セミナー副会長はとにかく巻き込まれたくない 作:ピンク髪大好きニキ
多分二日か三日に一回の更新になると思うので、まあ気長に待ってもらえれば
「アヤネちゃん、それにみんな……ッ!!」
ランがアヤネと電話をしてから3時間ほど経過した頃……ランの姿はアビドス上空にあった。
アヤネの電話の後、リオに無理を言って急いでヘリの手配を済ませ必要最低限のものだけ持ってアビドスへと急行していたのだった。 弾薬は最低限、武器はアドミニストレーターのみ。 ……今は重量を軽くして身軽さを重視していた。
「間もなくアビドス高等学校ですが……あれは?」
「……何あれ、私も知らない」
目視で確認出来ると言ったところで、ランはアビドスに見慣れない黒煙が上がっている事に気付いた。 よく見てみるとそれは戦闘の跡であり、ランが来るほんの少し前までアビドスに何者かの介入があったのだと瞬時に理解した。
(この状態でアビドスに何かをするとすれば……カイザーかっ!!)
ランの推測は当たっており、つい先ほどまでアビドスにはカイザー理事率いる部隊が侵略行為を行っていた。 幸い先生の指揮、それと便利屋68の介入により一時的に退けることが出来ていたが……事態はとてもじゃないが良いとは言えない。
「ここまででいい、私はここで降りるから」
「了解です、何かありましたら連絡ください……ご武運を」
「……ええ、ありがとう」
ランはアドミ片手にまだ数十メートルはある高さから身一つで飛び降りる。 地面が砂だったため特に問題なく降りれたように錯覚するが、普通数十メートル上から降りて怪我一つないのは異常である。
この場にヒナがいれば「流石に私も対策なしで同じことはしないのだけれど」と言うだろう。 ヒナだって背中にある翼を併用して滑空を混ぜながらでないと降りないのだから。
「……ごめんアヤネちゃん、出遅れたみたいだね」
「あ、ラン先輩!! 来てくれたんですね!!」
「勿論、ホシノちゃんの一大事なんだから来るのは当然だよ」
対策委員会の教室に辿り着くと、ランの姿を見たアヤネが安堵の息を吐いて近寄って来る。 他の面子もやって来るのを見ていたが、ふとその場所にいないもう一人の姿に気付いて首を傾げる。
「……先生は? 何処にいるの?」
「先生は協力を仰ぐと言って何処かへ……流石にカイザーの部隊と戦うとなると人数が」
「協力を仰ぐ、か」
先生が仰ぐとすれば何処だろうか? 風紀委員会は有り得るとして、後は便利屋68と……シャーレ所属の生徒の大半はアビドスと関わりのないメンバーばかりであり、そんな生徒を参加させるとも思えない。
「アテは風紀委員会と便利屋以外にあるの?」
「あるとすればヒフミさんですが……」
「ヒフミ? いつの間に知り合ってたの?」
「あれ、ヒフミさんを知ってるんですか?」
「ペロロ様に魅了された自称普通の生徒なら、私も知ってるよ」
「あぁ……」
あぁ……ってなんだ、それだけ印象深い出会いでもしたのか。 まあ流石に同名の生徒かつ趣味も同じであれば知っている人物だろうと納得し、話の続きを促す。
「同一人物っぽいけど、何処で知り合ったの?」
「えっと、ブラックマーケットで……」
「またグッズでも漁ってたのかな。 それで」
「止むを得ない事情により、銀行強盗を一緒に行って……」
「?????」
止むを得ない事情があっても銀行強盗ってするものなのだろうか? ランは訝しんだ。
兎も角、知り合いということは理解した。 しかしそれは望み薄だろうと言う事も理解してしまう。
「正直、ヒフミが参加してくれるかと言われれば難しいと思う」
「何でよ、知らない仲じゃ……」
「トリニティが他校の問題に首を突っ込ませるかと言われれば、かな。 トリニティ自体に被害を被るような案件なら有り得るけど、今回はそんな事態じゃない」
「そ、そんな……」
「……だから、今回は私がそうさせる」
「え?」
対策委員会の困惑する顔を他所に、私はとある人物に電話をかける。 コール音が暫く鳴り響くと、漸く相手が電話に応答した。
『………もしもし、ランさん?』
「や、ナギサちゃん。 今ちょっといい?」
「っ!?」
トリニティ総合学園、ティーパーティーの桐藤ナギサ。 実質的なトリニティの代表であり今回の件に関して筋を通さなければならない相手である。
