後方支援者面で行けない宇宙世紀   作:乾燥海藻類

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第10話 「新たなガンダム」

ルナツーで懐かしい人物に出会った。マチルダ中尉だ。ジャブローでホワイトベースの改修を主導してくれたウッディ大尉の細君である。

原作のように、ホワイトベースでの関りがなかったためか、クルーたちが結婚式に呼ばれることはなかったが、原作の悲劇を知る者としては喜ばしいかぎりである。

格納庫でアムロと会話している彼女が、こちらに気づいて敬礼をした。

 

「ご無沙汰しております、ケンプ大尉」

「ご苦労様です。これが、新型のガンダムですか?」

 

ホワイトベースに新型のガンダムが回されてきたのだ。てっきりアレックスかと思ったが、どうも違うようだ。

 

「はい。V作戦におけるガンダムシリーズの最終号機(ラストナンバー)、RX-78-08、ガンダムMk-Ⅷ(マークエイト)です」

 

なんでいきなりMk-Ⅷなんだよ。そこは素直にガンダム8号機でいいだろ。それじゃあ後々開発されるMk-Ⅱがおかしなことになるでしょうが。

とも言えず、無言でうなずく。開発者にはこだわりがあるのかもしれない。

 

「フルアーマー化も検討されましたが、大尉の戦闘データを勘案して見送られました。汎用性を維持しつつ、装備の換装によって、さらなる火力の強化を図れる機体となっています。もちろん、機動力も保証しますよ」

「追加武装のジェノサイドアーマーもすごいんですよ! ビームキャノンを4門装備していて、大型スラスターと大容量プロペラントタンクの増設により、戦艦にも匹敵するスピードと航続距離の獲得に成功したんです。絶大な戦闘力ですよ!」

 

興奮したアムロが早口でまくし立てる。どう考えてもGで死にそうなんだけど。もっとパイロットに優しい機体にしてほしい。

あとそんな砲門増やしても扱いきれんぞ。ハイマットフルバーストでもしろってのか? コーディネイターじゃない俺には無理だろ。

名称も不穏過ぎる。ジェノサイドて。

色々と文句を言いたいが、キラキラしているアムロの目を見ると何も言えなくなってしまった。ニュータイプなんだから察しろ。

 

「ところで、今まで使っていたガンダムはどうするので?」

「予備機としてそのままお使いください」

「いいんですか? どこもガンダムを欲しがっているのでしょう?」

 

実際ガンダムを3機運用しているホワイトベースは結構やっかまれているらしい。ただその内の2機は試験機だし、割と不具合も起こしている。致命的な不具合ではないが、やはり試験機はあまり信用できない。

 

「そうですね。ですが、大尉ほどガンダムを上手く扱える方というのも、そうはいないもので。Mk-Ⅷも問題はないとは思いますが、いかんせん実戦経験はないですから、不具合の可能性がゼロとは言えません」

 

マチルダ中尉はばつが悪そうに言った。別の部隊に回されている3号機から7号機は、それなりに小破・中破を経験しているらしい。俺は、今のところ大きな被弾はない。どうもこれが、高く評価されているようだ。

 

「ほかのやつを乗せるのは?」

「最終的な判断を下すのはブライト艦長でしょうが……正直おすすめできません。ガンダム……正確にはガンダムに搭載されている学習型コンピューターには大尉のクセが強く残っています。並のパイロットでは振り回されるだけでしょう」

 

どうもこの世界では教育型コンピューターが学習型コンピューターになっているようだ。物自体は同じのようだが。

 

「ふむ。で、学習型コンピューターを再調整しようものなら……」

「ガンダムの強みがなくなります。パイロット候補はリュウ・ホセイ曹長かジョブ・ジョン曹長でしょうが、明け透けに言わせていただければ、いささか技量に不安があります」

 

