更紗帆奈の隣の家に住んでいた男の子の話 作:nalnalnalnal
今回は独自の設定が出ます
「スズネさんもそうだけど…タフだな。本気で殴ってんだけど」
ナルと帆奈の戦いは廃ホテル跡へと──しかし更にギアを上げたナルの猛攻に帆奈は防戦一方を強いられる事になり、何度もナルの全力の打撃を身体の節々に喰らっている。魔力強化がなければ骨が折れる程の打撃…幾ら魔法少女とは言えそう易々と耐えられるものではないが…帆奈は全く疲れた様子すら見せず、更に戦闘を楽しむという狂気を孕んでいた。
既に捨てられた地であるから別に壊しても平気だと楽観視しているナルによる無制限の打撃の威力は桁違い──7階フロアから1階まで1秒とかからずに叩き落とし、壁を幾重も貫く膂力。
しかしそれをも帆奈はまるでどこから攻撃が来るのかを全て把握しているかのようにして受け止める。衝撃の逸らし方、力の入れ方は──何度か拝見した男二人による特訓で会得済み。それを見様見真似で完全に模倣するという才能を発揮していた。
「酷いなぁナルったら…もっと手心ってのない訳?」
「そんな言葉知らないな」
いつもとは違い──ドライな雰囲気を醸し出している彼だが、内心はまた違っている。そしてナルの記憶とは違う、狂気的な笑みを見せる帆奈──しかしその笑みにナルは懐かしさを感じていた。
だが手加減をする理由にはなり得ない。天乃鈴音との戦闘よりも更にボルテージが上がっている彼を止める術は心臓を潰す事以外にない。
「でも大丈夫?これ以上戦ったらここ、崩れ落ちるんじゃない?」
「…そうかもな。また場所を変えるか?」
「そうだねぇ〜。じゃあ、水名区観光楽しみながら大東まで横断しようよ!神浜横断ツアーだよ!」
「いいな…そのツアー乗った」
不敵な笑みを浮かべたのは帆奈だけではなく──六倉ナルもそうであった。彼は高揚しているのだ。
かつて親友であった少女の成長を垣間見る事が出来て。その垣間にはかつての面影も残っていて。そして──今までで一番戦闘を楽しんでいる。口では否定しているが、心は親友との蜜月を楽しんでいるのだ。
彼は戦闘狂でもなく、ただの人間…姉を追いかけるという目的を胸に戦う事が彼が心に据え置く使命。そこで戦闘に楽しさを見出す事なんて、今まで一度もなかった…だが、今回は違う。
──かつての想い人を助ける為に。
だが、更紗帆奈を狙う魔法少女は他にも大勢存在する…中には強大な怨恨を持った魔法少女も居る程だ。彼等だけが遊戯を繰り広げるとは、問屋が卸さないのだ。
廃ホテルから移り変わり、中央区まで数多のビル群の壁や屋上や駆け巡る二人…近距離でなければ決定打を与えにくいナルに対し、帆奈は距離を取りながら電撃で応戦する。
すんでのところで刀で電撃を弾くナルだが、自らの遠距離戦の弱さに嘆いていた。幾ら遠距離から道路標識等の即興の武器を投げ飛ばしたとて結局は避けられてしまう…帆奈の動体視力が異常なのかはこの際どうでも良いが、決定打に欠けている状況に眉をひそめていた。しかしそれは帆奈も同様。天乃鈴音戦で速度には危機感を鳴らし続けているナルの懐に入り込む事は至難の業だ。
両者とも面倒だ…と考えた時には、戦場は既に中央区へと突入していた。
「う〜わ…なーんか空気が不味いね。ストレスの溜まり場だからかな?」
「都会なんてそんなものだろ」
「あはっ!それナチュラルにディスってるよ!」
お互い口には出さないが、幾つもの自分達を追いかけてくる魔力反応には気付いている。戦闘が開始してから数十分は経つ…参京や南凪などの魔法少女達も到着しつつある。
「空気は不味いけど、疾走感は段違いだね〜!風が気持ちいいよ〜!」
「その風も不味いんじゃないの?」
「言葉の綾ってヤツ!ほら、ナルももっと楽しもうよ!」
ビル群の屋上を駆け抜けるがお互いジリ貧の状況…帆奈にとっては不利な状況である為、そろそろ距離を詰めて痺れさせようと画策していた時には…いつの間にか区内でも一際大きな神浜セントラルタワーのヘリポートへと降り立っていた。
だが──
「──ぐっ…!?」
「──!」
降り立った瞬間に突如として帆奈の背中に傷がつく…予想外の攻撃を喰らわされた帆奈は攻撃した主が居るであろう背後を見やると──ダガーを携えた加賀見まさらが臨戦態勢に入っていた。
(透明化の魔法か…!スズネとかいうヤツとはまた別の…!あっは…完全に油断してたね…!)