『急に連絡が来たので驚きましたが……いえ、良いでしょう』
『何やら切羽詰まっている様子、事情をお聞きしましょうか』
「話が早くて助かるよ。 ……回りくどいことは言わない、アビドス高等学校に手を貸してほしい」
電話の向こうから息を呑む音が聞こえる。 いや電話からだけじゃない、対策委員会のみんなからもだ。
『……何を仰っているか、ご理解していますか?』
「うん、理解してる。 理解した上で、こうして頼んでるんだよ」
『いえ、本質を理解していません。 交流のない学校にいきなり手助けをすると言うことを軽く見すぎています』
『見方を変えれば越権行為、アビドスから見れば大きな借りを作ってしまうのですよ? それだけではありません、ゲヘナやミレニアム……他校とのバランスも調整しなければならないとなると、一体どれだけの人員と書類を必要とするのか……』
「………それも、分かってる」
『ですが、協力しましょう』
「……え?」
今度はランが困惑する番であった。 直前まで否定の内容を語っていたはずのナギサから肯定の返事が返ってきたのだから仕方のないことではあるのだが。
『今ある材料だけでは到底協力など出来ないでしょう。 首を縦に振るわけには行きません』
「………」
『本来なら相応の対価をアビドスに要求して初めて成立するものですが……ランさん、それは貴女に要求するとしましょう』
「……私で出来ることなら、何だってする」
「だから────力を貸して、ナギサちゃん」
『────ええ、その願い……ティーパーティーのホストとして、正式に承りました』
『もう、本来なら双方の会長や複数の方が公的な場で正式に話し合いをして決めるような事なんですからね。 無茶を言ってどうにかなるものではないんですから』
「ごめんね、必要ならリオちゃんにも頼んで……」
『調月リオさんからは既に言質を頂いております。 ですので大分歪ですが……まあ良いでしょう』
『と言っても、ゲヘナが絡む以上大規模なものは期待しないでください、精々が迫撃砲と正義実現委員会の一部……あと個人的にシスターフッドと救護騎士団の一部が参加しそうですが』
「サクラコちゃんとミネちゃんかな……二人とも立場があると思うんだけど」
『そこはランさんの人徳ありきです。 そちらに関しては私の伺い知れない部分ですので』
汚い、流石トリニティ。 コイツ平気で『シスターフッドと救護騎士団には協力を要請してないから暴れても責任取りません』と遠回しに言いやがった。 今の今まで責任や立場が云々みたいな事を言っててそれはいいのか? ランは言いたくなったが、かなりの無茶を聞いてくれている手前何も言い返さなかった。
『場所や時間の指定は決まったら連絡を。 必ず間に合わせますので』
「重ね重ね、本当にありがとうね」
『ふふ、後で何倍にも増やして返してもらいますからね。 またお茶会でもしながら内容を決めるとしましょうか』
「………本当にお手柔らかにね?」
『それはランさん次第ですかね』
色々言おうとしたら電話が切れ、何とも言えない顔で黙り込んでしまうラン。 そんなランの下へ、対策委員会の皆が心配そうな顔で近づいてきた。
「あ、あのラン先輩……」
「あぁ、アヤネちゃん。 とりあえず援軍は期待してて」
「ですが、本当に大丈夫なんですか? ランさん、このままでは」
「私一人で増援が望めるなら安いものでしょ? ……後でユウカちゃんには怒られそうだけど」
「でも、それでホシノちゃんを助けられるのなら喜んでそうする。 過ちは、繰り返しちゃいけないんだ」
何処か説得力のある言葉に、アヤネは何も言えなくなる。 暫く対策委員会とランの間で今後の動きを推測しつつホシノ奪還の案を考えていたのだが……
「……ん?」
「着信ですね、これは……ラン先輩ですか?」
「そうみたいだね、相手は…………へぇ」
ランの端末が着信したことで、話が一旦途切れる。 一体誰からなのだろうかとランが相手の名前を確認した瞬間────表情が一変する。
「ら、ラン先輩? 一体……」
「あぁ、ごめん。 怖がらせちゃったかな」
「いえ、大丈夫ですけど。 何か問題があったんですか?」
「問題は……無いとは言えないけど、少なくともアヤネちゃんたちが気にしなくてもいい問題かな」
