さて、恋人ごっこが始まったのは良い。良いのだが、このことを他の人にはどうするべきだろう。
隠し通しておいた方がいい気がする。熱愛報道でもされたら困るから。
しかし、ミカさんセイアさんにはどう説明しようか。いくら隠蔽しても二人には勘でバレそうだ。
もしあの二人が執念深い性格だったら……
『ナギちゃん、どうして私を選んでくれなかったの? ねえ?』
『ナギサ、確かに君の親しき友人は純情で魅力的な者だが、この私を選ぶ道理というのもあるはずだろう?』
『やはり、君としては……』
いけない、これ以上はやめておこう。二人はそんな人じゃない。あの二人なら大丈夫……だと信じたい。
とにかく、明日に向けて準備しよう。明日の日曜日は何と言ってもヒフミさんとの初デート。
どんなことでも最初は肝心なのだ。仕事を上手いこと調整しておいた甲斐がある。どんな服を着るか、どこへ行くか、などを考えながら準備を進めていく。
明日が楽しみだ。
待ち合わせ場所はトリニティ郊外、約束の時間は12時。だというのに30分早く来てしまった。仕事上外交にも携わる私の癖である。遅刻など許されてはいけない。
流石にヒフミさんは来てないだろう……
と思ったらいた。こっちへ駆け寄ってきている。大丈夫? 転んだりしない?
「あっナギサさん! 待たせちゃってごめんなさい!」
「いえいえ、大丈夫ですよ。私も癖で早く来てしまったので」
『ナギサさん』と呼ばれるたびにドギマギしてしまう自分がいる。
「そのサングラス、普段のナギサさんとは違ったイメージが出てきてカッコいいです! ナギサさんの私服姿は初めて見ました!」
「ふふ、ありがとうございます。そういうヒフミさんも、そのワンピースがお似合いですよ」
「ありがとうございますっ!」
よく考えてみると、二人とも集合時間よりも30分早く来ているのである。やっぱりヒフミちゃんも初デートに並々ならぬ思いがあるのかな。
で、30分の時間ができたわけだが、どうしようか。そのまま前倒しでもいい気はする。
「で、予定は前倒しにしましょうか。お互い早く来てしまったものですからね」
「はい、そうしましょう! 今日は1日中よろしくお願いしますね!」
こちらこそ、と返す。初めてのデートなので少し緊張もあるが楽しみだ。きっとヒフミちゃんもそうなんだろう。
「まずはあのカフェでお昼にしましょう!」
ということで私たちは『食べ歩きの街』という場所に来ている。名前の通り飲食店が立ち並ぶ場所だ。そこのカフェでお昼を取ることになっている。
店内はそれなりに混んでいるようだ。日曜だし仕方ない。店員に4人掛けのテーブル席を案内され、そちらへ向かう。
「せっかくですしナギサさんと一緒のものを食べたいです」
「いいですよ、ではこちらの紅茶とサンドイッチのセットでよろしいでしょうか?」
はい、と返事を受け取る。ここの紅茶は申し分ないほどの美味しさだったはず。
美味しいものを二人で共有できるとは幸せだ。
たわいない話をして数分後、紅茶とサンドイッチが来るかと思ったが……代わりに現れたのは2人組であった。
2人組が私たちの隣の席に……否、私たちの席に乱入してきたのだ!
「なっ!? どなたですか!?」
「君の大事な友人の顔を忘れるとは残念だよ、まさか君はこのサングラスを外しても分からないのかい?」
「うわああっ、ミ、ミっ……」
「しーっ、ヒフミちゃん。私たちもお忍びだから……ね?」
その2人組は──────────セイアさんとミカさんであった。