更紗帆奈の隣の家に住んでいた男の子の話   作:nalnalnalnal

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第26話 いつまでも、一緒に…

 

 

 

 

 

 

 

 

「帆奈ー。準備できたか?」

「あ、うん!今行くよ!」

 

 

 事件の収束から数日後──ナルが当てにしていた人からの連絡があり、あたしはとうとうナルと同じ神浜市立大附属学校へと通う事となった。

 待ち望んだナルとの登校──勉強に感じてはまぁ真面目ちゃんだったからついていけるかな。とは思っている。水名みたいに綺麗寄りの制服ではないから割と好み…瀬奈がうるさかったけど。

 

 

 で、あたしのクラスはナルと同じ──十咎ももこのチームの水波レナが隣の席らしいが、あたしの席はどこになるのやら…できればナルの近くがいいな。授業とかでも班のワークとかとあるだろうし。

 

 

「帆奈ってさ、水名の方じゃ成績は良かったんだっけ?」

「うん、まぁ…施設に居たから、好成績を収めたら学費が免除されるって話があって」

「成程な…だったら俺にも勉強少し教えて欲しいな。そこまで頭良くないからさ…」

「なんか意外…ナルって真面目なのに」

「俺だって男子だ…漫画やゲームに忙しいんだ」

「あはっ、そりゃ言い訳だよ」

 

 

 ナルの部屋には大量の漫画や最新のゲーム機が置かれていて、あたしも何度か遊ばせてもらった。ナルのイメージは授業も試験も堅実にこなすって感じだったんだけど、腐っても年頃の男の子なんだなと認識させられる。

 学校の話は何度か聞いたけど、あたしが見た事のあるナルの特訓相手が唯一の男友達らしい。学校一の不良だとか…怖いんだけど。

 

 

「安名さんにも勉強教えて欲しいって言われたしな…帆奈もちょっと時間あったら手伝ってくれよ」

「…気が向いたらね」

 

 

 ──絶対やらない。安名メルの恋心を助長させるような事をしてたまるものか。ライバルなんて絶対増やさない…まだ自覚はなさそうだし。だけど家で2人きりで勉強なんてさせたらそれこそ自覚してしまうかもしれない…対策を考えないと。

 

 

「…っと、見えて来たな」

「めっちゃ近いんだね」

「お陰で朝はゆとりができてラクなんだよな」

 

 

 もうちょっと遠かったら話せる時間も増えるのになぁ…でも同じクラスだし、家でも好きなだけ話せるからいっか。

 

 

「教員室まで案内するよ。多分手続きとか諸々あると思うけど、偽装でなんとかなる筈だから…」

「…ほんと、魔法少女って無茶苦茶だよね」

「帆奈がそれを言うか…?」

 

 

 教員室かぁ…水名の頃は入るだけでも緊張してたけど、今はそうでもないね。心の拠り所が2つもあるんだし、瀬奈はあたしにずっとついてるからかな?

 

 

「じゃあ、先に教室で待ってる」

「うん、また後で」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「転校生が来るんだってな?しかもお前の知り合いだと」

「ああ。幼馴染でまたこっちに来たみたいなんだ」

「すげぇな。んな漫画みたいな展開ガチであるもんなのか…」

「…幼馴染ねぇ…」

「んっ?お前も居たりしたのか?」

「幼馴染っつーか昔馴染みっつーか…」

「俺達ぐらいの年齢ならほぼ同じじゃね?その昔馴染みはお前の故郷のか?」

「まぁそうだな…結局疎遠になっちまったがな」

「確か…二木市?だっけ。別に会おうと思えば会えるんじゃないのか」

「何も言わずに出てったからなぁ…気まずいだろ?」

 

 

 あれがナルの友達かぁ…見た目とか話し方は知ってたけど、ほんとに仲良いんだ。席も窓際の角っことその前っていう最高の配置だし、横には水波レナが居るし…ってかめっちゃこっちみてるじゃん…

 

 

「更紗。そろそろ朝礼が始まるから、入るぞ」

「あっ、は、はい」

 

 

 ──そして担任が扉を開けた瞬間に、クラス中の視線が一斉にあたしに向けられる。流石に緊張するけど…ナルが見ているから問題はない。

 

 

「おはよう。皆も知ってる通りだが、今日はこのクラスに転校生が来ている」

「水名から転校して来た更紗帆奈さんだ。それじゃあ、自己紹介頼めるか?」

「は、はい」

『帆奈ちゃん。頑張って!』

『ありがと』

 

 

 自己紹介…何を話せばいいんだろう。好きなものとか…得意なこと?まぁ適当に済ませればそれでいいかな。ここで変に気取ったものをしてもあたしの気分がガタ落ちするだけだし。

 

 

「更紗帆奈です…最近の趣味は漫画を見ることで、動物全般が好きです。えっと…よ、よろしくお願いします…」

 

 

 あたしの自己紹介が終われば拍手が鳴り響き、クラスメイトがそれぞれの感想を小さく呟き始める。ミスってないよね…?

