更紗帆奈の隣の家に住んでいた男の子の話   作:nalnalnalnal

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第14話 魔法少女マジカルかりん

 

 

 

 

 

 

 

 ──季節は移り変わり、四月。俺達は進級して中学三年生となり、十咎さんは高等部に、七海さんは神浜市立大へと進学した。この春休みの間に俺は特訓に特訓を重ね、とうとう単独で魔女を討伐出来るようになった。勿論、相性問題もあるから時と場合に左右される事も少なからずある。

 

 

 昏倒事件については未だ犯人が発見されていないが、このタイミングでまた新たな容疑者が浮上した。最近神浜へとやって来たとされる三人組の魔法少女だそうだ。名前は…何だっけな。遊佐…さんとかだったかな。とは言え俺の容疑も完璧に晴れてはいない為、犯人探しを続行する必要はありそうだ。ただ、犯人が全くアクションを起こさないせいで何も進展がない。こちらから動くのも一つの手と考えられる。その三人組と接触するのもアリだ。

 

 

 ──そして、俺達のチームに一つの亀裂も入った。

 

 

 ──梓さんの失踪。七海さんから鬼気迫る様子で連絡を受け、俺達も数日間捜索したが見つからず。最悪の事態も想定出来るが、梓さんは曲がりなりにも神浜の実力者だ。そう簡単にはやられはしないだろう。

 

 

 水波さんや秋野さんにも協力して貰ってはいるが、これまた進展なし。俺達のチームには以前のような活気溢れる雰囲気がなくなり始めていた。昏倒事件も関係があるのかすらも分からない。俺が今すべき事は梓さんの捜索及び昏倒事件の犯人確保。

 

 

 長い道のりではありそうだが、根気よくやっていこう。更に肉体も改造したいという気持ちもある。トワにも何かしら手伝って貰うかもしれないな。調整屋として開業した八雲さんにも何かしら情報提供もお願いしたいな…流石に中立であるから対価が必要だが。その為にも更に強くならなければいけない。

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっ。最近元気なさげだけどどうしたんだよ?」

「ああ、トワか…いやまぁ色々あってさ」

 

 

 かと言ってそれだけに意識を奪われていたら学校生活にも支障が生じる。特に進級したせいで学業に関しても難易度が跳ね上がっている。数学とか英語とか…もう最悪平常点に賭けるのも手だよな。

 時間配分が難しい…流石に特訓に費やしたいのだが。

 

 

「色々なぁ…まぁ何かあったら言えよ。多少は協力してやるからさ」

「あんがと…元よりそのつもりだったけど」

 

 

 関係ない話だけど、今年度もトワと水波さんとは同じクラスだ。しかも新学期早々席替えを行なった為去年と全く同じ座席になっている。七海さんも高等部を卒業したし、トワとご飯を食う機会がまた増えるかもな。

 

 

「そう言えばお前の団地も大丈夫なのか?不審者騒ぎがあったらしいが」

「ん?大丈夫じゃねぇの?別に遭遇したとて殴り飛ばしゃ良いんだから」

「お前自分の異常さを自覚しろよ。お前抜きで考えるもんなんだよそういうのは」

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

「魔女…最近やたらと出会うな。増えた…って事なのか?」

 

 

 学校が終わり、食材や文房具の買い出しに行っている最中に魔女と遭遇した。この時期になって魔女の数が以前よりも増加している…何か原因があるのかどうか。もう魔法少女関連で何かあったらすぐに昏倒事件と結びつけてしまう自分がいる。意外と正解だったりするのかね?