透明化の固有魔法──完全に意識がナルに集中していた為、背後から近づく足音に気が付けなかった。
帆奈に姿を見られたまさらは後退して何かを待つような素振りを見せる…帆奈の体勢がよろめいた隙を、目の前のナルが見逃す筈もなく──
「──っ!」
帆奈が視線を戻す前に懐に入り込み、防御がガラ空きの腰へと薙ぐような蹴りを叩き込む。
吹き飛ばされ、横のビルの壁を突き破る帆奈を横目に、ナルは隙を作った魔法少女へと歩み寄る。気が付けばまさら以外にもヘリポートへと降り立っている魔法少女が大勢居るのが視界に入る。
「助かったよ加賀見さん。ここで待機してたのか?」
「ええ。あなた達の戦闘の様子を見れば、中央区で戦いやすいヘリポートに来るだろうとは思っていたから」
「というかいつの間にこんな人数が…」
「あんなに緊急事態っていう文面を見せられたら…ね?私も被害に遭っちゃったし…」
ヘリポートに集まったのは──加賀見まさら、粟根こころ、江利あいみ、綾野梨花、五十鈴れん、都ひなの、毬子あやか、保澄雫、そしてナルの合計9人。
ナルが連絡した通り、あやかと雫に関しては他の誰かが増援を要請したのだ。
「にしても容赦ないなオマエ…アレ本気だろ?」
「そりゃ本気で戦らなきゃ本音を吐き出してくれないと思うんで」
「本音…?」
「気にしないでください」
ふとナルがビルの中まで吹き飛んだ帆奈を見ると…よろけているものの、早く来てと煌めいた目をナルへと向けている。自らに隙を作らせたまさらには何の関心も持たず、ただひたすらナルだけを視界に映している。
ここで道草を食う訳にもいかないと踏んだナルは、すぐに会話をストップしてその場でストレッチをし始める。
「お、おい!一人で戦るつもりなのか!?」
「最前線は俺が。まだ魔女がばら撒かれてる可能性があります…大東まで誘き寄せて包囲します」
「犯人を捕まえるだけじゃなくて更生させてこそ解決なんで…目的が変わったんです」
身体を整え終わったナルは隙を作ってくれたまさらへと感謝の念を述べ、他に集まった魔法少女達へ一瞥して再度帆奈との戦いを開始するべくヘリポートから飛び降りていく。
「あっ、行っちゃった!挨拶も出来てないのに〜!」
「そんなの後でいいでしょ。私達も追いかけるよ!」
***
「帆奈さぁ…なんか足速くない?さっきよりも」
「そりゃ最初は小手調べってもんでしょ?もしかしてあれが最高速度だと思ってた?」
「あのスズネってヤツと比べてたりしてた?あんなの序の口序の口!あたしの方が速いから!」
帆奈が宣言した通り、最初の速度に比べて現在の帆奈の速度は倍以上になっており、場面の移り変わりは迅速になっていた。先程のまさら達も追いかけようとはしているが、二人の速度に追いつけずに距離がグングン離され続けていた。
ナルも目の前で実感していた。天乃鈴音の瞬間的な速度は帆奈以上であるが、それ以外の速度に於いては帆奈の方が上だと。自分の体力が消耗し始めている為でもあるが、帆奈の速度は上昇し続けていた。
(この速度なら大東に着くまでそう長くはない…気が逸ってるのか?高揚してるのか?)
