後方支援者面で行けない宇宙世紀   作:乾燥海藻類

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第13話 「夜明けの向こう側へ」

戦いの後、ジオン公国は共和制を復活させ、セイラさんは大統領となった。

そして、地球連邦政府と講和条約を締結した。

 

「やっぱり薄暗いな、ここは」

 

密閉型のコロニーであるサイド3は、常に薄暗くどんよりとしている。この鬱屈したような雰囲気が、革命の気運を高めるのにちょうど良かったのだろう。

学徒兵の半数は未帰還者となったらしい。いや、半数も帰ってこれたというべきか。

 

街は不思議な雰囲気だった。負けたわけではないから、そこまで悲壮感はないが。

ジオン共和国(サイド3)の独立は認められた。それには色々と政治的な思惑がある。

多額の戦時債務を抱えたサイド3の併合を行えば、財政的危機状態にある連邦には、サイド3の債務を肩代わりすることは耐えられないと判断したのだろう。

連邦政府は今次大戦におけるジオン公国の戦争責任を全てザビ家に帰結させ、ジオン共和国には問わなかった。

 

大きな病院が見えた。庭では車椅子に乗った蒼髪の少女がリハビリを行っていた。

しばらく車を走らせると、公園で炊き出しを行っているのを見つけた。

その行列の中に見知った顔を見つけて、俺は車を止めた。

 

車を降りて、双子の少女たちに向かって歩き出す。

こちらに気づいたふたりが、ハッと目を見開く。そして、テトテトとこちらに向かって来た。

膝をついて、視線を合わす。姉の背に隠れるようにして、妹の方もこちらを見つめている。

 

「……お父……さん?」

「迎えに来るのが遅くなって、ごめんな」

 

ふたりの髪を優しくなでる。

ふたりは堰を切ったように泣き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦後、俺は軍を辞めた。

あまり長いこと軍に居ると、ウィリー・ケンプじゃないことがバレるかもしれないからな。

正直除隊が認められるかどうかは不安だったが、割とあっさり認められた。

さらにゴップ大将から次の就職先まで紹介してもらった。ああ見えて世話焼きおじさんのようなところがあるのだ。ジャブローで1回会っただけだがな。

 

そんなわけで俺は、コロニー公社で働くことになった。

書類仕事をしたり、海賊化したジオン残党を成敗したり。

企業と商談したり、海賊化したジオン残党を成敗したり。

集光ミラーの調節をしたり、海賊化したジオン残党を成敗したり。

 

つーか出撃多すぎぃ! コロニー公社でガンダムを見つけた時から嫌な予感はしていたが……。

まあ整備や補給にかかる費用は会社持ちだし、出撃の度に特別手当がもらえるから助かってはいるが。

なにせウチには育ち盛りの娘がふたりもいるからな。ついでに言うと、妻と妻の義妹(いもうと)もまだまだ育ち盛りなので、なるべく良い物を食べさせてやりたい。

 

しかし海賊討伐など、本当にコロニー公社の仕事なのだろうか。というかジオン残党が多すぎるんだよ。なんでこんなにいるんだ? ジオンの人材は払底していたのではなかったのか?

というか原作と違ってちゃんとした指導者がいるのに、なんで認められないんだ? ダイクンの娘だぞ。ザビ家に洗脳されすぎたのか? だったらちゃんと対処してほしいものだ。新体制に迎合しないザビ家信者どもをよ。

 

『仕方ないじゃないですか。こちらも大変なんですよ。財政が苦しいですから軍縮はしなければなりませんし、兄さんもどこにいるかわかりませんし。あなたもあなたで、なぜそんなところにいるのですか? あなたはこちらに来るべきでしょう? こちらに来て私を助けなさ』

 

面倒なことになりそうなので、慌てて回線(テレパシー)を閉じた。いつも余裕のあるセイラさんから余裕が感じられなかった。結構いっぱいいっぱいなのかもしれない。

本当にピンチの時は助けるからさ。できるところまで頑張ろうよ。

ランバ・ラルとかシャリア・ブルもいるし、大丈夫だろ。

 

今のところ、テレパシーの送受信ができるのは俺とララァのふたりだけだ。

セイラさんは受信しかできない。アムロは知らん。テレパシーを送ったこともないし、受けたこともない。たぶん戦闘を経験していないから、ニュータイプ能力はそれほど覚醒していないのだろう。

今はジャブローでテム博士と一緒に働いている。

 

しかし本当にこれでよかったのだろうか。3人の生存という条件はクリアできたが、あの時に見た映像、シャアが演説して、その隣にアムロとララァがいるという条件はクリアできていない。

本当にこれでいいのか? 教えてくれよ、少年。

 

「課長、難民支援団体"ステラロッソ"の代表、シロウズ・シノミヤ様がお見えになられました」

「ありがとう。第一応接室に通してくれ」

 

そういえば今日は来客があったんだった。

あの少年は、たぶん死神だろう。世界が上手くいかなかったときに現れる死神だ。

だから、現れない方がいい。

この世界は上手くいっている。そう信じることにしよう。

部屋の外に出ると、ララァがいた。俺の不安を感じ取ったのか、にっこりと笑いかけてくる。

 

「大丈夫よ。『根幹世界』の私は向こう側へ帰ったわ。私がそう願ったから。でも、ずいぶんと気を遣ったわ。彼女は物質変換や意味消失すら可能な全能であるのだから。その気になればこの宇宙を終わらせることもできるの」

 

それもう神じゃん。宇宙を終わらせることのできるララァってどういう存在? やっぱり上位存在じゃないか。

 

「彼女は虚数空間に存在しているため、こちらからの物理的干渉を一切受け付けないの。おそらく時間すらも凍結しているでしょうね」

 

虚数空間とはマイナスエネルギーを持つ電子が大量に詰まった空間のことだ。

物理において電子とはエネルギーが低い程安定するという性質を持ち、人間が生活する世界ではエネルギーは最小値を0であるとして考えるのが普通である。

この空間は俗に"ディラックの海"とも呼ばれる。要するに、この世界とは隔絶した世界ということだ。

 

「私たちが出会うと存在の反発が起こり、その影響はこの世界にも現れます。だから夢を繋げて語り合うしかなかったの。これまでは一方通行だったのだけれど、どうにかこちらの言葉が届くようになったわ。だから、もうこの世界は大丈夫」

 

アッハイ。正直半分も理解できないが、ララァが言うなら、この世界は大丈夫なのだろう、たぶん。

それにしても、ニュータイプってこんなトンデモ設定だったかな? そういえばゼクノヴァもトンデモだったな。シャアをキレさせたらゼクノヴァが起こってたかもしれないんだった。すっかり忘れてたわ。

 

「ところで、私も同席して構いませんか? 一度会ってみたかったの。彼女があれほど執着したシャア・アズナブルって人に」

「いや、これから会うのはシロウズという方だぞ」

「ふふっ、そうだったわね」

 

なんだか楽しそうに、ララァは笑った。

ふと思い、空を見上げた。

白鳥が飛んでいる。その白鳥は笑っていた。

そんな気がした。

 

 

 





というわけで完結です。
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