 

 

「まぁいいや…今日は特訓もないし、肩慣らしだな」

 

 

 ちなみにだけど前やっていた寸勁は未だ成功ならず…特訓を積む内に自然と筋力が倍増して来たからもはやただの殴打でもいいんじゃないかと思えてくるが、手札は幾つあっても良い。それ程戦闘スタイルのバリエーションが増えるという事なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っしょ…脆いタイプはやり易いな。こういうタイプには刀の方が良いのかね?それも含めて今後研究していくか」

 

 

 今回の魔女には然程苦戦は強いられなかった。脆いタイプはどこかが核になっていると推測は出来るお陰で、片っ端に身体を斬り刻んだりぶん殴れば解決する。ここ最近脳筋みたいな戦い方しているのはアイツのせいだな…細かい事考えるのもいいが、それはもう少し先にしよう。

 

 

 余裕を持って戦えるようになれば思考に酸素のリソースを割ける。アイツにも言われたからな、呼吸の配分には気をつけろって。

 

 

「そう言えばグリーフシードなぁ…俺が持ってても宝の持ち腐れでもあるんだよな」

 

 

 幾ら反動があるとは言え…その反動も中々面倒だからな。姉ちゃんはこの反動にどう向き合っていたのだろうか。俺みたいに肉弾戦を仕掛けていたのかな?

 

 

 姉ちゃんともう一人の魔法少女…二人のお陰で俺は()()()()()()()を引き出せる。かと言って油断したら魔法少女とは違って一瞬でお陀仏になるというデメリットはあるが。

 無敵ではないという事だ。特に俺は()()()()で気配を察する特訓もした方がいいだろう。攻撃の予兆を感じ取れれば──ん?

 

 

「──何だ…?」

 

 

 粟根さん達の時のように疲弊し切っていない為、周囲の状況に意識を集中させる事が出来ている。だからこそ突然違和感を感じた。

 

 

 ──魔法少女?この反応はそう断定していいのだろうが、姿が見えん。隠れているのか?いやそれも変だよな。俺が何かした訳でもないし…

 

 

「トリックオアトリート」

「…あ??」

「トリックオアトリート」

 

 

 ???何言ってんだ?今は四月だが…ハロウィンは随分と先のイベントだぞ。ってか何で急にトリックオアトリートなんて言うんだ?新手の悪戯か何かなのか?姿が見えないせいで余計に不気味だ。もう魔法少女じゃなくてお化けなんじゃないのか。

 

 

「──!」

「──ごぶっ!」

「あごめん」

 

 

 俺の周囲を旋回するように反応が入り乱れ、と思ったら唐突に背後から風が微小ながらも吹いた為、警戒心を剥き出しにして裏拳を背後に打とうとしたら…小柄な魔法少女の子のおでこに直で入ってしまった。

 ザ・魔法使いの格好をした子はそのままゴロゴロと遥か先へと転がっていく。やっべ大丈夫かな…あの速度で直で入ったら結構な痛みじゃないのか。

 

 

「ふっふぐぅ…我の攻撃を見破るとは中々やるのだ。噂に違わぬ実力なのだ…」

「…大丈夫?」

 

 

 予想外の口調だったのだが…そんな厳格な口調しててもおでこ抑えてるから格好がついていない。見る限り秋野さんと同い年ぐらいか?

 …ん?噂?昏倒事件関連の噂かな…いやでもあの口ぶりからするとまた拡大解釈されて広まってるなこれは。

 

 

「我の心配なんて必要ないのだ…何故なら!我はハロウィンが生んだ魔法少女!『怪盗かりん』だからなのだ!」

「…へぇ…」

 

 

 こういう魔法少女も居るんだな…中々曲者というか変人と言うか。そんな見栄張ってるけどやっぱ結構ダメージ入ってるよね?ずっと抑えてるし…

 でも、何で急に襲って来たんだ?見た感じ割と柔らかめの子に見えるんだけどな。

 

 

「そんなことよりも、どうして俺を襲うんだ?君は昏倒事件の被害者か関係者なのか?」

「違うのだ…我の目的は一つ──そのグリーフシードを頂くのだ!」

「──早いな!」

 

 

 予備動作なしでここまでの速度…だが、普段から常軌を逸した奴の速度を何度も直で受け止めてるんだ。この程度なんて事はない。

 目的は分かった。だからグリーフシードという単語が彼女の口から発せられた瞬間に先手を打っておいた。これが功を奏すのかは分からないが、目当ての物がなければ動揺させられるだろう。

 

 

「──はっ!」

「避けるのか!」

 

 

 馬鹿正直に突っ込んできたと思って先程のように前面から拳を打ち込もうとするが、トンッと軽やかな身のこなしで放物線を描くようにして跳躍して回避される。俺よりも年下だろうに…中々やるな。

