セミナー副会長はとにかく巻き込まれたくない   作:ピンク髪大好きニキ

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めっちゃ読まれてるし評価も高くてモチベーションが上がってるので連日投稿です
その代わりおじさんの方が更新滞ってる、ほんとすまん

ここまで読まれるとは思ってないってのは毎回言ってるんですけど、現在進行形で増えてるお気に入りを見ると驚きとか喜びより前に恐怖が襲ってくるんですよね、勢い良すぎてドン引き、大量の餌を出されて後退る猫ミーム的なアレ

完全に余談ではあるんですけど、執筆に意識向け過ぎたのか夢にまで出て来た時は「マジかよお前」ってなりました。 「いっぱいしゅき……」がポプテピ調で出て来たし泣きわめく部分がこのすばの例の泣き顔で出て来た。

夢から覚めても鮮明に覚えてる辺りホントに印象的だったんやなって……


あと見て分かると思いますが今回からアビドス編です、途中参加だし端折りまくるんでミレニアムが関わらないところはめっちゃすぐ終わります


巻き込まれる少女と対策委員会
4話「争いごとは進んでやりたくはない巻き込まれ娘」


 

 

 

ある日の昼下がり。 ミレニアム内にあるエンジニア部の部室にて……ランは定期的に頼んでいる銃のメンテナンスに向かっていた。 背中にはアドミニストレーター、そして右手にはリベレーターを持っておりこれからカチコミをすると言われても納得が出来る装いである。

 

やがて辿り着いたエンジニア部の部室前で、一人の生徒が笑顔で待ち構えていた。

 

 

「やあラン、待ってたよ。 それとも、ラン副会長と呼べばいいかな?」

 

「今更畏まらないでいいよ、普通に呼んでってば」

 

「軽いジョークさ、ランは何時も表情が硬いからね。 入学当初からずっと」

 

「……そんなに硬いかな?」

 

「硬いさ、そうじゃなきゃコトリやヒビキの態度もああなると言うものだよ」

 

 

ランの言葉に苦笑して指差す────エンジニア部部長の白石ウタハ。 指差された方向を向くと、そこには今しがた名前の出た豊見コトリと猫塚ヒビキの二人が引き攣った笑顔をしながら立っていた。

 

 

「お、お疲れ様ですラン先輩!」

 

「お疲れ様です……」

 

「二人ともお疲れ様……そんなに、私の表情って硬い?」

 

「その……ハッキリ言うと、そうですね」

 

「硬い、かな。 それと立ってるだけで雰囲気があるというか……」

 

「……そうなんだ」

 

 

面と向かって表情が硬いと言われて、少しだけ気持ちが沈むラン。 失礼なことを言ってしまったかと二人が慌てるが、ウタハは笑いながらランの肩を叩いてくる。

 

 

「ははは、だから前にも言っただろう? もう少し肩の力を抜いてみることをお勧めするって」

 

「……これでも抜いてるつもりだけど」

 

「そうかもしれない。 でも普段のランを考えればもっと抜いても誰も笑わないと思うけどね」

 

「ウタハちゃんって、サラッと難しいことを求めてくるよね」

 

「難しいことだとは思わないよ、ランが勝手に難しく考えてるだけさ」

 

 

やや慈しみの籠った目でランを見つめるウタハ。 今の会話から察せられるが、ウタハはランの本来の顔を知っている。 今は中々タイミングが合わず会うことは難しいが、かつてはリオやヒマリ、そして部活は違えどヴェリタスの各務チヒロの4人でランの事を見守ったのだ。 尚4人の中で一番太腿を濡らされてないのはウタハである。

 

残り三人は滅茶苦茶濡らされた、もうそれはそれはデロッデロに。 何なら未だにヒマリは濡らされているのだが。

 

 

「さて、場も温まったことだし本題に移ろうか。 今日は何時ものメンテナンスだけかい?」

 

「今のところこの二つで間に合ってるから。 それに増やそうにもコスト的な面で割に合わないし」

 

「そこは中々解決しない問題点だ、下手な武器だと直ぐに破損するからね。 壊れるまで使ってもらえるのはエンジニアとして喜ばしいが、すぐ壊れるようなものを渡してしまうとなれば名折れだしね」

