更紗帆奈の隣の家に住んでいた男の子の話   作:nalnalnalnal

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第19話 神浜事変…⑤ 【動乱】

 

 

 

「──ねぇ、やっぱ帰っていい?」

「ダメに決まっているでしょう…!?」

「オマエ…自分の状況よく考えるネ…」

「いや…八雲さんには出来るだけ会いたくないというか…心配かけたくないというか…ねぇ…?」

「なんで普通に喋れてるの…!?」

「さっき意識失いかけてたでしょ…!?診てもらわないとダメだよ!!」

「魔力で止血は出来たけれど、もう一度くっ付けるなら魔力の応用に長けた調整屋さんに行くのは当然よ…?」

 

 

 …全部聞こえてるんだけどぉ…

 

 

 丁度調整屋を閉め作業をしていたところに突如として複数の魔力反応が。ざわざわとした会話の声が私の耳に入り込んでくる。彼女達の会話から察するにナル君が恐らく酷い怪我をしてしまった…そう結論付けると閉め作業なんてどうでも良くなった。

 

 

 ナル君は楽さんから魔力を移植された異端な子…本人から自らの心臓がソウルジェムの役割を果たしているのだと聞いた。つまり、楽さんの魂ごと彼の中に移植されたという事になる。

 だから私は一度彼を調整してみようと考えたのだけれど…そうなるのならばナル君、そして楽さんの記憶も全てが垣間見れるという事。彼女から聞かされていないような話も曝け出されるという事…私自身の覚悟も必要。という事で彼の調整はまだ行なっていない。

 

 

 酷い怪我…何があったのかしら…ナル君は最近、神浜市の中でも上位の実力を持つと噂されている。恐らくその噂は事実…ナル君自身からも一人で戦う事が増えたと言われた。

 正直あまり無理はして欲しくないけれど、彼が戦う理由を私はどんな事があっても否定出来ない…したくない。私は中立…先生に倣わなければいけない。だからと言って彼の怪我を易々と看過するような人間ではない。

 調整での対価…それが記憶という事にすれば問題はない筈。

 

 

 彼が酷い怪我を負ってしまった姿は見たくはないけれど…それを治す為にここに来たのよね。だったら私も尽力しなきゃ。

 

 

 あっ…扉が…随分と長い事入り口前で話してたのねぇ…

 

 

 ──っ!?

 

 

「ど、どうも…」

「ナ…ル…君…?」

 

 

 私の目の前には信じられない…信じたくない光景が既に視界に映っていた。彼の姿から見て取れる情報が全てを物語り、私に嫌な想像を強制的にさせてくる。

 何故なら──ナル君の左腕が丸々失くなっているのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

「マジですみません…」

「ほんとに…十七夜にも報告するからねぇ…?」

「えっちょそれはほんとに…!」

「皆んなの調整屋さんを悲しませた罰よぉ…ほんとに心配したんだから…」

「いやほんと…ごめんなさい…」

 

 

 既に帰路に着いたななかちゃん達から聞く話によると、ナル君はある魔法少女──それはこのはちゃんからも聞いていたスズネという子と戦闘をしてここまで酷い怪我を負ってしまったそう。

 ナル君は余程の事がなければ並大抵の魔法少女や魔女には負けはしない筈…それも踏まえてそのスズネという子の異質さが良く分かる。

 なにせナル君を明確に殺す覚悟…いや、魔法少女を何人も既に殺して来ているのだから。下手をすればナル君が死んでいたかもしれない…中立であるからには冷静で居ないといけないのに自然と憎悪が湧き上がってくる。

 

 

「それからやちよさんにももこにメルちゃんにかりんちゃんに…」

「やめてください…特に七海さんはほんとに怖いんで…」

 

 

 この子はどこか自分を卑下している様子がある。一度お灸を据えてあげないと本当にこれ以上の怪我を負ってしまいそうで私は怖い。

 とりあえず本当にこの事は報告させて貰うわ…やちよさんや十七夜にきつ〜く叱って貰わないと。今回ばかりは本当に泣きそうになった…この調子だと色んな女の子を泣かせる子になっちゃうわ。私達で叱っておかないと。

 

 

 今は何とかナル君が持って来た左腕を再度つける為に魔力を集中させている。これは調整ではなくただの魔力の応用…今はナル君の腕が先決。回復させられれば調整について話し合うつもりよ。

