マグル学のすゝめ   作:バナナ牛乳

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タイトルの通りドラコ視点です。長め、回想多め。


第二十四話 ドラコ・マルフォイとおかしな女の子

 

 _____コーディが聖マンゴ行きになるかもしれないだって? 

 

 ドラコはその知らせを聞いて、すぐに医務室に駆け付けた。倒れたと聞いた時は「どうせまた風邪でも引いたんだろう」と思ったが、どうやらそれどころではないらしい。ドラコはくだらないプライドを捨てて走った。

 マダム・ポンフリーが「面会謝絶ですよ!」と言ったが、ルシウス・マルフォイとサインされた証書を見せれば渋々引き下がった。やはり、父は偉大だ。

 

 カーテンを開けると、とても安らかとは言えない、やつれた姿のコーディが横たわっている。夏休みに比べて、半分くらいちっちゃくなったように見える。

 

 

「いくらバカでも、生ける屍の水薬を水と間違ってイッキ飲みするとは……」

 

 

 魔法薬学の予習をした後、自分で作った生ける屍の水薬を水と間違えてイッキ飲みしたと聞いたドラコは頭を抱えた。前からバカだとは思っていたが、まさかここまでだったとは。

 

 魔法薬学の成績がトロール並みのコーディが作ったのだからひどい出来栄えだ。本来ならば長くても一週間程度で目覚めるはずだが、今日でもうその一週間だ。それに、ただ眠っているだけなのにどんどん細くなっていっている____生ける屍の水薬を飲んでいる間は、何も食べなくても痩せたり死んだりしないはずだ。マダム・ポンフリーが栄養剤を打っているのに、まるで効果がない。

 

「この僕がクリスマスプレゼントを持ってきてやったというのに、まだ寝続けるつもりか?」

 

 ____このままお前が目覚めなかったら、ずっとつまらないままじゃないか。お前は僕にとって、唯一の友達なのに。

 

 

 

 コンコーディア・ロウルと出会ったのは、ドラコがまだ三歳の頃だった。

 

 父親がアズカバンに収監され、母親を不幸な事故で喪ったかわいそうな少女を、父は放っておけなかったらしい。ドラコはその時初めて「ノブレス・オブリージュ」という言葉を知った。

 ドラコはコーディのことが嫌いではなかった。無表情で無口だが、ドラコの言うことに逆らったりしないし、身の程を弁えていたからだ。クラッブとゴイルよりはまともに話せるし、友人として扱ってやってもいいと思うようになった。

 

 四歳になってから、コーディはイカれてしまった。

 コーディを訪ねると、体調不良だといわれる日が増えた。止める屋敷しもべ妖精を振り払い部屋のドアを開けると、そこにコーディはいない_____僕らに黙って、どこに行くというんだ? 

 それに加え、まるで育ちの悪い男みたいな口調になり、ドラコにも気安い口をたたく。「調子に乗っているんだ」と思ったドラコはコーディを無視するようになった。だが、それでもドラコに話しかけるのをやめない。

 耐えられなくなったドラコは両親に文句を言ったが、父はどこか懐かしそうな目をして「大目に見てやりなさい」と言うだけで、母に至っては「やっと元気になったのね」などと喜んでいる様子だった。

 

 六歳の冬、ある晩のこと。母が、ひどく憔悴したコーディを抱きしめていた。コーディの手には血がべっとりついていて、何か恐ろしいことがあったのだとすぐに分かった。怪しげな女がコーディを毎月訪ねてくるようになり、コーディはしばらく一言も話さなかった。あれだけ饒舌だったのがまるで嘘みたいに。

 

 しかし、ある日突然コーディは元気を取り戻した。

 べらべら喋り続ける様子にドラコは思わず安心してしまった。以前はあんなに鬱陶しいと思っていたのに。

 

「ドラコ、いつも仲良くしてくれてありがとう。これ、お礼に手作りしたんだ」

「____君の手作り? どうせろくな物じゃないんだろう」

「……そうだよね。ドラコは私の料理なんて食べたくないよね……」

「____まあ、食べたいとは言わないが、人の好意を無碍にするなと母上から教えられているからな」

「やったあ!」

 

 ドラコはコーディが差し出してきた、よく分からない____クリーム? 白いが、匂いの感じからするとチョコミントだろうか____がかかったクッキーをかじった。

 

「なんだこれ!」

 

 ドラコは思わず吐き出しそうになった。チョコミントの風味はするが、食べ物の味をしていない。

 

「マグルの歯磨き粉だよ。チョコミントに味が似てると思ったから」

「気が狂ったのか! 父上に、父上に言いつけてやるからな!」

 