 

 

ウタハの言葉に、ランはかつての出来事を思い出す。

 

もっと持ち運びの容易なサブウェポンを作ろうという話は何度も出た。 携帯性の高いハンドガンや伸縮性のある警棒など……しかし、耐久性と言う点でランには向いていなかった。

 

それはそうだろう、ランの戦闘スタイルは超至近距離でのインファイトを軸としている。 中距離や遠距離が出来ないわけではないが、可能なら近距離の方が良い。

 

そうなると、どうしても手足を武器の一つにする場面が多い。 ハンドガンや警棒は一見合っているように見えるが……当の本人の異常とも言うべき膂力に、武器の方が耐えられない。

 

 

「アドミちゃんもリーベちゃんも、大分無茶をして素材を捻出したからね」

 

「ランの戦闘に耐えるとなれば、生半可なものは使えないからね」

 

 

結果、リオとヒマリがキヴォトスを駆け回って(ヒマリは駆け回っていないが)かき集めた素材で何とか作ったアドミニストレーターとリベレーター以外の武器は、終ぞ完成することがなかった。 まあ最悪その辺りの電柱を引っこ抜けば武器になるのでラン的にはそこまで困っていない。 その後の請求は怖いが。

 

 

『────安心して頂戴。 素材の方は私が今も探している最中だから』

 

『────あら、聞き捨てなりませんね。 何も貴女だけが探しているわけではありませんよ?』

 

「あ、リオちゃんにヒマリちゃん」

 

「見ていたなら最初から会話に参加すればいいのに」

 

 

唐突に虚空に投影されたリオとヒマリの姿にヒビキとコトリが固まっている中、何事もなかったかのようにランとウタハは話を続けていた。 エンジニア部の管理下にないドローンが二つ飛んでいたので「ああ、どうせあの二人だろう」と予想していたのが大きいのだが。

 

 

『野暮なことを言わないで頂戴、私は今ランの姿を撮影するので忙しいの

 

『真似をしないで下さいますか? それとそのアングルは私が撮影しようとしていたのです

 

『どのアングルで撮影するかは個人の自由よ、貴女に注意される筋合いはないわ』

 

あの、まずは撮影しないでほしいんだけども

 

『……ッ!? そんな』

 

『ら、ランちゃん? そんな……私に死ねと?』

 

そんな重大な話になる普通????

 

 

困った、このままじゃメンテナンスどころじゃない。 そう思ったウタハは何も言わず静かにメンテナンスへと逃げた。

 

ランはそんなウタハを人を射殺すような目で追っていった。 まるで「え、お前この状況下で見捨てる?」と言っているようだ。 嗚呼、何と儚き友情なのだろうか。

 

 

『ラン、考え直して頂戴。 私にとっては死活問題なのよ』

 

「いや、そもそも直接会いに来ればいいと思うんだけど」

 

『それは……その、恥ずかしいじゃない』

 

乙女か??? 前まで会ってたのに今になってそんなこと言うの?」

 

『ふっ、これだから下水道は……ランちゃん、私は良いですよね?』

 

「ヒマリちゃんはそれなりの頻度で会ってるから撮影しなくても良いと思うんだけど」

 

『何言ってるんですか、貴女はアイドルのライブを生で見つつDVDでも見るし、撮影会も写真集も網羅するオタクの気持ちが分からないと? それはいけません、推しの姿はどんな姿でも見逃すことなく脳裏とデータに保存するのが大事なのです、それが分からないとは……』

 

え、ごめん何で今私説教されてるの???

 

『ラン、貴女は推されると言うことをちゃんと理解したほうがいいわ』

 

「……リオちゃんとヒマリちゃんは私の事を推してる、と」

 

『違うわ、好きなのよ』

 

『好意を寄せてますが、それはそれとして記録に残しているだけです』

 

「まあ私も二人のこと好きだけどさ」

 

ちょっと待ってて頂戴、血が出たわ

 

おっと私も、下の処理をしてきます

 

「早よ帰れや」

 

素早くドローンを確保してカメラ部分に目張りを施していくラン。 そんなランの姿を、エンジニア部の三人は何とも言えない顔で見つめていた。

 

 