 だけど…ナル君、仮にも自分の腕が失くなっているというのに余りにも冷静過ぎる。いけない…これが当たり前だと思ってしまっている節がある。

 

 

「ナル君…本当にお願い。自分が危険な状況に陥った時は私でも良いから誰かを呼んで…この怪我が常に危険と隣り合わせだからと言って当たり前だと思っちゃいけないわ」

「…すみません」

「流石に今回は予想外だったもので…そんな状況にならないようにもっと強くなりますよ」

「いや、あのねぇ…?」

 

 

 こういう自分を後回しにする考え方を見ると楽さんの弟なんだと再度認識させられるわ…あの人もそうだったから。ナル君を第一に考えていた…だからこそ、ナル君を最期まで守り切った。だから私はこの子を絶やさせない。何があっても。

 

 

 …十七夜に監視でもしてもらおうかしら…不発に終わるのなんて目に見えてるけれど。

 今だってあの昏倒事件は解決していない…犯人が再度アクションを起こせばナル君も同様に動くのは確実…その時には私も力になれたら良いわね。

 

 

 ──って、あれ?もうナル君の腕くっ付いたの…?ナル君への諭しを行っていたから集中力がどこかで途切れていたと思っていたから予想外の出来事。

 こんなに早く治るものなのかしら…?分からないわ。今までこんな重症を請け負った事が無かったから…ナル君自身の回復力が尋常じゃないのか、別の原因があるのか…まずは治った事に安堵しましょうか。

 このタイミングでもう言っちゃおうかしら。調整の事を…

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅くさせてすみません…一応俺は帰りますね」

「ええ…気をつけてね。さっきも言ったけど、一人で抱え込まない事!分かった?」

「分かりましたよ。肝に銘じておきます」

 

 

 ナル君の怪我も回復した為、彼はお家に帰す事にした。ナル君がスズネという魔法少女と初めて邂逅した時にはこのはちゃんも一緒だったから神浜にはもう来ないというのを伝えるそうよ。

 スズネちゃん本人と約束した訳でもないけれど、また来てしまったらナル君が再度自ら倒すとスズネちゃんに宣言したらしいわ。余程の事がなければ再来する事はないでしょうね。

 

 

 ──それで、ナル君を調整してみた結果なのだけれど…

 

 

 ──結果としては失敗…というより、出来なかった。

 

 

 直接心臓に触れずしても彼の擬似ソウルジェムには干渉出来た…だけれど、普通の魔法少女と違って干渉し始めて数秒経った時点で弾かれた。

 まるで擬似ソウルジェムの内部から誰かが私を拒絶しているような感覚だった…結局ナル君達の記憶も私の中には流れて来なかった。ナル君自身が拒絶しているとは到底考えにくい…なら、楽さんが拒絶したのかと聞かれても答えは出ない。

 

 

 一瞬だけ干渉した時に感じられたのは当然楽さんの魔力反応…普通なら、その単一の反応のみが感じられる筈だった。私は彼女の魔力の反応は知らないけれど、調整すれば分かると思っていた。

 通常ならそうだもの。今まで沢山の魔法少女達を調整して来ているのだから分かるわ…願いによって与えられた個々人の魂に付与された魔力がその魔法少女の反応となる。他に魔力を有する手段なんて聞いた事がない。

 楽さんの固有魔法で与えられたとしてもそれは楽さんの魔力が付与されたというだけ…一つの反応さえあればそれが彼女の魔力だと断定出来た。

 

 

 筈だった。でも、干渉した瞬間に判明したのは彼の中には()()()()()()()が在るという事。調整をする事で初めて判明した…深層心理の内部まで干渉しなければ分からなかった。

 でも分からない。ナル君が元々魔力を有していたという事…?でもそれは有り得ない。遥か昔に誰かが生まれてくるナル君に魔力を与えて欲しい。なんて願わないとそれは叶わない…だけどそれをして何になると言うの?何の得があると言うの?

 

 

 この可能性も無きにしも非ずだけど…考えにくいわ。そしてもう一つの可能性──もう一人の魔法少女がナル君に魔力を既に与えていたのか…または()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()可能性がある。今のナル君のように楽さんの魂にもう一人の誰かの魔力──魂が付与されていたという可能性。だから楽さんの魂に触れるまでそれが判明しなかったのかしら…表面上は楽さんの魔力のみだけど、その内側にはもう一人の魔力が内包されていたという事…?