 

 

「漫画だってよ…俺趣味合いそ〜!」

「意外な趣味だよな〜」

「水名だって…確かにちょっとお嬢様感あるよね」

「頭いいのかな?私勉強教えてもらったりしようかなぁ?」

「綺麗な髪してるね〜。お手入れ大変そう」

 

  

 …まぁ、失敗はしてないか。

 

 

「じゃあ、更紗の席は…小日向の隣が空いてるな。そこに座ってくれるか?」

 

 

 小日向…ナルの友達だよね。席は…うわっ、凄い席。後ろには水波レナが、斜め後ろにはナルが…!良かった。ナルと近くになれた。

 少し小走りで指定された座席へと向かう途中でも好奇の視線に晒される…転校生ってこういうものなのか。

 

 

「あ、えっと…よろしく」

「んっ?ああ、よろしく…」

 

 

 座る直前に小日向に軽く挨拶をした瞬間にクラス中にどよめきが走る。聞き耳を立てれば『小日向に話しかけたぞ…!』、『噂知らないのかな…?』、『目つけられたりしたんじゃない…?』とか何とか…

 こいつそんなにヤバい奴認定されてるの…?不良とか言ってもナルとの特訓とか見てる限りそうでもないと思うんだけど。偏見…かな。

 

 

「仲良くしろよ〜。後面倒事は起こすなよ、小日向」

「うっす」

 

 

 担任が連絡事項を伝え終え、休み時間に…当然クラスメイト達があたしの周りに集まって来るんだけど…ナル、小日向、水波レナがあたしと会話しているのを見ると少し足が引けているようだ。この3人なんなの…?

 

 

「ちょっとアンタ…六倉が許したかもしんないけど、レナはまだ許してないから」

「…分かってるよ」

「後アンタ六倉ん家に住んでるんでしょ…!?」

「う、うん」

「…むっ六倉に迷惑かけないでよ!」

 

 

 こいつ…まさか…安名メルと同じタイプか?いや、そっち方面の線じゃないのか…?でもこういう奴が心を開いているってことは、そういうこと…

 ナルぅ…!あたしが居ない間に2人も…!

 

 

「なんで水波はそんな喧嘩腰なんだよ。ってか同じ家に住んでるってマジ?」

「うん。最近住み始めたんだ」

「へぇ〜…スゲェな。同い年の異性家に住まわせるとか」

「そ、そうよ…!もう少し色々諸々考慮してから…!」

「水波焦りすぎだぞ〜」

「黙りなさい小日向!」

 

 

「言っちゃっていいの…?」

「…もう別に隠すことでもないし、隠し通す方が面倒だから」

「絶対隠した方がいいと思うぞ俺は…ただでさえ評判悪いんだから」

「9割ぐらいお前のせいだと未だに思ってるんだけど」

「…お前大声で殴り合いしろって言ったの忘れたん?」

「…ノーカン」

「お前未だにその噂出回ってるからな。覚悟しとけよマジで」

「…もういいじゃないか。大して変わらんだろ」

「あっ本音出しやがったなこの野郎!」

 

 

 あっは…なんだかんだ言って仲良いんだな。水波レナも単にナルのことを思っての言動だろうし、そっち方面の可能性が高いから絶対に進展させはしないけど。

 小日向って奴も悪友みたいな感じだな。一体何をやらかしたらこんな引かれるようになるんだか。

 

 

「ってか一緒に住んでんなら付き合ってんの?お前ら」

「「──!?」」

「いや、そういう関係では…」

 

 

 …ふーん…そんな即答しちゃうんだ。折角小日向のナイスな質問だったのにこうも速攻で砕かれるとは…!