「とてもそう思えない顔してましたよ……」
「ふふ、ごめんね。 まあそれはそれとして別件が出来たから私は少し席を外すよ」
若干申し訳なさそうな顔をしつつランは教室を後にする。 アヤネ達対策委員会はその後も作戦の立案や武器の点検などをして時間を活用し、待ち構えているであろう大規模な戦いのために覚悟を固めるのであった。
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”…………”
「クク、お待ちしておりましたよ……シャーレの先生」
キヴォトス某所にて、二人の人物が対峙していた。
一人はシャーレの先生、そしてもう一人は……スーツ姿に異形の顔をした、謎の人物。
「自己紹介がまだでしたね。 私の事は黒服とでも呼んでください」
「まず最初にハッキリさせておきましょう。 私達『ゲマトリア』は貴女と事を構えるつもりはありません。 ……寧ろ協力関係になっても良いと思っています」
”悪いけど、私にはそんなつもりはないよ”
「……そうですか、残念です」
残念に思っているとは思えないような声色で、黒服は項垂れる。 先生は表情を険しくし、黒服へと厳しい視線を向けていた。
”私は、ホシノを返してもらうだけだ”
「……理解に苦しみますね。 小鳥遊ホシノは既にアビドスから離れました。 それは貴女も……」
”まだホシノは生徒だよ。 顧問である私が、まだサインをしていないからね”
「……ほう?」
黒服には予想していなかった切り口に、思わずと言った形で声が漏れた黒服。 今の先生の言葉が正しければ、確かに黒服が言った事は全て前提から覆ってくる。
「小鳥遊ホシノに、そこまでの価値があると?」
”価値がある、無いじゃない。 ホシノが生徒で、私が先生だから”
「概念には理解は出来ます。 ですがアビドスの問題も、カイザーの件も、先生ではなく私でも解決することが出来ます。 そしてこれは小鳥遊ホシノが望んだからこそ……それでも、先生は引かないと?」
”勿論、それが先生で、大人のするべきことだから”
確固たる意志で黒服の提案を断る先生に、黒服は思案する。 何を提供しても先生は応じるつもりがないらしい、そしてこちらとしても敵対は避けたい。
「……本当に、理解できませんね。 そこまでして関わらなくてもいい問題に介入するとは」
”言っても理解できないだろうね、お前には”
「……クックック、これはこれは、随分嫌われてしまったようですね。 ではこれを、小鳥遊ホシノの居場所になります」
”あれこれ言った割には、あっさり教えるんだね”
「ええ、ここまで粘っておいてなんですが……小鳥遊ホシノは、サブプランの一つ程度の認識でしかなかったのですよ」
黒服の放った一言に、先生は訝しむ。 サブプランだというのであれば、メインである何かがあったはずだ……ならばそれは、一体誰が?
そんなことを考えていた先生と黒服しかいなかった空間に、ノックの音が響く。 こんな場所に一体誰が? そんな先生を他所に黒服は「どうぞ、入ってください」と答える。
”……何で、キミが?”
「…………」
「ククッ……お待ちしておりましたよ、天海ランさん」
────────そこにいたのは、今にも銃を振り回しそうなほど殺意を駄々洩れにさせたランが立っていた。
~~~~~
先生がいるのは、正直予想外だった。 一瞬協力関係か? とも思ったけど、先生の性格上絶対コイツとつるむことはないだろう。
「ランさん、お待ちしておりました」
「そっか、私はここでお前の息の根を止めるつもりだけど」
「それは困りますね。 また今度例の場所へ行くのでそれで勘弁してもらいましょうか」
「……仕方ないか」
大げさに驚いたようなリアクションをする黒服に、私はひとまず銃を下ろす。 先生は何が何やらと分からない様子で、おずおずと私に話しかけて来た。 前回の一件でギスギスだもんね、話しかけ辛いもんね。
”ラン、黒服とは……”
「知り合い、ではあります」
”ッ!? まさか、何か契約を……”
「したには、したかな?」
黒服とは、知り合ってそれなりの期間だ。 関係性としては……友人、とはちょっと違うか? いや違わないか。 でも一応契約上の付き合いはあるから似たようなものか?