(いずれにせよ…このまま大東まで付き合ってやる。帆奈の要望を全て叶えた上で最後に叩く。その為に体力も温存してるが…予想以上に帆奈がやりやがる)
大東で決着をつける腹積もりだったナルだが、自らの全力の打撃に耐え得る帆奈を見て一つの可能性を見出した。速度も向上、ほぼ無尽蔵に見える体力──自らに暗示をかけているのだと。だが、いつから?どのタイミングで?その限界はいつまで持つのか?疑問は絶えない。
そんなナルの中で──
「──ん?」
工匠区に差し掛かろうとしていた時、ナルの視界に突如として映ったものがあった。ふと見上げた時に空中から飛び降りて来る少女──純美雨の姿が。
「んー?もー!邪魔が多いなぁ!」
「──追い詰めたヨ… 蒼海幇を苛んだ敵!」
地面を深く凹ませて降り立った美雨は後隙を見せずに帆奈へと憎悪の感情を剥き出しにして襲いかかる。鍛え上げた武術と得物の爪を組み合わせた連撃で帆奈を牽制するが、当の帆奈は杖で弾きながら退屈そうな表情を浮かべていた。
「う〜ん…動きは悪くないけどさぁ。及第点以下ってとこかな?これじゃナルの友達の方がまだやれるよ?」
「っ…オマエが元凶カ…!」
「とろいなぁ…その程度で挑んで来るならせめてチームで──ん?」
美雨との近接戦を退屈そうに捌く帆奈の脳内に流れ出す危険を伝える声…それが示していたのは輝く光線──死角からの夏目かこによる攻撃であった。
美雨の爪諸共杖を地面に突き刺して美雨の行動を一時的に封じた後、軽々とした跳躍でその光線を回避する。
「もっと遠距離からだったらバレなかったのにね〜。冷酷な考えが出来ないタイプかな?」
「──私だけじゃ、ありません…!」
「──おっと…」
夏目かこの背後からかなりの速度で飛び出して帆奈に襲いかかって来たのは志伸あきら。美雨と同じ近接タイプにまた面倒臭そうな表情を浮かべる帆奈…拳による連撃を繰り出すあきらの片腕を掴んで隙が出来た腹部へと蹴りをお見舞いして距離を取る。
「…ぐっ…お前が…お前が全部引き起こしたのか!?」
「何の話〜…?目的語を入れてよ。分かんないよ」
「──私達の追い求める敵が、あなたではないかと聞いているんです」
帆奈の耳に入って来たのは3人が属するチームを束ねる長である──常盤ななかの声。美雨の横に降り立った彼女は冷静な眼差しで帆奈との対話を要求する。
ななかのチーム全員が集まったのを見たナルは民家の屋根へと飛んで最初に張った
「ま、いっか。で〜?あたしはナルとの蜜月を楽しみたい訳!手短によろしくね?」
「ナル…?六倉さんとお知り合いなのですか?」
「さぁね?昔っから知ってはいるけどね!」
予防線との連絡を終えたナルは民家の屋根から帆奈達の会話を盗み聞きする。帆奈、ななかには当然バレてはいるが、この状況下である為ななかは致し方ないと判断した。
「…私達は、同じ魔女による被害を受けた者です」
「ふ〜ん…?」
「魔女によって惑わされた人々による被害を…私達は受けて来ました」
「私は自らの宗家の華道を惑わされた高弟達によって奪われ…かこさんと美雨さんは地上げ騒動によって大切な場所を失いかけ…あきらさんは後輩が魔女に囚われ…!」
「その全ての元凶である魔女…それを操っていたのがあなたではないかと聞いているんです…!私の力が…私の全てがあなたに警鐘を鳴らしている!答えてください!」
その全ての顛末をナルに聞こえるように話すななか…ナルの事は信用しても良いと踏んでの行動だ。当然目の前に立つ帆奈にも話は流れている筈だが…当の帆奈は不敵な笑みを浮かべたままだった。
「…分っかんない!」
「──は?」
「魔女〜?どの魔女の事言ってる訳?あたしさぁ〜、魔女のペットが何体も居るの!」
「ペッ…ト…!?」
「だから勝手に行動しただけかもしれないし…あっ、でもあんたは違うかな?」
「──私…?」
「そう!割と前だったかな?あんたの事ネットで見たんだ〜…それでさ──順風満帆な人生を送る綺麗なあんたを無茶苦茶にしたらどうなるかって考えたの!」
「──…は…?」
帆奈から発せられた筆舌に尽くし難い衝撃の真実に、その場にいる誰もが口を開けたまま停止する──たかがそれだけの理由で?それだけの理由で数多の人々を巻き込んだのか?人生を歪められた者も居るというのに?
