更紗帆奈の隣の家に住んでいた男の子の話   作:nalnalnalnal

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第16話 神浜事変…② 【そしてアザレアの花咲く】

 

 

 

 私達三人は、今までずっと一緒だった。

 

 

 つつじの家で育ち、大好きな院長先生と共に過ごした日々は、今でも夢に見る程私にとっては宝物の一つだ。

 そして、宝物はもう二つある。葉月とあやめだ。

 

 

 年は違えど三人仲良しで今までやって来た。現に三人で魔法少女になって共に生活しているのがその証拠だ。

 あの時の願いは致し方ないとは言え、やはり心苦しいものがあった。でも二人が居たから私は耐えられた。これまでやって来れた。

 

 

 だから、私はこの三人の世界を誰にも侵させたくない。誰にも渡したくない。

 

 

 副院長が院長先生を侵したように、葉月とあやめが誰かに傷つけられるのが私には耐えられない。一人でも欠けてしまえば私達は私達でなくなってしまう。

 

 

 その思いは今でも変わっていない。そしてこの神浜に来てよりそう強く思った。

 

 

 あのふざけた幻覚を私に見せた魔法少女がどこかに居る可能性がある…

 

 

 それだけじゃない。

 

 

 現在、この神浜では魔法少女が次いで昏倒しているという噂?事件が発生している…そう、つい最近らしい。

 だから──私達が犯人として疑われている訳だ。

 

 

 ふざけるな。何故私達が根も葉もない噂に踊らされなければいけないのだ。競合相手を減らす?そんなもの今はどうでもいい…私達の世界を侵害しようとするのはいつだって外部の人間だ。

 

 

 そして──私が最も疑わしいと思っている人間が一人存在する。

 

 

 ──六倉ナル。魔法少女でもないのに魔女と戦える力を持った異端な少年。

 私達の噂と同時にそれは流れ込んで来た…そして、その六倉ナルが私達同様犯人だと疑われているそうよ。

 

 

 他にもかなりの実力者だとか怪盗少女?を更生させたなどという訳の分からない噂も存在してはいるが…私は興味ない。六倉ナルが犯人だと言われている事実のみが重要なのよ。

 

 

 聞けば六倉ナルは魔法を使わないと…本当にそうなの?

 

 

 全てが不明瞭で、何もかもが異端。六倉ナルを疑うのに時間はかからなかった。

 

 

 魔法を使わないのではなくて、隠蔽しているのではないかという可能性が高いと思う。隠蔽し続けられれば幾ら疑われようとも明確な根拠が見つからない。現に長期間犯人だと断定する材料が見つかっていないもの。

 

 

 接触するか否か…答えが出ていない内に葉月が手掛かりを掴むと言い出した。まだ神浜を出るには早いとのこと…勿論理解出来る。

 

 

 噂が付き纏ってこない可能性も無きにしも非ず…どうせならしっかりと払拭するべきだろう。

 だけど、葉月はどうやって手掛かりを掴むのだろうか?何が嫌な予感がする…

 なるべく危険な手法は取らないで欲しい…誰かと干渉するにしても深入りは絶対にしないで欲しい。私達は私達しか信用しない。

 それは葉月も分かってくれている筈だ。この動きにくい状況でなら尚更そうだ。

 

 

 ──でも、この嫌な予感は的中してしまう事となってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…」

「…」

 

 

 …私とあやめが買い物をしている最中に、とある魔法少女に突っかかられた。水波レナ──被害者の一人である十咎ももこの仲間だそうだ。

 

 

 突然怒号を発して近づいて来たせいであやめが驚いていたが、彼女達からしてみれば当然と言えば当然なのかしら。仲間がやられてみすみす黙っている訳にもいかないという事ね。

 

 

 だからこうして私に勝負を挑んで来た…理屈は支離滅裂。滅茶苦茶だが…分からない事はない。

 だが、こちらとしては不愉快だ…彼女は六倉ナルの知り合い。先程水波レナの連れである秋野かえでからボソッと発せられた一言で分かった。

 

 

『レナちゃん…六倉君も疑われてるんだから、ここは穏便に済ませようよ…』

 

 

 知り合いというだけで勝手に信頼され、私達がまるで真犯人かのように見られているのも不愉快だ。その男が本当に彼女達に全てを曝け出しているのか。魔法を使わないという噂が虚偽であるかどうか疑わないの?

