セミナー副会長はとにかく巻き込まれたくない   作:ピンク髪大好きニキ

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連日ランキングに入ってて感謝です、まさかここまで増えるとはこのリハクの目をもってしても(以下略)

最近感想欄にランの事ゴリラって言う人が増えて俺は悲しいです
こんなメンタルがクソ雑魚ですぐギャン泣きする子がゴリラなわけないだろ!!

ただちょっとミカ並みに腕力あって100キロオーバーの鉄の塊を片手で振り回して鉄の棒を捻じ切ってビルを生身で倒壊させられるだけのか弱い子だろいい加減にしろ


5話「どの道こうなる巻き込まれ娘」

 

 

 

久しぶりに足を踏み入れたアビドス高等学校は、最後に見た時より砂に埋もれていた。

 

それだけの時間が経ってしまったのだなと少しばかりの哀愁に浸っていると、ランにお茶を出してくれる人物が。

 

 

「ラン先輩、お茶をどうぞ」

 

「ありがとうアヤネちゃん、いただきます」

 

 

お礼を言いながらお茶を啜る。 気候と戦闘の後と言うことで喉が渇いていた状態で飲むお茶は、ホッと一息を吐くのには十分すぎる物であった。 半分ほど一気に飲んでしまった後はチビチビと飲みつつ、全員が集まるのを静かに待つ。

 

 

「……では改めまして。 先程の戦闘では助けていただいてありがとうございました」

 

「お礼は不要だよ、私にとってもアビドスには思い入れがあるから」

 

「気になってたんだけど、ラン……先輩は」

 

「呼び辛かったらさん付けでもいいよ」

 

「それじゃ、ランさんで。 ランさんはアビドスの事知ってるのね」

 

 

アヤネに返事をした後のセリカの質問はこれだった。 学年的にアヤネとセリカが知らないのは当たり前だなとランが思ったところで、ランが口を開く前にその質問に答えるものがいた。 ホシノである。

 

 

「ランちゃんはアヤネちゃんやセリカちゃんが入学する前までアビドスに来てたんだよ。 シロコちゃんやノノミちゃんは知ってるよ」

 

「ん、ラン先輩には凄くお世話になった」

 

「そうですね♧ ランさんはよく私達と一緒に指名手配犯の確保とか、ボランティアを手伝ってくれてましたから」

 

 

先輩たちの返答に、後輩である二人は目を見開く。 セリカは兎も角アヤネはランの事を知識としては知っていたので、副会長と言う立場でそんなことを出来る余裕があったのかとその行動力に驚きを隠せなかった。

 

 

「自慢できることじゃないけどね。 事実、その後は副会長の業務が忙しくなったから来れなかったわけだし」

 

「謙遜することはないと思うけどなぁ。 アレだけでも本当に助かってたんだよ?」

 

「ラン先輩は自己評価が低い、もっと自分に自信を持つべき」

 

「そうかな? ……いや持てるほどのメンタルがないかも」

 

 

「あれだけ蹂躙しておいて何を」とアヤネは思ったが口には出さなかった。 どう考えたってそこら辺の生徒なんかより圧倒的な実力を持っていてもなおその低い姿勢に、アヤネは尊敬の念を覚える。

 

アレが上に立つ人の姿勢か、アレの半分でもホシノ先輩に備わってくれれば……いや無理か。

 

 

「それで、聞いてもいいかな」

 

「便利屋の事? それともアビドスの現状の事?」

 

「出来れば両方、かな」

 

「うーん、少し長くなるけどいい? 確証が得られてない部分もあるし」

 

「うん、大丈夫。 レッカー車が来るまで付き合うよ」

 

 

何だろう、米噛みに青筋が浮かんでいる錯覚に見舞われる。 しかしそれはアヤネの目の錯覚なんかではなかったらしく、今もなおピクピクと青筋が動いていた。

 

いや青筋だけじゃない、眉もひくひくしてるし何も持ってない右手がギリギリと拳を握っている、溢れる怒りを辛うじて抑え込んでいるといった様子であった。

 

「ガチギレしてる」その事実に、対策委員会の面々は背筋に冷たい何かを感じた。

 

 

「だ、大丈夫ランちゃん?」

 

「大丈夫、私は落ち着いてるよ」

 

「見るからに落ち着いてないから言ってるんだよ」

 

「……ごめん、便利屋68は散々厄介事に巻き込まれる原因だから。 殺意が」

 

”気持ちは分からなくもないけど、物騒なことはやめてね……?”