 ____なんてこともあった。

 コーディの部屋には見たことのない、マグル製の何かや雑誌が置かれるようになった。ドラコは何度も父に告げ口しようと思った。でも、あの夜の憔悴しきったコーディを思い出すと……無表情で一言も話さないコーディを思い出すと……たとえマグルの道具のおかげだとしても、元気が出たならいいんじゃないかと思ってしまった。

 

 

 月日は流れ、ドラコたちは十一歳になり、ホグワーツに入学した。ドラコはコーディのことを友達____いや、手がかかる馬鹿な妹みたいに思わざるを得なくなっていた。

 ドラコを馬鹿にしたり揶揄うこともあるし、そのくせ両親の前で猫を被るのが上手くて腹が立つが、コーディと一緒にいるのが楽しかったのだ。

 

 ホグワーツに入学したって、その関係は変わらないと思っていた。コーディがスリザリン以外に入るなんて、考えもしなかった。

 

 しかし、コーディはグリフィンドールに組み分けられた。そして、あろうことかあのポッターやウィーズリーとつるみ始めたのだ。

 ドラコはしばらく、コーディとは全く口を利かなかった。あの二人とつるんでいるのが許せなかったし、情けないことに、他のスリザリン生の目も気になったからだ。

 

「いやあ、今日もひどいな」ノットが言った。グリフィンドールのテーブルを見ている。

 コーディには毎日のように呪いの品や、吠えメール、中傷の手紙が大量に届いていて、ほかのグリフィンドール生は騒がしい朝食にもうすっかり慣れてしまったようだ。

 

「聞いたか? この前なんか、部屋に有毒食虫蔓の鉢植えが届いたらしいぞ」

 

 ザビニがせせら笑った。____有毒食虫蔓だって!? あいつの母親がなぜ死んだか知っててやっているのか! いくらなんでも、たった十一歳の子供だぞ! 

 

「フリント!」ドラコは“先輩”とつけるのも忘れ、上級生のマーカス・フリントを呼びつけた。まあ、マルフォイ家よりも格下だから問題ない。

 

「校長室がどこにあるか知っているか?」

「い、いや、俺は知らないけど……たぶん、血みどろ男爵なら……」

 

 ドラコは礼を言わずに血みどろ男爵のもとに急ぎ、それから彼の言った通りに校長室への道のりを進んだ。

 しかし、壁は壁のまま変化しない。____クソ、ゴースト風情がダンブルドアの部屋の位置を知っているわけがないか。

 だが、ドラコの行動は全くの無意味というわけではなかった。ダンブルドアが現れたのだ。

 

「校長先生は、コー……ロウルに対するあれに、何の対処もしないつもりですか!」

 

 青白い顔を赤く染め、下品にも唾を散らしそうな勢いで怒鳴ったドラコに、ダンブルドアは微笑んだ。

 

「いやいや……落ち着くのじゃ、ドラコ。深呼吸じゃ。_____そうじゃの、ミス・ロウルへのあれはいつか対処せねばならぬと思っておってな……このままでは、マダム・ポンフリーが倒れてしまうやもしれぬ」

「その前に、あいつが死ぬかもしれない! ____先生、僕が父上に訴えれば、きっと、あなたを職務怠慢で追放できる」

 

 そんなはずはなかったが、そう言うしかなかった。ドラコの使える最大のカードは“父上”だ。

 

「脅しておるのじゃな。まこと、父親譲りのスリザリンらしさじゃ。ふむ、ミス・ロウルへの手紙は、彼女に届く前に教職員で確認するとしよう。それでかまわんね?」

 

 この話を聞いて、父はとても喜んだ。

 ドラコの交渉がホグワーツの決定に影響をもたらした。それに、生徒から言われるまで幼い少女への攻撃を放置していたという事実はダンブルドアの弱点になりかねないと。

 それは少し大げさな口ぶりだと思ったが、父に認められるのはとても嬉しかった。

____ポッターはただ調子の良い言葉を並べてるだけじゃないか。あいつが何をしてくれたって言うんだ。

 

 初めての飛行訓練を終えた夜、ドラコたちは大冒険をした。

 夜の学校、禁じられた廊下、そして三頭犬。おかしなことに、少しだけポッターやウィーズリーとの距離が縮まったような気がした。

 しかし、それは勘違いだった。ポッターたちは嫌味を言ってドラコをあざ笑った。

 ____どうしてコーディはこんな奴らと仲良くしているんだ。僕らは何年も一緒にいて、くだらない話や喧嘩もして、まるで兄妹みたいに育ってきたのに。

 