 

 

 深謀遠慮の計画を立てられる程の頭脳の持ち主であればどう?六倉ナルが上っ面だけ善人を演じ、人心を掌握しようとしていたら。

 自身が犯人であるという噂も含めて計画の内であったら?本当に六倉ナルが一人だけで行動しているの?

 疑問は幾つ出て来ても不思議ではない。

 

 

 何が六倉ナルという人間を信用たり得る存在とさせているの?

 

 

 分からない…会った事すら未だにない私からしてみれば分からない。私達より以前から疑われていたのならそちらの方が可能性は高いのではないの?

 

 

 不愉快だ。

 

 

 だけど今は彼女に付き合うしか方法はなさそうだ。変に断ってあられもない噂が流れたらたまったものじゃないわ。

 あやめは矢面に立たせない…あのふざけた幻覚もある。何があってもあやめは私が守ってみせる…!何に換えても…!

 

 

 ──そして、私と水波レナの戦闘が始まった。初めは防戦一方であった彼女だが、負けじと得物を確実に私の行動範囲内まで入り込んで来て突いて来る。

 流石にあれ程の啖呵を切っていたんだ…それだけの実力はあるという事ね。だけど私こそ素直に身体は差し出さない。

 

 

 これまで三人でやって来た経験を活かして戦う…あやめが見ているんだもの。無様な姿は見せられないわ。

 それに私はあやめのお姉ちゃんであり家族であるのだから…この程度でやられる訳がない。

 

 

「もう終わりなのかしら?」

「ま、まだよ…!」

 

 

 負けず嫌いね…幾ら懐に入り込んで来ようが、私の方が得物を扱う速度が速い。突発的なスピードは大したものだけれど、それ止まり…そのスピードを活かせる程の隙を見せる相手じゃないという事よ!

 

 

 その後も彼女による連撃が私を襲うが…段々と体力が切れ始めている。仲間がやられて気が立っているせいで思考に呼吸のペースを乱されているのね。

 

 

 でも彼女は止まらない。余程の思い入れがあるのね…だから余計に不愉快だ。もう一人の犯人と言われている男が…

 

 

 六倉ナル…一体「あっ!六倉君!早かったね!って…ええっ!?」

 

 

「──!?」

 

 

 ──何ですって…!?六倉…!?まさか六倉ナル…!?この場に呼んでいたのね…丁度良いわ。今一度彼女にも自身に問い直してもらおう。その男を信用しているのかどうかを…

 

 

 だから私は水波レナを力一杯で吹き飛ばし、秋野かえでの目線が向いている方向へと目をやる。そうして視界に入ってくるのは見る限り私より年下の少年が…──!?…は?

 

 

「──な、何をしているのあなたは!!!!あやめから離れなさい!!!!」

 

 

 私の視界に入って来たのは…六倉ナルであろう少年がよろけたあやめの背中をさすっている状況だった。

 

 

 どうしてあやめが倒れているの!?どうしてその側にその男が居るの!?やめなさい…やめなさい…!私のあやめに勝手に触れるのはやめなさい!!!!

 

 

 どうしてこの状況であやめが急に倒れたの!?あの男が来てから…?

 

 

 だとすれば…あの男が…?あの男があやめに手を出したというの?

 

 

 私が戦っている内に?そそくさと現れてあやめに近づいて気絶させようとした…?そう考えて良いのよね?だってそこにある状況が今の私にとって全てなのだから。

 

 

 …ふざけるな。ふざけるな…そうだ…元はと言えばあの男が元凶だ…あんな異端な人間をどうしてこの街の魔法少女の一部は信用し切っているの?あれを見なさい…あれが全て。あやめに手を出した…それが全て。

 

 

 …絶対に許さな──…!?

 

 

 

 

 

 

 

 …また…この景色…まさか…幻覚を見せられて…?

 

 

 ──あやめ…!