「見たかい、アレが天海ランという生徒だよ」

 

「凄いですね、ラン先輩」

 

「うん、凄いね……」

 

 

分かってくれたか、とウタハは心の中で頷く。 飾らないありのままのランの事を知ってもらえれば、必ず受け入れてもらえると思っているからだ。 ランのありのままを知るものが増えれば、自ずとランもありのままでいられる……同級生として、そして親友の一人としてランが笑っていられる場所を増やしてあげようと

 

 

「暴走気味な会長にヒマリ先輩を抑えるなんて、流石副会長だね」

 

違う、そうじゃない

 

 

どうしよう、この子達物造り以外だとてんで機微に疎いぞ? とウタハは頭を抱える他なかった。

 

 

 


 

 

 

「うーん……どうしてこうなってしまったのか」

 

 

見渡す限り広大で、しかし人の気配がほぼ感じられないゴーストタウンとでも言うのかな? そうなってしまったアビドスの町中を車で進みつつ、私はなぜこんなところにいるのかと数時間前の事を思い返す。

 

切っ掛けはとても単純で、ユウカちゃんが先生に渡さないといけない書類を持っていたからだ。 期限は差し迫っていない物の、内容を見る限りこういうのは早めに提出しておいた方がいい、私はこれまでの業務で嫌と言うほど知ってる。 すっかり忘れてて提出期限ぎりぎりになって思い出したときのあの絶望感は半端ない。

 

では直ぐに渡せばいいのでは? 私はそう言ったんだけど、何でも先生は今現在アビドスで顧問をしているらしくいつ戻ってくるのか未定らしい。 まああそこはなぁ……借金があるし先生がそれを知って何もしないかと言われれば、絶対に見捨てないと断言できる。

 

渡したいが戻ってくるまで待とうと思います、何て言ってたユウカちゃんに代わりに渡しに行くことを伝えると、ユウカちゃんは申し訳なさそうにしつつも私に書類を手渡してきた。

 

 

「じゃあユウカちゃん、私のいない間セミナーの事はよろしくね」

 

「お任せください、滞りなく業務をこなしてみせますよ」

 

「頼りにしてるよ」

 

「ランさん」

 

「? なに、ノアちゃん」

 

 

書類を紛失しないよう頑丈なケースの中に仕舞い、いざ出発しようかとした時だ。 ノアちゃんが真剣な顔で私の事を見つめてきていて一体何事かと身構える。 ノアちゃんは一度深呼吸をした後……

 

 

「────お気をつけて、ご武運をお祈りしています」

 

私戦争しに行くと思われてる????

 

 

そういう見送りは求めてないのよ、しかもノアちゃんに言われた日は大体巻き込まれてるし……あれ、もしかしてノアちゃんって死神か何かか? 本人はバンドマン……いやバンドウーマンだろ? 頭のドリトス仕舞えよ。

 

違う、そうじゃない。 私はあくまでもユウカちゃんの書類を先生に届けるためにアビドスへ向かうのだ。 ユウカちゃんはアビドスの地理に詳しくないしね……あそこは初見だと迷うだろうし、地図も更新されているのか怪しい。 先生だって何事もなく無事に辿り着けたのか怪しいところだ。

 

それに長年の借金の関係もあるが、住民の数だってとても少ない。 争いになるような要因が少ないからそこまで心配することはないだろう。

 

 

「大丈夫だって、戦闘になるような生徒がいないからね。 アビドスだって、知り合いがいるから何とかなると思うよ」

 

「あれ、ラン先輩ってアビドスに知り合いがいたんですね」

 

「…………うん、いるよ。 いや、いたって言えばいいのかな」

 

 

そこまで言って、私は懐かしい顔を思い出す。 そう、確かにいたのだ……底抜けに明るくて、気が合って、一緒にバカやって怒られて……突然別れることになった親友と、その後輩が。

 

後輩の方はいなくなっていないし、今は3年生になっていることだろう。 2年生までの思い出しかないから、今はどうしているか分からないけど。

 

 

「……あ、ごめんなさい。 触れちゃいけない事でしたか?」

 

「ううん、もう立ち直った話だよ。 それに私が前を向いてないと怒られちゃうからね」

 

「そう、ですか」

 

「うん、そうなんだよ」

 

 

だからこの話はおしまい、暗い顔は似合わないしね。 今から出発するって言うのに暗い顔で見送られるととても反応に困るし、葬式か何かか?