「じゃあ何にも言えないよ。それに、死喰い人の娘なんだから、最初っから品位なんて無いしね」

 

 コーディは笑いながらそう言った。いつものように呑気で無害そうな笑顔なのに、すごく冷たい気がした。

 コーディを取り巻く環境がどんなに残酷か、そんな事は分かっている。分かっているけど、納得が出来ない。

 

 コーディの十二歳の誕生日、ハロウィーン。

 ドラコはコーディと仲直りするため、わざわざ穢らわしいマグルの道具を屋敷しもべに入手させた。____触れるのも嫌なはずなのに、何故かその、“飛び出す絵本”というのは少し綺麗に見えた。違う、こんなこと考えちゃいけないんだ。もし父上に知られたら……。

 だというのに、コーディはお礼を言いに来なかった。

 _____もういい。生き残った男の子なんかに夢中になって、おまけにマグル生まれなんかとつるんで。そんなに愚かだなんて思わなかった。

 

 クリスマス休暇。

 コーディを許す気なんてなかったのに、いつものように押し切られてしまった。でも、不思議と嫌な感じはしなかった。結局いつもこうなるんだ。

 父はドラコの手紙____ホグワーツにおかしな生き物がいること、何か隠されていること____について詳しく聞き、話してくれた。

 

「来年度、ホグワーツからダンブルドアを追放する計画を実行に移す」

 

 父はダンブルドアとの会話や手紙の件で、ドラコがマルフォイ家の次期当主にふさわしいと認めてくれたのだ。ドラコはとても誇らしかった。

 

 学年末。

 ドラコはダンブルドアから加点された。きっとあの狸爺は何かと理屈をこねてグリフィンドールを単独優勝させるつもりだとばかり思っていたのに。

 コーディに加点の理由について尋ねたけど、はぐらかされてしまった。でも、ポッターは何か知っている……根拠はないが、そんな気がした。

 テストの結果は穢れた血(グレンジャー)より劣っていたし、そのことで父からも叱られてしまった。だが、それ以上にコーディの魔法薬学の成績に落胆していたので、あまり気にはならなかった。

 

 夏休みはドラコにとってほとんど完璧だった。

 父が計画について詳細に話してくれたのだ____あの“秘密の部屋”を開き、ホグワーツにいる穢れた血どもを一掃する。そして、ダンブルドアとウィーズリーを失脚させるのだと。ドラコはその素晴らしい計画に興奮した。

 一瞬、コーディと楽しそうに話すウィーズリーやグレンジャーの姿がよぎったが……違う、コーディは何も分かっていないんだ。僕がきちんと教えてやらないと。

 

 ウィーズリーの末っ子に呪いの手帳を渡すから、計画通りに進むよう監視しろ。

 ドラコは父からそう命じられた。

 

 夏休みの後半、コーディはずっとマルフォイ邸にいた。

 コーディと箒に乗るのは好きだ。ふざけて変な飛び方をして木にぶつかりそうになったり、疲れてゼエゼエ言う姿が間抜けで面白いから。

 

「作文を一文字も書いてないだって!?」

「てへ、ドラコと一緒にいるのが楽しくて、つい……」

「てへじゃない! 手伝ってやるから早く貸せ。それと、これが終わるまでその、ウォークマンとかいうふざけた機械は使わせないからな!」

 

 完璧な夏休みなのに、ただ一つ気になることがあった。

 コーディがポッターの話をするのだ。ドラコが嫌がるから言わないよう気をつかっているはずなのに、しょっちゅう口を滑らせる。しかも、ずいぶん昔に一度だけ聞いた“不思議な友人”について話すのと同じ、キラキラした表情で。

 

 

 素晴らしかった夏休みとは反対に、二年生の幕開けは屈辱的だった。

 穢れた血(グレンジャー)に「穢れた血」と言っただけのことで、コーディは口をきいてくれなくなってしまったし、狂ったブラッジャーに追い掛け回されるというハンデを抱えたポッターに敗北した。

 そして、コーディに対して許されない暴言を吐いてしまった。

 

 秘密の部屋が開かれたという事実だけがドラコを支えてくれた。計画は問題ない。きっと、父上はとても喜んで、さらにドラコを褒めてくれるだろう。

 

 しかし、おかしなことが一つ。

 ジニー・ウィーズリーの顔色はとても健康的だ。

 

 

「調子はどうだい? 継承者さん」

「何を言ってるの? 継承者はアンタでしょ! ハリーに近寄ったら許さないわよ。私、足縛りの呪いとクラゲ足の呪いは得意なんだから」

 