 

 

『このは…あちし…一人は嫌だよぉ…』

 

 

 一人になんてさせないわ…!わたしがずっと側に居るから!そうだ…あやめには私達だけがついてあげれば良いんだ。他の誰の介入なんて必要ない…もし許してしまえば二人に危険が生じる…

 

 

『もう…手遅れだよ…』

 

 

 手遅れじゃない…まだ間に合う。まだ…間に合うわ。

 

 

 そうだ…今までだってずっとそうだった。ただ私達は普通に、幸せに生きたいだけだったのに…いつも私達の世界を壊していくのは外の人間なんだ。勝手に割り込んで勝手に全部滅茶苦茶に壊していく…脅かして狂わせて痛めつけて煩わせて…私の思いは間違ってなんかいない。

 

 

 外を見る必要なんてない。だってそうすれば壊されてしまう…私の思い出も宝物も…嫌だ。嫌だ。そんなのは嫌よ…!

 

 

 決めた…もういいわ。だから手始めに目の前の男を叩き潰す…あやめに手を出したのだから万死に値するわ。その汚い手であやめに触るな…触れるな!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「あやめに触るな!!!」

「──!」

 

 

 ──チッ!防がれた…!こそこそと近づいて来てあやめに触れる程臆病な人間だと思っていたが、意外とそうでもないらしい。

 だから何?その程度で動揺する訳がない。私から距離を取り、水波レナ達の近くへと跳躍した男を尻目に、私はあやめの容体をすぐに確認する。

 

 

「あやめ!あやめ!大丈夫!?」

「う、うん…急に頭がクラってして来て…でも大丈夫だよ!」

「安心して。あやめに危害を加えたあの男は私が叩き潰すから」

「…えっ?えっ?こ、このは…あ、あの人じゃないと思うよ!だってあちしの心配してくれてたし…」

 

 

 …あの一瞬で口封じまで行ったのね。こんな幼気な子にふざけた真似を…!絶対に許さない…!

 

 

「…大丈夫よ。私が叩き潰すから…あの男と…この神浜の魔法少女を!」

「えっ!?ちょ、このはーっ!!」

 

 

「──待ってください…勘違いです!」

「──チッ…!何が勘違いよ。あの場にいたあなたが全ての証拠でしょう!」

 

 

 …また防がれた…動体視力は一丁前なのね。伊達に実力者だと噂されている訳ではないという事ね。得物は刀か…相手が動揺している今なら私の方が速度は上。この一瞬でケリをつける。

 

 

 この男の腹部が油断している今ガラ空き…そう考えた私はすぐに行動に移す。得物の双頭の槍で彼の刀を弾いて一瞬の隙を作り、腹部に突き刺すように槍を押し出す。でも…

 

 

「──だからっ…話を…!」

 

  

 さも当然かのように先端部分を掴まれて双方が近距離の状況を作り出される──っ。抜けない…!なんという膂力…!そもそもの筋肉量が違う…近距離じゃ不利ね。なら遠距離から攻撃するまでよ。

 

 

 一瞬だけ先端の軋みが緩んだ瞬間に全力で槍を引き抜き、あやめの至近距離へと降り立って攻撃態勢へと入る。

 槍を斜めに振り翳して地面を抉るように振り抜き、槍から放たれた複数枚の光刃が六倉ナルのもとへと目にも止まらぬ速度で向かっていく。

 

 

 だが、私が何かしようとした時に既にあの男は動いていた。恐らく遠距離攻撃が可能という事を見抜いたのだ。

 自身の真下の地面をただの踵落としで抉り、衝撃によって飛び上がった一際大きな石塊を持ち上げ、私の光刃が放たれた少し後に飛び上がる。そして──

 

 

「──んのっ…!」

 

 

 私の光刃が丁度下へ来るタイミングで石塊を全力で投げ落とし──ただの膂力によって投げ落とされた石塊による衝撃で地面がかなりの深さ凹み、光刃も全て消し炭にされた。ふざけた膂力ね…!厄介だわ…!

 

 

 どうする。遠距離であればあの石塊のように石を投げ飛ばされる可能性がある…まだあの男の速度には私はついていける。近距離がマスト…あの男を一瞬でも出し抜ける事が出来れば勝機はある。

 近距離による攻防が始まる…身のこなしの軽やかさなら私の方が上…だけど体術ならあの男の方が上。攻撃を見切られない程の速度で斬りつける!