 楽さんの記憶を見る事が出来たら全てが分かったかもしれない…彼女が誰にも話していないような秘密があったのかもしれない。

 

 

 ナル君にも話していないような秘密が──

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

『八雲から聞いたぞ。更なる強みを求めるのは構わないが、自分に何も言おうとしなかったのはいただけないな』

 

 

『ナル君…最近集まる事が減ったとは言え、私達はチームなのよ?どうして何も相談しなかったの?みたまから聞く事になるとは思わなかったわ』

 

 

『ナルさん大丈夫ですか!?今日ナルさんのお家に行くので安静にしておくんですよ!』

 

 

『六倉先輩マカロン好きだから今日お見舞いの時に持って行くの!ちゃんと休んでおくの!』

 

 

「…はっ…」

 

 

 八雲さんによる施術で回復した翌日の朝…もう俺の怪我については広まってしまったようだ。後半二人はまだ良かったけど前半二人はアカン…会いたくねぇ…でも今日は家から出れない事が確定してしまった。メッセージを見た瞬間に乾いた笑いが溢れる…絶対怒ってるじゃんコレ。

 安名さんと御園さんだけ通そう…うん。和泉さんは東の人だし来れないだろ。七海さんだって大学や仕事があるし…

 

 

「やめよ…静海さん達にも話さなきゃいけないよな…どっかでメッセージ送るか」

 

 

 静海さんもスズネさんによる襲撃を受けた人物…常盤さん達からも話は流れそうだが。

 常盤さん達とも会っていたっぽいし…彼女は何か画策していたそうで、その計画が破綻したのは申し訳ないが。次に会った時はまた俺が倒す。なんて堂々と宣言してしまった以上は責任は俺にある…もし次に会っても今度は余裕を持って倒せるぐらいには強くならなくちゃな。

 

 

 ただ、良い経験にはなったな。この街である以上は状況判断がより求められてくるからな…魔女以外の戦闘での対策が取れそうだ。

 その相手は恐らく昏倒事件の犯人になりそうだが…

 後さっきテレビ見てたんだけど、昨日のトラックの横転とか会社破壊とかもうニュースになってたんだよね。監視カメラとかは奇跡的に全部破壊してたっぽいけど…いやダメなんだけどね?

 

 

 昏倒事件の犯人…か。静海さんが受けた被害を鑑みるに、彼女達三人の輪を乱そうと画策していたのか。なら恐らくあの場に犯人も紛れていた可能性がある…三栗さんが昏倒しかけたからな。あの場で俺と静海さんを敵対させようとしていたのか…まぁ、許せないよな。

 スズネさんもそうだが…よくない事件の連続だな。早いところ確保したいが。

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

「ナルさんダメですよ!包丁はボクが使うです!」

「えぇ…そこまで過剰になる事ある?」

 

 

 考え得る限り最悪のメンバーが俺の家に集まってしまいました。七海さんに鶴乃さんに…十咎さんのチーム全員に和泉さん…先に来ていた安名さんと御園さん。

 特に七海さんと和泉さんと水波さんと話すのが凄いキツかった…罪悪感が限界突破してるよ…水波さんなんか泣きそうになってたんだから。

 全員からお説教を数時間程されたせいで疲労困憊だよ…下手すりゃ後一歩でお陀仏だったから当然か。

 流石にあんな痛みは二度と味わいたくない…その為にも更に強くならなきゃな。

 

 

「この大所帯を見れば否が応でも理解出来た筈だ。君を想う人間はこんなに居るのだ…」

「ほんと…ナル君さぁ、うちのチームにだってツンデレのツンがなくなるくらいの奴も居るんだから」

「はっはぁ!?レナの事言ってんの!?」

「レナちゃん自覚あるんだね…」

 

 

 説教が終わったから各々が自由行動を俺の家でし始め、俺と安名さんは昼ご飯を作っている。この家一軒家じゃないから床落ちないか心配になるんだけど…流石に大丈夫か。

 とは言え自分を心配してくれる人が大勢居るのは嬉しい事だよな。数ヶ月前まではトワとしか関わっていなかったけど、人間関係でも姉ちゃんに追いつけるなら戦いに身を投じて良かったと思える節もある。