 

 

詳しく聞いてみると、先日ゲヘナにセミナーのみんなと噂になっていたお好み焼きの店に行った際、便利屋68が店を爆破して書記の子が巻き込まれたらしい。 お好み焼きも食べられずに散々な思いをしたのだとか。 それ以前にも何回か似たようなシチュエーションを経験しているらしく、ラン曰く「近くにいると碌な事がない奴ら」なんだとか。

 

事情をきちんと確認したところで、逆にランへアビドスの現状を説明することになった。

 

 

「────成る程。 ヘルメット団に違法機種、それに不可思議な襲撃……それとさっきの便利屋68」

 

「ええ、疑問が残るものばかりで……どうにかして糸口を見つけられないかと」

 

 

少し長くはなったものの、ランはアヤネからアビドスの現状を一通り聞き終えた。

 

最近になって激しくなったヘルメット団の襲撃、まるでこちらの弾薬の枯渇を狙っているかのように。 その企みは先生の援助によって失敗することになったのだが。

 

次に起きたのがセリカの誘拐。 幸い大事になる前に救出は出来たものの、その際に破壊した戦車の部品が、キヴォトスでは使用が禁止されている違法機種だったのだとか。 こちらは流通元を探して、ヘルメット団の裏にいたと思われる黒幕を見つけるしかない。

 

最後に便利屋68……は、ほぼ今の事情を確認したことで新たに雇われたのだろうと確信。 また襲撃が来る可能性もあるので、今後は要警戒と言う所だろうか?

 

 

「聞きたいんだけど、今言った戦車の部品ってまだ手元にあるよね?」

 

「え? えぇありますが……一体何を?」

 

「もっと素早く詳しく調べられそうな人に心当たりがあってね」

 

「そんな方がいるのですか?」

 

「まあね。 ……聞いてたでしょ? ヒマリちゃん」

 

 

心当たりがある、と聞いて一体誰なのかと思った対策委員会の前で、唐突にランは声を上げる。 ここには対策委員会と先生、そしてランの他には誰もいないが……そう思っていた矢先である。

 

 

『────ふふ、流石ランちゃん。 私の存在に気付いていたとは』

 

「いや、ヒマリちゃんなら確実に盗聴してるだろうなぁって思ったから試しに言ってみたんだけど、本当に聞いてたんだ」

 

『なんでしょう、嬉しいはずなのに嫌な方向に信用されているようで素直に喜べないのですが』

 

 

突如この場にいないはずの第三者の声が響き、対策委員会の面々は驚きの表情を浮かべた。 そんな中先生とホシノは冷静に場を見極めており……やがて、今の声がランのポケットの中から聞こえたものだと確信する。

 

それと同時にランもポケットから端末を取り出し、画面を点けることなくテーブルの上へと置いた。

 

 

『自己紹介が必要でしょう。 私はミレニアムサイエンススクール、特異現象捜査部の明星ヒマリと申します』

 

”これはご丁寧に、シャーレの先生です”

 

『ええ、存じております。 それとアビドス廃校対策委員会の皆様もよろしくお願いいたしますね』

 

「おじさんたちの事、知ってるんだ」

 

『ふふ、このミレニアムが誇る……いえ、初対面の方に用いるのはやめておきましょう。 無論ランちゃんが向かう所ですからね、何事も無いよう隅々まで調べ上げるのは至極当然の行いでしょう』

 

「……ストーカー?」

 

『ちょ、失礼ですね砂狼シロコさん。 私はストーカーなどではありません、私はランちゃんが不便なくストレスのない日常生活を送れるよう細心の注意を払って』

 

まあ見方を変えればストーカーに変わりはないかな

 

ランちゃん???