「…ふざけるな…」
「──ふざけるなぁぁぁぁぁ!!!」
「そう来ると思ってた!だ〜か〜ら──痺れちゃえ!」
4人が激昂しながら各々の攻撃を仕掛けてくる事を読んでいた帆奈は残っている魔力の半分以上を使用して──完全な無差別放電で彼女達を攻撃する。
出力を引き上げた電撃による痺れにななか達は悶え苦しむが…帆奈は止めない。何故なら見ていて欲しいから──六倉ナルに、自分を憎んで恨んで殺したい程怒って欲しいから。
──帆奈の期待通り、この状況をナルは見ていた。
「…」
屋根から降り立ち、直線状の道路で向かい合う二人…ナルの視界には痺れて動けなくなったななか達が酷く明瞭に映っていた。
「あっはははははははははは!あっはあっはぁ!」
「ねぇ、ナル!ナルぅ!どう!?どう!?あたしの事嫌いになったでしょ!憎いでしょ!?今すぐに殴り飛ばしたいでしょ!?」
「今すぐに殺したいぐらい気持ち悪いでしょ!?ねぇ、ナルったら!ねぇ!」
「ほら、居るよ!その相手が目の前に居るんだよ!?する事なんて決まってるよね!?」
「早く早くぅ!ねぇ!ナルならあたしなんか軽々と殺せるでしょ!?絶好のチャンスだよ!」
「早くしないと皆やられちゃうよ!?そんなのナルは望んでないよね!?」
「だって昔っからそうだったもんね!正義の味方だったもんね!?」
本音を押し殺した帆奈の狂気の言葉の数々…ナルはそれを真正面から受け止めた後、静かに真紅の刀を携える。その表情には先程までの高揚も楽しさも…感じられなかった。
そうだよ。それでいいんだよ。情けなんていらない。あたしを──殺して。そう願う帆奈に…刀が振り翳される。
空を斬り裂いたナルの刀から放たれるのは──巨大な斬撃。それはナルの固有魔法でも魔力の応用で作り出したものでもない。
「あっはは…凄い。凄いよナル!!!」
──何故突然ナルが楽の特有の攻撃方法を扱えるようになったのか?何故今まで何も放たれる事がなかったのか?
八雲みたまによる調整により、ナルの深層心理で眠っていた無数の楽の魔力の因子が刺激されたのだ。今までナルはその魔力を
しかし、数秒間の調整によって魔力の因子が刺激され…約2年間程ナルの中で燻っていた魔力が──ナルの身体に
無意識の内に、楽の攻撃方法が脳内へと流れ込んできたのだ。ただの魔力から楽の魔力へと、魔力の解釈を拡大させた。
土壇場での魔力のイメージ…楽のイメージ…それらが合致した事で、ナルは現代最強の魔法少女へと一歩近づいたのだ。
この斬撃は不可避……避けられる人間なんて居ない。そう考えた帆奈は自らの背後に感じる微々たる死の直感を押し殺し、斬撃へと立ち向かう。
斬撃を出力最大の電撃で相殺しようとする帆奈であったが、無意識的にナルも出力を最大限に引き上げていた為、電撃は容易く突破されてしまい、斬撃によって身体が後方へと押し戻される。
だが、まだ終わらない…ナルから恨みの言葉を聞くまで。帆奈は止まらない。
無理矢理魔力で杖の強度を常に引き上げ続け、死力を尽くして斬撃の軌道を逸らした帆奈の目に映ったのは…幾重ものビルの壁を突き破り、先程の神浜セントラルタワー内で斬撃が消滅した姿…マジか…と余りの衝撃に、軌道を逸らした際に肉が抉れた手の甲の痛みを忘れていた彼女の背後に──突如として空間の歪みが生じる。
「──あ?」
その中から現れたのは──『空間結合』の魔法によって機会を見計らっていた保澄雫。完全に隙を突いたと思っていた雫だが──背後は帆奈の友人が既に気取っていた。
「『その空間の魔法を使うな』」
「──!暗示…!」
「このタイミングで邪魔されるの本当に苛つくんだよね。精々指をくわえて待ってなよ…どいつもこいつも対策ぐらいしてない訳?」
暗示によって隙が出来た雫を殴り飛ばした帆奈の視界には、最早ナルしか映っていなかった。自らに暗示をかけてリミッターを解除し、友人による危機感知で攻撃予測が行える帆奈に息も切らさずについて行けるのはナル一人…膂力、魔力量、体力…どれをとっても一級品。