 

 

「ナルさん!キャベツと青葱切れたですよ!」

「ありがとう…じゃあそれこっちに頂戴。ボウルで混ぜるから」

 

 

 今はお好み焼きを作っているんだけど、安名さんが思いの外器用だから助かっている。タロットカード占いで手先が鍛えられてんのかな?トランプのシャッフルみたいな感じで。

 しっかし…チーム全員で集まったのも久々だな。七海さんとか鶴乃さんとかは最近全く会っていなかったからな。一番家が遠いであろう安名さんとだけはよく会ってるんだけども…一緒に遊んだりしているよ。関わりやすい性格してるってのもあるんだけどね。

 

 

「わっ、ちゃんとマジきり全巻揃ってるの!他にも色んな漫画が…しかも全部最終巻まで揃えてるの!凄いの!」

「こっちには筋トレ用具が…!ミステリーボーイナル君の生活の実態が伺えるね!」

「ほ〜らレナ!そんな緊張するなって!」

「うるっさいわね!きき緊張なんかしてないっての!」

 

 

 …まぁ、良いか。男女の違いもあるから多少はどんな生活してるのか疑問に思う気持ちもあるだろう。うるさくし過ぎないで欲しいんだけどね…ご近所トラブルなんかこの年で起こしたくないし…

 

 

「ナルさんナルさん!一人暮らしなら、ボクナルさん家に遊びに行ってもいいです?」

「んーいいけど…楽しい?」

「楽しくない訳ないじゃないですか!後…ちょっと勉強を教えて欲しいなぁってところも…」

「補習引っかかってるんだっけ…俺も別に賢い訳じゃないけど、出来る範囲なら良いよ」

「ほんとですか!?ありがとうです!」

「それはいいんだけどさ、ちょくちょく占いするのやめてくれない…?毎回俺巻き添え喰らってるんだけど」

「いやぁそれは…無理です!」

「んな堂々と…!」

 

 

 魔法少女で誰か一番仲が良いかって聞かれたら安名さんって答える気がするわ。同じクラスの水波さんとは学校でよく話すようにはなったが、プライベートで会う事はそこまでないんだよね。

 まぁ安名さんの占いを偶に見るのも面白いから…でもバレたら雷が落ちるんだよなぁ。ほら七海さんこっち見てる…これ以上この話題を続けるのは悪手だ。やめよう。

 

 

「むっ…これは…幼少期の楽さんか?」

「ああそれは、家が燃えた時に奇跡的に残ってた写真ですね」

「…そうか」

「家が…燃えた…!?な、何よそれ…!?」

 

 

 そう言えば水波さんと秋野さんと御園さんにはまだ話していなかったっけな。このタイミングで話すのも気が滅入るだろうし、どっかで話そうとは考えている。とは言えこのメンバーに話すとなると…中々ねぇ…?

 和泉さんにとっては恩人でもあるだろうし、色々とショックなんだろうな。

 

 

「それはまたどこかで話すよ。今は…回復に専念しなきゃだし」

「わぁ…六倉先輩とお姉さんの写真一杯あるの…でも殆どお姉さんにくっついてるの!」

「昔は楽さんの背中にべったりだったものね」

 

 

 恥ずかしいなぁ…いつの間にか安名さんも写真見たさに向こう行ってるし。この恥ずかしさを紛らわす為にさっさと作り終わろう。

 

 

「ほんとに色んな写真が…ん?この子…誰だろ」

「んー?あっ、ほんとだ…ぎこちなさそうだけど可愛らしい女の子だな〜」

「女の子…?ああ、もしかして…」

 

 

 帆奈との写真か?他にそんな写真置いた記憶ないし…一枚だけ置いたんだよね。置き過ぎても未練がましくて気持ち悪いかなって…まぁ逆に特別感出ちゃったけど。

 

 

「それ、昔の友達ですね。疎遠になっちゃったから今は会えないんですけど」

「へぇ…でも凄いです!二人とも満面の笑みで…でもこんな顔ナルさんボク達に見せた事ないんじゃないですか!?」

「そりゃ幼少期だし…距離感の掴み方ぐらいは分かってるからね」

 

 