ふたりとも今までキャノンとタンクを担当していて、基本的に砲戦メインの戦い方だった。白兵戦用のガンダムを扱うには、相当な慣熟期間が必要だろう。

それならば、Mk-Ⅷに不具合が出たり、破損した場合に備えて、そのまま予備機とする方が良い、ということか。

まあ、そこはブライトの判断に任せるか。

 

「大尉のご要望であった突撃槍(ランス)もご用意いたしました」

 

マチルダ中尉に倣って視線を格納庫の隅に向けると、そこには10メートルくらいのドでかい槍が鎮座していた。

 

「名称は"ロンギヌスの槍"というみたいですね」

 

だからさぁ、そんな大仰な名前なんてつけなくていいのよ。ランスでいいんだよランスで。ハンマーだってシンプルにガンダムハンマーでしょ? ミョルニルとか付けないでしょ?

いや、あったな。ミョルニルとかいうハンマー。宇宙世紀じゃないけど。

 

「あんなもの、何に使うんですか?」

 

アムロが眉をひそめながら訊いてくる。まあ気持ちはわかるよ。格納庫に置いておくのは邪魔なんだろ?

 

「ビームが通じない敵に使うのさ」

「ビームが通じない敵? もしかしてIフィールド・バリアのことですか? でもあれは発振器が巨大ですし、エネルギーの消費量もバカになりません。父さんもガンダムに積めないか考えたみたいですけど、サイズが大きくなるし稼働時間にも問題があるし、結局は見送ったと言ってました」

 

連邦軍にはMAのノウハウがないからな。そういった尖った技術というのは、やはりジオンの方が優れている。

ジオン脅威のメカニズムってやつだ。ただジオンの技術者はロマンに溢れすぎていて、時に電磁鞭(ヒートロッド)だのプラズマリーダーだの、クセの強い武装を生み出してしまう。

 

「まあ戦艦相手にも使えるさ。エネルギーが切れても使えるしな」

 

ランスにはビームライフルが内蔵されている。撃ち尽くしても刺突武器として使えるというわけだ。

 

「でも、ガンダムっぽくありません」

 

そうかな? 騎士(ナイト)ガンダムっぽさはあると思うが。少なくともハンマーよりはガンダムっぽさがあると思う。

つーか俺に言わせれば、この世界のガンダムそのものがガンダムっぽくないけどな。歴戦のガノタ100人に訊いたら78人くらいが「これはガンダムではない」と言いそうなガンダムだぞコレ。

厄介だからな、歴戦のガノタというやつらは。

 

「そういえば、エンゲージにも追加武装があると聞いているが?」

「はい。シイコ少尉の要望で。ワイヤーアンカーですね。グフのヒートロッドから着想を得たみたいです」

 

ワイヤーアンカーねぇ。確かストライクノワールが使ってたような記憶がある。後は……ダークハウンドとか?

 

「ワイヤー撃ち込むならライフル撃ち込んだ方が良くないか?」

「みんながみんな、大尉みたいにマニュアルで当てられるわけじゃないですよ。ジオンの戦闘コンピューターも進化してますし、ビームライフルの軌道も予測され始めています。それに視認性の観点から見ても有用性はあると思いますよ」

 

意外だな、アムロがそんなこと言うなんて。やっぱりパイロット視点じゃなくて、技術者視点で見てるんだな。まあ、強襲突撃用に開発されたエンゲージとは合っているのかもしれない。ダメでも何かしらのデータは得られるだろうし、そういうデータがほかで役立つことはよくある。

 

「ところで、次にどこを攻めるのか、マチルダ中尉は知ってますか?」

「大尉が知らないことを、中尉(わたし)が知っているわけないじゃないですか」

 

苦笑しながら、マチルダ中尉は言った。だが現場の大尉と、補給部隊として様々な場所を訪れている中尉とでは、得られる情報が違う。

ソロモンかア・バオア・クーか。サイド3を攻めるのは、まあないだろう。

 

「ですが、そうですね。断言はできませんが……」

 

そう前置きして、マチルダ中尉は言った。

 

「ソロモンではないかと」

 

 

 

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