セミナー副会長はとにかく巻き込まれたくない   作:ピンク髪大好きニキ

7 / 47
だからゴリラじゃねぇんだって

本家は止まらず最悪を引き起こしましたがこっちはそんなことありません。

この作品はコメディです、そんな暗くて憂鬱な話は嫌なんですよね


6話「ハザードが止まらない巻き込まれ娘」

 

 

 

深く息を吸う、両手に力がこもる、力んだ足がコンクリートの地面を砕き始める。

 

こんなにキレたのは何時ぶりだろう? 少なくともここ最近……3年生になってからは一度もなかったはずだ。 2年生の時は……あった気がするけど。

 

 

「陸八魔ァァァァァァッ!!!!」

 

 

私はその場にクレーターを残しつつ、陸八魔へと勢いよく跳躍する。 あたふたとこちらを見て焦りつつ銃を構え始めるが……もう、そこは私の間合いだ。

 

アドミが唸る、ギュルギュルと大きな音を鳴り響かせ────────その銃身に込められた杭を穿とうと際限なく音を響かせる。

 

 

「────────ぶち抜けェ!!!!」

 

「が、ひゅッ……!!?」

 

「ッ、社長!!」

 

 

頭上のヘイローも甲高い音を鳴らし、勢い良く回転している。 射出された杭は寸分違わず陸八魔の土手っ腹にぶち当たった。 陸八魔は地面と平行に勢いよく飛んでいき、先の戦闘で倒壊したらしい建物へとぶち当たっていた。

 

鬼方や浅黄が何か叫んでいるが、今そんな些細なことは私には関係ない。 煙を出して地面に落ちていく杭を一瞥し、私は残りの便利屋を睨みつけた。

 

 

「次に死にたい奴は誰だよ、早く名乗り出て」

 

”ラン、そこまでだよ”

 

「……先生」

 

”怒る気持ちは分かる。 でもそれ以上は先生として……”

 

「……は」

 

”え?”

 

「あそこは……柴関ラーメンはッ!!」

 

 

先生の動きも、言葉も止まる。 先生だけじゃない、対策委員会や便利屋68、果ては風紀委員会の面々すらも一歩も動くことなく、私を見ていた。

 

 

「私と!! ホシノと!! ……ユメの、梔子ユメとの思い出の詰まった大切な場所だった、なくなっちゃいけない場所だったッ!!! それを分かるだなんて言われたくないッ!!」

 

「あ、あぁ……」

 

「それを壊した、爆破した!! ……ここに来るまでに風紀委員を締め上げて話は聞いてる、だからこそこいつらを許すわけにはいかない」

 

「あ、ご、ごめ……」

 

「今更謝ってもっ……もう柴関ラーメンは、帰ってこないんだよッ!!」

 

いや、正確に言えば帰っては来るだろう。 ……でもそれは建て直しただけ、あの頃と同じものは帰ってこない。

 

ふざけて倒れた時に付けてしまった傷も、みんなで建て直した時に使った建材も、何もかもが壊れてしまった。 それを同じものと言う奴は絶対に許さない。 許してはならない。

 

形あるものは何時か壊れる、言葉の意味は理解出来ても心が納得しない。したくない。

 

 

『────ッ! ────────』

 

 

ポケットの中で何か聞こえるけど、それすらも頭の中に入ってこない。

 

 

「風紀委員会も、逃げられると思うなよ」

 

「え、えぇッ!?」

 

「ら、ランさん。 私達は」

 

「聞きたくない。 天雨に言われて仕方なくだなんて言い訳は聞かないからな。 どう考えても便利屋68だけに充てるには多すぎる人数を、しかもアビドスの自治区で大規模な戦闘をしたんだ。 おかしいと進言することは出来たはずだ」

 

「もう遅いんだよ、言葉で解決するにはな」

 

 

私は替えの杭を装填し、周囲を見渡す。 まだやらなきゃいけない奴らは残ってる、この怒りを燃やし尽くすにはまだ早い。

 

 

”……アコ、だったね”

 

『シャーレの、先生。 ……一体何でしょうか?』

 

”ここは一旦停戦しよう。 争っている場合じゃない”

 

『……何を言ってるのか、理解されてます?』

 

”分かってる。 ……でも、目の前で傷付いて泣いてる生徒を、私は放っておけない”