 

 

まさか身内に背中から刺されるとは思っていなかったのだろう、声だけなのにショックを受けているのが丸分かりなヒマリ。 可哀想だとは思うが今はそんな事の為にヒマリを呼んだわけではないとアヤネに部品を持ってくるように頼んだ。

 

 

『ではランちゃん、カメラを部品の方へ』

 

「分かった。 ……今更だけど、私の端末にどんな細工をしたの?」

 

『位置情報の類は問題事に巻き込まれたときに必須な事は勿論、簡易的なスキャンシステムや高度なセキュリティ対策……他にもいろいろ詰め込みましたが、今は置いておきましょう』

 

「ヒマリちゃんたちが一体何を目指してるのか全く分からないことだけは分かったよ」

 

 

軽口を言い合っている間もヒマリは部品の解析を続けており、対策委員会は今か今かと結果を心待ちにしていた。

 

 

『……ふぅ、終わりましたよ』

 

「も、もう終わったんですか!?」

 

『ふふ、この私にかかればこの程度造作もないことです』

 

「ヒマリちゃんありがとう。 それで結果はどうだったの?」

 

『結論から申しましょう、これは既にキヴォトスでは取引されていない型番です』

 

「既に……? ならこれを手に入れるとなれば」

 

『ブラックマーケット、でしょうね』

 

 

想像以上に速い解析の結果、対策委員会が調べていた部品の出所が明らかとなる。 しかし肝心のその場所がブラックマーケットだったことに、一部の生徒は暗い顔になってしまった。

 

何を隠そうランである。

 

 

「グ、ギギ……」

 

「ら、ラン先輩大丈夫ですか?」

 

「ダイジョブダヨ」

 

「いえ、全然大丈夫そうに見えないのですが」

 

「ブラックマーケットにはいい思い出がないから……つい」

 

「あぁ……」

 

 

ランの言葉に、ホシノたちは納得する。 先程アヤネが語った話を考えれば、ランにとってブラックマーケットは厄介事に巻き込まれた場所だ。 それもかなりの規模の。

 

この部品がブラックマーケットで取引された可能性が高い以上、対策委員会としてはブラックマーケットへ赴く必要性がある。 故に今のランは「厄介事に巻き込まれたから行きたくない」と「アビドスの為に行くしかない」の二つの感情で板挟み状態になっているのだ、正直行きたくない割合の方が高いが口に出すことはない。

 

 

『ランちゃん、色々と葛藤しているのが音声だけでも分かるほどですが……貴女はまずミレニアムに帰るのが先ですよ。 車の修理と改良が待ってるんですから』

 

「うっ、それもあったね。 でも……」

 

「ランちゃん。 こっちは大丈夫だから心配しないで。 さっきの襲撃に手を貸してくれたのですら嬉しいのに……」

 

「……本当にごめんね、ホシノちゃん」

 

「ううん、こっちこそごめんね? ……それと、ありがとう」

 

「……また来るから。 車直したらすぐにでも」

 

「うへ、待ってるよ」

 

 

短いながらも久しぶりの再会に、ホシノとランは笑みを浮かべる。 もう一人、この中にいれば……とお互いに思ってはいたが、終ぞ口に出すことはなかった。

 

丁度タイミングよくレッカー車も来たため、ランはそれに相乗りするようにアビドスを後にする。 大丈夫と言っていたホシノの顔……ランは、その顔がどうしても忘れることが出来なかった。

 

 

 

────────────────

 

 

 

「只今戻りました……」

 

 

レッカー車に相乗りして数時間、ようやくミレニアムまで帰って来た。 フロントが凹みまくって物言わぬ鉄の塊になってしまった愛車の姿に涙を流しつつ、エンジニア部に修理と改良を頼みこんで今はセミナー前だ。

 

何度も経験しているけど、愛車が壊れるたびに心が痛い。 ウタハちゃんからは新しい車を買った方が良いって壊れるたびに言われるけど、そうじゃないんだ。 これは思い出の詰まった車で、ずっと乗り回していたいものなんだ。 だから無理言って修理と改良をしてもらってるんだけど。

 

でもここまで頻繁に壊れるのであれば仕事用の車も買った方が良いのかも、普段乗りに使うだけならそこまで巻き込まれることはない……はず、だ。

 

 

「あ、ラン先輩! おかえりなさい……結構早かったですね?」

 

「乗ってた車が大破してね……修理のために戻って来たんだ」

 

「あっ」

 

 

あってなんだよ、まるで「やっぱりこうなった」みたいなリアクションしないでもらっていいかな? それ地味に傷付くからね?