 ナルってあたしのことはただの親友ぐらいにしか思ってないの?少しぐらい恋愛感情はない訳…?悉く希望が打ち砕かれるあたしの気持ちも考えてよ。

 

 

「…あー…成程な」

「…お前ちょっくら昼休み付き合えよ」

「えぇ…帆奈が居るんだから…」

「素でんな事言うなアホ。水波と知り合いならそこで食べればいいだろ。な?水波」

「…まぁ、いいわよ」

 

 

 何の話するんだろう…それはそれとしてこいつとまともに話せるかな…

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

「──で、何?」

「お前さ…更紗の事ってどう思ってんの?」

「ん…?まぁ親友…かな」

「──異性として好きじゃないのか?」

「──は?」

「…どうなんだ?」

「な、なにを…恋愛なんて…分からない。そ、それにどうしてお前が帆奈の事を気にかける?」

「──明日をも知れぬ身なんだから、後悔はしたくないだろ?お前も更紗も」

「お前…何言ってんだ…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナルー、帰ろ」

「あっああ…」

 

 

 授業も終わって放課後に──昼休みに小日向とナルが話してから、ナルの様子がどこかおかしいというか、よそよそしい。急激に距離感を離された気分…嫌な気分だ。

 喧嘩した訳でもないだろうし、引っ越すとかでもない。なら…何?何を話してたの?

 

 

「ねぇ、ナル…」

「ん、んっ…?」

 

 

 だから少し距離を詰めてナルに触れたら──ナルが動揺した。体調が悪い訳ではないよね…あたしに関することでも話してたの?一瞬小日向の目線があの時あたしに向いていた気がするから。

 

 

『付き合ってんの?お前ら』

 

 

 ああもう思い返しただけで恥ずかしい…!小日向は絶対一回殴るけどナイスな質問だった。

 まさか、それ関係の話…?いやでも小日向に何のメリットがあって…うーん。

 男同士の会話だし、介入するのは野暮って奴なのかな?

 

 

 と、考えていたら──

 

 

「──!」

「──魔女…!」

 

 

 突然感知された魔女の反応──あたし達はアイコンタクトのみですぐに駆け出し、結界があると想定される場所へと向かう。場所は…河川敷の高架下あたりか。ナルも居る…なるべく油断せずに早急に倒そう。

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっと…」

「あの斬撃使っても良かったの?魔力の出力とか大丈夫な訳?」

「あの時は気分がなぁ…今は落ち着いてるから大丈夫だったな」

 

 

 と、まぁナルも居るから苦戦せずに戦闘を終えられたんだけど、やはりナルは神浜においてもトップクラスの実力を持っているんじゃないのかな。本人から秘密裏に教えられた『魔力循環システム』…ある一定の基準まで魔力を使い切ると、あの時ナルが言っていた『反動』がかかり、数分間の反動を経験することで、また魔力が元に戻るという、あたしとの戦闘でも後半からかかっていたモノだ。

 

 

 一定の基準ってのはあたし達普通の魔法少女なら、魔女化寸前ってところなのだろう。そして反動…魔力が無意識的で最低限の身体強化のみに無理矢理抑えられ、反応の感知、刀、斬撃が使用不可になり、身体強化以外に魔力のリソースが割けなくなる状態のことらしい。だから団地の屋上であたし以外の魔法少女が話を聞いていたことに気付けなかったし、バイクになんて乗り上げていた。

 

 

 最低限ってのがどのくらいかは分からないけど、本人的には2〜4割ぐらいだと思ってるらしい。魔力切れが起こらないのは魅力的だけど戦地で反動が来たら途轍もなく危険…だから基礎的な身体の強化を普段行っているらしい。

 

 

 どうしてそんなシステムが存在しているのか…多分ナルのお姉さんが関係しているんだけど、本人の状態がイマイチ分からないの。

 ナルにまた秘密裏にあるモノを見せてもらった。お姉さんのソウルジェム…つまりは、お姉さんは生きているということになる筈。でもナルは目の前でお姉さんが死ぬ瞬間を見た…どういうことなのか?魂ごとナルに移植された…?でも瀬奈みたいに姿が現れないのは何故?