 

 

先生が何か言ってる、天雨が驚いたような顔をしている辺り、こちらにとっては良い話ではないのだろう。

 

そう考えていたら、対策委員会も、残った便利屋68も……そして風紀委員会すらも、全員がこちらを見て銃を構え始めた。 ……へぇ

 

 

「……何のつもり?」

 

”ラン、今は怒りで頭が一杯だと思う。 でも怒りに任せてしまえば、きっと君は後悔する”

 

”先生として、大人としてそれは見過ごせないんだ。 だからまずは……落ち着かせるよ”

 

「ははっ……おかしなことを言いますね」

 

 

────────それっぽっちの戦力でどうにか出来ると思ってんじゃねぇよ。

 

 

────────────────

 

 

 

「第二中隊、被害甚大です!! 一度撤退します!!」

 

「第四中隊、弾薬補給のために一旦後退します」

 

『……分かってはいましたが、ここまでとは』

 

 

通信越しに聞こえる報告に、アコは歯嚙みする。 倒せるとは思っていない、でも少なからず動きを止めることくらいは出来ると思っていた……が、蓋を開けてみるとどうだろうか?

 

 

「アコちゃん、これ以上はもたない! 撤退したほうがいいと思う!」

 

「そう言って、素直に帰してもらえるような状況じゃないですよイオリ」

 

 

必死に銃撃するイオリに、若干諦め交じりにチナツが答える。 その視線の先には……

 

 

「────あ、あ゛ぁぁぁぁァァァッ!!!」

 

 

両手に別々に装備した鉄の塊のような銃を振り回し、風紀委員を次々となぎ倒しているランの姿。 鬼気迫る顔で戦うその姿は、まさに修羅と言っても過言ではないだろう。

 

用意していた風紀委員の半分以上は既に怪我によって前線から撤退している。 残りもそんなに時間がかからず倒れる……そんな時だった。

 

 

『────────アコ、今どこにいるの?』

 

 

風紀委員会専用の周波数に、ヒナの声が入り込んだ。

 

 

『ッ、委員長! い、今は……あ、アビドス自治区です!!』

 

『アビドス……? 何でそんなところに』

 

『謝罪も反省文も、後で何枚でも書きます!! 端的に状況を伝えます!』

 

『申し訳ありません!! 私のせいで天海ランを怒らせてしまいました!! 委員長には申し訳ありませんがランさんの鎮圧を要請します!!』

 

『ッ!!? ……何ですって? いえ、今はそんなことを言ってる場合じゃないみたいね』

 

 

「近くまで来ててよかったわ、今から戦線……に……」

 

 

ヒナが見たのは、鬼気迫る顔で風紀委員を倒し続けるランの姿。

 

……しかし、何故だろうか。 ヒナにはその顔が泣いているように、子供の癇癪のように映ってしまい、ぴたりと動きを止めてしまう。

 

 

「……何を、何をどうすればランをあそこまで怒らせるというの」

 

『そ、それは……』

 

「私達が直接手を下した訳ではありませんが……便利屋68が柴関ラーメンを爆破、その後合流した対策委員会や先生達とも戦闘になり、周囲に被害を与えたのが原因かと」

 

「わざと地雷の上を歩いているのかしら?」

 

 

次々と報告される内容に、ヒナは頭を抱えたくなる衝動に駆られるが今はそれどころではない。 ランを止めなければ風紀委員会としても無視出来ない被害を被るし、既に被っている……握りしめた愛銃と共に戦場へと躍り出た。

 

 

「ラン、止まりなさい。 ……お願いだから、これ以上は暴れないで頂戴」

 

「……お前まで、そっちに立つのか。 空崎」

 

「っ」

 

 

ヒナちゃん、ヒナちゃんと何時も呼んでくれていた相手から急に名字で呼ばれるというのは思った以上に距離が離れてしまったみたいで心苦しい。

 

それでも止まらない、ヒナはランの親友として……そして、風紀委員長としてランを止めなければならない。

 

 

「……ええ、立つわ。 私は風紀委員長で……ランの、友達だから」

 

「止めてみなよ、空崎。 ……あの時みたいに、なると思わないで」

 

「させるわ、そんな顔の貴女を見ていられないから」

 

 

