更紗帆奈の隣の家に住んでいた男の子の話 作:nalnalnalnal
「あー…この後の授業確認テストだったよな?サボろっかな…」
「やめろマジで…お前が変な事したら俺まで教師陣に目つけられるだろうが」
「それはそれで見てみたいけどな」
「やめてくれる??迷惑でしかないんだけど」
襲撃事件から数日──何とか騒動も収束し、中央区への対応も完了したところだ。あくまで交渉権についての話を行った程度ではあるが…あの結界もある。そう簡単には中央区には手を出しはしないだろう。
最近は自分の能力の向上を目的としている。その為筋トレの強度をアップさせたり、基礎的な体力づくりも行っている。初心忘れるべからずとも言うしな。基礎から見直すってのも重要だ。
ちなみに今は体育の授業で長距離走を行なっている…学校でも運動の機会を設けてくれるのはありがたい。手っ取り早いのは部活に入る事なんだろうが…いかんせん一人暮らしなもんで、買い出しだったり洗濯もある。人間関係は広げたいと思っているが、正直俺に対するクラスメイトの評判はよろしくない気がする…
「あのさ、長距離走のコツとかってある?」
「んだよ藪から棒に…しかも何で俺に聞くんだよ?」
「いやお前…だって、陸上部相手に余裕でタイム差つけてんじゃん。何なのそのお前の恵体は…」
コイツは何かと器用な奴だ。運動においては全ての競技でダントツの成績を叩き出すし、それも全国まで進んでる奴らよりもハイスコアや早いタイムを出す。コイツが恐れられてるのもそれが原因だ…逆らったらボコられる。みたいな噂が流れてるらしいが、中学生が流して良い噂じゃないんだよなマジで。
かと思えば割と勉強も出来るし…飄々としてる癖に器用にこなすコイツは羨ましい。本人が努力しているのは知っているから何も言えなくなってしまうが。
「コツねぇ…まぁ第一に、余計な事を考えんなって話だ」
「酸素って思考にも使われるだろ?音楽とか聴きながらランニングしてる奴で聴かない方が疲れなかった。なんて話もザラにある…まぁ、一概にダメとは言えんがな」
「長く運動するなら呼吸の配分も考える必要もあるが、そっちに意識を持ってかれたらさっき言ったみてーに酸素を奪われる。無意識的に行う…これに関しては慣れもあるからな」
「正味これさえしとけば後は継続だよ継続」
「なるほどなぁ…」
余計な事かぁ…確かに、魔女狩りの時は基本七海さん達と行うから、連携の隙を突こうと必死に追いかけたり視界を狭めたりしている気がする。無意識下で七海さん達は行っているのか…これも慣れか。
経験…するのが手っ取り早いんだが。出来るだけ単独行動は控えろと言われているんだよな…ちょっと考えるか。
「てかお前こそ訳分からん身体能力して「ありがとう。他の事にも活かせそうだ」話聞けや…」
***
「一人だと買い物は大変だ…米もそろそろ買わなくちゃな。最近値段も上がってるからなぁ…」
「ていうか今日のテスト終わった…補修とか引っ掛から──ん?」
「魔女反応…」
──どうしたものか。行くべきか行かないべきか…単独行動は控えろと忠告されているが。使い魔程度なら俺でもやれる…偽物の安名さん戦で多少は自分の戦い方も分かってきた。
なんて考えてたら自然と結界前へと足を運んでしまっていた。うーん…まぁ、危険になれば引き返すか。
…ん?この反応は…魔法少女?
「苦戦してるのか…?」
俺程度で手助けになれるとは分からないが…無いよりはマシだろう。俺だってチームで何度も魔女とは戦ってきているんだ。そう簡単にやられはしない。
***
「どこにいる…?」
結界の中は複数の遊具が積み重なった構造をしているが、そこまで魔力の反応は大きくない。恐らくは使い魔…苦戦してるとなれば、数で押されている可能性が高い。急がなければ…!