 ──と思ったら特に攻撃もせずにそのまま突き抜けていってしまった。堂々たる態度で俺へと振り返るが──

 

 

「グリーフシードは頂い──あれっ?あれっ!?ないの!」

「ああ、コレ?」

「なっ!?い、いつの間に!?」

 

 

 ──俺の読み通り、グリーフシードがなくて動揺している。そう…先程グリーフシードを頭上に全力で放り投げるという先手を打った。丁度彼女が向こうへ突き抜けた頃合いに俺の手元へと帰還するグリーフシード…攻撃しなかったという事は、何かしらの魔法を使うという事なのかな?

 

 

「それで──グリーフシードを盗ろうとしたのはいただけないな。君程の速度があれば魔女にだって勝てるだろう?何でわざわざこんな事を…」

「っわ、我は弱い魔法少女を助ける為にグリーフシードを手に入れる必要があるのだ!」

「いやだから自分で倒せばいい話じゃないのか?」

「そ、それは…そうなの…」

「ん?」

 

 

 急にしおらしい口調になったけど…こっちが素のこの子なんだろうか。まぁ十中八九そうなんだろうけど、本当に何でこんな子がわざわざグリーフシードの窃盗なんかを…話を聞かない事には始まらないよな。

 

 

「んー…弱い魔法少女を助けるって事は、グリーフシードをその弱い子達に渡すって事?」

「そ、そうなのだ!我は弱い魔法少女の味方なのだ!」

「強い魔法少女の味方ではないのか?」

「えっ!?いや、それは…」

 

 

 うーん…心意気は素晴らしいと思うが少々楽観視し過ぎだな。こんな事してるって事は真実も知り得ないだろうな…流石にそれを見ず知らずの奴から教えられるのもたまった物じゃないだろう。

 

 

「グリーフシードって魔法少女の生命線なんだよ。それは君も理解してるだろ?」

「強い魔法少女でも追い詰められる事はあるんだよ。そんな時にグリーフシードがなかったらどうなる?そのまま魔女にやられて死んじゃうよね」

「──えっ?」

「だから魔女を君自身が倒せばいいと思うんだけど…そうすれば解決する話じゃないのか?」

「…できないの…」

「…何で?」

「…わたし…一人じゃ魔女倒せないの…」

 

 

 また口調が素に戻ったな…あの速度を応用したり魔力の使い方次第でやりあえる潜在能力はあると思うんだけどな。うーん…一人…か。

 まぁ今はチームで魔女討伐に出向く事も少なくなったし…短期間でもいいならやってみるか。

 

 

「じゃあ一回俺と組んでみるか?」

「えっ?組む?」

「グリーフシードに関しては俺は別に要らないから君の独り占めでいいよ」

「でも…わたしは一人でも戦える魔法少女になりたいの」

「これはあくまでその過程って訳だ。まぁ短期間でいいならだけど…その間に鍛えまくったら良い話だろ?」

 

 

 勢いで言ってしまったが…人に教えるというのはあまり行なった事がない。俺と彼女では戦闘スタイルも違うだろうし…強いて言えばあの速度ぐらいか?

 

 

「…それで、どう?君にとって悪い話でもないと思うけど」

「…」

「…うん…組むの…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まぁ、やはり人材育成というのは俺は初心者だ。だからトワに教えを乞う事にした。

 あの子の名前は『御園かりん』さん。俺の一つ年下で栄区の学校に通っているそうだ。あの時御園さんが言っていた噂について詳しく聞いてみたところ、やはり昏倒事件の犯人とやらで…後は他の追随を許さない実力者だとか。もう少し控えめな噂を流して欲しいものだな…

 

 

 何度か一緒に戦ったが、イマイチ決定打に欠ける…彼女の身のこなしはあくまで奇襲や回避特攻である為、攻撃向きではないようだ。そもそもの筋力がないと自分で自嘲していたし、筋トレって訳にもいかないだろう…別の方法があればいいのだが。

 

 