 

 

「でも書類は先生にきちんと渡したよ」

 

「ありがとうございます。 それで、久しぶりに行ったアビドスは如何でしたか?」

 

「……懐かしい顔に会えたかな。 惜しむらくは、すぐに帰らなきゃいけなくなったことだけど」

 

「あぁ、それならヒマリ先輩が何か言ってましたよ。 これからセミナーまでくるみたいです……私達は一足早く帰るんですが」

 

「ヒマリちゃんが? 戸締りは私がやっておくからそこは問題ないけど」

 

 

ヒマリちゃんにはさっきお世話になったしね、何か話があるって言うのは……アビドス関連? それとも別の何か? 何だろう?

 

私の返事に満足したのか、ユウカちゃんは大きく頷きつつタブレットなどをまとめていく。 既にノアちゃんやコユキちゃんは帰っているみたいで、私が帰ってくるのをわざわざ待ってくれていたらしい。 細かな気配りが出来るユウカちゃんには頭が上がらないよ。

 

 

「では私はこれで帰りますけど……ラン先輩」

 

「何かな?」

 

「困ったことがあれば、何でも言ってくださいね。 ラン先輩は頼りになるし何時も私達を助けてくれますが……いえ、これ以上は野暮ですね」

 

「?」

 

「私の膝であれば、いつでもお貸ししますので。 それでは!」

 

 

オイ待て、その情報何処から手に入れた? ちょっと私とお話ししようか?

 

問い詰めようかと思ったが、その瞬間には既にユウカちゃんの姿はセミナーの中になかった。 後に残るのは驚いて口が開きっぱなしの私のみで……

 

 

「……おや、どうしましたかそんな鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして。 いえランちゃんにはそのような顔ですら一つの芸術に昇華してしまえるほどのポテンシャルを持っていると考えれば流石ランちゃんと言わざるを得ないですねふむこの素晴らしい一瞬を是非残しておかねば名折れと言うものでしょう少しそこでポーズをとってくださいます?」

 

 

ユウカちゃんと入れ違いみたいに入って来たヒマリちゃんがなんか嬉々としてカメラを構えだしたけど、今の私には何も入ってこない。

 

いややっぱ入って来たわ。 何その下手な銃より重そうなカメラ、この距離で使うレンズなのそれ?

 

 

「ひ、ヒマリち゛ゃ゛ん゛~~~~!!!」

「おっふこの場所でと言うのは実に新鮮」

 

「う゛あ゛ぁ゛ぁぁぁ~~~~!!!」

 

「今日のランちゃんは何時もより激し……あっ

 

 

ちょっと色っぽい声を出すのはやめてもらっていい?

 

 

「く、車……ま゛た壊れ゛ちゃって゛……ズビッ」

 

「貴女の普段の不運具合を考えればもう一台持っておいた方がいいと以前言いましたが……それでもあの車が良いと言ったのはランちゃん自身でしたね」

 

「だ、だっで……アレは、アレは三人の思い出の車で……」

 

「形見、みたいなものでもありましたね。 話は聞いていますが……」

 

 

アレに乗っているとき、まるであの時のように三人で乗り回しているような感覚を得られる。 あの瞬間が、とても心地いいから乗って来たのだ。 ……あの時から、ずっと。

 

 

「車の改良は私に任せてください、非常に不本意ですがリオやウタハも協力してくれますし、以前よりは頑丈になることでしょう」

 

「う゛ん……」

 

「それまでは代車を利用しなさい。 また行くのでしょう? アビドスに」

 

「ここ暫くは行けてなかったけど……あそこは、無くしちゃいけない思い出の場所だから……」

 

「ええ、その気持ちは否定しません。 ですので今回はその為に私も最善を尽くしましょう」

 

「最善って?」

 

「それは────────」

 

 

ヒマリちゃんがその後言った言葉に、私は驚きつつもまた涙を流して感謝の意を示す。 これだ、私の事を全て理解してくれている……こう言う所がヒマリちゃんの好きなところだ。

 

その後珍しくセミナーまで走ってやって来たリオちゃんの膝の上でも泣きわめき散らした。 二人の膝の上をゴロゴロと交互に移動して汁という汁を垂れ流しておぎゃりまくった。 傍から見ればキチガイだったろうに、二人は慈しむ様な顔で頭を撫でてくれる。

 

 

しゅき……全肯定してくれるリオちゃんとヒマリちゃん大好き……

 

 

「それはそうと、ユウカちゃんが膝を貸してくれるって話をしたんだけど。 何か知らない?」

 

