後方支援者面で行けない宇宙世紀   作:乾燥海藻類

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第11話 「ソロモン&ア・バオア・クー攻略戦」

どうやら連邦軍は、グラナダ、ソロモン、ア・バオア・クーというジオンの要衝すべてを制圧するつもりのようだ。完全勝利を目指しているのかもしれない。

なんでこんなにイケイケなのかはわからない。これもテム博士生存が関係しているのだろうか。水爆で結構ダメージ受けたはずなのに、やっぱり連邦の底力は凄いな。

 

『チェンバロを鳴らせ』

 

その号令と共に、ソロモン攻略戦は開始された。

パブリクが要塞に突っ込み、ビーム攪乱幕を展開する。これにより、要塞のビーム兵器は無効化される。パブリクを援護するために、後方からボールとMSが援護する。

 

ボールの上部に装備された180mm低反動キャノン砲は強力な火砲であるが、機動力はお察しだ。接近を許してしまえば、然したる抵抗もできずに撃破される。

MSが活躍するのは、要塞兵器が無力化されてからだ。要するに、白兵戦である。ソロモン要塞内部に進入し、司令部を押さえる。それでソロモン攻略は完了する。

 

それは、ジオンもわかっている。だから必死で抵抗する。そこに、必殺の一撃を叩き込むわけだ。

ソロモンのぶ厚い岩盤を撃ち抜く巨大な光芒。

宇宙をふたつに分かつ光の本流だった。

 

太陽光線は長大な槍となってソロモンに突き刺さった。その途上にあるものを全て焼き払って。

無数の生命が灰燼と化し、虚空に消えていく。

ソーラ・システムの一撃により、戦の趨勢は決した。

 

最後の抵抗とばかりに出てきたビグ・ザムは、強力ではあるが所詮は初見殺しの兵器である。対処法がわかっていれば、攻略はたやすい。

ドズルには前回(まえ)に色々と世話になったので若干の心苦しさはあるが、悲しいけどこれ戦争なのよね。

 

火線の薄い下方から攻め込み、股下にあるIフィールド発振器を破壊する。後はコクピットを潰せば処理完了だ。やはりビグ・ザム1機を造るより、ゲルググ20機を造る方が有用な気がする。まあパイロットの問題はあるだろうが。

戦場を離脱する兵を追う命令は出なかった。

宇宙要塞ソロモンは、以後コンペイトウと改称され、連邦軍の基地となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「決戦である!」

 

乗組員(クルー)全員の前で、ブライトが演説を始める。

 

「今度の戦闘は徹底したMS戦だ。これが、先のソロモン戦とは決定的に違う! ソーラ兵器の攻撃によって大きな損害を受けた現状にたてば、これ以上の艦船の損耗は許されない!」

 

ジオンのソーラ・レイによって、連邦艦隊の半数近くが轟沈したのだ。

 

「ギレンのいる司令部まで侵入しろ! 食い破れ!」

 

興奮気味にブライトが叫ぶ。

 

「諸君らの奮闘に期待する! 総員かかれ!」

『了解』

 

全員が持ち場に向かって駆け出す。

 

「大尉、本当にアーマーはいらないんですか!?」

 

コクピットに向かう俺に向かってアムロが叫んでいる。

 

「侵入する時、邪魔になるからな」

「パージすればいいじゃないですか。敵に使われることはないんですから」

 

火器管制システムがあるため、武装がジオンに利用されることはない。だが機密が詰まっていることに変わりはない。捨て置くというのは、なんとなく落ち着かない。

そういえばアムロは躊躇なく武器を捨ててたような気がする。

 

「アーマー、準備しておきますからね!」

「……了解、頼むよ」

 

確かに取り付くまでどれほどかかるかわからないし、補給に戻れる保証もない。ここは素直に従っておこう。

コクピットの隅に吊るされたお守りを指ではじく。ララァにもらったお守りだ。こういうのに頼るタイプではないが、どうも連邦軍では伝統のゲン担ぎらしい。

まあ重要なのはお守りそのものではなく、込められた想いだ。それが俺を守ってくれるだろう。

 

『大尉、発進準備OKです!』

 

アムロから通信が入った。

 

「了解だ。ウィリー・ケンプ、ガンダムMk-Ⅷ、発進する」

 

発進後、ジェノサイドアーマーとドッキングする。

 

「先行する」

『了解です。お気を付けて』

 

ブロッサムもエンゲージも、この形態の加速にはついてこれない。

かといって推進剤を使い過ぎるわけにもいかない。最初にスラスターを噴かして、あとは慣性速度で前進する。ゲルググの編隊が見えた。ビームキャノン4門に火を入れ、右肩を吹き飛ばす。

動きが悪いな。学徒兵か。

 

「光が……」

 

MSの爆発光ではない。戦艦クラスの大きさだ。

味方の戦艦がやられている。ギレンめ、相当の戦力を温存していたようだな。

MSを退けながら、要塞の砲門を潰していく。すでに味方のMSはア・バオア・クーに取りつき始めていた。

とそこで、ホワイトベースから通信が入った。

 

「こちらケンプ……」

『ケンプ大尉! セイラがガンダムで飛び出した!』

「なんだって?」

『だから! セイラがガンダムで無断出撃したんだよ!』

「カツかよ!」

『カツじゃない! セイラだ!』

 

焦って意味の通じないことを言ってしまった。まずはブライトを落ち着けなければ。

 

『ごめんなさい大尉。セイラはなにか思い詰めていたようで……こっそりシミュレーターはやってたんです。でもみんなには黙っていてと言われて、私……ああ、こんなことになるなんて……』

 