先手必勝とばかりにヒナはランへ飛び掛かる。 高低差と銃の振りかぶりで威力の籠ったそれを、ランへと叩きつける。

 

それがどうしたと言わんばかりにランはアドミを掬い上げるように振る。 丁度上から降るヒナの銃に、正反対の軌道でランの銃が襲い掛かる。

 

 

「ッ!!」

 

「重い、けどッ……膂力は、私の方が上ッ!」

 

「くっ……!」

 

 

拮抗したかに思えたそれは、若干の膂力の差でランが打ち勝つ。 吹き飛ばされたヒナは驚きに目を見開きつつもすぐに意識を切り替え、銃による制圧射撃でランの動きを止めに入る。

 

ヒナの思いが反映したように、愛銃であるデストロイヤーが勢いよく銃弾をばら撒く。 最初の数発はランに当たったものの、すぐさま銃を盾にして射撃を乗り切ろうと試みる。

 

 

「イオリ、残ってる風紀委員を撤退させて。 ずっと抑えていられるほどランは甘くないわ」

 

「わ、分かった……」

 

「ヒナ委員長、援護は?」

 

「必要ない。 ……まずは撤退を優先して、私もカバーしきれないから」

 

 

残弾を撃ち尽くし、ヒナは即座にリロードに入る。 しかしリロードという決定的な隙をランが見逃すわけもなく、左右の銃を構え躊躇いなく引き金を引いた。

 

 

「ッ! ふふ……痛いわね」

 

「リロードさせる余裕を与えると思う?」

 

「いいえ、無理にでもするわ。 全弾耐えきれば嫌でもリロードする、リロードせずに殴りかかって来ても良いわよ。 同じことをするだけだから」

 

「…………」

 

「それに、下の杭は撃ち尽くしたでしょう?」

 

 

ヒナの言葉に、ランは苦虫を嚙み潰したような顔をする。 ヒナの言う通り、パイルバンカーは全て撃ち尽くしており使えない。 その代わりに便利屋68の面々は戦線に復帰できない程度の怪我を負っているのだが。

 

 

「杭が無くても、殴れれば十分……」

 

『────いいえ、十分でも何でもありません』

 

 

声が聞こえる。 先程までは聞こえていなかったその声に、ランは何も言わない。

 

 

『ランちゃん、落ち着きなさい。 それ以上はいけません』

 

「止めないで、ヒマリ」

 

『ゲヘナの風紀委員会の暴挙も、便利屋68の爆破の場面も、既に設置された防犯カメラの映像から入手しています。 リオ経由で正式に万魔殿へと抗議をするので、それ以上貴女が手を出す必要はないです』

 

「……ええ、それに関しては私が公式の場で頭を下げる。 必要なら何らかの罰則だって下して良い……だから、これ以上は傷付かないで

 

「何でッ……何でヒマリまで!!」

 

『やってはいけないと分かっているのに止まれない問題児を止めるために決まっているでしょう!!』

 

端末から響く声に、今度こそランの動きは止まった。 顔は下を向いてしまっていてその表情は窺えない。 両手もだらりと垂れたままで、手に持った銃は今にも落ちそうになっている。

 

 

『貴女自身、分かっているでしょう? こんなことをしても貴女の言うユメと言う人物が喜ぶわけがないと』

 

「…………」

 

『力任せに暴れるのではただの獣と変わりません。 飲み込んだうえで責任を取らせる……セミナー副会長としては、そうすべきでした』

 

「……」

 

『貴女が壊したビルだって、誰かが所有していた物でしょう? まぁアレに関しては壊してもあまり痛くないですが……兎に角、頭を冷やしなさい』

 

「……うん」

 

「ラン、貴女……」

 

「ごめんね、ヒナちゃん。 頭に血が上ってた」

 

「良いのよ、原因は此方に」

 

「頭を冷やすね、本当にごめん」

 

「……ラン?」

 

 

噛みあっているようで、何か違和感が残る会話にヒナは首をかしげる。 ランはそのままその場を立ち去ろうと後ろを振り返り────────瞬間、動きを止めた。

 

 

「……ほしの、ちゃん」

 

「ランちゃん……」

 

「ごめん、ごめんね。 柴関ラーメン……」

 

 

ランの目に見る見るうちに涙が溜まる、泣かないようにと歯を食いしばる。 ……その様は、泣くのをこらえる子供そのものであった。

 