 

 

「…っ…」

 

 

 よし…押せている。精神的にも動揺している…恐らく万全な態勢ではないだろうが関係はない。ここで叩き潰す…!

 ──でも…

 

 

「──このは!?」

「──葉月!?」

 

 

 いつの間にか葉月が到着していた…あやめが呼んだのかしら。いや、なら丁度良い…葉月に私の思いの丈をぶつける。きっと葉月なら理解してくれる…分かってくれる。

 

 

「今は邪魔しないで…!」

「ちょ、ちょっと待ってよ!どうして六倉君と戦ってるの!?」

「この男があやめに危害を加えたからよ…!」

「は、葉月!このはを止めて!さっきなんか神浜の魔法少女を叩き潰すって…!」

「えっ!?このは!どういう事なの!?」

 

  

 あやめ…まだ落ち着いていないのね。無理もないわ…突然現れた男に危害を加えられたのだから。だけど…説明は後。

 

 

「待ってなさい!この男を叩き潰してから話を聞くから!」

「このは!六倉君は犯人じゃないって!」

「どうしてそんな事が言えるの!現にあやめが倒れた瞬間にこの男が現れたのよ!?」

「分かるよ!だってアタシは六倉君と数日間行動を共にしてたんだから!」

 

 

 …は?

 

 

 …今、何て?

 

 

 …この男と行動を共にした…?葉月が?どうして?私に何も言わずに?

 

 

 ──!しまった…!

 

 

「遊佐さん…!説得は任せた!」

 

 

 ──ただの膂力で…私の槍を破壊した…?しくじった…!気が動転したせいで握力が弱くなっていた…!この男は危険すぎる…!

 

 

「任されたよ…ねぇ、このは」

「葉月…!説明して!どうしてこの男と行動を共になんか…!」

「私達以外は信用しないと言って来たでしょ…!?なのに何で…!?」

「…あのさ、このは」

 

 

「アタシら、もっと外と向き合うべきだよ」

 

 

 ──っ…!?葉月…何を言ってるのよ…!今までも散々言って来た筈なのに。信用して良いのは私達だけって…なのに勝手に六倉ナルと行動して…かと思えば外を見るべき?

 私達の身に降りかかった事実は変えられない。変わらない…なのにどうして私と同じ考えじゃないの?葉月なら理解してくれていると思っていたのに…なんで…

 

 

「院長先生やつつじの家の仲間を見れば分かる…昔はちゃんと信用出来る人達が近くに居たでしょ?このはの言い分も分かるよ…でもそれだけじゃ、きっといつか限界が来る」

「今だって信用出来る人は周りに居るよ。数日間六倉君と一緒に居て分かったよ…犯人じゃないって」

「葉月…!」

「こ、このは…あ、あちしにも居るよ!信用出来る人!」

「あやめ…!?」

 

 

 あやめまで…!?

 

 

「あちし…出来たんだよ?友達が…同い年の子の友達が!」

「友…達…?」

 

 

 あやめに友達が…?どうして…どうしてなのよ…!私はただ…あなた達と一緒に居たいだけなのに。ただ三人で幸せに暮らしたいだけなのに。いつまでも三人だけで…生きていきたいのに。

 すぐに他の人間を信用してしまえばまた内側から破壊されるかもしれない…私達の日常が。理不尽な悪意に壊されるかもしれないのに。

 

 

 抑えていた筈の涙がふと溢れる…ああ、ダメ。あやめの前だから気を張っていたのに…私は耐えられないの…怖いのよ。また院長先生の時のように純粋な悪意によって日常が壊されるのが。

 

 

『このはさん…あなたは一番お姉さんだから、二人の事を引っ張ってあげてくださいね』

 

 

 院長先生のようになりたいと思って必死に強い姉を演じて来た…でも…ダメ…私は私なんだ。院長先生にはなれない。

 あなた達が大切で…宝物で…失いたくないからなのよ…私に残されたものは、あなた達しか居ないから…

 

 

「あやめが自分の意思で外と繋がったんだよ。初めて会った子と…それを見たらさ、思っちゃうでしょ?信用出来る人は輪の外にも居るんだって…」

「…」

「あと…アタシも、多分出来たよ。友達が…」

「葉月も…!?」

「そこに居る六倉君…と、もう一人の子なんだけどね」

 