 ジニー・ウィーズリーは勇敢にも、ドラコに言い返してきた。

 その瞳には一切の怯えや嘘なんて無い。継承者なら、罪悪感からもっと怯えたりするはずだ。

 つまり、ジニー・ウィーズリーはほぼ確実に、スリザリンの継承者ではない。

 

 穢れた血たちは石になっているが死んでいない。____なぜだ? マンドレイクの薬が出来ればすぐに復活してしまうじゃないか。

 

 

 ドラコは脳みそをフル回転し、コーディを見つめた。顔色は死人みたいで、丸かった頬はゲッソリとしている。

 

 何かがおかしい。

 

「始末する」と言ったはずなのに、死んでいない生徒たち。

 いくらバカとはいえ、生ける屍の水薬の失敗作を一気飲みという奇行に走ったコーディ。

 ___そもそも、こいつが魔法薬学の予習だって? そんなのあり得ない、魔法薬学で半分以内の順位を取るか留年かと聞かれれば、迷わず後者を選ぶような奴だぞ。

 そして、ただ失敗作を飲んだというだけでは不自然なほどやつれていっている___何かがおかしい。

 

 

 ドラコは父がいる部屋に入った。椅子にゆったりと腰掛ける姿は相変わらず優雅で、誇り高く、ドラコの自慢の父だ。

 父なら何かわかるはずだ、今まで父に解決できなかったことなんて何もなかったのだから。

 

「学生が作った程度の魔法薬ですよ? なんでそんなので寝たきりになるんですか! スネイプ教授は優秀だとおっしゃっていたじゃありませんか! 解毒薬を作って飲ませたんだから、すぐに、」

「生ける屍の水薬は非常に強力で取り扱いが困難な薬だ。何故か分かるかね、ドラコ」

「作る手順がややこしくて……」

 

 父は首を横に振った。どうやら、不正解らしい。

 

「“脳”に干渉する薬だからだ。寝ている間も人間の脳は働いている。しかし、あの薬は脳に干渉し、ほぼ完全に休めることで非常に濃度の高い休息をもたらすのだ」

「でも、」

「____さよう、ただ失敗作を飲んでしまっただけなら解毒薬で目覚めるだろう。セブルスは非常に優秀だ。だが……セブルスが言うことには……解毒薬も同じく“脳”に干渉する薬故に、コーディ自身が「目覚めたくない」という意思を強固に持っていれば……」

「そんなわけがない!」

 

 コーディが目覚めたがっていないだって? 

 この前だって、何か意味の分からないことを言いながら、小躍りしながら銀のナイフを持って走っていたじゃないか____そういえば、あれまだ返してもらってないぞ。

 それに、いつも誰かと一緒にいて、楽しそうにしているのに、そんなコーディが、目覚めたくないなんて思うはずがない。

 

「ドラコ。私もコーディのことを大切に思っている。ナルシッサも同様だ……しかし、あの子の環境や出自は……」

 

 

 確かにコーディには親も、親戚もいないようなものだ。でも、気に食わないが、ポッター達だっているし、最近はグリフィンドールの中でも陰口を叩かれていなかったはずだ。

 それに、ずっと僕がいたじゃないか。

 

 ____本当に? 

 

 コーディの友人(グレンジャー)に暴言を吐き、コーディの友人(ディーン・トーマス)が傷つくことを喜び、コーディ本人にもひどいことを言ってしまった。

 

 僕のせいなんじゃないか。

「みんな継承者に殺されてしまえばいい」なんて、どうしてあんな事を言ってしまったんだろう。

 

 

 ドラコは医務室に戻った。目頭を押さえ、椅子に腰かけようとした。どうすればいいか、じっくり考えないと。

 しかし、椅子には座れなかった____いや、腰を下ろした瞬間、何かに妨害されたというべきか……すでに、椅子の上には何かがあった。

 

 ドラコはその何かを急いでひっつかんだ。それはスルスルと手をすり抜けていき_____。

 

「お前、なんでここに!」ドラコは透明マントから現れたジョージ・ウィーズリーに掴みかかった。あの水薬を飲んだ時、こいつも一緒にいたんだ。こいつがきちんとコーディを見張っていれば、こんな事には……。

 

「____何を持ってるんだ?」

 

 ドラコはジョージ・ウィーズリーの手にある細い瓶を取り上げようとした。しかし手が届かず、その瓶は地面に落ちる。

 ジョージ・ウィーズリーはそれを見ても何も言わない。落ちた瓶を拾おうともせず、ただ眺めている。____こいつの顔はこんなに白かったか? それに、目の下のクマがひどい。

