墓詛悪市の噺   作:キツネ@キツネ

8 / 8
追伸「後日談」

娘の様子が変わりました。いや、治りました?治ったのか。治ったでいいんですかね。

寝室に娘がいないと思ったら、ベランダに出ていたんです。子供では開けられないように鍵をかけていたのに、それを開けて外に出ていたんです。

 

座り込む娘の近くに何かが散らばっていると思ったら、それは引き抜かれた植物でした。

娘が毎日お世話していたきゅうりが根から引き抜かれて、茎をへし折られて地べたに散らばっていました。ミニトマトはベランダから放り投げられて駐車場に転がっていました。花が散って、実が叩き潰されて床に広がっていました。

 

ただ、ユリの花だけが健在で、娘はうっとりとそれを眺めていました。

花以外が嫌いになったのでしょうか。

いや、でも朝顔も引き抜かれていたので分かりませんね。実はユリ以外好きじゃなかったんでしょうか。

 

そして、私が近寄ると娘は言ったんです。

 

「はーそーさー」

 

すっかり忘れてましたが、「はーそーさー」って何ですか?調べても出てきません。娘は舌ったらずで何か違う単語だとは思うのですが、想像がつきません。

 

でも、その日から娘は元に戻りました。

話しかけたら普通に反応を返して、感情も見せてくれます。笑ったり、怒ったり、泣いたり、全て元通りです。あの日や魂を失っていた間の記憶こそ失っているようですが、他の記憶は健在です。私や夫のこともちゃんと覚えていてくれました。この前は家族3人でテーマパークにも行ったんです。

 

ただ一つ、突然「はーそーさー」と叫んで草花を引っこ抜いたり物に当たったりするようになったのですが、5歳児なんてそんな物ですよね。

 

だから全て治りました。もう問題ありません。本当にありがとうございました。

 

 

[2013/7/20 某オカルト掲示板にて]

 

 

 

 

 

 

……ふふふ。ここは一つのエピソードが最低1000文字なのですね。後書きで駄弁るつもりでしたがここですることにしましょう。私のお喋りで本文を汚すのは本望ではありませんので、お目汚しに思われましたらこの先は読まれなくて結構です。

 

———さて。以上が、2013年に投稿された「はーそーさー」となります。

投稿者が付けたタイトルではありませんが、この話を最も表している言葉ですので僭越ながら私が名付けさせてもらいました。

 

余談ですが、実はこの話、後日談が投稿されるまではそれなりに人気だったんですよ。

掲示板の怖い体験談を良く読まれている方は気がつかれたかもしれませんが、この話って意外と掲示板界隈でタブー視されているマンネリ表現を避けているんですね。

 

「穏やかではない精神状態なのに読ませる文章を書く余裕はあるのか」と言う指摘に対しては、代筆と言うことで対抗しています。

「そんなことを良く覚えていたな」と言う指摘に対しては、要所要所で詳しくは覚えていないと前置き。例のカタカナの祝詞も、何時間も読み続けていたと言うことで納得感を持たせていましたね。

また、神社や寺、霊能者が有能と言うマンネリ表現も避けています。

 

少しずつセオリーからズレていたからこそ、リアルっぽいと言うことで楽しまれていました。もちろん本人にそんな意図はなかったので、良くある投げ出し系の蛇足後日談で駄作の扱いを受けてしまったのですけどね。

また、投稿者の目的は娘を救う情報を集めることですから、あの日に起こった事をとにかく詳細に綴っていました。怖い話には不要な情報や描写が多いことも流行らなかった理由の一つでしょう。

 

 

……さて、お喋りはここら辺にしておきましょうか。次の噺はどうしましょう。

今回は2013年でしたが、さらに昔、掲示板最盛期の話にしましょうか。

それとも、2020年代。現在にスポットを当ててみましょうか。

今回の話は非常にシンプルでしたので、墓詛悪市の魅力が伝わらなかったかもしれません。今度はも複雑怪奇な噺にしてもいいかもしれませんね。

 

次回も是非ご覧ください。そして、墓詛悪市に興味が沸きましたら是非移住も検討してください。皆喜びます。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。