「ふゆぅぅぅぅ!」
「──ん?この声…」
最近聞いた気がするんだけど…
そう思って声がする方向へ目線を向けるとそこには──
「──秋野さん!?」
「──ふぇっ!?」
最近顔合わせをしたばっかりの魔法少女──秋野かえでさんが居た。
***
「ご、ごめんね…助けもらっちゃって」
「大丈夫だって。早い内に発見できて良かったよ…」
「でも、ナル君って凄い強いんだね!私なんかよりも全然強かったもん」
「そんな自分を下げなくても良いんじゃないかな…」
秋野さんと協力し、何とか使い魔達を蹴散らして結界を脱出した俺達は、結界付近のベンチで休憩していた。特に秋野さんは先に襲われていたから余計に疲労が溜まっているだろう。
そんな休憩中。他愛もない会話を繰り広げていると──
「かえでちゃん!大丈夫!?」
「ま、魔女はもう倒したの!?」
「ん?」
「あっ、このみちゃん!かこちゃん!」
誰…?秋野さんの知り合いか?
「えっと、その人は…?」
「あ、紹介するね?この人は──」
***
「最近噂になってる男の子って六倉君の事だったんだね!」
「噂になってるんですね…」
「そりゃもう!魔女と戦える男の子なんて聞いた事ないもの!」
突然やって来たこの二人──『春名このみ』さんと『夏目かこ』さん。秋野さんの知り合いの魔法少女であるらしく、事前に秋野さんが連絡を入れていたようだ。夏目さんと秋野さんは春名さんが働いている花屋の『フラワーショップ・ブロッサム』でよくお手伝いをしているそうで、知り合ったルーツもそこにあるらしいが…花か。
「あっあの!か、かえでちゃんを助けてくれてありがとうございますっ…!」
「そんなに頭を下げなくても…」
律儀な子だな。年齢といい秋野さんと似通っている点が多い。魔法少女には純粋な子しかいないのか…?
とまぁ、その後はただの世間話だ。お互いの趣味や連絡先の交換…こんなひょんな事で交友関係を広げられるとは思っていなかった。しかも丁度魔法少女…まぁ俺は第一に男であるから悩みとかを聞くとか聞いてもらうとかはあまり出来そうにないがな。
ちなみにその後良い機会だと思って春名さんの花屋に出向かせてもらった。理由はお墓への献花…姉ちゃんと両親、一応義母…へと。
理由を話した時に三人に暗い顔をさせてしまったのは申し訳ない。ブルーな気持ちにさせてしまうぐらいなら一人で買えば良かったな。
***
そしてまたまた数日後…割と試験も近づいて来ているる今日この頃。勉強しようとは奮起しているのだがどうにも手をつけられない…そのせいで結局気になっている漫画を買ってしまった。まぁ一週間前からでも間に合うだろ…
なんて平和ボケしか考えをしていたら…またもや魔女の反応が。結界に出向き反応を調べてみるとどうやら秋野さん同様誰かが戦っているようだった。人数的には…三人?ぐらい。
うーむ…足手纏いにはなりたくないが、色々と試してみたい事もある。行くか。
「っこいしょ…さて。どこ「お逝きなさいッ!」は?」
結界に侵入した途端ただならぬ怒号が耳に入り込んで来た。聞く限り先客の魔法少女だと思い、目を向けると…俺の予想通り三人の魔法少女が既に戦闘を開始しているのが見える。
料理人にチアガールに…モデルさん?見た感じモデルさんがあの怒号を発したようだが…
モデルさんから放たれた矢は魔女の腹部へと激突するが、効果は今ひとつのようだ。大丈夫か…?
