆らえない生徒を使って……」

 

「……と言う事は、トリニティの一件は?」

 

「サオリ姉さんは本当に歩み寄りたかったんです。 でもそれを悪用したのがマダムと言いますか……トリニティの一件が失敗に終わったことに業を煮やしたマダムが、裏でずっと進めてたらしい調印式の襲撃を今回こうして実行に移したので、サオリ姉さんを筆頭に今反対派閥の生徒が各地で鎮圧を行ってるんです。 これが失敗に終わったら、私達はおしまいですね、えへへ……」

 

「笑い事ではないのだけれど……それで、最終的な目的は何なの?」

 

「良くは分かってないんですけど、古聖堂にある何かが欲しいとは聞きました。 その為にアツコちゃんとサオリ姉さんが古聖堂にいるんですけど、今はどうしているのか」

 

「目的が分かっているのなら、猶更行くべきではなかったんじゃないのかしら?」

 

「何の罪もない生徒を人質に取られて、はいそうですかって納得は出来ないですよね?」

 

「……」

 

 

その通りだ。 ヒナがヒヨリたちの立場でも同じことをしただろう。 意地悪な質問をしてしまったと思い目を伏せるが、ヒヨリは特に不快に思っていなかったらしい。 すぐに前を向き、その足踏みを速める。

 

 

「すぐには信じることが出来ないことだと思いますけど、信じてほしいって言うのが本音です。 古聖堂の地下には二人がいますけど、地上にはミサキちゃんがいて襲撃の妨害を行ってます。 シャーレの先生? とか言う人も私がいなくなる前には安否を確認できたって聞きましたし」

 

「ッ! そう、無事なのね」

 

「アリウスの為にも、先生が無事な方が良いと思ったので。 これが終わったら先生に口添えをお願いしたいなぁ、なんて」

 

「……そうね、これが無事に済んだら口添えだけはしてあげる」

 

 

まだ完全に信じたわけではないが、その口ぶりに嘘は見受けられない。 少なくとも渡された情報の確認が取れたらというのもあるが、本当にアリウスが歩み寄るというのなら悪い話ではないはずだ。

 

ヒナはそう結論付けて、古聖堂へと向かう足取りを速める。 兎にも角にも、先生がどうにかしないといけない事が増えてしまったというのもある。 今すべきことをするために、自分は急がなければならない。

 

 

────────────────

 

 

 

「ここで本当に……?」

 

「ふむ、質問の意味が守護者と言う意味であれば、肯定しよう。 そもそも私がここにいるのは守護者の威厳を複製するためなのだからな」

 

 

時間は少し遡り、場所は古聖堂の地下。 そこでアリウススクワッドの秤アツコと錠前サオリは、複数のアリウス生徒と共に一人の人物を待っていた。 ……人物と定義するには、些か容姿が異なってはいるのだが。

 

その人物はマエストロ、ゲマトリア所属の得体のしれない存在である。

 

 

「最初はあまり乗り気ではなかったが……複製できるのであれば話は別だ。 ロイヤルブラッド……其方のおかげで、私の実験はまた更に崇高へと近づくことが出来るであろう」

 

「……」

 

「……ふむ、話せないというのは不便なものであるな。 いや、今は余計な話は不要か。 では早速行うとしよう」

 

 

マエストロはそう言って何かしらの儀式めいた行為を行う。 その行為が果たしてどのような効果を齎しているのかアツコには判断のしようがなかったが……

 

 

「────────ふむ、これが……」

 

 

目の前に複数の生徒のような何かが現れれば、嫌でも成果が判断できた。

 

物言わぬガスマスクの生徒。 一糸乱れぬその立ち振る舞いと皆同様な服装、戒律を守りシスターフッドの前身であるユスティナ聖徒会……その複製が、今マエストロによって姿を現す。

 

 

「私がすべきことはこれで終わりだ。 後は其方の方で使うといい」

 

「あぁ、言われなくても分かっている」

 

「今回は実に有意義な物であった。 再び相まみえるかは……何とも言えないが」

 

「願わくば二度と会うことがないようにしたい」

 

「随分と嫌われたものだな……いや、これもベアトリーチェの印象の悪さ故、か」

 