 

 六倉ナルと友達に…!?葉月…本当にその男は信用たり得る人間なの…?あなた達が選んだ人間を完全に否定はしたくないけれど…私は…まだ…

 

 

「調整屋さんって居るでしょ?その人も六倉君を信用してるんだよ。中立の立場の人が、その子は絶対に犯人じゃないって宣言するくらいにさ」

「他にも、盗みを働いていた魔法少女を更生させたり、東西のトップとも昔から関わりがある人なんだよ…その人は」

「聞けば東西のトップ達とは魔法少女を知る前から関係があったんだって…そんな人がさ、わざわざこんな事件を起こすかな?」

「きっと六倉君が今の立場になったのには理由があるんだと思うよ。私達みたいにさ…そんなの、否定出来ないでしょ」

 

 

 …確かに、六倉ナルの噂はよく聞く…だけど…じゃああの時のあやめは何…?どうして急に倒れて…その側に六倉ナルが居たの…?

 葉月が言っている事は事実…間違いない筈なのに。私は…まだ信じられないでいる。

 

 

「多分、あやめの友達ともう一人も来る頃合いだと思うんだけど…」

「あやめさーーん!!」

「ナルさーん!連れて来たですよ!」

 

 

 葉月がそう言った瞬間に、二つの甲高い声が聞こえ…声がした方向を見るとそこには常盤ななかの一派の一人の…夏目かこさんだったかしら…と、一人の小柄な魔法少女が居た。

 今の口ぶり…葉月の言う通り、あやめと葉月の友達の人なの…?

 

 

「あっ…このはさん…」

「この人が…ですか?」

「は、はい」

 

 

 私の方へと真っ先に近づいて来る彼女達…何か言いたい事がある感じだけど…

 

 

「あっあの!」

「「ごめんなさい!」」

「…え?」

 

 

 あまりに唐突、予想外過ぎる彼女達の発言につい私は情けない声を出してしまう…謝られているの?私は。彼女達が私にした事と言えば…

 

 

「私があやめさんと会ってるのって内緒だったんですよね…?」

「ボクも…さっきかこちゃんに聞いたです。葉月さんとこのはさんは同じ仲間ですから…何も言わないのは失礼じゃないかって思ったんです」

 

 

 …だから私のもとへ来てわざわざ謝罪を…?確かに二人が私に黙って誰かと関係を持っていた事は許せなかったけど…彼女達の反応を見る限りだと、とても否定して良いような子達には見えない。

 …ならば、私が彼女達に問うべき事は一つ…いや、六倉ナルにも聞くべき事じゃないかと思う。単純明快で、その答えだけで分かる筈だから。

 

 

「かこさん…と、あなた、名前は?」

「ボクですか?安名メルです!」

「そう…じゃあ、かこさん、メルさん…あなた達はあやめと葉月にどういう印象を抱いているの?」

 

 

 かこさんはきっとあやめとは割と長めの期間会っていた筈…恐らく常盤ななかとの邂逅の少し後ぐらいから。メルさんならこの数日間…そこでそれぞれが二人に抱いた印象を教えて貰う。

 別にあやめと葉月の事を理解しろとは言っていない。友達と言うべき存在であるのなら…私にとっても快い返事が聞けると信じて問いかける。

 

 

「印象…あ、わ、私は…凄く大切な友達だと思ってます!年も同じですし…仲良くなれて嬉しいです…!」

「えっと…ボクは数日間しか関わりはなかったですけど…こう…お姉さんって感じがしたです!一緒に魔女退治やお茶したりしたので友達…って思っても良いとボクは思うんですが…」

 

 

 …ああ、そうなのね。一緒に魔女退治にお茶…か。葉月が自分から友達だって言う程だもの。人間性に欠点はない…恐らく、六倉ナルもそうだ。

 大切な友達…ね。思えば、私にはそういった存在が今まで居たのかしら…居なかったから、二人の気持ちが私には当初は理解できずに居たのかしら。

 …院長先生…私、いつの間にか二人に追い越されていたかもしれません。

 

 