 思い返せば二人きりでずっと遊んでいたから距離感が割と近かった気がするな。公園で毎回会って何時間も遊んでたから、天気の動向も把握できずに何度雨に降られた事か…俺の上着を帆奈に貸した事もあったっけ…何か思い返すと恥ずかしくなってくるな。

 

 

「むっ…?」

「?どうしたんだ十七夜さん」

「いや…なんでもない」

「あっ、芳しい香りが…」

「出来ましたよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

「…洗い物多いな…」

 

 

 昼ご飯を食べた後は他愛もない話をして、ゲームをしたり…こんなに大所帯で盛り上がった事は他に類を見ない程新鮮だったな。皆んな俺を心配してくれていて流石に次からは気をつけようと思っているが…スズネさんがまた来たら多分、また一人で戦うと思う。あの子は危険過ぎる…七海さんや和泉さんが居れば安心だろうが瞬間的な速度が桁違いだ。対応出来るか怪しい所。

 

 

「魔力の応用は慣れてきた…姉ちゃんみたいな戦い方をしたいんだけどな」

 

 

 固有魔法というヤツがあれば状況をひっくり返す事も可能だろう。与える魔法…大気に付与して不可視の壁を作る事も出来るそうだ。消費は激しいかもしれないが、十分過ぎるリターンだ。

 後、姉ちゃんの刀って斬るだけしか出来ないのか…?七海さんは槍を無数に召喚出来るし、鶴乃さんもスズネさんよろしく炎を扱える。そんな属性攻撃みたいなのがあったんだろうか?

 …まぁ考えるだけ無駄か…固有の攻撃方法がなけりゃ基礎を底上げしてやる。魔力があるお陰で筋トレをした後無理矢理超回復を引き起こす事が出来る。毎日筋トレしていた時期もあったな…重量を上げるか。

 

 

「さっさと後片付けして筋トレするか」

 

 

 休日に何もないと暇過ぎて筋トレかゲームか漫画しかしていない。料理?諦めたよ。いやでも漫画とか割と参考になるんだよな…余程パワーバランスがぶっ飛んでなけりゃ真似出来る技とかもあるんだよ。それこそ御園さんみたいにさ。

 

 

「──ん?メッセージか…」

 

 

 最近メッセージ相手が増えたせいで通知が鳴り止まない時がある。うるさいから後で通知消すか…で、何だ?

 

 

「和泉さんから…急ぎの内容?」

 

 

 さっき帰ったばっかりなのに一体何が──は?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

「…それで、話というのは?」

「あの場にいた殆どが集まってるネ…だけど七海やちよ達が居ないという事は、犯人が動いたのカ?」

「…先程安名さんと秋野さん、鶴乃さんが昏倒させられたという連絡が来て…三人とも未だに目を覚まさない状況です」

「い、一気に三人も!?」

 

 

 私達、そして葉月さん達の三人組は突然六倉さんに急遽集まって欲しいと連絡を受けた。この状況ならば議題は当然昏倒事件について…来てみて正解だった。

 以前から、私はこの事件の背景に『飛蝗』──私が討つべき敵の存在を感じていた…だけれど、今回は全く違う。

 

 

 六倉さんから既に三人の被害者が出たとい情報を聞いた途端に私の心が告げている──この事件には飛蝗が関与していると。明確に、確実に。

 

 

 犯人は六倉さんではない。それは既に分かっている。以前から何かと犯人だと騒がれている彼ですが、東西の重鎮にその身を保証されて尚且つ美雨さんが魔法少女になりたての頃で、最強などど揶揄されていた魔法少女の弟という肩書きがある。

 そして昨日のスズネさんの件──私達は彼女と邂逅し、対策を練っていた…のですが、彼がただの実力で彼女を捩じ伏せた。

 

 

 片腕を失いながらも神浜から彼女を追い出す為に戦い抜いた彼…到底犯人だとは考えにくい。第一そもそものメリットが皆無…やちよさん達が台頭し始めた頃から深謀遠慮の計画を練れるようなお方ではないと私は踏んでいる。

 第一私の力が告げていない。彼が犯人であると。彼自身からは何も感じられなかった。

 

 