 

 ドラコがうろたえて力を緩めた瞬間、ジョージ・ウィーズリーは杖を取り出した。しかし、ドラコを攻撃せず、ベッドの周りに防音呪文をかけた。

 

「マダム・ポンフリーが来ちまう。なあ、お前の父親は随分やり手だな。全部奴が糸を引いているんだろう。おかげでホグワーツは悪趣味な石像だらけだ、満足か?」

 

 目は充血していて、唇は乾燥している。冗談といたずらが好きな少年の面影は一切ない、暗い表情だ。

 

「別に、お前には関係ないだろう。純血なんだから」

 

 ジョージ・ウィーズリーは死人のように真っ白な顔でドラコを睨み続けながら、少しの間を置き、「ああ、そうだな」と答えた。

 

 _____なんだ、この態度は。コーディが自分の目の前で倒れたから気に病んでいるのか? いや、なぜ今“秘密の部屋”の話を持ち出した? 猫好きだとか、襲われた奴らと親しいだなんて、そんな話は聞いたことがないぞ。

 

 ドラコの脳裏に、一つの可能性がよぎった。

 

 父は間違いなくジニー・ウィーズリーのカバンにあの手帳を入れた。

 しかし、ジニー・ウィーズリーは継承者ではない。

 しかし、秘密の部屋は確かに開かれた。

 ジニー・ウィーズリーの家族なら、荷物を取り間違えてもおかしくない。

 

 この憔悴っぷり、もしかして、こいつがスリザリンの継承者なんじゃないか? 

 コーディを殺し損ねたから、透明マントを着て病室に忍び込んで、何か飲ませてるんだ。でも、どうして継承者がコーディを狙うんだ? コーディは紛れもない純血だというのに。

 

 ____叔父を殺された復讐か? いや、こいつはずっとコーディと親しくしていたはずだ。

 

 ダメだ、こいつと話さないことには何も分からない。落ち着け。僕はスリザリン生で、誇り高きマルフォイ家の一人息子だ。

 

「継承者は本当によくやってくれたよ。短期間とはいえ、ホグワーツを浄化してくれるなんて。ああ、でも残念だ……すべてが終わったら、アズカバン行きになるだろうからな。まあ仕方ない、純血主義のための犠牲になったんだ」

 

「お前!」ジョージ・ウィーズリーがドラコの胸倉をつかんだ。_____そんなにアズカバンに行くのが怖いのか? コーディをこんな目に遭わせておいて? 真実を暴いたら、一生アズカバンから出られないようにしてやる。

 しかし、ジョージ・ウィーズリーが次に発したのは予想外の言葉だった。

 

「それでも友達か?」

「____僕は君の友達になんかなった覚えはないが」

 

 ドラコはジョージ・ウィーズリーの手を振り払い、冷たく返した。ジョージ・ウィーズリーはドラコをにらみつけたままだ。

 いくら錯乱しているとはいえ、ウィーズリー家の人間がマルフォイ家の人間に向かって「友達」だって? ロン・ウィーズリーにそう言えと命じたら間違いなく、死んだ方がましだと言うだろう。

 

「全部、お前のせいだろう……」ジョージ・ウィーズリーが小さくそうつぶやいた。

 

 どういうことだ? 全く意味が分からない。ドラコにとって友達だと言える存在なんて、コーディ以外には……。

 

 ____継承者ではなかったジニー・ウィーズリー。

 異常なほど狼狽えているジョージ・ウィーズリーは、コーディと親しかった。

 生ける屍の水薬を一気飲みするという奇行の上、目覚めたくないと強く願っているコーディ。

 今学期、何度も何度も体調を崩していたし、思い返せば顔色も悪かった。

 この前、銀のナイフを奪ったのも、いつものおふざけだろうと思っていたが、他の意味があったのでは? 

 父がジニー・ウィーズリーのカバンに手帳を入れたとき、あの場にいたのはウィーズリー達、ポッター、グレンジャー……そして、コーディ。

 

「____ジョージ・ウィーズリー、知っていることを全部話せ」

「ああ。もちろんお前もだ。父上のことだろうが、全部洗いざらい話してもらう」




○ドラコのダンブルドアへの直訴
これが十三話、“素晴らしい友情”加点の理由です。もしかすると誕生日プレゼントの事も込かもしれない。ダンブルドアはなんでも知っているから。

○有毒食虫蔓
コーディの母の死因。ちなみにマクゴナガル先生の夫の死因でもあります。

○生ける屍の水薬に関するアレコレ
もちろん妄想。
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