「は?後輩の育成?」

「そうなんだよ。という訳で人材育成に長けたお前にアドバイスを貰いに来たんだ」

「…まさかだけどお前さぁ、その育成って殴り合いとかのか?」

「…違うけど似たような感じかな」

「その後輩の求めてるものが俺の経験則と合うか分からんから俺に言える事は何もないんだっての」

「というかお前だって十分過ぎるモン持ってんだろうが。自分の育成も兼ねてしごいてやれや」

「えぇ…」

「力の入れ方ぐらいはもうお前に言っただろ。あれをそのまま後輩とやらに教えても十分だと思うぞ」

 

 

 まぁ確かにそれもそうなのか。コイツのように身体全体を使って戦うというよりかは、御園さんは武器を扱うからな。力ってより魔力の使い方について教えた方がいいのかもな…

 

 

「あぁ、そう言えばさ。商店街辺りでお悩み相談室ってのがあるらしいぞ」

「それに行けと?」

「評判はいいらしいぞ。意外と本質を突くって噂だぜ?玄人よりも素人の方が意外と視野が広いって事もあるだろ。行ってこいよ」

 

 

 俺も聞いた事があるなぁ…確かにコイツの言うとおりかもしれんな。中央区での騒動の時も意外と見える景色が広かったからな。素人…じゃない可能性もあるが、賭けてみるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ、こんな人気なの!?」

 

 

 商店街にやって来ると視界に入るのは大行列。中には学生や大人といった老若男女全てが出揃っていた。どんだけ凄いんだその先生は…!これは賭けて正解かもしれないな。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

「お次の方どうぞー」

 

 

 やっと順番が回って来た…なっが!一人一人と真摯に向き合ってくれているという事なんだな。それはこちらにとってもありがたい。

 そして前方の相談者の姿が消え、目に入るのは先生の姿──ん?学生?しかも丁度御園さんと同い年ぐらいの…いや、意外と年上だったりするのか?

 それに指輪…魔法少女か。

 

 

「あれっ。六倉君?」

「ん?その声は──ああ、美凪さんに竜城さん。何でここに居るんだ?」

「私達はここのお手伝いをさせて貰ってるんです!六倉さんも相談を?」

「そうだね。それでその先生ってのが…えっと、その子?」

 

 

 予想外の場所で再開するとは…こういう縁もあるんだな。で、その先生なんだけど…結構派手な子なんだよな。キャピキャピしてるっていうか…自分でも何言ってるか分からんな。後のもう一人はお手伝いさんかな?

 

 

「おおっと!先生はマジ勘弁!それでそれで!その名前って、あなたが最近話題の魔法少年ってやつ!?」

「…まぁそうなるのかな」

「ああ!もしかしてかこちゃんが言っていたのって君の事?」

「夏目さん…知り合い?」

「うん。チームというか同盟というか…そんな感じなんだ」

 

 

 このタイプの人は今まで絡んだ事が無いな…本当に相談に乗ってくれるのか心配になって来たぞ。

 とうとう名前も割れたか…色々出回ってんなぁ。

 

 

「ボクは『志伸あきら』。よろしくね。で、こっちがこの相談室の先生?の『木崎衣美里』だよ」

「ちょっとあきらっちまでー!とりまよろぴ!え〜っと?」

「ん?ああ…六倉ナルだよ。よろしく」

「じゃあナルナル!よろぴ!」

「ナルナル!?」

「ああ、この子すぐにあだ名付けちゃうんだよね…」

 

 

 あだ名…今まで無縁のものだな。距離感がバグってるとしか言いようがないなコレは…まぁこういうタイプは意外と周りが見えてる可能性がある。

 

 

「まぁいいや。それで、ここで悩みを聞いてくれると伺ったんだけど」

「んー?あーしとお喋りして貰ってるってカンジ?それでスッキリする的な?」

「…ああ、確かに悩んでる時は発散したい気分だもんな」

「そうそれ!あーしも知り合い増えてまさにウィンウィンじゃん?」

 

 

 悪い子ではなさそうだな。確かに不思議と不快感とかはないんだよな…ビジュアル面も鑑みると人気があるのもよく分かる。

 

 

