再走します。
密閉型のコロニーであるサイド3は、昼でもどんよりとした薄暗さがあった。
グラナダはキシリアの拠点だけあって警戒レベルが高く、気の休まる場所ではなかった。
サイド7は開放型のコロニーで、全体的に明るい。遠くに見える街からも活気のようなものが伝わってきた。だが軍人の横柄さというのかな、フラウ・ボゥとの会話から察するに、そういうものはあるようだ。まあ軍事機密だから、警戒しているというのはあるのだろう。
彼女と別れてから、俺は河原に寝そべって空を眺めていた。
これが単純なタイムスリップなのか、それとも次元跳躍して並行世界へ飛ばされたのか。それはまだわからない。
……イリアとレシアはどうなったんだろう。あの光で、宇宙は消滅したのか? わからないことが多すぎる。
イリア、レシア、ほかのみんなも、この世界にはいるのだろう。だがそれは俺が知っている彼女たちじゃない。たぶん、記憶は受け継いでいない……と思う。同じ人間だけど、別人だ。そう思うと、なんか寂しいな。
だとしてもだ。あの少年は俺に何を期待しているのかね。
それに
とりあえず作戦を考えよう。まずは避難民としてホワイトベースに乗る。そしてガンキャノンのパイロットあたりに志願して、どうにか戦局をコントロールする。シャアを殺すわけにはいかないから、なんとか上手くやって……。
いや、そうだ! シャアだ!
前回の世界では、サイド7はそれほど荒らされていなかったと聞いた。原作ではデニムとジーンが暴れまわるわ、アムロがコロニーに穴を開けるわで大変なことになっていた。
それに比べると、シャアは軍事拠点だけを狙ったのだろう。シャアが来るかどうかでだいぶ変わるな。まあ避難だけはして、その後のことはまた後で考えるか。
ひとまず方針は決まった。少し眠ろう。空も暗くなってきた。
コロニーの夜は真っ暗にはならない。光量が調節されて、薄暮になるだけだ。
色々と疲れた。寝心地は良くないが、少し眠って頭をすっきりさせよう。
◇
翌日、俺はサイレンの音で目を覚ました。
どうやら
補給艦……ホワイトベースか!
早い、早いよ。なんで翌日なんだよ。ゆっくり考える時間もないな。とりあえず港に行くか。
「――ッ!?」
今、ララァが言った。ガンダムに乗れと。
ええぇ、マジで言ってる? そりゃあ、ガンダムは整備やら稼働テストやらで散々乗り回したけども、実戦なんてやったことないんだぞ。まあ初搭乗のアムロよりは上手くやれるとは思うが。少なくともコロニーに穴を開けるようなことはしない。
……クソッ、やってやる、やってやるよ。
さっきのジープがあっちに向かって行ったから、あの先に開発区があるのだろう。
そっちに向かって駆け出す。しばらく走っていると、山影から緑の巨人が姿を現した。
2機のザクは盛大にマシンガンをぶっ放している。その先から黒煙が上がった。
「派手にやるもんだ。いや、あのザク、赤くないな」
2機のザクは双方とも緑色のノーマルタイプだ。ということは、シャアは来ていないか。それはそれで、アムロに任せるとコロニーに穴が開くな。
開発区に向けて速度を上げる。その途中、ガンダムを乗せたトレーラーを見つけた。脱輪しているな。運転手もいないようだ。
タラップを登り、コクピットにかけられた
「よし、ハッチは開いているな……ん?」
なんかキミ、顔ちがくない?
俺の知っているガンダムとちょっと違う。有機物感が強いというか、ロボットというよりも人造人間に近いような見た目をしている。
……ってそんな場合じゃないな。早くザクを止めないと!
顔は違っていても、コクピット周りはほとんど同じのようだ。
ハッチを閉めて、計器の電源を入れる。
このガンダムは改修された機体じゃない。初期の試作機ゆえのクセが残っているはずだ。それを示すように、計器には多数のメモが張り付けられていた。
「よし、エンジンOK。バランサーも正常だな」
ガンダムは無事立ち上がった。
2機のザクが驚いたようにこちらを向く。改めて見ると、あのザクもなんか違うな。下半身がスタイリッシュというか、原作のようなずんぐりむっくり感がないというか。なんか不安定そう。
武装は、頭部バルカンとビームサーベルだけか。まあビームライフルがあっても、コロニー内では使えないが。
頭部バルカンは砲身がないに等しい白兵戦用の武装だ。この距離から撃っても当たるものではない。
残弾も80発しかない。2射すれば弾切れを起こすだろう。
無駄だとは思うが、一応警告はしておくか。
「ザクのパイロットに告ぐ。降伏しなさい。捕虜の扱いは南極条約に基づいて……」
うぉっ! 撃ってきやがった!
マシンガン程度でガンダムの装甲は抜けないが、カメラなどの弱い部分は守らねばならない。メインカメラをやられたら、普通のパイロットは戦えない。
スラスターを噴かしてザクの左側に回り込む。
んん? 遅っそ! ガンダムってこんな鈍かったか? まあ考えてみれば、
それでもザクとは性能がダンチだ。ビームサーベルで
ザクは派手に四肢を吹き飛ばすわけにはいかない。ザクは自動遮断システムを搭載していないので、損傷個所から負荷がかかり、下手をすれば核融合炉にまで影響を及ぼすのだ。
まあ、このザクが俺の知ってるザクと同じとはかぎらないが。
「よくもジーンをっ!」
たぶんそんなことを叫びながら、もう1機のザクがヒートホークを振り上げながら突進してきた。
脇をすり抜けるような動きでビームサーベルを切り上げ、ヒートホークを持った手首を斬り飛ばす。そのまま回転蹴りの要領でコクピットにキックを叩き込む。
ザクがあお向けに倒れた。
「ザクのパイロット、ヘルメットを取り、両手を挙げてゆっくりと出てこい。骨も残らないくらいの高温で蒸発させられたくはあるまい」
ビームサーベルをチラつかせながら告げる。これで出てこなかったら、コクピットを焼くしかない。ビームサーベルでコクピットを突けば、ミンチよりヒデェ状態になるどころか、人間がいた痕跡すら残らない。
「5秒待つ。5、4、3、2……賢明な判断だ。そのままゆっくりと地面に降りろ」
デニムが地面に降りたのを確認して、ジタバタとしているもう1機のザクに向かう。
うつ伏せでもがいていたザクをひっくり返し、同じように警告する。
苦虫をかみ潰したような表情を浮かべたジーンがコクピットから出てきた。
やれやれ、これでひと安心かな。
主人公は謎の少年と接触したことで、ニュータイプとして覚醒しています。なので割と無双系です。