更紗帆奈の隣の家に住んでいた男の子の話 作:nalnalnalnal
(速い…!ナル以上のスピード…厄介だなぁ)
廃車両内で遊佐葉月達の3人組、常盤ななか一派、帆奈、ナルの戦闘が開始していた…が、窮屈な足場である上に多対一の状況に持ち込まれた帆奈はジワジワと追い込まれていた。
その中でも一際面倒だと感じていたのが葉月…帆奈と同様に電撃もとい雷を扱う魔法少女であり、自らの体内に雷を帯電させて雷神の如く荒れ狂う速度に何とか食らいついていた。
だが、敵は勿論葉月以外にも存在する。葉月による死角からの総攻撃の隙をあやめとこのはが突く連携、そして更に攻撃の穴を見通して刃を向けるななか…このまま行けば敗北するのは目に見えていた。
自らに暗示をかけたはいいものの、帆奈の身体は限界を迎えつつある。新西区から工匠までの長距離戦闘による移動、無差別放電時の魔力放出、徐々に削られる現在…暗示を解けばその場で血反吐を吐いてもおかしくはない。
そんな帆奈と長時間戦闘していたナルも同様──先刻の最大出力の斬撃により魔力の殆どが奪われており、直に許容限界を迎えるのは本人も自覚していた。
(…ナルが動かない。休憩タイムって訳…?)
そんなナルがこちらの状況を見ながらその場で静止しているのを見た帆奈は推測する。息切れもしていなかったのに何故急に止まる?葉月達の総攻撃でも明確な決定打は未だ与えられていない。ナルが隙を突き、打撃を加えればそれで殆ど勝負は決まるようなものだ。今は打撃をいなす事も躱わす事も出来ない。初めてモロに打撃を与えられるチャンスだと言うのに。
何かを待ってる?
「余所見するなんて随分余裕かましてるね?」
「うるさいっての──『動くな』」
帆奈の咄嗟の暗示によって葉月の動きが止まる…総攻撃の起点となっていた葉月の一瞬の停止により、彼女達の猛攻が瓦解する。
これでナルの方へと向かえる…そう考えた時に──突如として車内に霧が散乱する。
(霧…?スプリンクラーが作動した…?いや、こんな廃車両にあったとして今更作動するか?)
霧の正体は──静海このはの固有魔法。帆奈に隙を無理矢理作る為の即席の策…その瞬間に葉月も行動が可能になる。咄嗟の暗示では効果が微弱なものにしかならないのは帆奈も理解していた。
全員の固有魔法を帆奈は知り得ない…だからこそ作り得た一瞬の隙。その場にいた全員が霧の中へと一目散に駆け寄る。
(あっは…面倒過ぎるなぁコイツら…だけど目的が丸分かり。上に逃げれば──)
と、楽観視していた帆奈の目の前に反応すら感知させない速度で入り込んできたのは──六倉ナル。
帆奈がナルの姿に気がついた頃には──既に腹部へと指が曲がった状態の手がセットされている。
(はや──それにこの構え…まさか…!)
帆奈はナルの構えに見覚えがある。それはいつだったかナルと小日向トワの特訓を見ていた時だった──魔力を持たざる者であると言うのにナルに身体の一部を使わないと判断させる程の威力をもつ一撃必殺…中国武術の発勁の一つ。
ナルはこれまでこの技を完成させる事が出来ずにいた…しかし、唾液を垂らしてしまう程の極限の集中力、自らの感情を抑え込む胆力…それが完成に至る要因となった。
先程までの停止は予防線との最終連絡…そして入り乱れる魔法少女達の行動を極限まで見極める為の行動の制限。自らの許容限界が近づいて来ている事を考慮した上での行動。
──最小限で最大限の威力を対象に叩き込む…
──寸勁。
──そして、このタイミングで彼は許容限界を迎えた。
***
「がはっ…いったぁぁ…あっはは…!」
あっはは…凄いなぁ。ナルは…さっきまで工匠区に居たのにあの一撃だけで大東に飛ばされちゃったよ。しかも湖を飛び越えて…ベテランの魔法少女なんかよりもずっと強いよ、ナル。
『帆奈ちゃん…大丈夫…!?』
「全然…ヤバいね〜…魔力も限界になりつつあるし…」