なんと、ミライさんも共犯だったか。いや、さすがにセイラさんがカツするとは思わないか。

 

「回線は?」

『閉じているみたいで。でも信号は出ています。頼まれてくださる?』

 

さすがにここで断るわけにはいかないだろう。ガンダムの信号をモニターで確認する。

ア・バオア・クーに取り付こうとしているのか? 無茶をする。

 

「了解。なんとかやってみよう」

『お願いします』

 

スラスターを全開にしてガンダムの信号を追う。

……見つけた。速度を緩め、しかし多少の勢いを残しながら、ガンダムに抱きついた。

 

「お転婆なお姫様だ。出撃したいならブライト艦長の許可を取ってからにしてもらいたいね」

『……大尉は、気づいていらっしゃったのね』

「キミが、アルテイシアだということにかね?」

 

短い沈黙が落ちる。

 

『私は、行かなければならないのです』

「なんのために?」

『兄に……いえ、ギレン総帥と会うために、です』

 

会ってどうするのだろう? あのギレンが指揮権や政権を渡すとも思えないし、正直会ってどうなるものでもないような気がする。下手をすればその場で射殺されて終わりだ。

思慮深いようで、割と衝動的に行動するお姫様だからな。だがまあ、ダイクン派の兵もいるだろうし、局面に変化が生まれるかもしれない。

万が一上手くいったら、シャアも止まるだろうし。

 

「わかった。俺も同行しよう」

『……え?』

「意外かね?」

『いえ、助かります。正直、心細かったので』

 

その声は、心から安堵したように聞こえた。

要塞の破損個所から内部に進入する。

 

「ガンダムはロックをかけておくように。やり方はわかるね」

『はい。大丈夫です』

「では行こう」

 

セイラさんがコクピットから姿を現す。ヘルメット越しでも、緊張しているのが見て取れた。

 

「銃は抜かなくていい」

「え?」

「そんな拳銃では大して役に立たんし、相手を警戒させるだけだ。堂々と行こう」

「……ずいぶんと、肝が据わってらっしゃるのね」

「そうかな」

 

言われてみれば、確かにそうだ。敵の本拠地に進入して、敵の大将に会いに行こうとしているのに、不思議と落ち着いている。

敢えて、声のする方に向かった。こちらに気づいた兵がハッとなる。

 

「れ、連邦兵?」

 

こちらがあまりに堂々としているせいか、判断に困っているようだ。それでも、反射的に小銃を向けている。

 

「貴様! 誰に銃を向けているか!」

「え? え?」

「こちらにおわすお方をどなたと心得る! 恐れ多くも先のジオン共和国首相、ジオン・ズム・ダイクン公の御子、アルテイシア・ソム・ダイクン様であらせられるぞ! 一同、頭が高い! 控えおろう!」

「あ、え、は? ア、アルテイシア……様……?」

「銃を下げんかぁっ!」

「は、はいっ!」

 

兵は銃を下げて直立不動の姿勢を取った。やはりこういうのは勢いで押すにかぎるな。

 

「アルテイシア様はギレン総帥との対話を望んでおられる。すぐに取り次げ!」

「はっ、いえ、しかし……」

「これは極めて高度な政治的な問題である。貴様の裁量の範疇を超えているだろう。だから、速やかに取り次ぎなさい」

 

そう言って、兵の肩をポンと叩く。

 

「駆け足!」

「りょ、了解しました!」

 

兵は全速で駆けて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺たちは兵士の待機所らしきところに通され、そこで待たされた。

しかし完全にこちらの言い分を信じたわけではないようで、部屋の内外に兵士が立っている。

拘束はされていないし、身体検査もされていないが、警戒の色はある。

しばらくして、ひとりの下士官が飛び込んできた。

彼は3秒ほどセイラさんを見つめると、敬礼の姿勢を取った。

 

「アルテイシア様にはご機嫌麗しく! 司令部付き警護中隊をお預かりしております、ドノバン・マトグロス大尉であります! 若い頃には、ランバ・ラル様にかわいがられました……」

 

目じりに浮かぶ涙を拭きながら、ドノバン大尉は続ける。

 

「地球におられるランバ・ラル様も、お喜びになるでしょう」

 

ランバ・ラルは死んでなかったか。まあそういう話は聞かなかったしな。

彼の性格上、味方の脱出を助けるために残ったのかもしれない。

 

「なんという奇跡……いえ、これは天祐に違いありません」

 

ドノバン大尉がセイラさんの耳元に顔を寄せる。

 

「キシリアがギレン総帥を撃ちました。ザビ家はもうダメです。あなたの御名前の下で、戦わせて下さい!」

 

うん。まあ狙い通りではあるんだが、この期に及んで派閥争いするあたり、やはりジオンはダメなのかもしれない。いや、この状況で総司令官(ギレン)を撃ったキシリアが一番状況が読めてないとは思うが。ホント、なんで今なんだろうな。

セイラさんは無言で部屋の外に向かって歩き始めた。そこには多くの兵がいた。どよめきが起こり、それは歓声に変わった。

 

「ジーク・ジオン!」

「ジーク・ジオン!!」

「ジーク・ジオン!!!」

 

ああ、これはあれだ。本人の意思とは関係なく話が進むパターンだ。

兵たちが慌ただしく動き出した。

司令部に向かって突き進む。

 

「――ッ!?」

「どうかして? ケンプ大尉」

 

この脳髄を貫くような感応……この重さは……。

 

「危険な男が来る。セイラさん、ここは任せます」

 

セイラさんに説得してもらうのが一番良いのだろうが、彼女が今ここを離れるわけにはいかない。

俺が出るしかない。

 

 

 

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