更紗帆奈の隣の家に住んでいた男の子の話   作:nalnalnalnal

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第20話 神浜事変…⑥ 【Outbreak】

 

 

 

 

「…」

 

 

 常盤さん達と調整屋に出向き、暗示の魔法を扱う魔法少女に心当たりがあるかを問うたところ、八雲さんではなく和泉さんがそのような魔法少女に心当たりがあるそうで、今彼女に調べて貰っている。だが、その暗示を使う魔法少女自体は現在は失踪…家族ごと消息を絶ったようなのだ。

 その魔法少女が住んでいたのが──神浜大東団地。トワが住んでいる場所…だからと言って何か出来る訳でもないのだが。

 

 

 和泉さんが掴めば犯人像が見えてくる…そう信じて待っていたのだが──

 

 

 ──被害者が続々と出始めている。余りにも多過ぎる被害者の数…俺を孤立させようとしているのが見え見えだ。この状況下でも動けるのか…暗示で姿を隠しているな?

 

 

 この三日間での被害状況を纏めよう。

 

 

 一日目──俺の家からの帰路の途中で安名さん、秋野さん、鶴乃さんの三人が昏倒。結界や魔女の反応はナシ…ここで魔女の路線は途絶え、和泉さんによる固有魔法に暗示を持つ魔法少女の捜索が始まる。

 そして──調整屋さんからの帰り道で、三栗さんが昏倒…静海さんと遊佐さんの行動範囲が制限された。

 

 

 二日目──複雑な感情で神浜市立大附属学校へと登校。同じクラスである水波さんは未だに被害に遭わず。だが…その日の昼休み、放課後で俺が偶然会った木崎さん、美凪さんが昏倒…特に木崎さんと関わりのある魔法少女が怒り心頭のようだ。彼女は商店街でのお悩み相談室の長…俺の事を知らない魔法少女が俺を狙う可能性もある。

 

 

 んで、三日目──粟根さんと…矢宵さん?と毬子さん?の三人の魔法少女が昏倒。ここで予想外だったのが、俺が会った魔法少女ではなく、全くの無関係の魔法少女が昏倒させられたという事実…一日目、二日目と来て俺の悪評が神浜全域に広まった上でこの三日目の昏倒を行ったのなら、犯人は余程俺の事が嫌いなようだ。

 

 

 関わりのあった魔法少女達からは有難い事に心配の声を貰っているが…友人の看病をお願いしている。下手に出向いて来たところを昏倒させられちゃ何の意味もない。

 だが、面識のない魔法少女の昏倒…その魔法少女達の友人を俺に差し向けるつもりか?俺を孤立させてジワジワと衰弱させる事が目的?

 

 

 クッソ面倒だ。スズネさんなんかより何倍も嫌いな相手だ。

 

 

 今動けるのは近しいところで言えば水波さん、御園さん、常盤さんの一派…和泉さんといったところか。七海さんはみかづき荘での見張り、看病…秋野さんは十咎さんが看ている。水波さんは俺を手伝いたいと申し出てくれた…本当に感謝してもしきれない。何か形があるもので返そう。

 

 

 被害者が3、4人程ならまだ大丈夫だったかもしれないが、9人なんて余りにも多過ぎる…下手に外を出たら同じように昏倒させられてしまう。それを危惧して見張りもとい看病をお願いしているんだ。相手の姿が見えない以上、昏倒以上の危害を加えられる可能性がある…最前線で動くのは俺で良い。

 

 

「…あ、六倉…大丈夫?」

「水波さん。遅くなってごめん…わざわざ待って貰ってごめんね」

「そんなに謝らなくてもいーから。アンタを一人にしたら狙う奴が居るかもしんないでしょ?」

 

 

 今は放課後、教室で考えていた…何だかこっちの方が落ち着くからさ。水波さんはわざわざ教室のドアの前で俺を待ってくれていた。この学校に通う魔法少女は他にも居るからな…俺が知る限りでは安心出来る人達だが。

 水波さんからすればチームメイトが被害に遭っているんだ…その渦中でも俺を信用してくれるのは本当に有難い。

 

 

 流石に楽しく会話…とは問屋が卸さない。常に水波さんは警戒しなきゃならない状況だ。不可視の魔法…回避が出来ない分、神浜の魔法少女は外に出るだけで危険だ。

 東西からの評価は今頃著しく下がってるだろうな…姉ちゃんならどうしてたんだろうか。魔力の居所を掴んで一瞬で解決したのだろうか。

 考えても無意味な事なんだけどな。

 