 

 

「渡した後、もしかしたら何日か通いで行く可能性もあるんだけど……良いかな?」

 

「ええ、問題ありません。 ラン先輩が一人抜けて支障を来すような運営はしていないつもりですから」

 

「そっか、それならよかった」

 

「それにラン先輩が愛想尽かして出て行ったって言えばリオ会長も死ぬ気で仕事してくれるでしょうし」

 

「それだけはやめてあげてね????」

 

 

多分リオちゃん白目剥いて倒れると思うんだけど? でもリオちゃんの事だからキヴォトス中の監視カメラをハッキングして私の居場所を探そうとするかも。

 

そんなこんなで、私はこうしてアビドスまで赴いていたのだ。 それにしても暑いな、一年を通して日差しは強いし砂嵐は吹き荒れてるし……アビドスから人がいなくなった最大の原因は、砂嵐だもんね。 前に来た時も目に見える範囲で砂嵐が巻き起こってたことを思い出して何とも言えない気持ちになる。

 

懐かしい思い出が脳裏を過っていく中、私は着々と目的地であるアビドス高等学校の校舎へと近づいていく。 ……何か妙に騒がしいな? もしかして新入生が沢山いたのかな? 確か前はホシノちゃんを筆頭にノノミちゃんとシロコちゃんの三人だったはずだし、もし増えたのなら喜ばしいね、きちんと挨拶をしないと。

 

 

「─────、──────ッ!!」

 

「何かな、活気があるというよりはまるで銃げk」

 

 

「銃撃戦みたいだ」と言おうとした私の言葉は、フロントガラスを貫通してきた銃弾が私の顔面に直撃することによって中断させられる。 どうやら現在進行形で襲撃か何かが起こっているらしく、敵側の銃弾がこっちを襲って来たらしい。 一瞬とはいえ視界が遮られたからか、私は勢いよく住宅街の外壁へと車ごと突っ込んでいった。

 

……なんだよもぉぉぉぉぉっ!!!! 結局巻き込まれるんじゃん!!!!

 

 

────────────────

 

 

 

小鳥遊ホシノが『それ』に気付いたのは、本当に偶然だった。

 

対策委員会の定例会議で奥空アヤネを怒らせてしまい、その機嫌を直してもらうべく行った柴関ラーメン……そこで会ったアビドスでは見慣れない生徒によって、今現在アビドス校舎の前では激しい銃撃戦が繰り広げられている。

 

対策委員会の十六夜ノノミ、砂狼シロコ、黒見セリカ、そして作戦指揮を行う先生とサポートの奥空アヤネ……情報収集によって出た便利屋68と雇われたらしい傭兵たちとの戦闘は、まさに佳境へと差し掛かっていた。

 

 

『ほ、ホシノ先輩に先生、それと他の皆さんにもお伝えしますね』

 

『今現在、便利屋68の後方からやってくる車両を確認しました! 今の速度を維持するのであれば5分もしないうちにここに来ます!』

 

「ッ、増援って事かな?」

 

「分かりませんが、警戒はしておいた方がよさそうですね」

 

 

アヤネの齎した情報に、警戒心が更に跳ね上がる。 現在は拮抗しているが、これ以上の増援となるといくら先生の指揮と言えど苦戦は免れない……ホシノはそう分析していた。

 

自分がもう少し全力を出せば良いのだが、出来ればそんな場面は来ない方がいい。 故に増援をどう対処すればいいのかともうすぐ目視の範囲にやってくる車両を確認しようとし……

 

 

(……あれ? あの車って……)

 

 

ぴたり、とホシノの動きが一瞬だけ止まる。 何かあったのかと先生の心配するような声がインカムから聞こえてくるが、ホシノはそれどころではなかった。

 

外観がそこそこ変わっているが、その車両には見覚えがあった。 先輩と、自分と……そして、彼女と乗り回した日々が思い出される。 「見た目がいいし乗り心地がいいから」と先輩が言って、それを彼女が二つ返事で購入したあの日の事は、今でも鮮明に覚えている。