瀬奈のサポートすらも無理矢理こじ開けられたし…遊佐葉月って奴以上の踏み込みだった。凄い、凄すぎるよ…あたしは知ってる。あんたがその力をつけるまで友達と毎日特訓して家でも限界まで筋トレして…魔力で回復させてまたトレーニングしてるの。
すっかり男らしくなったよね。うん、それでこそヒーローだよ。ナル…
『…ねぇ、帆奈ちゃん。本当にあの人の事、嫌いなの?』
「…さぁね」
意地悪な質問してくるなぁ…瀬奈はあの時あたしがナルを見捨てた場面に一緒に居た。それにあのツーショット写真の事だって知ってる…ナルの事も全部話した。あたしがナルを本当はどう思ってるのかなんて目に見えてるでしょ。
だからこそなんだよ。だからあたしはナルに殺されなきゃいけない。ナルを見捨てて、事件の犯人に仕立て上げたヴィランのあたしは、然るべき人間に殺されなきゃならないの。
『あの人と喋ってる時だけ、帆奈ちゃん無理してるよね』
「そんなのいーでしょ…きっとナルもすぐ追いついてくる…行くよ…」
『…うん』
無理?そんなのしてるに決まってる…だって…だってっ…!演技でもナルに大嫌いと言ってしまったのだから。ナルはあたしを嫌ってなんかない。分かってる。分かってるんだよ。堪らなく嬉しかった。言い表せようもない感情が駆け巡った…それでもあんたの為にあたしは…
無茶苦茶しても結局最期に待つのは敗北、破滅なんだって教えてあげるんだ。
『──!帆奈ちゃん!湖から魔法少女が!』
「ま〜たナル以外が…面倒な魔法持ってるね」
あたし達の会話を唐突に邪魔したのは湖から聞こえた水の音──そこから出て来たのは4人の魔法少女…あれ。あいつも居るじゃん…確か…そうだ。和泉十七夜って奴。
成程ね…あいつがあたしの事思い出したからナルにもあたしの存在がバレたって訳か。暗示をかけたのに一体どうやって…まぁ、今はそんな事どうでもいいか。
でも不味いな…このままじゃナルじゃなくてあいつらにやられる。電撃だって出力を抑えないと…暗示も微妙なものしか出来ない。まともに動けやしない…ナルのあの一撃が予想以上に響いた…立っているのがやっとだ。
──もう、詰みだ。
──始めからここであたしが勝てる未来なんて想像しちゃいなかった。だから最期にナルと話して、大好きなヒーローに殺して貰いたかった。
傲慢?でも良いでしょ…最期ぐらい願いを聞いてもらっても。瀬奈を…あたしの大好きな友達を助けてよ…ナル。
あんたにしか出来ないんだよ。あたしのクソみたいな世界を一時でも照らしてくれたあんたにしか。
魔法少女が魔女になるしかないこの世界も、理不尽な理由で人を虐げる世界も、全部否定しなきゃいけないの。
あたしが許されたら、それは悪意が罷り通る事になるから…希望を信じて前に進むあんたが居る世界に…瀬奈を置いていきたいの。
あたしは最期までヴィランになり続ける…だからあんたはヒーローになり続ける。そこに誰も介入させたくない。
──邪魔だ。そこを退いてくれ。あんたらじゃない…あたしが求めてるのは──
『──これ…バイクの音…?』
「──あっはは…そうだ。そうだよ…来てくれるって信じてた…!」
──来てくれた。予想外の乗り物を乗りこなしたあたしのヒーローが。
「──帆奈。そろそろ終わりにしよう」
「待ってたよ…ナル…!」
でも何でバイクに乗ってんの?普通に走った方が速くない…?それにヘルメットもしてないし、運転方法が何故か分かってるのも分からない。
あっは…無茶苦茶過ぎるよナル!でも、結構様になってるよ!かっこいいよ!
「ナルぅ…!それ無免許じゃないの…!?」
「車両基地に捨てられてたヤツだし、バレなきゃ良いんだよ。それに反動が来たから無駄に体力も消費出来ないんだ」
反動…?何の事…?自分にとって何か負の作用が働いたという事?わざわざバイクを使って移動距離を稼いだ…体力か魔力のどちらかが落ちたという事?