 

「流石にニュースにはなってないけど、神浜の魔法少女の間じゃ…やっぱりアンタが疑われてるみたい」

「だろうね…」

 

 

 折角ここまで積み上げた信頼がオシャカになった…梓さんも居なくなり、スズネさんは来るし、昏倒事件の犯人に仕立て上げられるわ…散々だな。

 それでも犯人は確保するさ。こちらの仲間が被害者なんだ。いざ自分の親しい魔法少女が被害に遭って初めて本気で怒るってのも虫が良すぎるかもしれないがな。

 

 

 だけど今回は犯人が確実に自分の正体を暴かせようとしているようにも思える…掌の上で転がされているようで身震いするが、絶好の機会。必ず捕まえて吐かせる…この事件を起こした動機をな。

 被害者は未だに目を覚まさない…タイムリミットでも設定してるのか?余りにも強力過ぎるな、暗示の魔法とやらは…全て思い通り。ってか?ふざけるなよ。

 

 

 このまま被害者が増え続ける前に…和泉さんが掴んでくれると有難いが。結局人任せになってしまうのは面目ない…ただ、犯人が見つかりさえすれば本気でやる。スズネさんの時以上に叩き潰す。

 

 

 ──ん?

 

 

「──なぁ、オマエ。六倉ナルだろ?」

「…そうだけど…何かな?」

 

 

 突然校門を通り過ぎようとしたら、三人の女子学生に話しかけられた…制服を見る限りだと、南凪、中央、そして俺と同じく附属学校…色とりどりだな。

 ──で、指輪…魔法少女か。知らない顔だが、被害者の誰かの関係者か。

 

 

「そうか…オマエが…」

「…?」

 

 

 何だこの感じは…?

 

 

「いや、突然すまない。オマエを犯人だと疑ってる訳じゃないんだ」

「…はい?」

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

「いや、なんかすみません…まさか年上だとは…」

「…いいんだよそれは…!掘り返すな…!」

 

 

 話しかけて来た年下だと思っていた人はまさかの18歳で、しかも姉ちゃんと関わりがあった魔法少女の『都ひなの』さん、横の二人は『綾野梨花』さんと、『五十鈴れん』さん…木崎さんの知り合いでかなり仲が良さそうに見える。

 

 

 話を聞く限りだと俺の噂が広まってるからいつかは会いたいと思ってくれていたようで、でも場所が分からないから会えずじまい。

 ──で、まさかのこのタイミングで会いに来たという。木崎さんと美凪さんから俺の学校は聞いていたようで、五十鈴さんの耳にも俺の学校での悪評は入っていた。お陰で割と動揺したけど、信用はして貰えたようだ。殆ど姉ちゃんの名前があったからなんだけども…

 

 

「まぁ、あたし達も六倉君の事は犯人じゃないと思うよ。えみりんから聞いてるからね?後輩の為にわざわざ奔走するかっこいい先輩だって」

「なかなか過大評価しているな…嬉しいけど」

 

 

 あの時木崎さんの相談室に行かなかったらどうなってたのか恐ろしくて考えたくないよ。相談室を紹介してくれたトワにはマジで感謝しておかないと…

 

 

「都さんって、姉ちゃんと関わりがあったんですよね?」

「そんな親しくはなかったけどな。ただ、何回か共同戦線を張った事があってな。その時に色々助けて貰ったんだよ」

「その時からオマエの事は間接的には知ってたぞ?携帯の待ち受けに設定してたり、写真とか持ち歩いてたからな」

「マジっすか…」

 

 

 恥ずかしいって…それと同時に言い表せようもない寂寥感が襲って来るが。

 

 

「関係は深くはないが、尊敬出来る先輩みたいな感じだったんだよ。オマエも知ってるだろ?現代最強だなんだと揶揄されていたのを」

「そんなにですか…!?」

「へ〜。今じゃみゃこ先輩があたしらの先輩なのにね。あんまり想像出来ないっていうか…でも想像したら可愛いかも!よちよちついてくる先輩!」

「んな後輩じゃなかったわ!」

 

 

 現代最強って…飛躍してんだか分からんラインなんだよな。追いつける気がしなくなって来た…姉ちゃんが居なかったら今頃俺はどうなってたんだろうか。

 

 

「──ん?」

 

 

 ──あれ?この状況ってよく考えたら不味いんじゃないか?