「んで、ナルナルはなんか悩んでるってカンジなの?」

「そうだな…今、後輩の魔法少女と短期間だけ組んでるんだけど、どう育成したらいいのかが分からなくてね」

「あれっ?かこちゃんからはチームを組んでるって聞いたんだけど」

「色々あってあんまり機能してないんだよね。だから短期間だけって事で」

「うーん…あーしがみゃーこ先輩の後輩だから育成?ってのはあんまし分かんないんだよねー」

 

 

 見た感じ御園さんと同い年か年下ぐらいだもんな。

 

 

「ナルナルさー。そんな難しい言葉使わなくても要は仲良くなりたいって話っしょ?」

「ん?んー?まぁ…仲良くはなりたいけども…」

「やっぱ仲良くなるならお互いの好きなものを知る事っしょ!あーしもみゃーこ先輩と同じカンジだったからさ!」

「…好きなもの…ねぇ」

 

 

 好きなものか…そう言えば少女漫画が好きだと言っていたな。タイトルは…『怪盗少女マジカルきりん』だったっけな。それに憧れてるからあんな口調にしていたらしい。そのマジきりの主人公が自らの手で弱きを助けるって信念を持った人らしいが…

 …読んでみるか。話を合わせるって訳ではないが、御園さんが目指している強い魔法少女像ってのが多少は見えて来るだろう。少女漫画は普段読まないジャンルだから割と新鮮ではある。

 

 

「君の言う通りだな…ありがとう。木崎さん」

「ほっ?もうスッキリしたカンジ?ナルナルって結構頭良いっしょ?ってかあーしはエミリーで良いよ。堅苦しいじゃん!」

 

 

 その後、ちょっとした他愛もない話で盛り上がりこの日は切り上げた。木崎さん達にも昏倒事件についての噂が広まっていたが、信用はして貰えただろうか。とりあえず今は御園さんの方に集中しよう。

 

 

 マジきりって何巻あるんだ…?中古でもいけるかな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 読んだ。読んで来たよとりあえず最新刊以外全部…全部読んで分かったけれど、御園さんがマジきりに完全に憧れているなら組むべきではなかったのかもしれない。マジきりは誰にも頼らずに一人で元気を与える…御園さんは姉ちゃんのような孤高の戦士?みたいになりたいのかもしれないな。

 

 

 だが、それなら一人で戦える程の技量が必要になって来るが…どうしたものか。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

「御園さんさぁ…一回一人で魔女と戦ってみないか?」

「えっ!?ど、どうしてなの?」

「君に聞きたいんだけどさ、マジきりに憧れているなら誰にも頼らない程の強い魔法少女になりたいんだろ?」

「えっ?六倉先輩マジきり読んでるの?」

「昨日読んで来たんだよ全部…アドバイスを受けてね」

「だからこの数日間の成長を試してみようと思ってさ。どう?」

「…分かったの。やってみるの」

 

 

 …なんかあったのか?少し元気が無いように見えるが。

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 と言う訳で、今回の魔女退治では出来るだけ御園さん単独で魔女を攻略して貰いたい。だから俺は後方支援に徹する…使い魔が御園さんへ向かえば殴り飛ばす。それの繰り返しだ…今回の結界は地面に石ころだらけで転んでしまいそうだが…御園さんは大丈夫だろうか。

 

 

「邪──魔っ!」

 

 

 この程度の硬度じゃアイツの足元にも及ばない。今更使い魔程度につっかえていたら姉ちゃんの背中は見えてこない。

 

 

 ──ふと、御園さんの様子を見てみると、何とか軽やかな身のこなしと得物の鎌で善戦はしている様子だったが…どうにも魔女本体には明確なダメージが入っていないように見える。

 

 

 この魔女やたらと使い魔を召喚して来るな…後方支援に徹して正解かもしれんな。

 

 

「魔鎌…ジャックデスサイズ!!」

 

 

 御園さんの怒号と共に得物が振り抜かれるが…魔女も同様に軽やかな身のこなしで鎌の側面から旋回するようにして回避する。

 ──そして巨体を利用し、御園さんに体当たりをかまして彼女を追い詰める。

 

 

 不味い…!ここからじゃ距離が離れすぎている…こうなりゃコイツらを利用する!