「「あっ」」

 

 

あっ、じゃねぇよお前らが原因か? 立つな座ってろまだその膝満遍なく私の汁でデロッデロにしたうえで訳を聞かせてもらうからな。

 

 

 

~~~~~

 

 

 

「それじゃあヒマリちゃん、行ってくるね」

 

「ええ、気をつけて行くのですよランちゃん。 何かあればすぐに行動に移りますからね」

 

「ちょっと待って頂戴、貴女が無理に行動する必要性はないわ。 何かあれば私に言いなさい」

 

「貴女はまずセミナーで仕事をするのが先でしょう」

 

「それに関しては私も同意見なんだけど」

 

「………ッ!!?」

 

「『何故ランまでそんな事を……!?』みたいな顔してるけど、普段セミナーに来ないで私が実質トップで運営してる時点でおかしいと思おうよ」

 

「で、でも私にはやるべきことがあって」

 

「出た、リオちゃんの秘密主義。 それは私にも黙ってやらないといけない事なの?」

 

「……それが最善と、判断したからよ」

 

「私はそれでも言ってほしかったな……リオちゃんが困っているなら、助けたいし」

 

「アビドスの問題が一段落したら話す機会を設けるから待ってて頂戴」

 

「手のひらクルックルだね」

 

「このアホの手は回転機構でも備わっているのでしょう」

 

 

二人相手におぎゃりまくった挙句そのまま私の家でパジャマパーティーとタコパで騒ぎつつ、川の字になって寝た数時間後。 私は代わりになる車に乗って二人から見送りを受けていた。

 

リオちゃんの後ろでユウカちゃんが鬼の形相になって待ち構えてるけど私は何も言わない、リオちゃんが助けを求めるような青い顔でこっちを見てるけど絶対に目線を合わせないからな。 それは大体リオちゃんの自業自得なのである。

 

 

「……い、良いかしら」

 

「声が震えていますよ、休んだ方がいいのではありませんか?」

 

「問題ないわ、私は睡眠もしっかり摂ったし体調も頗るいいわ」

 

「昨日みんなでタコパとパジャマパーティーしたもんね、楽しかったねリオちゃん!!」

 

「ちょ、ランなんでそんな大声d」

 

「リオ会長? 後でとは言わず今ここでお話があるのですが」

 

「……も、もう少しだけ、待って頂戴」

 

「ふ、ふふっ……」

 

「笑わないで頂戴、昨日ユウカの太腿について肥大化する原因を長々と楽しそうに語っていたのは何処の誰かしら?

 

「なっ、リオ何故そんなこt」

 

「ヒマリ部長も、ちょっとお時間いただけますか?」

 

「謹んで辞退申し上げますぅ……」

 

 

なんだこれ、カオスか? 見送りがとんだ爆心地になったもんだよ。

 

このままスルーして行っちゃおうかなと思っていると、私の傍にウタハちゃんが近づいてくる。

 

 

「ラン、車の改良は任せてくれていいよ。 以前より耐久性を重点的に上げるようにするからね」

 

「うん、お願い。 それとメンテナンスもありがとう」

 

「まさかメンテナンスをしたその日に大規模な戦闘をするとは思わなかったからね……まああの程度で不備が出るような物は作ってないつもりだ、安心してほしい」

 

「そこに関しては心配してないよ、ウタハちゃんの腕は信頼してるから」

 

「それはよかった。 ……気を付けるようにね、実力は知っているとはいえ心配なものは心配だからね」

 

 

この面子の中で唯一と言っていいほどまともなことを言ってくれるウタハちゃんには感謝しかない。 見ろよアレ、ユウカちゃんにキレられて地べたに正座させられてるリオちゃんとヒマリちゃんを。 と言うかヒマリちゃんを正座状態にして車椅子から降ろすとか容赦ないな、ヒマリちゃんの顔凄いことになってるよ。

 