「残念でしたね。 契約上私はランさんとの関係を話すことが出来ません……聞き出したいのであれば、彼女から直接聞きだすしか」
”ラン、出来れば話してほしいんだけど”
「申し訳ありませんが、それは難しいです」
だってそんな大層な契約じゃないんだよなぁ……私の戦闘に耐えうる素材の探索や私に対しての危害を加えない代わりに、私の髪の毛とか血とかを提供してるだけなんだし。
黒服曰く「神秘と恐怖に関しての実験を予定していましたが……まさかそれ以上のものを見つけることになるとは」と言っていたが、中身を教えてはくれなかったんだよなぁ。
ブツの提供以外だと普通に関係性は悪くない、何なら以前行こうとして爆破されてしまったお好み焼きの店は黒服が美味かったから行った方が良いって教えてくれたんだし。 事あるごとにスイーツの差し入れしてくるから、個人的にはそこまでの嫌悪感はない。
だがホシノちゃんに関わっていたというのなら話は別だ、内容によっては許してはおけない。
「ホシノちゃんの居場所を教えるって聞いたんだけど」
「ええ、こちらになります。 先に言い訳しておくとすれば、私は契約に従ったまでです。 契約が無ければ、私はあれ以上小鳥遊ホシノに干渉するつもりはありませんでした」
「アビドスの土地の為に、カイザーが」
「まあ、詳しくは言いませんが」
「……次はないから」
「無論、ありません。 私は貴女の不興を買うのが一番恐ろしいですからね」
”いやいやいや、待って”
「何か?」
契約の不履行なんて事を、少なくとも契約を大事にしている黒服がするとは思わない。 ならば本当に私との契約前に結ばれていたのだろう……ならこれ以上怒っても仕方のないことだろう。
そんなことを考えていたら、先生がこらえきれないように話しかけてきた。
”私としては、とても見過ごせる事じゃないんだけど”
「双方合意の下で、契約内容も納得したうえで結ばれたものであれば先生にとやかく言われる筋合いはないのでは?」
「それに(契約内容的に)害はないですからね。 とてもクリーンなものですから」
(血が絡む時点でクリーンか?)
”うーん……でも、何かあったら言ってほしい。 生徒が被害を被るかもしれないとしたら、先生としては放ってはおけないから”
「そうですか、考えておきますね」
まあ考えておくだけだけど。 先生にとやかく言われたくないんだよなぁ。
「まあ、ここに来た理由は今達成されたのでここにはもう用はないです」
「実に残念です、お茶の一つでもと思ったのですが」
「それはまた今度でいいや、次は何がいい?」
「ではフィナンシェで。 アレはいいモノでした」
「じゃあそれにするね。 では先生、私は一旦ミレニアムに行って増援を頼まないといけないので」
”え、うん……ってちょっと待って!?”
先生が何か言ってるけど今は一分一秒惜しいんだ、もう暗くなってきているから明日が勝負だろうし、出来る事は今のうちにやっておきたい。
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「ククッ……驚いているようですね」
”………”
「改めて言っておきますが、天海ランとの契約に関しては本当にクリーンです。 騙し打ちのような内容は含まれていません」
”はいそうですか、と断言できるほどお前との仲は良くないからね”
「それは残念です、ですが……そうですね」
”?”
「契約内容は明かすことはできませんが……先生、一つだけ忠告をしておきます」
先生はその言葉に胡散臭そうな顔をしたが、黒服の雰囲気が先程とは違って真剣さを帯びていたため、無言で続きを促した。
「天海ラン、彼女は確かに人間性も他者との関係性も良好な……そうですね、とても優秀な生徒と言えるでしょう」
”………続けて”
「だが気を付けたほうがいい、彼女の本質は『厄災』……大きな災いを巻き起こし、場合によってはキヴォトスに混沌を齎すことになる」
「それを抑えられるのは……先生、貴女なのかもしれませんね」
”……そんな事には、絶対させない”
「ええ、先生には期待していますよ。 私としてもそんなことにはなってほしくないですからね」
”……私は戻らせてもらうよ。 ホシノを、迎えに行かないといけないからね”
先生はそう言って、後ろを振り返ることなく去っていく。
黒服だけとなった空間で、黒服は一人笑みを浮かべ続けていた。
「破壊の権化、とは実に本質を見抜いた言葉だと思いますよ」
対策委員会編もラストスパートに入り始めたんで、そろそろパヴァーヌの中身も考えないといけないし着地点をどうするかとか考えることが一杯で困る
あ、あとランのヘイローだのなんだのの設定は感想欄を参考にしたんで、気になった人は探ってみれば良いんじゃないっすかね、少なくとも今は重要ではないので