分からない…でも今は──あんたに終わらせて貰わないと。
「ナル…そいつらは放っておいてあたしと行こうよ…ね…!?」
「言われなくとも…行くよ」
あたしはナルを最期の場所へと誘いながらフラフラしながら移動する。終わるならあの景色を見ながらが良いな…
ナルはあたしの誘いに乗ってくれた…和泉十七夜達に一瞥してバイクを降りてゆっくりと向かってくる。
ナルはもうあたしが詰みだという事を理解してるんだね。その上であたしの要望に応えようとしてくれてるんだ…優しいなぁ…あんたは。
***
『帆奈ちゃん…どうしてここに来たの…?』
「もうすぐ…分かるよ…」
あたしは最期に選んだ場所──瀬奈が好きだった大東団地の屋上へとやって来た。今は夕方じゃないからなぁ…綺麗な夕焼けは見えないや。
でも、満天の星は見える…負けず劣らず綺麗だなぁ。
ああ…でも…もう身体が動かない。ここまで持ってくれてよかった…これで…やっと──
「…なんでこの場所なんだ…」
あんたに殺して貰えるから…
「あはっ…あたしにとって思い入れのある場所なの」
「そうか…」
屋上の地べたへ大の字で寝転がって星空を見上げる…本当に綺麗だ。何度も何度もこの場所で瀬奈と色んな事を話したっけ。
でも、一度だけ邪魔が入ったよね…和泉十七夜。あいつだ。
当時も今も、この景色はあたしと瀬奈以外には邪魔させたくない…そう思ってる。でもあんただけは例外なんだよ。ナル。
あんたをあたしが拒絶する訳ないでしょ…?でも、もう終わりだよ…
──早く、終わらせてよ。
「ほら…ナル。あたしにとどめを刺すチャンスだよ…?」
「とどめ…?やっぱり…そうなんだな」
「…えっ?」
「…帆奈さ、死ぬ気だったんだろ?」
「──!」
バレてたんだ…ナルもあたしの本音を理解してくれてたんだ。あはっ…堪らなく嬉しいのに、悲しいよ…
もう、あたしはここで終わる。それは覆せないから…あんたとはもう、話せる事も無くなっちゃうんだね。
「そんな目をしてた」
「あはっ…じゃあ、殺してよ」
「なんで?」
「──は?」
「なんで殺さなきゃいけないのか聞いてるんだけど」
──何…何だよ。何だよその質問…まさか、ナル。あんたここまで来てあたしを殺さないつもり…!?
ふざけないでよ。そんなのあたしが許さない…許さない。希望の中に悪意なんかあっちゃならないんだよ。今瀬奈があんたを見てるんだよ。やめてよ。情けなんてかけないでよ。
やめてよっ…やめてよ…!今更情けをかけて何になるんだよ!?
あんたは自分の仲間も、自分自身も、全く関係のない魔法少女すらも襲われてるんだよ…!?それにさっきだってあたしがした事を目の前で聞いた筈!その上でなんであたしに情けをかけようとしてるんだよ…!?
今ならあたしなんていつでも殺せるだろうが…!
「…後さ」
「──そこに誰か居るのか?」
「──!?」
『──え…』
ナルの目線は瀬奈に向いている…まさか、見えてるの?瀬奈が…いやでもその口振りなら見えてはいない…?なら、どうして瀬奈の事が分かるの?なんであんたは…悉くあたしの計画を台無しにしようとするんだよ…!?
「さっき湖のとこで誰かと話してただろ。帆奈にしか見えない存在がそこに居るのか?」
「…」
「…まぁそれはいい」
「で、俺が帆奈を殺さなきゃいけない理由は何だ?俺には到底殺せる勇気なんてない」
「…っ…!!!」
──もういい。あんたにあたしが殺せないなら…自分で死んでやる。
ナル…あんたは悪意に唆されてお姉さんを失ったんでしょ!?なら殆ど魔女みたいなあたしを殺したいぐらい憎んで恨んでもいいんだよ!恨んでよ!憎んでよ!