「────────聞き捨てなりませんね、私は特に悪いことをしている自覚はないのですが」

 

「ッ!?」

 

 

今まさにアツコの手によって複製を行使しようとした瞬間、この場にいるはずのない人物の声が聞こえてサオリの動きが止まる。 声の下方向に目を向けると、そこにはマダム……ベアトリーチェの姿があった。

 

おかしい、聞いていた計画であればマダムが動くことはなくアツコ達アリウススクワッドが主体となって調印式を襲撃する手はずだったはず。 その計画を逆手にとって、サオリは反対派閥の鎮圧とベアトリーチェのこれまでの所業を知らしめる……そう言う腹積もりであったのだ。

 

 

「マダム、どうしてここに?」

 

「いえ、特に深い理由はありませんよ。 強いて言うのであれば……小賢しく動き回る鼠が、目障りになって来たから、とでも言いましょうか?」

 

「……ッ!」

 

(……成る程、此方が動くことは想定の範囲内だった、と言う事か)

 

「だが、ユスティナ聖徒会の指揮権は此方にあるはず。 ここに来るのは早計だったのでは?」

 

「何か思い違いをしているようですね。 確かにユスティナ聖徒会の複製はロイヤルブラッドであるアツコにしか行使できない物であったでしょう。 ですが……」

 

 

ベアトリーチェはそこで言葉を区切り、手を翳す。 するとそれまで何も行動を起こさなかった複製が、まるでベアトリーチェを守るかのように動き始めた。

 

その行動にサオリが目を見開いていると、口の端まで裂けるような笑みを浮かべたベアトリーチェがサオリを見据えて口を開いた。

 

 

「何のための生徒会長の立場だと思っているのです? それに……私に科せられた制約に、ユスティナ聖徒会は含まれていません。 後は不穏分子を排除すればいい、のですが……」

 

「……?」

 

「アツコだけはまだ使い道がありますからね、それは此方に渡してもらいましょうか」

 

「ッ、アツコ。 お前は地上へ行け、ここは私達で抑える」

 

「サっちゃん」

 

「行け! ……ミサキは上にいるし、ヒヨリにはアレを持たせてある。 アズサに話を通していなかったのは痛手だが、シャーレの先生を頼るしかない」

 

「……分かった、気を付けて」

 

「ふ、任せろ」

 

 

自信ありげなサオリの態度を見て、アツコは足早に地上への道を走っていく。 その姿を追いかけようとしたベアトリーチェだったが、すぐさま動きを止めてサオリを睨みつける。

 

 

「無駄な足搔きを。 既に戦力差を知っているというのに何故そんな無駄なことをするのです? それもまたあの忌々しい大人の猿真似ですか?」

 

「マダム、お前には分からない事だ」

 

「実に不愉快です。 奇跡も、努力も、希望も、貴女達には必要のない事。 何をしても徒労に終わる虚しい事だと教えたはずです」

 

「私はそうは思わない。 奇跡はあった、努力をし続けた、希望はまだ残っている。 ……洗脳するには、少しばかり遅かったな」

 

 

薄暗い地下で、ベアトリーチェ率いるユスティナ聖徒会とサオリ率いるアリウス生徒が対峙する。 どちらからともなく発砲をし、戦端は開かれた。

 

ベアトリーチェは倒されては生み出されていく複製を見て、一歩ずつ後方へと下がっていく。 必要ないのだ、彼女が先頭に立って動き回るなどと言う体力を浪費する行為は。

 

 

(まあいいでしょう、残りの事は他の生徒と……この複製にしてもらえば。 複製の権利を掌握することと、アツコさえ手に入れば後はどうなろうと関係ありません。 そう……)

 

 

 

 

 

 

 

(────────アツコ以外は、邪魔になれば爆弾で処理すればいいだけの話なのですから)

 




あと特に理由はありませんが、息抜きに書いてた短編……短編? の匿名解除したので気になったらそっちも見てね、まだ完結してないけど

一撃必愛、彼女は何でぶん殴るんですかね

小説の書き方、どっちがいい?

  • これまでの書き方でいいよ
  • 新しい書き方でお願い
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