(しくじった…か。今の斬撃で魔力が馬鹿みたいに持っていかれた…慣れないものは無闇矢鱈にぶっ放すもんじゃないな)
ナルが先程飛ばした斬撃は、無意識的にナルが出力を最大限に引き上げていた…楽のように慣れていない為、魔力を抑えつつ最大限を引き出すという芸当が出来ていなかったのだ。
最早ビルの被害など鑑みる余裕がなくなったナルはこれ以上刀は使わない事を決める。決定打になり得たかもしれないが、慣れていない技を連発するのは悪手だと踏んだ。
たった一度の最大限の斬撃、初めての大規模な長期戦で──彼は許容限界に近づいていた。
「あはっ…いったぁ…!ねぇナル!今の何!?そんな必殺技隠してたの!?」
「俺もよく分からない…けど、イメージが湧いてきたんだよ。割と失敗寄りだけどな…」
「…あれ?でも刀しまっちゃったの?アレを撃ちまくれば勝ちは確定したようなもんでしょ?」
「あんなん連発したら街が滅茶苦茶になるだろ?」
「あっは!もう滅茶苦茶だよ!」
再び二人が疾走し始める…戦場はすぐに工匠区へと。彼らの周りを飛び交う魔法少女達も次第に工匠区方面へと集結しつつある。
ナルと帆奈が向かう先は──旧車両基地。街中で戦うよりかは幾倍かマシだというナルに、帆奈は自然と車両基地へと追いやられる。
(散々破壊行為を繰り返しといて都合が良すぎる考えだが…そうでもしないと帆奈が満たされない)
攻撃を加えずに車両基地へやって来た二人は…一つの廃車両の両側へと降り立ち、お互いの状況を推測する。ゆっくりと歩みを進めて相手を出方を窺う二人…先程とは打って変わって静寂が基地内に訪れる。
(普通に戦うだけじゃつまらない…ド派手に戦って散る…それがヴィランってもんでしょ)
(これ以上魔力を消耗したくはない…殴り潰す)
お互いがそれぞれの思案を巡らせ、停滞した状況が続いていると…突如として複数の魔力反応が車両基地内へと侵入して来る。
──それが停滞した状況を打破する狼煙となった。
「「──!」」
反応を感知したタイミングは同じ…アクションを起こしたのも同時──二人は得物を捨てて打撃によって廃車両を相手側へと吹き飛ばそうとした。しかし──全くの同タイミングの打撃、そして微妙な位置のズレにより…車両が押し潰されて歪む。
それをまたもや同タイミングで把握した二人は──また車両に打撃を加える。しかし、先程より少し車両が歪んだ程度で収まってしまう。が、二人はそこで収まるような人間ではない。
タイミングが被るなら…更に速く打撃を加えればいい。しかし、その思惑もまた完全に被ってしまう…そこで二人が出した結論は至ってシンプル。
打撃打撃打撃打撃打撃打撃打撃打撃打撃打撃打撃打撃打撃打撃打撃打撃打撃打撃打撃打撃打撃打撃打撃打撃打撃──相手よりも速く、何度も何度も試行すればいい。
二人の車両を介しての強烈な打撃のラッシュによって車両はどんどん歪んで薄くなる。
打撃が加えられる毎にお互いが相手との距離が近くなり──
「──ぶっ!」
「──がっ!」
薄くなった車両への打撃がとうとう車両を突き破り──全く同じタイミングで相手の拳に顔面を強打される。
お互いが一瞬だけよろけたタイミングで──戦場に新たな戦力が投入される。
「見つけた!よくもあちしを寝させてくれたなー!」
「凄い殴り合い…?だったね…だけど、アタシ達も黙ってられないんだよ!」
「あのふざけた幻覚も…あなたの犯行ね!許さないわ…!」
「…ま〜た邪魔が…」
六倉ナル同様昏倒事件の犯人と疑われていた3人の魔法少女──そして、常盤ななか一派も回復を果たして再来。更に後方からは七海やちよ、十咎ももこのチーム全員…更に後方からは帆奈とナルが置き去りにした魔法少女、他に連絡を受けた魔法少女達が到着しつつある。
「せっかくさっきのラッシュで昂ってたのにさぁ…気分ガタ落ち。行こ。ナル」
帆奈が逃げの姿勢を取った瞬間に──帆奈の目の前の車両へと遊佐葉月が目にも止まらぬ速度で降り立つ。
「──行かせるとでも?こちとらさぁ…仲違いさせられかけて苛立ってるんだよ」
「──へぇ〜あんた速いね!だからってどうって事ないけど」