あんたにはその権利がある。あんたは悪意の真反対に居るんだから…願いで人を消して、あんたも見捨てたあたしを許して良い存在なんて、この世には居ないんだよ。
今更自害するのに抵抗なんてない…元より死ぬつもりだったんだから。ナル…
ああ…ナル…瀬奈…
自害の時にも走馬灯って流れてくるもんなんだね。
『あの…大丈夫?』
──そうだ…今思えば、あの一言であたしの人生は始まったんだ。夜に公園で蹲ってるあたしをナルが救ってくれたんだ。
毎日のように遊んで愚痴を吐き出して…お互い本音を吐き出してスッキリしてたっけ。
──まぁ、そうだよね。夜中に泣いてる奴に話しかけて助けようとする奴が、あたしを殺せる訳もないか。きっと今だってあたしの心配をしてくれているんだろうな。
両親が死んだ時は…初めて喧嘩したよね。死んでよかったなんて思っちゃいけないって…あれは、あたしが両親みたいになって欲しくなかったからなんだよね。あんたなりの優しさだったんだよね。その優しさに…あたしはどうしようもない程惹かれたんだ。
『大丈夫?私は瀬奈みこと…魔法少女だよ!』
──瀬奈、あんたには毎日のようにナルの姿を重ねてたよ。初対面の時の声が──ナルに似てたから。手を差し伸べてくれる姿が…どうしようもなく眩しく見えたから。
あたしね…あんたと出会って良かったって思ってる。瀬奈はどう?あたしと出会って何か変わった?だと嬉しいな…
ナルとは違って同じ女子同士での初めての友達…本当にあの日々は楽しかった。ナルとはまた違うベクトルの楽しさが身を駆け巡った。
あんたが不意に見せる笑顔がナルに似ていた…きっとナルに出会っていなくとも、あたしはあんたとは友達になってたと思うよ。
でも、魔女に行き着く真実を知ってからは…あたし達は変わったね。あんたがあたしの中で魂だけの思念体として残留してからは、色んなところを滅茶苦茶にして回った。
あたしと瀬奈が嫌いだった家族や学校…色んなところをね。あたしはナルを見捨てたあの日から、ナルの隣に居ていい人間じゃなくなっていたんだよ。
だから、吹っ切れちゃったのかな…あっは、最低だよね?
…でも、魔女になったあんたの魂は次第に悪意に蝕まれていく。いつかあんたが罪を犯してしまうかもしれない。それはダメ。ダメなの…だからあたしが代わりに引き受けるよ。
あたしも、ナルみたいに誰かを救えるヒーローになってみたかったんだ。あの時見捨てたってのに、都合が良過ぎるよね?でも、それぐらい瀬奈の事がナルと同じくらい大事になってたの。
死ぬのはあたし一人だけ…あたしの死をもって、あんたにはこの世界の摂理を教えてあげるの。どれだけ凶悪なヴィランでも、正義のヒーローに討ち倒されるんだって。
悪意の果ては敗北なんだって。
瀬奈…
「──はっ…?は?」
──ソウルジェムが…ない?
なん…で…?ナルはあたしのソウルジェムを取れる距離には居ない筈…どうして!?なんで!?あたしのソウルジェムは…!
「…ありがとう。御園さん」
「大丈夫なの…」
「…それをこっちに渡してくれ。浄化する」
「なんで…なん…でぇ!!!」
盗られた…あいつだ…!あいつの固有魔法か!ふざけないでよ…なんでそこまでしてあたしを死なせてくれないの?証明出来ないじゃない…瀬奈が、見てるのに…
新しい人生に、瀬奈を送り出したいのに…なんで、なんであんたは…
「御園さん…申し訳ないけど、席を外して欲しい。俺から呼んでおいて本当に悪いんだけど…」
「謝る必要はないの…その人…先輩にとって大切な人だから」
あたしのソウルジェムを盗った奴が屋上から姿を消した後、ナルはあたしの近くに座って話しかけてくる。
あっは…死ぬ事すらも許されないなら、あたしがした事に意味なんてなかった訳?瀬奈を送り出すのはダメだって訳?もう…意味わかんないよ…
「…帆奈」
「…なに…」
「──ありがとう」
「──は?」
何…言ってんの…?
「何…言って…」
「…俺の原点を知ってる前提で話すぞ」
ナルはまた立ち上がり、地べたに寝そべるあたしを優しい目で覗き込んでくる。
ああ、綺麗だな…かっこいいな…なんでそんな目をあんたは…あたしに向けれるの?憎んでないの?恨んでないの?
嘘吐かないでよ。分かるよ…あたしには。あんたがあたしを憎んでるのも。
「…今の帆奈に俺がどう映ってるのかは分からないけどさ、俺は当初は魔女にビビって逃げ出すような奴だったんだぞ?今となっちゃどれだけ怪我したとて諦めるとか絶対にないと思うけどな」
「…だから、なんなの…」
「なんでそんな腑抜けが前を向くようになれたと思う?」
「…仲間でしょ。あんたの…」
「んー、それも勿論だが、大きな要因は別にある」
出かけた言葉を飲み込んで、ナルは柔らかな笑みを浮かべて──
「──帆奈。君の存在だよ」
「──え…」
──あたしの名前を優しく言ってくれた。なんで?なんであたしなの?あんたがあたしを危険から遠ざけようとしてくれたのは知ってるよ。でもそれはあたしの事が少しでも嫌いになったからでしょ?