「──やっば!」
その攻撃が余程気に食わなかったのか、激昂し始めた魔女はモデルさんに向かって駆け出す…それに三人とも反応出来ておらずまさに窮地と言っていい状況だった。
だから俺は咄嗟に刀を召喚して瞬時に身体を大きく捻り、右肩を背後に引き左足を高く上げる。そして──軸足に全身の力を溜め込んで地を蹴り、刀を握る拳を鋭く振り抜く。
「間に合…えっっっ!」
投擲された刀は空を裂き魔女の腹部へと激突する。恐らく先程の攻撃が少し効いていたのだろう。俺の刀による突撃もかなり効いている様子だった。
『□※⭐︎⭐︎◯◯…!?』
「あれっ魔女が…怯んだ?」
「なっ…!や、やはり私のとっておきが効いたようですわね!」
「あー…ん?まぁそうなのかな…?」
「あっ!刀投げた人!」
なんかぐっちゃぐちゃになってるな…
***
「いやー助かりました!ほら、先輩もありがとうって言わないと!」
「分かってるわよ!その…感謝しますわ…」
「でもまさか男の人が駆け付けてくれるなんて思いませんでした!」
「とりあえず間に合ってよか──って美味!」
先刻の結界で出会った三人の魔法少女──『胡桃まなか』さん、『空穂夏希』さん、『阿見莉愛』さん…俺が間一髪で阿見さんを助けたお礼という名目で、胡桃さんの実家である洋食屋『ウォールナッツ』でご飯を頂いている。
てかマジで美味いなこのオムライス…美味いしか言葉が出てこん。幾らでも食えそうだ…流石プロの料理人が作っただけはある。俺が作るオムライスとは格が違う。
「最近巷で有名な男の子というのは六倉さんのことだったんですね?実際に会うとまた印象が変わって来ます!」
「えっどんな印象持たれてたの?」
「私が聞いた限りでは戦闘狂とか他の追随を許さない変人だとか…好印象…ではなかったです」
「変人…」
まぁ魔法少女じゃないのに魔女と自ら進んで戦う奴なんてそんな印象持たれても仕方ないか…とは言えここまで拡大解釈されて広まってるとは思いもしなかったなぁ。俺の学校での評価も多少影響してるのは気のせいだろうか…マジで噂の広がる様を一度見てみたいよ。どうやって湾曲してんだよ…
「大丈夫ですよ!先輩の方が百倍変人ですから!」
「どういう意味よ!ちょっとあなた!胡桃さんの言う事を真に受けないでくださいね!?私が変人なんて万にひ・と・つ・も有り得ないんですから!」
「いや変人でしょ先輩は…だって助けてくれた六倉さんに突っかかってたじゃないですか…」
「あっあれは少し動揺しただけ!感謝してますわよ!」
「なんか凄いですねー…」
「仲が余程良いんだろうね」
漫才芸人みたいだなー…先輩後輩という関係らしいから胡桃さんが阿見さんを尊敬してるのかと思ったら割とそうでもないらしい。いや多分尊敬はしてるんだろうけど…まぁ多少話して分かったけど阿見さんは変人だ。かなりの。
でも凄い自分に自信がある人で俺も見習おうと思える部分は多々ある。こういう人が将来大成するのかもな。
「まぁでもこの阿見莉愛をあなたが手ずから助けた事を「でもさっきの投擲は凄かったです!さながら野球選手みたいでしたよ!」ちょっ…」
「先輩のとっておきよりもかなり効いていましたもんね」
「ぐっ…」
「最近野球の試合を見たからその影響かもね。ただ、もっと上手く筋肉や魔力を扱えたら一撃でやれる程の威力を出せるかもしれないんだよね」
「ほぉ!野球に興味があるんですか?」
野球…というか、スポーツ全般興味はあるのだが…どうも今からだと手を出しづらいと言うか。家計の計算もしなくちゃならんしする暇もあまりないんだよな。特に部活となれば長期休みでも練習があるのだろうし…運動するのは楽しいが、こういう側面があるから専門的にはやらない。
「少しはね。でも俺は見る専かな…モーションとかを魔女退治に活かせるのは大きいと思うけど…まぁ他に興味が向いてるのもあるけどね」
「そうですか…でも何かに興味があるって事はそれだけ何かに打ち込める才能があるって事だと思うんです!六倉さんはそれ程多才って事ですよ!」
「良い事言いますねぇ…先輩とは大違いですね」
「くぅ〜後輩でさえなかったら…!」
空穂さんは野球に興味があったのかな?魔法少女の時もチアガールみたいな格好してたし。学校でチアリーディング部に入ってたりして。
それはそれとして胡桃さんと阿見さんはやたらと良いコンビだな…てか阿見さんよく食うな。
その後三人と連絡先を交換させてもらったのだが…俺が七海さんのチームに居座っている事を伝えると阿見さんがやたら動揺していたんだよな。何で?聞く限り阿見さんもモデルさんだそうだ…ライバル視でもしているのかね?
てか連絡先の殆どが魔法少女なのどうかと思うんだけど…魔法少女以外だとリアルにトワぐらいしかいないんだけど?
***
そしてまたまたまた数日が経った。何故か最近はやたら一人で外出している時に魔女と出会う事が多くなった。訳分からん…魔女の反感を買うような真似はした覚えないんだが。おかげで疲労困憊だ。
今は使い魔を蹴散らして結界が消滅した瞬間だ。結界内には一人俺と同じぐらいの学生が倒れていて、その子を守りながら戦うのは中々に骨が折れた。良い経験にはなったがな。
「使い魔でも単独ならキッツイなオイ…」
「…」
「この子どうしよ…とりあえず起きるまで待つか?」
見た所ポケットに定期券とかが入っているしな…こんなところで寝かしておいたら柄の悪い奴に襲われる可能性も考えられる。神浜は割とそういうところあるから…
なんて説明しようか…気を失っていたと伝えるのが最善かな?