 

 

「……どうして」

 

 

戻って来たのか、と言う言葉を飲み込む。 そんな言葉、自分が言う資格があるのだろうか? 自分の、そして彼女の大好きだった先輩がいなくなったのは……他でもない自分のせいなのに。

 

 

「アルちゃん! 後方から車が来てるよ!」

 

「え!? 雇ったのはここにいる人たちだけだし……」

 

「ならアビドスの増援かな? 合流されると面倒だからここで対処したほうが……何かあの車、見覚えがあるような」

 

「そ、そうよね! ここからなら……正確に狙え、あっ」

 

 

銃を構えスコープを覗いたアル。 何かに気付いたようだったが、引き金は既に引かれた後であった。

 

フロントガラスに突き刺さる銃弾、射線から考えて運転手に直撃したのは間違いないだろう。 その車だって住宅の外壁に突き刺さった、だというのに……

 

 

「あ、あわわわわわわ」

 

「あ、アル様!? 一体どうしたんですか!?」

 

「アルちゃん、様子がおかしくない?」

 

「に、逃げ……いえ、依頼は失敗できない、でもぉ……ッ!」

 

 

突如様子のおかしくなった雇い主に何事かと思う傭兵はいたが、給料分は働かないとと思っているため何かを言うことはない。 気になりながらも銃撃を続ける傭兵。

 

 

────────そんな傭兵の顔面を、今しがたアルが撃ち抜いた筈の人物が蹴り飛ばした。

 

「がはぁっ!!?」

 

「え、何なんなの? 仲間割れ?」

 

「ッ、撃たないでセリカちゃん!!」

 

「どうしたのホシノ先輩、敵じゃないの?」

 

”違うよ、セリカ。 彼女は……”

 

 

様子のおかしなホシノに困惑しつつも突如乱入した生徒に対して攻撃をしようとしたセリカを、そのホシノと先生が同時に止める。 何だ、一体何なのだとセリカが思っていると

 

 

「……あのさぁ

 

ひっ

 

「まさかこんなところで会えるなんて思わなかったよ、アルちゃん」

 

「げ、やばっ……」

 

「……あー、やっぱり。 道理で見覚えがあると思った」

 

「え、なに? 便利屋68ってさ、悉く私の神経を逆撫でする様なことしかしないの? もしかしてわざとやってる? お前らふざけるなよ?

 

よりにもよって! アビドスを!! お金さえ貰えれば何でもするとは聞いたけどさぁッ!! 超えてはならない一線ってのがッ……いや、知らないか。 知らないでやってるなら、なお性質が悪いけど」

 

「ひぃ……!」

 

 

ゆらりと歩いてくる一人の生徒の気迫に、便利屋68だけじゃなく傭兵すらも後退る。 まるでその生徒が誰か知っているように、どんな生徒かを知っているように、だ。

 

右手に構えた鉄の塊のような銃が鈍く光る。 左手に構えた……右手の銃よりは短いそれも、同様にだ。 最早銃ではなく鈍器と言ったそれを、傭兵連中に振り上げた。

 

 

「ごめん、先に謝っておくね。 私今は下手な手加減出来そうに無いんだ、他でもない君たちの雇い主のせいでね。 骨の10本や20本は覚悟してて」

 

 

聞き間違いだろうか、10本も折れれば大怪我どころではないが。

 

 

「後悔しないでね。 敢えて言えば……私にとっても大事なこの場所に手を出した、自分達自身を恨んで」

 

「……は、破壊姫」

 

「良く分かってるじゃん、正解できた貴女にはこれをあげる」

 

 

直後腹の底に響くような大きな音が鳴ったと思えば、傭兵の一人が勢いよく空を舞った。

 

何てことはない、鉄の塊で殴り飛ばされただけである。 シンプルが故に強力なその一撃にどれほどの威力が……傭兵だけでなく便利屋68の面々すらも背筋が凍った。 その固まっている間に、ランはホシノの下へと辿り着いていた。

 

 

「……ランちゃん」

 

「久しぶり、ホシノちゃん。 ……少し伸びた?」

 

「うへ、あんまり身長は変わってないかなぁ」

 