 

 

 考察の範疇を越えない…考えても多分、無駄なこと。今はナルと一緒に居られることを噛み締めよう。

 

 

「って、もう夜だな…買い物でもして帰るか?」

「そうだね。醤油もう少しで切れそうだし」

「じゃ、ついでにデザートも買っていこうか。腹減ったし」

「あっ、いいね。じゃあ──」

 

 

 ナルの気分もさっきよりも落ち着いて、グゥ〜とお腹を鳴らしながらデザートの提案をしてくるのにはクスッと来ちゃった。

 そして近くのスーパーへと向かおうとした矢先──

 

 

「ねぇ、ちょっといーい?」

「…あっ、俺達?」

「そうだよー!」

 

 

 突然小学生程の年齢であろう女の子から声をかけられた。あの制服は確か…リリアンナ学園?だったっけ…北養区なのにどうしてここにいるのかな。

 

 

「お兄さんとお姉さんって、魔法少女でしょー?あっ、お兄さんは特別だけど」

「「──!」」

 

 

 魔法少女だったのか。でも、ここは新西区…テリトリー争い目的ではない。最近は魔女は増えつつある…よく分かんないローブの奴らが居たし。

 あいつら何だったのかな?話聞く暇もなかったから…

 

 

「…で、何か用があるのかな?」

「そうだよー。お兄さんとお姉さん最近神浜で有名な人達だもん」

 

 

 それ関係あるのかな…?

 

 

「えっと、単刀直入に言うねー?」

「…?」

 

 

「お兄さんとお姉さん、『マギウスの翼』に入らない?」

 

 

 

 

 

 ──これが、転機となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…」

 

 

 ──あの子との話が終わり帰宅…そしてナルは考え事をすると言ってそそくさと布団にくるまった。あたしも軽くシャワーを浴びてナルに次いでベッドに入った。部屋に静寂が訪れる…いつもと同じなのに今日は格段違って感じる。

 当然だ。あの話の内容なんて普通に聞けば誰でも考える時間を設けたくなる筈だ。

 

 

 ──ふと、ナルを見やると、まだ起きているようで、言った通り考え事をしているのだろう。

 何を考えているのかな。やっぱりあの話だよね…あの話、ナルは受け止めるのかな。ナルにとってはそこまで関係のない話のようにも思えるけど…でも違うんだよね。

 

 

 ──ねぇ、ナル。それは、あんたもあんたのお姉さんも、あたしも瀬奈も関係してるんだよね?なら、あたし達が聞く権利がある筈だよね?

 あんたはあたし達を救い上げてくれたんだから…もう絶対に離さない。離されない…一人には、させないから。

 

 

 ──あんたは今、迷ってるんでしょ?でも、あたしはそれを否定したくないんだ。あんたを肯定してあげたい…だから──

 

 

 あたしはベッドからゆっくりと起き上がり、ナルがくるまっている布団へと向かい、そして──

 

 

「──っ!?は、帆奈…!?なにして…!?」

 

 

 ナルの布団へと侵入してナルを力強く抱きしめる。決めたんだ──ここで気持ちを打ち明けるって。どうしてって?分からない。

 あの話を聞いてから、ナルの顔が明らかに暗くなってたの…多分、迷ってるから。自分だけじゃなくて、お姉さんという大きな正義の象徴が中に居て、あたしと瀬奈という友達も居る。だから迷っている。

 

 

 自分の中の正義をもしかしたら捨ててしまうかもしれない…お姉さんとは対極の道を進んでしまうかもしれない。あんたが無意識に掲げていた将来のあんたの像が崩れてしまうかもしれないから。

 

 

 ──でもね、あたしには関係ないよ。

 

 

 ──もう、自分一人で抱え込もうとしても無駄なのは分かってるんでしょ?

 

 

 ──あんたがあたしのことをどう思っているのかなんて、あたしには分からない。でもね、あたしはあんたのこと──

 

 

「──好きだよ」

「──…えっ…?」

 

 

 ──どうしようもないくらい好きになっちゃったんだよ。例えあんたが茨の道を進もうとしても肯定してあげたい。意地っ張りになってもいいんだよ。あたしは…ナルの全てを肯定してあげたい。

 

 

 きっと、その根底にはナルに見放されたくないって気持ちがあるんだと思う。そう、そうだよ。だからなんだよ。

 今更、そんな醜い気持ちを隠すつもりもない。全部、全部。全部…ナルに吐き出すから。

 

 

「…嘘じゃないよ。勿論異性として」

「…なんでこんなタイミングで言うんだ…」

「あんたの手を一度でも離しちゃったら、あんたが遠いところに行っちゃいそうだったから」

「…ねぇ、ナルはどうなの?」

「──…俺は…」

「あたしのこと、好き?」

 

 

 あはっ…あたし、大胆になったなぁ。振られてもいい…その覚悟なんてできてる。ナルがあたしをただの友達としてなのか、異性として意識しているのか…ライバルをこれ以上増やさない為にも、ここで全部聞くんだ。