ホシノはそんなランに近付き、そっと抱きしめる。 身長差でホシノが抱き着いているようにしか見えなかったそれは、ランが段々と倒れこむように姿勢を低くしたことで……ホシノの胸元に、ランがしがみつくような形へと変わった。

 

 

「何時かは壊れるって、頭では理解してた」

 

「うん」

 

「ユメちゃんが喜ぶだなんて思ってなかった、きっと困ったような顔で諭してくるんだろうなって、理解してた」

 

「……うん」

 

でも抑えきれなかった、思い出を汚されたみたいだった!! ユメちゃんがいたって証が、無くなったみたいに……確かに、ここにいたのに

 

 

段々と嗚咽が混ざっていくランの独白に、場のみんなは言葉を返すことが出来ない。 意識を取り戻した便利屋68は顔面蒼白と言った感じだったし、風紀委員会も暗い顔をしている。

 

対策委員会は悲しそうな顔をしたまま動かず、ヒナは申し訳なさそうに俯くだけであった。

 

 

「ごめん、ごめん……ユメちゃん、ホシノちゃん……」

 

「いいよ、いっぱい泣いて。 ユメ先輩だって許してくれるよ」

 

「あぁ……あぁぁっ……」

 

 

遂に涙腺が決壊したラン。 声をあげながらホシノの胸元で泣き続けている。 ホシノはそんなランの頭を、ずっと撫で続けていた。

 

 

 

────────────────

 

 

 

「…………」

 

 

椅子に座って、ただただ虚空を見つめる。 外で泣きわめくなんて初めてだった。 ユメちゃんがいなくなってしまった時も、外で泣くことはなかった。

 

 

「……」

 

 

つい数時間前の事を思い出す。 怒りに身を任せてしまったとはいえ、色んな人に迷惑をかけてしまった。

 

きっとリオちゃんは白目を剥いて驚くだろう、ヒマリちゃんですらあんなに焦った声を聴いたのは久しぶりだ。 それだけ困らせてしまったんだなと反省しないといけない。

 

でも、それ以上に気にするべきことは……

 

 

「ランちゃん、落ち着いた?」

 

「……うん」

 

 

ホシノちゃんにずっと手を握られた状態で、対策委員会の教室にいる事だろうか。 他のみんなは距離を置いて様子を窺っているし、先生も空気を読んでか何も言わないでいる。

 

 

「……先程はご迷惑をおかけして、本当に申し訳ありませんでした」

 

”気にしないで……って、言っても気にするとは思うけど”

 

「風紀委員会、並びに便利屋68からは謝罪がありましたが……」

 

「受け入れるよ。 これ以上引きずっても互いにとって良くないから」

 

「そう、ですか」

 

 

あの後、ヒナちゃんから正式に謝罪されたし便利屋68からも……一応、謝罪はされた。

 

飲み込みたくない気持ちは、もちろんある。 でも私がここで止まっていたら、ユメちゃんが笑ってくれないような気がして、私は受け入れた。

 

 

「ランちゃんも久しぶりに、感情を吐き出せたみたいで安心したよ~」

 

 

ごめん、感情はまあまあ出してる。 主にヒマリちゃんに。

 

 

「……でも、安心しました」

 

「安心したって……何で?」

 

「い、いえ。 私、心の何処かでラン先輩を完璧な人って考えてたみたいで。 それが私が思っている以上に感情的で、安心したというか」

 

「アヤネちゃん……まぁでも、確かにランちゃんを最初に見た人はそんなこと言うかもね」

 

 

何処か呆れたような声色で、ホシノちゃんが苦笑する。

 

 

「でも、ランちゃん程感情豊かな子は知らないかな。 アヤネちゃんが思っている以上に、ランちゃんは面白いよ……人見知りだけど」

 

「ちょ、ホシノちゃん」

 

「え、ラン先輩って人見知りだったんですか?」

 

「……まぁ、うん」

 

「通りで……クールなんじゃなくて人見知りだから口数が少ないだけなの?」

 

「ヴッ」

 

 

気にしてる部分を的確に突いてくるじゃん、セリカちゃん。 でもそういうのは思ってても口に出さない方がいいと思うんだよね。

 

 

「でも昔に比べたら口数は増えたし雰囲気も優しくなった」

 