 

 

 だって俺と会った魔法少女達の中から被害者が殆ど出てる訳で…今干渉して来てしまったら、犯人の格好の餌食じゃないか?

 …やらかした。敵意がないことを確認したらつい気が緩んでしまった。いけない…早いところ忠告しないと。

 

 

「あの「あ、あの!」…?」

「あ、すっ、す、すみません…!」

「いや、先に話して良いよ。勇気を出してくれたんだから」

 

 

 五十鈴さんと滅茶苦茶被った。だけどここは譲るのが道理…話すのが苦手らしく、勇気を振り絞ってくれたんだから。もっと周りに気を配るべきだったな。

 

 

「え、えっと…あの…」

「だ、大丈夫…なん、でしょうか…?」

「…」

「…俺と会ったら昏倒させられるんじゃないかって事だよね?」

 

 

 どうやら内容は殆ど同じだったようだ。余程都さんと綾野さんの心配をしているんだな。友達想いの良い人じゃないか…そうだな。やはりここは早く別れるべき…犯人が俺を尾けている可能性も捨て切れないが、長居するよりはマシだ。

 

 

「…そうか。今被害に遭っているのはオマエの知り合いが多かったのか」

「そうですね。だから都さん達の中から被害者が出る可能性があります…犯人に見つかる前に別れませんか?」

「確かにそれが先決かもね」

「用心しときなさいよアンタ達。結界や魔女の反応がないからって油断したらダメよ。そこが一番狙われやすいと思うから…」

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

「…で、結局昏倒させられたのか…」

 

 

 都さん達と別れて家に帰った瞬間に連絡が入った。内容を見るのが怖かったが…嫌な予感は的中してしまった。綾野さんが昏倒させられたと…これで合計10人か。

 動ける魔法少女がまた一人減ってしまった。五十鈴さんが綾野さんを看るようで、都さんは手伝ってくれるようだ。

  

 

 とは言っても、和泉さんが手掛かりを掴むまで殆ど動けない…下手に魔法少女とは会わない方がいいか…?

 

 

 ああ…面倒な上に厄介。幽霊でも相手にしてるのか俺は?

 

 

 和泉さん頼りで何も出来ない無力感、俺と会ってしまったせいで昏倒してしまった魔法少女達への罪悪感、全ての元凶である犯人への苛つき…ダメだ。冷静になれない。

 

 

「──電話…?まさかまた誰かが被害に…?」

「──!」

 

 

 いつもより寂れた雰囲気が漂う俺の部屋の静寂を掻き消したのは一つの着信音──和泉さんからだ。メッセージではなく電話という事は緊急の用事…恐らくは──分かったのか。犯人像が!

 

 

 出ない選択肢なんて今の俺にはない。これ以上被害を拡大させてしまえば何十人の被害者が確実に出る…そうなれば俺を信用してくれている魔法少女達からも見放されてしまう。それだけは避けないといけない。

 犯人像なんて全く見当もつかないというのに、何故だか嫌な予感も冷や汗が溢れ出す…何だ。何だこの悪寒は。

 

 

 いや、今は考えている暇なんてない。体調でも悪いのか?知るか。んなの犯人と戦ってる時に治るだろ。

 

 

「もしもし?」

『──あ、えっと、もしもし!』

「──?」

 

 

 そそくさと電話を取って和泉さんからの情報を得ようとしたのに…全く知らない声がスマホから流れ出す。

 ──誰?これ画面に出てるのは和泉さんだよな…協力者か何かか?犯人だとは思えないが…コンタクトを取ろう。

 

 

「えっと…誰ですか?」

『あっ、そっか…知らないんだったよね。』

『あ、私、『伊吹れいら』って言います!六倉ナルさんですよね?私、十七夜さんの協力者…?で、今探してる魔法少女の正体が掴めたんです!』

「──やっぱり…それで、その魔法少女ってのは…?」

 

 

 協力者…東の魔法少女かな?今回の事件で感謝するべき相手が滅茶苦茶増えた…特に和泉さんには申し訳なさもある。使いっ走りのようにさせてしまって申し訳ない…だが、わざわざ協力者まで呼んでもらって調べて貰ったんだ。逃してなるものか。

 

 

『暗示の魔法を扱う──サラサハンナという魔法少女です!』

 

 

 ──は?