 例え振られたとしてもあたしはついて行くよ。その時は…ただの友達として、になっちゃうけど…

 

 

 ──でも、あたしは嫌だ。

 

 

 心の底で、どうしても期待してしまっている。

 

 

 ナル、あんたは──

 

 

「…好きだ」

「──ぇ」

「帆奈のことが…好きだ」

 

 

 まるで頭に隕石が衝突したかのような衝撃──ナルの、愛の言葉があたしの脳内に溢れ、こだまする。

 『好きだ』…ああ…ダメだ…今まで抑えていたものが全部溢れてしまう。たった一言だけで…あたしの全てが肯定されたかのような。

 でも、あたしだけが肯定されちゃダメだ…ナル、あんたもだよ。

 

 

 …ナルは、あたしのこと、好きなんだよね…?なら、()()も…別に、してもいいよね…?いいんだよね?ねっ!?

 ──ごめんナル。もう、我慢できない…あんたのその甘い言葉が、あたしの心を狂わせる…

 

 

 その言葉の真偽を問う暇もなく、あたしは抱擁を一旦緩めてナルの顔を掴んであたしへと向けさせ、そして──

 

 

「──んっ!」

「──んむっ!?」

 

 

 飛びつくようにナルの唇へあたしの唇を重ねた──キスをした。更に抱擁の力も強め、絶対に終わるまで逃さないという意思表明をする。

 予想外の行動を取られたのか、ナルは少しだけ抵抗するが、気分が動転してるから力が全く入っていない。

 

 

 ああ…ナルってこんな味なんだ。ファーストキスはレモン味なんて言うけど、だだただ甘さが広がっていく…もっと欲しい。味わいたい。貪りたい。病みつきになりそうだよ…

 

 

「んっ…んれぇ…」

「──んんっ!?」

 

 

 もっと欲しい…あたしは更に舌をナルの口内へと這わせる──美味しい。ナルの唾液も舌も全部…あっ、舌ビクビクしてる。可愛い…こういうのはやっぱり初心なんだね。

 

 

 舌、上あご、頬の内側、歯茎…口内のありとあらゆる場所を必死に舌で絡めとり、ナルの汚れさえもあたしは味わっていた。

 対するナルは…目をキュッて閉じて舌を絡め返してくれた。ぎこちなく…でも可愛い舌…あはっ、でもまだあたしの方が強いからね。

 

 

 ファーストキス──はじめは流石に恥ずかしかったけど、しちゃったら我慢なんてできなくなる。もっと、もっと欲しい…もっとナルが欲しい…もっとぉ…

 クチュ…クチュ…と、ねっとりとした甘い音が部屋に響き渡り、あたし達はお互いの味を確かめ合った。

 

 

「…っはぁ…はぁ…」

「あっはぁっ…はぁっ…」

 

 

 唇を離すと唾液が糸を引いている…ほんとにナルとキスしちゃったんだと認識させられる。何分ぐらいキスしてたんだろう…お互いが呼吸が苦しくなるぐらいだもん。

 やっちゃった…やっちゃった…!幸せ過ぎるよ…ナルがあたしを求めてくれたことも、好きって言ってくれたことも…!

 

 

「…ねぇっ…ほ、ほんとなんだよね…?」

「はぁっ…?こんなことしといてっ…好きじゃない訳ないだろ…?」

「そ、そうだよねっ…あっはっ…」

 

 

「ねぇ、ナル…あたし、ナルがどんな選択をしてもどこまでもついて行くよ。瀬奈も…一緒にって言ってくれてるから」

「…そっか…後悔、しないか?」

「しないよ。だってあたしの恋人だもん…ね?」

「恋人か…そうだな」

 

 

 そう言ってナルは突然膝立ちになってあたしを強く抱き締めてくれる。

 

 

「な、ナルっ…!?」

「…さっきまであんなに押してたのに、今はえらく可愛いらしくなったな」

 

 

 …急激に恥ずかしさが込み上げてくる…うぅ…後悔はしてないけど恥ずかしいぃ…!

 そんなあたしを横目に、ナルは抱き締めながら囁いてくる──

 

 

「──帆奈。俺と付き合って欲しい」

「──〜っ!」

 

 

 ──と。

 

 

 その一言…たった一言だけで、あたしは…いつまでも生きられる気がするんだ…

 

 

「──うん…!勿論…!大好きだよ…ナル…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






こくはく。

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