「対策を練る…というのも難しいけど、やりようはあるだろ?俺は魔法少女によるものとしか思えない」

「…それは何故?」

「魔女の可能性は無い。三人が昏倒した場面には七海さんや和泉さん達実力者が揃っていた…負けるとは考えにくい。昏倒させるにしても今回は時間が違うんだ…そんな繊細な芸当、魔女が出来るとは思えない。そもそも結界にすら侵入していないんだ。有り得ない」

「んで、最初の被害者とされている安名さん…彼女が昏倒した時も俺が側に居たし、今回は離れていたものの俺と会った帰り…俺を再度犯人に仕立て上げようとしているとしか思えないんだよ」

「人為的という訳ネ。だガ、そんな事をして何になるネ?」

「俺か姉ちゃんに恨みを持っている筋、単なる愉快犯の筋…犯人の考えなんて分かりませんがね」

 

 

 しかし…六倉さんか六倉楽さんに恨みを持った人物…可能性が限りなく低い。美雨さんから聞く限り六倉楽さんは東西双方の魔法少女から尊敬の眼差しを受ける程の人格者…そして弟の六倉ナルさんは双方の重鎮から一目置かれている。恨みを持たれるような人間とは到底…あくまで表面上だけの情報による結論なので正確性は無いですが。

 

 

 私も魔法少女だと感じている。余りにも人の意思が絡んでいるようにしか思えない…なら、私は何故魔女の筈の飛蝗の存在を感じているのか?

 それは恐らく──

 

 

「俺の短い経験から来る窮屈な視野の意見ですが…魔法少女の固有の魔法を使って昏倒させられていると思います」

「…んー?ん?どういう事?」

「…あやめも実際一度被害に遭ったでしょ?多分その時に犯人の固有魔法…何だろうな…まぁとりあえず固有魔法が働いたって事なんだよ」

「…私も似通っていますが、こう考えます。()()()()()()()()()が居る…と」

「…魔女…ねぇ…なんで魔女なんだ?」

「以前、私達が同じ目的を持つ者達と説明した筈です。その目的の終着点が一つの魔女──そして、それを操る魔法少女という考えに至ったのです。私の固有魔法が…自らの敵を感じ取る力ですので。今回は余りにも捻くれている…六倉さん個人を狙っているとしか思えません」

 

 

 こう結論付ける事が出来る。美雨さん達は当然驚愕している…でも、今は六倉さん達との意見交換が先決。彼も親しい魔法少女が被害に遭って珍しく怒気を孕んでいるように見える。

 

 

「魔女を操る…つまりは…言う事を聞かす魔法…支配?いや暗示…?」

「私はそう踏んでいます」

「ちなみに、そんな魔法少女に心当たりがある人は…まぁ居ないか」

 

 

 しかし、何故六倉さん個人を狙うような真似を…思えばこのはさんの暴走も聞けば突然見せられた幻覚によるもの。あの状況なら、六倉さんと敵対させようと画策していた…そして六倉さんを徐々に孤立させていく。という寸法と考えられる。

 いずれにせよ危険な相手…他の魔法少女とも協働出来れば良いのですが。

 

 

「…あっ、じゃあさ。調整屋さんに行ってみない?色んな魔法少女と関係があるみたまさんなら何か知っているかもしれないし」

「…確かに。そうしようかな」

「あ、あの…被害に遭った三人は調整屋に?」

「行ってから連絡が来たから…多分もう居ないんじゃないかな。七海さんの家で預かって貰ってると思うよ」

「んじゃあ、そうと決まれば行こう。時間はかけてられない」

 

 

 

 

 

 

「そう言えば六倉君さ…腕は大丈夫なの?」

「うん。誰が来ても万全の状態で戦えるようにはなってるよ」

「治ったとは言え、よく平静を保っていられるね…!?」

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

「んー…気付いてくれるかな?」

「タイムリミットは…そうだなー…三日…いや四日ぐらいにしようかな?」

「どうせなら他の奴も巻き込みたいし…時間はかけないとね〜」

「ナル、どんな顔してあたしと話してくれるんだろう…やっぱり憎悪を出して欲しいよね」

「…でも、嫌われるって事だよね…それって…そっか…」

「…ああダメダメ…余計な事は考えないの!どうせここで終わるつもりなんだから…」

 

 

 ──────。

 

 

「えっ?何で腕を治すのを手伝ったのかって…?」

「…」

「…そんなの良いでしょ…ほら、行くよ!」

 

 

 

 

 

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