尚も向けられる二人からの助けを求める視線を見ないふりして車を発進させる。 目指すはアビドス、一日しか経ってないしそこまで事態が進展しているとは思えないけど……

 

 

 

 

と、そんなことを考えつつ溜まっていた通知を確認して早数時間。 既にアビドスの町中には入り始めており、まだチラホラと見える人の姿が…………?

 

あれ、なんか妙にみんな焦ってる? と言うか人の流れが一方に偏って……私の進行方向と逆に、私が今しがた来た方向に向かって行ってる? 今日は特にイベントとかあったっけ。

 

ふと、空に陰が差したように感じてフロントガラスから上を見上げる。 上空に何かが浮かんでいるように見え……何か、こっちに落ちてきてない? そう思った次の瞬間には、大きな衝撃と共に私の体へ生じる浮遊感。

 

飛んでる、体一つで飛んでる。 今乗ってた車は見るも無残どころかスクラップにもなりゃしないくらいボロボロになっており、持ってきていたアドミちゃんとリーベちゃんの入ったアタッシュケースだけが妙に記憶に残っていた。

 

 

 

────────なんだよもぉぉぉっ!!! 天丼なんてふざけるなよぉぉぉッ!!!!!

 

 

 

────────────────

 

 

 

一方、同時刻。 アビドスの町中にはゲヘナ風紀委員の部隊が配置されており、今もなお銃撃戦が繰り広げられていた。

 

風紀委員の攻撃対象は便利屋68であり、それと同時に対策委員会、そして先生と言う異色の組み合わせと言えるであろう。

 

 

『……そろそろ、投降する気になりましたか?』

 

「馬鹿なこと言わないで頂戴! こんな暴挙……絶対に許さないんだから!」

 

『ふぅ、仕方ありませんね……第三中隊は補給に、第五中隊は前進を』

 

「まだ戦力を投入する気? ……こんなの、行政官の権限で動かせる兵力じゃないでしょ」

 

 

何故こうなったのかは、少しばかり複雑な背景が存在する。

 

まず第一に、便利屋68が柴関ラーメンを爆破してしまったことが発端だろう。 それを感知した対策委員会と先生が現場に直行し、そこで喚いていた便利屋68と戦闘に突入。 直後にゲヘナ風紀委員会の迫撃砲が襲ってきた。

 

風紀委員会としては便利屋68の捕縛が表向きの目的であった。しかし行政官の天雨アコの真の目的は────シャーレの先生、その身柄の確保である。

 

ゲヘナと敵対関係にあったトリニティ、その間で締結される予定の『エデン条約』を前に、出鱈目な権限と明らかになっていない先生の詳細を聞き、アコは不確定要素が出来る事を恐れた。 ならばどうするべきか? ……それが今回の作戦に繋がる。

 

 

結果的に見れば、アコの立てた作戦は成功に近いと言っていいだろう。 補給と前進を繰り返せる風紀委員会に対し、向こうは少数かつ補給の不可能な烏合の衆。 後からアビドスには抗議されても痛くはない、そう考えていた。

 

 

「あ、アコ行政官……報告が」

 

「何でしょうか? 手短にお願いしますね」

 

「迫撃砲を操作していた部隊からの通信が途切れました……ぜ、全部通信不可です」

 

は?

 

 

────────直後、こんな報告を受けるまでは。

 

 

「通信機器に不備は?」

 

「ありません、今もなお他の部隊には繋がりますし……」

 

「では向こうの部隊に……あったとしても、全部の部隊が同時にとなるとおかしな話ですね」

 

「そ、それと…………」

 

「なんですか、口ごもってないで続きを」

 

「さ、最後に繋がった通信の最後で、聞こえたんです」

 

破壊の権化が来る、と』

 

「」

 

 

アコは白目を剥いた。 「あ、これ後でボコボコに〆られるタイプの奴だ」と本能が理解した。 ルールを破ったものにゴリラは容赦しないのだ。

 

 