「しかしこんな所を誰かに見られたら何かと勘違いされそ「あーっ!そこのあなた!何をしているのですか!」は??」
何何何何…マジで勘違いされたか?声がする方向には二人の俺と同い年ぐらいの女性が立っていた。見た所水名と附属校の制服っぽいが…
何か水名の人に指差されてるし…俺が倒れてる子をボコボコにしたと勘違いされたなコレは…流石に誤解を解かんとまた学校で変な噂が流れてしまう。
「いやこれは「問答無用!路地裏に連れ込んで暴虐の限りを尽くすとは…なんたる悪行!神妙にお縄にかかってもらいます!」いやちょっと…」
「ねぇこれ本当にあの人がやったの…?結界も無くなってるし…」
***
「すすすすすみませんでしたぁー!!」
「大丈夫だから…ちょっと本当にやめて…」
「ごめんね…うちの明日香が。しかしまぁ、巷で有名な魔法少年とやらは六倉君の事だったんだね」
「また別の呼び方が…!」
俺の状況を色々と誤解してしまったのはこの土下座している『竜城明日香』さんと『美凪ささら』さん。いや美凪さんは多分勘違いしてなかったな。
何とか誤解は解けたようだが…最近やたらと他の魔法少女と会うな。ってか魔法少年って何?誰が流したんだ…
「まぁよくよく考えたら目の前で魔女反応が無くなったんだから六倉君が結界から出てきたって考えるのが妥当だよね」
「はうっ…!」
「何故追い討ちを…」
「うぅ…じ、自害しますーーーー!」
「ああああちょっと本当にやめて!マジで見られてるから…別の勘違いが生まれるからマジで!」
「別の勘違い!?や、やはりここは腹を切ってお詫びを…!」
「初対面の人に言わないの!色々と酷い誤解されるよこんな状況…」
帰りたい…
***
「へぇ…魔法少女のレスキュー隊員…なんかかっこいいね」
「そ、そうかな?そう言われるとちょっと恥ずかしいね…だから六倉君の行動には感激したんだよ!チームを組んでたのは残念だけど」
「ほら明日香もそんなしょんぼりしてないで…よくある事なんだから」
「それはそれで屈辱なのですが…!」
何とか竜城さんを落ち着かせる事が出来て二人の事を聞いていたのだが…二人は組んでいるそうだ。竜城さんがアタッカーで美凪さんはタンク…?本人はレスキュー隊だと言っているが、格好良いな。二人だけで完結してる編成って憧れるなぁ…永遠のコンビ。みたいな感じで。
それはそれとして竜城さん年上だったんだよな…敬語は必要ないと言われたが。
「その…今回無礼を働いたお詫びとして何か困り事があれば呼んでください!ささらさんと駆け付けますので!」
「それ私も無礼を働いた事にならない?」
「いやいやそこまでしてもらわなくても…」
「いえ!私の気が済みませんので…お願いします!」
「六倉君の立場なら何かと困り事も出てくるんじゃない?私欲を貪ろうとする魔法少女も居るかもしれないし…何かあったら呼んでよ。私はレスキュー隊だからね!」
「そう…か。なら困った時は呼ばせてもらおうかな」
またこんな事で交友関係を広げられるとは思ってもいなかったな…何かとトラブルに巻き込まれてしまうのは避けたいが。
まぁ困り事なんて特にはないが…美凪さんの言う通り俺の立場上どうしても解決できない問題ってのはあるだろう。その時は是非とも頼らせてもらおうかな…?
「ていうか竜城さんのあの発言は普段からなの…?」
「ま、まぁね…初対面だと尚更引いちゃうよね?色々そそっかしいから明日香って…持ちネタだと思っといてよ」
「何が持ちネタなんですか!?」
かこちゃんが魔法少女になってるって事はまぁ…そういう事です。
ナル君には交友関係を広げてもらいたいですからね。
この時点で登場した魔法少女達は契約してる…と思ってるんですが。
ナル君はちゃんとドア様の名前覚えるタイプ