あんたの優しさは誰にでも平等だ。きっと瀬奈があたしの立場だったとしても別れを告げてたでしょ?
ああ、そっか。そりゃあたしを殺せる訳もないか…でも嫌いでしょ?両親の死を喜んでいた時から、嫌な奴だなとは思ってたんでしょ?
でもあんたは優しいから…そんなのは口にしない。あたし…それだけは気付けなかったなぁ。ナルの嘘なんて見抜ける筈なのに…あっは…
「嘘…吐かないでよ」
「嘘じゃない。本当だ」
「一枚、帆奈と撮った写真があるだろ…って、覚えてないか?」
「…」
まさか…あのツーショット写真の事言ってるの…?まだ、持ってたの…?
「あれ部屋に置いててさ…ちょっと自暴自棄になってた頃があるんだ」
「その時にその写真を見たらさ…不思議と力が湧いてきた。弱いままで居たら、友人を危険から遠ざけた意味がないだろ。帆奈の存在を否定するな。ってさ」
「…違うでしょ…」
「えっ?」
「違うでしょ!?」
ああ、ダメだ…抑えていた筈なのに…涙が…こんな醜い姿、瀬奈に見せたくなかったのに…でも、あんたは違うでしょ。あたしを危険から遠ざけたのは──
「危険から遠ざけたのはあたしが嫌いになったからでしょ!?こんな性格の奴をあんたが好む筈がない!隠してたんでしょ!?」
「でもあんたは優しいから、そんなあたしも危険から遠ざけた!それだけ!あんたは平等に優しくて、あたしはそれをただ享受しただけ!」
「そこに特別な意味なんてないでしょ!?あんたの平等さは変わらないから!あんたのお姉さんがそうだったから!」
「ナルにとってのあたしはただ性根が腐った最悪な奴!そうでしょ!?」
あっは…あたし、気持ち悪いなぁ…二人の大切な人の前でこんな醜い姿曝け出して…でも、そうでしょ?
あんたはお姉さんを子供の頃から無意識に追いかけてた…だからあたしなんかにも優しくしてくれた。その優しさはあたしには眩しすぎて…時には暴力なんだよ。あたしは平等な輪の中の一人でしかないんだって、思わされるから…
「違う」
「…まだそうやって…!」
「違うからな」
「本当に性根が腐った奴なんて他に山程居るんだよ。俺の親戚だったり虐めてた奴だったり…」
「そんな奴と一緒に居たいとは思わないし、現に一緒になんかいないよ。嫌だからな」
「でも、俺は帆奈とは一緒に居たい。人生で一番長い時間本音を吐き出し合った仲からな」
「…じゃあ…なんで…」
はぁ…?一緒に居たい…?嘘吐かないでよ…!じゃあ、なんで…一緒に居たいなら、どうして…!
「──あたしを連れて行ってくれなかったの!?」
「帆奈…」
「──寂しかった!嫌だった!羨ましかった!あたしは…あたしだけっ…友達を失ってっ…!」
「なんでっ…!?なんであたしだけが離れ離れになってポッと出の奴らがナルと一緒に居られるの!?」
「狡い!狡いっ…!羨ましい…!それならあたしも一緒に行っても良かったでしょ!?嘘吐き…!嘘吐きっ…!」
──そうだ…あたしは…ただ、ナルと一緒に居たかったんだ。ナルに殺されたくなんてない…嫌われたくなんてなかった。許されるなら…3人でこれからも生きたかったんだ。
「…仕方ないだろ…」
あたしの醜い言葉を聞いたナルは笑みを消して…歯を食いしばっている。そして──
「──姉ちゃんが死んでから俺が前を向くまでどれだけの年月が掛かったと思う!?もし仮にその期間に帆奈が居たとしろよ!」
「俺は戦えなくて足手纏いで…帆奈が代わりに戦うだろうな!」
「だが、そんな事がいつまでも持つと思うか?今こそ多少は解決したが、当時は魔女の取り合いだって起こってたんだ!」
「俺の過去を聞いたなら知ってんだろ!?魔法少女が行き着く先を!」
「帆奈が居ても俺が前を向けた可能性もあるだろうな!だがそれだとしてもいつまでも持つのか!?魔法少女は常に命懸けだ…一人で死んでしまう事もあるかもしれない!」
「そんな死地に帆奈を巻き込むぐらいなら…離れた方が良いだろうが!」
「擦り傷だって負わせたくない…危険なんかとは無縁な生活を送って欲しかったんだよ!俺はっ…!」
──ナルも、あたしに本音を吐き出した。