「そうですね、前はもうちょっと……硬いと言いますか」

 

「……そんなだった?」

 

「「うん(ええ)」」

 

「そっか……そうなんだ」

 

「あ、思った以上にダメージ食らってるって感じの表情だ」

 

 

言うな、気にしてるんだから。

 

いやそれどころじゃない、今はそれより重要な物が残っているのだ。 ……関係各所に謝罪行脚と言う大事な要件がな。

 

 

「ぐっ、ぐぎぎ……ヒマリちゃん、本当にごめん」

 

『ふふ、気にしていませんよ。 今回の非は向こうにあります。 今回は双方の落としどころを決めるための話し合いとでも思ってください』

 

「うん……」

 

『貴女が悔やむ必要はないのですよ。 でもリオは既に『あのクソ共ランに舐めた真似とり腐りやがって』と言ってるので急いだほうが良いですね』

 

「絶対に止めてね????」

 

 

私よりやらかしそうなのが増えてしまった。 早めに謝罪に行かないともっと面倒なことになってしまいそうだ。

 

おかしいな、私アビドスに来たばかりなのにな……車壊してとんぼ返りばっかりしていない?

 

 

『代車すらも壊れたので今度はミレニアム保有のヘリを向かわせてます。 それに乗ってゲヘナへ向かってください』

 

「はい……」

 

『万魔殿からは既に謝罪の意があること、賠償金の支払いにも前向きですしそこまで心配する必要はありませんよ』

 

「それならいいんだけど……」

 

『申し訳ないとすれば、碌にアビドスに滞在させられない不甲斐なさといいますか……いえ、そこはランちゃんの運の悪さも関係してますが』

 

 

気にしてることを言わないでくれ、治るものなら治したいんだよ。 治しようが無いモノだから困ってるわけで……

 

 

「大丈夫だよ、って話前もしたような気がするね」

 

「そうだね……」

 

「ランちゃんが不安がるのも無理ないけど、安心してよ。 アビドスの問題は基本アビドスで解決しないといけないんだからね」

 

「分かってる」

 

 

分かってはいる、でもその言葉だけで納得できるものではないのだ。

 

それに……何だろう、この言いようのない違和感は。 何故か、ホシノちゃんが遠くに行ってしまうような……「あの日」ユメちゃんがいなくなってしまった時のような感覚が、ずっと纏わりついて消えない。

 

 

「悪いようにはならないしさせないから。 おじさんとしてはランちゃんが元気にしてくれてる方が嬉しいんだから、不安要素は早く無くしちゃおうね」

 

「うん……分かった」

 

「うんうん、偉いよランちゃん」

 

「ホシノちゃん……」

 

 

ジワリと涙が零れそうになるが、ここは堪える。 あまり人目のある場所で泣きたくはないのだ。 いや、すでに手遅れな気がするんだけど。

 

 

『ほら、ランちゃん。 ヘリが来たようなので早く乗り込んでください』

 

「うん」

 

”ラン”

 

「……何でしょうか?」

 

 

それじゃあ帰ろう、と言うときにそれまで話しかけてこなかった先生が話しかけてくる。 一体何事かと思っていると、先生はやや言いにくそうに口を開き……

 

 

”確かに、私はランの苦しみを分かってあげられないのかもしれない”

 

”でも、だからと言って理解するのを諦めるわけにはいかないと思うんだ”

 

”分からないことを、分かるようにする……人って、そうやって互いを理解していくものじゃないかな?”

 

”だから、また今度会った時にはランの事を教えてほしい。 もっと沢山お話をしようね”

 

「……ええ、その時はまた」

 

 

先生の言葉に、一瞬だけ言葉が詰まる。

 

これが大人なのだろう、私なんかより生きてて酸いも甘いも経験した大人……だからこそ他人に寄り添えるし感情を抑えて理性的な話もできる。

 

 

 

 

 

 

……ああ、だからこそ。 もっと早く来てくれればなんて、そんなことを思ってしまった。

 




この回難産だった、それに話を切るタイミングに迷って文字数少し減ったし

アビドス編が短い分ユメ先輩との関係性とか詰め込まないといけないのでどういう流れにしようかって迷った結果第三勢力になってしまったのは良かったのかどうかって書き終わってもなお迷う


感想、お気に入りなどお待ちしております
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。