 

 

『@・€××、!?』

「どけっ!」

 

 

 奇襲を決めようとした使い魔の頭を鷲掴みにし、全力で蹴り飛ばす。使い魔は頭部だけが切り離されて巨大へと飛んで行く。間に合うか…!

 

 

「やっ!こ、こないで!」

 

 

 御園さんは武器を飛ばされた事により対抗する手段がなくなったのか、地面の石ころを幾つも魔女へと投げ飛ばすが…本人はもはや魔女の身体すらも目視していない様子だった。だが…

 

 

『☆€%〆〒×=°!??!?』

「──怯んだ?」

 

 

 御園さんの投げた石ころが直撃した魔女は怯んだ様子を見せ、俺の蹴り飛ばした使い魔の頭部が追撃し、大きく身体が傾いて転倒する。

 ──無意識的に石ころに魔力を込めたのか!身体強化が出来るように無機物にも魔力を込められると聞く。姉ちゃんの魔法とはまた違うものらしいが。完っ全に忘れてたわ!素手でしか戦わなくなったから…

 

 

 だが、これなら──

 

 

「御園さん!「六倉先輩!」」

「ん!?「えっ!?」」

「あっいや続けてくれ!多分分かるから!」

「分かったの!石を沢山集めて欲しいの!」

「了解!」

 

 

 御園さんの命令に従い、俺は全速力で石ころを一つの石塊にするように集める。彼女自身も周囲に石を集めて攻撃の準備段階へと入る。

 そして…御園さんの目の前に石ころで出来たタワーを完成させた。

 

 

「六倉先輩!マジきり読んだなら分かる筈なの!」

「んー…ん!?何が?」

「決め台詞なの!」

「あっあれか!」

「合わせて欲しいの!」

 

  

 多分アレの事だな。合わせるとするならば…この状況に合致したアレンジが必要になって来るなコレは。

 でも…漫画のセリフを堂々と叫べるってのは幾つになっても憧れちゃうよなぁ!

 

 

「我がお菓子の弾雨で黄泉の国へと還るのだ!トリックアンドトリート!」

「お菓子をくれたらイタズラするぞ!」

「「魔女を倒すというイタズラを!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

「やったの…!」

「思い返せば少女漫画のセリフだったな…御園さんだけで良かったよ」

「恥じる事はないの!」

 

 

 思春期の男だから多少は恥じてもいいだろうが…漫画のセリフだったらやっぱり決め台詞がグッと来るよな。今度何か言ってみようかな…一人だけの時にしよ。

 

 

「…で、多分もうコンビは解消だよな?」

「えっ、何で分かったの?もしかして先輩との話聞いてたの!?」

「それが誰かは分からないけど…全巻読んじゃったからね…やっぱりマジきりに完全に憧れてたんだな」

 

 

 …まぁ、御園さんが成長出来たのなら多少の出費は致し方ないよな…うん。

 

 

「これでもう怪盗かりんじゃなくてマジカルかりんとして生きていけるの!」

「頑張ってね」

「六倉先輩ありがとうなの!これでアリナ先輩にも納得させられる作品が描けるの!」

 

 

 確か学校では漫画研究部に所属してるんだっけか…いいな。好きな物をとことんやれるってのは。

 

 

「そう言えば六倉先輩!」

「ん?」

「マジきりの最新刊読んだの!?」

「最新刊…今月発売のやつ?」

「そうなの!」

「あー…それ売ってなくて渋々諦めたんだよね。もう読んだの?」

「当たり前なの!六倉先輩!今から買いに行くの!それで読んだら感想教えて欲しいの!」

「そうしようか」

 

 

 魔力を込める…か。使い方次第では更に戦闘で役立ちそうだ…エミリーさんと御園さんには感謝だな。

 

 

「嬉しいの…マジきりの話出来るのおばあちゃんぐらいしか居なかったから」

「そっか…じゃあ読んだ甲斐があったかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 





アザレア組はもう神浜入りしてる。
──追記──
誤字報告ありがとうございます!以後気をつけます…
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