~~~~~

 

 

「アコちゃん、アコちゃん? ……おかしいな、返事がない」

 

「通信機器に不備は? 無いとなると向こうで何かアクシデントがあったのかもしれませんね」

 

「向こうで何か言い合ってる」

 

「攻撃の手が緩めば御の字ですが……」

 

 

一方激戦区、まさに戦いの中心であるここでは対策委員会と便利屋68が必死になって戦闘を行っていた。 既に弾薬は底が見え始め、流石の先生も背筋に冷たいものが流れ始める。

 

この場を打開できる決定的な一手がない、それさえあればこの場をどうにかできるというのに……そんなことを、思っていた時だった。

 

 

「……あれ?」

 

「セリカ、どうかしたの?」

 

「気のせいじゃなければ……何か聞こえない?」

 

 

セリカの一言に、その場のみんなは耳をすます。 幸い風紀委員会の攻撃が緩み始めていたのでどうにかなったが……問題はそこではなかったらしい。

 

 

────────ゥン……

 

「……地響き?」

 

「いえ、これは……建物が倒壊しています。 相手の砲撃……」

 

「に、しては砲撃の音が聞こえないね。 他の要因だと思う」

 

 

アヤネの言葉に異を唱えるカヨコ。 ではこの音は何が原因なのか? 風紀委員会が困惑している辺り原因はまた他の何かなのだろうが。

 

 

────────ズゥウン………

 

 

「え、なに? アコちゃん聞こえない、もっとはっきり言って」

 

『四の五の言っている場合ではありません! 直ぐにその場を離れてください!!』

 

「離れてって……アコちゃんが指揮したんだから先生を確保するんじゃないの?」

 

『いいから黙って……ッ! あぁ、遅かった……!』

 

 

────────ズウゥゥゥゥン!!

 

 

「さっきよりも近い……」

 

「見て、あそこ! ……ビルが倒壊してるんだけど」

 

「何あれ、アコちゃん何かしたの?」

 

『私じゃないです、でも誰がやってるのか知ってます』

 

「は? あれが生身で出来るわ……け……」

 

 

ない、と言い切る前にイオリの顔色が変わる。 真っ青を通り越して土気色にまで変わったそれを、真っ青になったチナツが見つめる。 尚チナツは体をガタガタと震わせており、口早に部隊の撤退を指示していた。

 

 

「何だろう、私すっごい嫌な予感がするんだけど」

 

「奇遇だね社長、私も感じてる」

 

「あはは、そんな連日あるわけ……あるの?」

 

『……先生、こちらで確認できました。 この惨状を引き起こしている原因が』

 

”そ、そうなんだ。 アヤネ、聞いてもいい?”

 

 

何処かテンションが上がっているように感じるアヤネの声色に戸惑いつつ、先生はアヤネに続きを促す。 風紀委員会が怯えはじめ、便利屋68がこの世の終わりみたいな表情を作っている原因、それは……

 

 

『ランさんです。 ……進行方向上のビル全てをなぎ倒して、其方へ向かっています!』

 

”そっか、ビルを全部……え? ごめんもう一回聞いてもいい?

 

 

 

 

「────────ッ!! 陸八魔ァ!!!! 天雨ゥ!!! お前らふざけるなよ!!!」

 

 

 

「ひぃっ!!!」

 

『あぁ、終わった……委員長になんて言い訳すれば……』

 

「何度も何度も何度も何度も……今度という今度は、堪忍袋の緒が切れたよ、なぁ?」

 

『ら、ランさん。 ち、違うんです。 私は便利屋68の身柄を……』

 

「そんな事聞いてねぇよ。 私はアビドスを、対策委員会を……そして、柴関ラーメンを滅茶苦茶にしてくれやがった事に対して言ってるんだよ」

 

『え、あ、えっ……?』

 

「私がアビドスに思い入れがあることをヒナから聞いてなかったか? 調べなかったの? それでも行政官かお前?」

 

『あっあっ、その、申し訳』

 

「もういい、喋るな。 どうせ独断でしょ、後で目一杯お話しようか」

 

『ひぃ……』

 

 

ホログラム越しにでも分かるアコの白目を剥いた姿に、一同は戦慄する。 先程まで余裕の態度を保っていた存在が、今は見る影もない。 その変わりように、天海ランと言う人物がどれほどの存在なのかを本能的に分からせられた。

 

 

「陸八魔、また会ったね♡」

 

「ひゃ、ひゃい……あの、これはちがくてぇ……」

 

「いいよ、分かってる」

 

「わ、わかってくれるの……?」

 

 

目に涙を一杯に溜め、アルは慈悲を得たとでもいうようにランの顔を見る。

 

聖母のような表情をしたラン……ではなく、そこには修羅の顔があった。

 

 

「今度会ったら殺すって決めてたんだ、何言っても聞くつもりはないよ」

 

「ひ、ひぇっ……」

 

 

最早逃げられる場所なんてない、アルもまた白目を剥くほかなかった。

 




先に言っておきますが土日の更新はあるかどうか怪しいです
そも1万文字オーバーを毎日書いて更新できてる方がおかしいんだよな、いくら筆が乗ってると言っても
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