「そっか、でも髪は伸びたんだね」

 

「……うん、伸ばすことにしたんだ」

 

「……似合ってるよ」

 

「そっか」

 

 

久方ぶりの再会に、ぎこちないながらも会話をするホシノとラン。 対策委員会と先生から見れば、二人の間には見えない何かがあるようで……口を挟むことが出来なかった。

 

 

「く、くそっ……聞いてないぞこんなの!」

 

「ミレニアムの破壊姫が出てくるなんて契約書に書いてないんだけど!? どういうことなの!?」

 

「で、でもこの人数でかかれば流石に」

 

 

だが、傭兵たちには関係ない。 まだ数多く残っていると言う心的余裕からか、じりじりとにじり寄る始末である。

 

流石にこのままではいけないと先生や対策委員会の面々が動こうとし……そんな彼女達を、ホシノとランが止めた。

 

 

「大丈夫だよ、先生。 それにセリカちゃんも」

 

「大丈夫って……まだあんなにいるじゃない!」

 

「あんなに? あれしかの間違いじゃない?」

 

「ん……ラン先輩とホシノ先輩なら、余裕だと思う」

 

「そうですね。 ……正直、あの二人を止められるような戦力となると、どれほど必要なのか見当もつきませんし」

 

 

ランの事を知らなかったセリカは不安気にしているが、既にランの事を知っているシロコやノノミ、それと先生はランの言葉を信じて様子を見ることにする。 セリカは最後まで渋っていたが、先輩がそう言うならと渋々後ろへと下がっていった。

 

対策委員会が後ろに下がったことを確認し、ホシノとランは横に並び立つ。

 

 

「こうして一緒に戦うの、久しぶりだね」

 

「そうだね。 でも腕が鈍ってないのは知ってるよ? ミレニアム最強さん」

 

「最強じゃないから、それはネルちゃんの専売特許だから」

 

「うへ、冗談だって。 自分の強さをひけらかさないのは知ってるから」

 

「そう言うホシノはどうなのさ?」

 

「私は……うん、ぼちぼちかな?」

 

「鈍ってたら蹴り上げるからね?」

 

「ごめん、流石にそれは私が無事じゃなくなるから勘弁してほしいかな」

 

 

お互い軽口を言い合い、自身の得物を点検する。 やがて不備が見当たらないのを確認し終え、視線を合わせることなく口を開いた。

 

 

「今日メンテナンスしてもらったばかりなんだけどなぁ、もう戦闘に用いることになるなんて」

 

「ありゃ、それはご愁傷様だね。 だったら電柱で戦う?」

 

「私の事ゴリラか何かだと思ってる????」

 

「冗談冗談、でも流石にそれは持てないかな……」

 

「持てる人、何人か心当たりあるんだけどなぁ」

 

「逆に怖いんだけど?」

 

 

 