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

「──あ、あれ?切れちゃった…回線が弱ってたのかな…」

「伊吹君…伝えられたか?」

「あ、それは大丈夫です!言った途端に切れちゃったんですけど…」

「そうか…ナル君の場所は分かるか?」

「いえ、それは…」

「くっ…」

 

 

 不味い…犯人がナル君に正体を暴かれる事を予測していたのならナル君が危険だ。このタイミングで姿を現す可能性が十二分に有り得る…

 もう、夜が更ける…この事件の真犯人は凶悪で狡猾だ…スズネとかいう魔法少女の時よりも危険度が高い…完全にナル君個人を狙っている。

 

 

 時間をかけ過ぎたか…!?くっ…もっと早く相野君達と合流出来てさえ居れば…!もっと早くサラサハンナの事を思い出せていたかもしれないというのに…!

 

 

 ナル君がまだ家に居るのなら…伊吹君達を向かわせれば間に合うか…?情けない…まんまと敵の術中に嵌っていた…まだ、動けそうもない…

 これ以上…彼を危険に晒す訳にはいかない。絶対に単独で向かわせては駄目だ…

 

 

「──ん?あれ、メッセージが来ましたよ?」

「──!ナル君からか…?何と…?」

「えっと──『すみません、先に行きます。新西区周辺とだけ伝えておきます。』──って…」

「まさか──単独で向かうつもりか…!?」

 

 

 想定し得る中で最も最悪の選択肢を選んでしまった…いや、待て。何故新西区周辺なのだ?

 犯人の居場所が分かったのか…?いや、相手から呼び出された…?考えるならそちらの方だ。なら──罠の可能性がある!

 

 

「伊吹君!すまないが…すぐに向かってくれ…!ここからなら君達が最も早く到着出来る…!」

「あ、わ、分かりました!」

「もし戦闘を始めていたのならナル君に加勢してくれ…!自分も回復次第すぐに向かう!」

「桑水君と相野君も…頼んだ!」

「は、ははははい…!」

「分かった!」

 

 

 …ナル君…頼む…無事でいてくれ…

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

「…ん…あれ…ボク…」

「…ししょー…?」

「──メル!鶴乃…!目を覚ましたのね…!良かった…」

 

 

 

 

 

 

「う…うう…ん…?」

「──か、かえで!」

 

 

 

 

 

 

「…は、づき…このは…?」

「あやめ…!良かった…!本当に…」

「こんなに長い事昏倒させるなんて…犯人…流石に許せないね…!」

 

 

 

 

 

 

「あぁ…?あーし…何して…?」

「うぅ…明日香…?」

「お二人とも!ようやくお目覚めになったのですね…!』

 

 

 

 

 

 

「こころ…!」

「ま…さら…?」

 

 

 

 

 

 

「あれ…寝てたんだっけ…私…」

 

 

 

 

 

 

「…雫…ちゃぁん…」

「やっと目を覚ました…!心配かけさせないでよ…!」

 

 

 

 

 

 

「梨花ちゃん…!」

「…ごめんね、れんちゃん…油断してたなぁ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?先輩と同タイミングでメッセージが来るなんて珍しいですね?」

「何よその含みのある言い方は…!はぁ、まぁいいわ──で、何かしら?」

「あ!六倉さんからですね。ここ数日間でまた事件が再発したそうですから…それ関係ですかね?」

「──えっ、これって…」

 

 

 

 

 

 

「六倉先輩からなの…もしかして、メルちゃんが起きたの!?」

 

 

 

 

 

 

「六倉さん…最近会ってなかったけど…あの事件…大丈夫なのかなぁ。とりあえずメッセージ見てみよう」

 

 

 

 

 

 

「確か、かえでちゃんも巻き込まれたんだっけ…心配だな」

 

 

 

 

 

 

「──今日会って早速メッセージか…梨花の件もある。まぁ大方事件についてだろうが──は?」

 

 

 

 

 

 

「ななか…これって…!」

「とうとう見つけたカ…!蒼海幇を苛んだ敵…!」

「でも…急がないと六倉さんが危ないです…!」

「──ええ。彼の元へ向かいましょう。そして──討ち取りましょう。私達の敵を…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『昏倒事件の真犯人と接触。交戦する』

 

 

 

 

 

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