 私が最年長で引っ張って行かなきゃいけなかったのに、いつの間にか私が足を引っ張っていたのかもしれない…あの幻覚が見え始めて、情緒が不安定になっていた。

 ああ、思い返せば…あの時の六倉ナルをよく見れば、倒れているあやめを本気で心配している顔だった。そこに悪意なんて何もない…体調を確認する為に背中をさすってあげていたんだろう。私があやめだけにしか意識を向けていなかったという事になる…それは、正解と言ってはいけない。

 

 

 …六倉ナルとの対決で熱を出し切ったせいか、今となっては落ち着いて思考が出来る…

 

 

 …六倉ナルもよく考えれば被害者と言っても良かったのかもしれない。もし本当に犯人でないなら、長期間疑われている事になる…私達以上に魔法少女から疑われている。私のように荒んでいても良い状況だ。

 …六倉ナル…今は何も言わずに私達の状況を見守ってくれている。私と目が合うと彼は申し訳なさそうに一度深くお辞儀をする。

 …彼とは一度話をしてみましょうか。確認する為にも…

 

 

「そう…ふふ…かこさん、メルさん…」

「は、はいです!」

「これからも二人をよろしくね…どうかお願いするわ」

 

 

 私がそう言うとあやめと葉月の顔が目に見えて明るくなる…それ程仲の良い友達って事なのね…心から受け入れた訳ではない。私は急には変われないから…でも、一番私が疑って、一番危害を加えてしまった彼を認める事が出来たなら、その時はあやめと葉月…二人と同じ考えに至れると感じる。

 

 

 二人があやめと葉月のもとへと近寄り、握手をしている光景を横目に、私は水波レナ達とこの状況を見守っていた六倉ナルのもとへと向かう。

 

 

「えっと…」

「六倉ナル…君。さっきはごめんなさい…あなたはあやめを間違いなく心から心配してくれていた。それに嘘偽りはないでしょう?」

「まぁ…そう、ですね。タイミングが被っちゃったとしか言いようが…言い訳に聞こえるかもしれませんが」

「…私は、神浜に来た当初は、あなたの事を真っ先に疑っていたわ」

「…普通はそうなりますよ」

 

 

 …そうね。やはり彼とは…一度腹を割って話したい。そうすれば見えてくる筈だから…信用たり得る存在なのかどうかが。

 

 

「…明日、予定はあるかしら?」

「特にありませんが…」

「そう。だったら少し付き合って欲しいの。場所だったりはこの後連絡するわ」

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 その後は、騒ぎを聞きつけた常盤ななかの一派、そして七海やちよ、十咎ももこを始めとする六倉君との関わりがある魔法少女が続々とやって来た為、私達は一度これからの方針について確認し合った。

 

 

 まず、事件の原因でもある昏倒…これについては犯人への糸口がどこかしらで途切れてしまう為、犯人を直接確保するのは現段階では不可能だと結論付けた。

 そして噂について…幾ら犯人じゃないと申し出ても、明確な根拠がない為根本的に払拭する事も不可能…七海やちよを始めとした西の魔法少女、そして和泉十七夜という東の重鎮を始めとする東の魔法少女に同じように噂を流布する。という結論がついた。六倉ナルも知り合いの魔法少女にはその事を伝える腹積もりのようだ…特に悪影響はないと判断した為了承した。

 

 

 この場に居合わせた魔法少女とは事件について手掛かりがあったなら連絡する事を義務付けた。あまり良い結果は得られないだろうけど…協力者は多く居て損はない。

 常盤ななか一派との協力は前向きに検討はするつもりだ。その前に六倉ナル…彼との会合もある。そこで色々と確かめさせて貰う。

 

 

 ──外を見る。今まで考えた事のなかった視点…二人がそれを選んだんだ。私もそれに追いついていきたい…

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

「…」

「…ここが、神浜市…キュゥべぇの言う通りなら、魔力を持った男が存在する」

「なら、この街で最初に狙うべきは…その男。それ以前に魔法少女と邂逅すれば勿論狩る」

「詳しく聞けば…()()()()()を有しているとか…余りにも危険過ぎる」

「出会った時は…必ず…!」

 

 

 

 

 

 

 






最後に出て来た子は…まぁなんとなく分かると思います。
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