 

~~~~

 

 

 

 

「な、何でこんなことに……こうなるなんて聞いてないわよぉ」

 

 

アルは今ここにいることを後悔する。 先日やらかした挙句怒らせてしまった相手と、まさかこんなところで相まみえることになるとは思ってもいなかった。

 

便利屋68の面々も武器を構えてはいるが、その表情は芳しくない。 カヨコに至っては「もう帰りたい」と表情が語っていた。 縄張りを荒らされて怒るゴリラに人間は勝てないのだ。

 

 

「社長、気持ちは分かるけど依頼された分は働かないと」

 

「わ、分かってるわよぉ!! でも流石にこれは……」

 

「アルちゃん諦めなって、それに今から逃げても絶対に追いつかれるよ?」

 

「ぐっ、ぐぎぎぎぎぎ……あ、貴女達! 払った分はしっかりと働いてもらうわよ!」

 

 

もうこうなったらやけだ、やれるだけやってやる。 そうアルは半ば叫ぶように自分を鼓舞し、傭兵へと指示を飛ばす。 今の時点で依頼は失敗濃厚なのは誰が見ても明らかだが、だからといって受けた依頼を途中で投げ出すなんてカッコ悪い行いはアウトローとして恥ずべき行為だ。

 

銃を持った手に力がこもる、視線と視線が交差する。

 

 

「……逃げないんだね」

 

「に、逃げないわよ! 便利屋68は一度受けた依頼は途中で放り出さないわ!」

 

「それはいい心構えだね、その意気だけは褒めてあげる」

 

 

 

────────でも、逆鱗に触れたことは後悔してもらうから。

 

 

 

傭兵たちの阿鼻叫喚の中、アルに聞こえたその言葉だけが鮮明に残っていたのは、恐怖からかはたまた他の要因か。

 

結果から言えば、襲撃は失敗に終わった。 用意した傭兵は一人残らず倒されたし、自分たちも少なくない怪我を負った。 それでも命からがら逃げることが出来たのは本当に幸運としか言いようがない。

 

……逃げるアル達の背中に聞こえ続ける叫びが遠ざかるごとに、澱んでいた心が澄んでいくのを感じる。 その感覚が、アルが生きていると実感させてくれる唯一のものだった。

 

 

 


 

 

 

(クソァ!!!! あとちょっとのとこだったのに!!!)

 

またアルちゃんたちに逃げられた。 今度こそは! と思ったのに彼女たちは傭兵を上手く使って自分たちが逃げるための時間稼ぎをしたわけだ。

 

追いかけようにも距離的に届かない。 車で追いかけたいが、何か煙が出てたから動かすのが怖い。 完全に私の負けだ、逃げることに関してはアルちゃんの方が一枚上手らしい……それが心の底から腹立たしい、クソ!! 何度も何度も何度も……

 

 

「に………」

 

「に? どうしたのランちゃん」

 

「逃げるな卑怯者!! 逃げるなァァ!!!」

 

「ら、ランちゃん!?」

 

 

ホシノちゃんが後ろから羽交い絞めにしてくる。 止めるなホシノちゃん、アイツらには以前のお好み焼きの件と言いこれまでの数々の行為と言い……毎回毎回便利屋68のせいで色んなことに巻き込まれる!! アイツらは存在しちゃいけない奴なんだよ!!

 

 

「このッ……絶対に、絶対に許さないからなァ!!!」

 

「ランちゃん……そこまでアビドスの事を」

 

 

ちゃうねん、アビドスの事だけじゃないねんホシノちゃん。 これまでの様々な積み重ねが噴火の原因なんだよ。 彼女達をどうにかしないと私の平穏な生活はやってこないって直感がささやいてる。 だからこの手を離して? 離せよ、今すぐ離せ!!

 

しかしホシノちゃんは離してくれない。 背中から聞こえる「分かった、分かったから落ち着いて。 気持ちは嬉しいけどそれじゃユメ先輩は喜ばないから……」と言う言葉に、渋々ながら落ち着きを取り戻す……今は引くしかない、でも次会った時こそ年貢の納め時だからなアルちゃん。

 

 

「ぐ、うぅ……」

 

 

泣きたい、今非常に泣きわめきたい。 砂の上だろうがお構いなしに転げまわりながら盛大にギャン泣きしたい。どうしてこんなに私はやるべきことを成し遂げることが出来ないんだろうか。 己の弱さを嘆きたい。

 

何時の間にか私の後ろに先生やアビドスの生徒らしき人物が集まっていたが、私はそれでも興奮状態を抑えきれない。 食べたくて食べたくてたまらなかったお好み焼きの恨みが消えてくれないんだよ、どうにかしてくれよ。 あの店を返してくれよ。

 

 

”ラン……大丈夫?”

 

「……先生、私は大丈夫です」

 

”ランがそこまでアビドスの事を思ってくれているなんて思わなかったよ。 面識があったんだね”

 

「ええ、まぁ」

 

 

確かに面識はあるんだけど、私が怒っているのはそこじゃなくてですね……いや今はそこは良いか。 まずは初対面の子に挨拶しないと。

 

 

「……お見苦しい所をお見せしました。 私はミレニアムサイエンススクール所属、セミナー副会長の天海ランです」

 

「あ、アビドス高等学校、一年の黒見セリカ、です」

 

「同じく一年の奥空アヤネです。 それにしても……まさか」

 

「あれ、アヤネちゃんは知ってたんですね」

 

「それはそうですよ! 寧ろセリカちゃんが知らなかったことに驚いてます!!」

 

 

何やら異様に興奮しているアヤネちゃんに、私はなんとなく嫌な予感を覚える。 有名な生徒! と言った単純な覚え方じゃないような……いや、まさか。

 

 

「あ、アヤネちゃん……そんなに有名なの?」

 

「勿論です! キヴォトスにいれば必ず聞くと思ってたんですが……キヴォトス最強談義は?」

 

「えっと、ごめん。 あんまり知らないかも」

 

「ではラン先輩の偉業の方が良いですね。 ラン先輩は1年生の終わりころにブラックマーケットを単身で蹂躙してるんです!」

 

「ヴッ」

 

”……本当なの? ラン”

 

「い、いやまあ、その。 間違っては、無いんですけども」

 

 

ちゃうねん、あれはしたくてしたわけじゃないというか。 ミレニアムで使われてる正規部品が違法に流されてるって聞いたから回収のために向かっただけでェ……その最中に不良生徒に絡まれたから反撃したら、その後マーケットガードに襲撃されたから全部スクラップにしただけでェ……悪いことはしてないんです。

 

 

「それに各学園の最強と噂される生徒との戦闘も有名ですね。 ゲヘナ学園の空崎ヒナさんやトリニティ総合学園の剣先ツルギさんとの戦闘も、今でも動画サイトで確認できるんですけどすごい迫力なんですよ」

 

「どれ……うわ、ナニコレ怪獣映画? セットを破壊してるわけじゃないのよね?」

 

チガウネ、ウン

 

 

それもちゃうねん、あれも巻き込まれ過ぎてメンタルが荒んでた2年の時の話だから……ヒナちゃんやツルギちゃんとも知り合ってなかったときに戦闘に巻き込まれて、流れで何故か二人と戦ってただけやねん……ある程度戦った時にお互い「あれ? 何か向こうの人さっきまで戦ってた人達と違うな?」で止まって、その後お互い謝り倒したんだよ。

 

誤解だってわかって、そこからは良好な関係性を……あ、ツルギちゃんは未だにぎこちないから嫌われてるかも、泣くわ。

 

何ならあの時の弁償の方が痛かった。 あちこち壊しまくってたからリオちゃんが白目剥きながら「貴女は心配しなくていいわ、何とかするのがセミナー会長としヴッ!!!!」って言って上と下から色んなものを垂れ流してたし。 迷惑かけすぎて泣いた、色々と耐えてその後数日リオちゃん専用の抱き枕に徹したもん。

 

 

「その他にも色々と」

 

「アヤネちゃん、そこまでにしよっか。 とりあえずお客さん……とは、違うか。 見知らぬ仲じゃないから教室で話をしようね」

 

「あっ……すみません! つい」

 

「良いよ別に、アヤネちゃんも悪気があってやってるわけじゃないしね。 ……あぁ、それと先生」

 

”何かな?”

 

「先に私がここに来た理由を。 ユウカちゃんから書類を預かってます、シャーレ関連のだとは思うんですけど……ユウカちゃんがシャーレに行った時には既に先生がアビドスへ行ってしまってたみたいなので」

 

”そう言うことだったんだね、わざわざありがとう”

 

「いえ、ユウカちゃんが初見で迷わず来れるとは思わなかったので。 まだ土地勘がある方が向かうべきでしょう?」

 

ソウダネ、ウン

 

 

あっ、コイツ迷ったか遭難したな???? 明らかに反応がおかしかったぞ。 何なら後ろでシロコちゃんがドヤ顔してるし……これは遭難してた先生をシロコちゃんが拾ってアビドスまで連れて行ったに違いない。

 

いや、そうじゃない。 それも重要ではあるんだけどまずはここまで来た目的を先に済ませてしまおう。 あ、書類車の中だったわ。

 




盆休みと言うこともあってか執筆に費やす時間が多いし、同時にもうちょい鮮明にランをイラストに落とし込めないかって絵を描けないなりにサイトで再現しようと頑張ってるけど出来ない、俺にはその才能がない

キャラクリ出来るゲームなら基本的な素材があるからまだやりやすかったんだな……悪い、お前を作りこむのは諦めたわ。 いつか来るかもしれないFAに賭けるわ(他力本願)


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