後方支援者面で行けない宇宙世紀   作:乾燥海藻類

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閑話 「ジャブローでのこと」

「では、これよりガンダムの改修を始める」

 

集まったメカニックを睥睨しながら、テムは厳かに告げた。

とそこで、ひとりの少年が手を挙げた。

 

「父さん、そのガンダムなんだけど……」

「アムロ、ここではテム博士と呼びなさい。おまえも軍人になったのだ。公私のけじめはつけねばならん」

「あ、ごめんなさい。テム博士」

 

テムは敢えて厳しい言葉を投げた。ジャブローに到着した後、アムロは技術士官として連邦軍に所属することになった。

 

「で、ガンダムがどうした?」

「うん。コアパーツのことなんだけど、やっぱり整備性が悪いと思うんだ。生残性を高めるためってことはわかるんだけど……」

「うむ」

 

確かにアムロの言うように、コアブロックシステムは整備性が悪く、なによりコスト高だった。そんな理由もあり、ガンダムの簡易量産型となるMSには搭載されないことが決まっている。

そして、アムロは生残性を高めるためと言ったが、一番の目的は高価な学習型コンピューターを回収するためであることは、善良なアムロでは想像もできなかった。

 

「一応、こんな案もある。今データを送る。みんなも目を通してくれ」

 

テムはタブレットを操作してデータを送った。

 

「コクピットブロックをそのまま脱出ポットとして射出するインジェクション・ポッドだ。コアファイターのような戦闘力はないが、コストは安くなる」

「……すごい。特にこの全天周囲モニターは今の3面モニターとは得られる情報量が全然違ってくる。すごいよ、さすが父さ……テム博士だ」

「いや、これは私の発案ではないよ。ケンプ中尉のアイデアだ」

「ケンプ中尉……?」

 

アムロはケンプ中尉をガンダムのパイロットとしてしか認識していなかった。ガンダムについての意見交換の相手も専らテムであったし、アムロと交流する機会はあまりなかった。

とはいえ、気にはかけてくれているようで、度々声をかけてもらってはいた。

 

「うむ。見地が広い。やはり、手放せんな」

「え?」

「いや、後はこれだ」

 

テムは続けてデータを送った。

 

「これは、マグネット・コーティングですね。モスク・ハン博士の論文で見ました」

 

答えたのはオムル・ハングだった。彼は技術士官の候補生であり、テムの信頼も厚い。

 

「まだ理論上の段階だと聞いてましたが……すごいな。完璧じゃないですか」

 

その論文をより実践的にしたものが、タブレットには表示されていた。それを書いたのもケンプ中尉で、テムは急いでモスク・ハンにデータを送った。

いま彼はおっとり刀で駆けつけている頃だろう。

 

「これはモスク・ハン博士が到着してからの処置となる。それまでに、一通り仕上げておくぞ。手順通りにやれば何の問題もない。さあ、かかろう」

 

テムは手を叩いて、スタッフを作業に移らせた。

ガンダムに駆け寄るスタッフを横目に、テムは格納庫の隅にあるデスクに向かった。

学習型コンピューターの調整を行うためだ。

 

(実戦データが少ないのはやや不安だが、こいつは有用だ。3号機にも乗せてやらねばな。このムーバブルフレームというのも興味深い。ガンダムは完成したと思っていたが、まだまだ進化できる。ああ、やることが山積みだ。それにしても、なぜ彼はパイロットなのだ。彼は絶対に技術畑(こちら側)の人間だ。ガンダムのパイロットでなければ迷わず引き抜いたものを。いや、だがガンダムのデータのためにはパイロットで良いのか……)

 

煩悶としながらも、未来のガンダムを想像しながら、テムはキーボードを叩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブライト・ノアは19歳で士官学校を卒業し、地球連邦軍士官候補生としてホワイトベースに乗りこみ、サイド7へと向かった。この時の軍歴はわずかに6ヶ月である。

だがサイド7に到着した早々にシャアの強襲に遭い、正規軍人のほとんどを失ったホワイトベースの艦長代理に任命される。

その際、跳躍昇進措置により中尉に昇進した。

 

その後、シャアの補給部隊を襲撃し、大気圏突入でシャアと交戦した。どちらもケンプ中尉の活躍で乗り切れたとブライトは思っており、自己評価はそれほど高くなかった。

それでもホワイトベースとガンダムをほぼ無傷でジャブローにまで運んだ功績を認められ、大尉に昇進し、正式にホワイトベースの艦長を命じられた。

そんな彼は今、部下のリュウ・ホセイ曹長から報告を受けていた。

 

「親戚の子を保護。偽りはなかったようだな」

「なんだよブライト、知ってたのかよ」

 

リュウは砕けた口調で言った。ふたりは共に士官候補生であり、付き合いもそれなりに長い、気安い関係だった。

 

「で、なんだってケンプ中尉に……あっ、昇進して大尉になったんだっけか。大尉に監視なんぞ付けたんだ? 護衛と言ったが、一時も目を離すな、なんてそりゃあ監視だろう」

 

不貞腐れたように、リュウは愚痴を零した。仲間を疑うというのは、リュウには耐え難いストレスだったのだ。

 

「そんなことは、俺が知りたいよ」

 

ブライトもまた、肩をすくめた。現状、彼がウィリー・ケンプではないことを知っているのは、ワッケインとテム、そしてジャブローにいる一部の高官だけである。

 

「ジオンのスパイだとでも思ってるのかね、お偉いさん方は」

「スパイってのは、もっとコソコソするものだ。彼は、目立ちすぎる」

「……だな」

 

ふたりは揃って苦笑した。

 

「保護した子は、医療ボランティアとしてホワイトベースに乗せると言っていたが……」

「ああ、俺が許可した。準軍属だから、大尉も安心なのだろう」

 

準軍属とは、軍人や軍属の業務を補完する立場の人々で、南極条約により安全は保証されている。とはいえ、艦そのものが撃沈された場合は、その限りではないが。

 

「んで、ホワイトベースの次の任務は決まったのか?」

「いや、まだだ」

「ふーん。なら、もうしばらくは地下暮らしか」

「あまり体をなまらせるなよ」

「了解。んじゃま、ジュードー(ハヤト)にリベンジでもしてくるかね」

 

リュウは肩を回しながら、部屋を出て行った。

 

 

 

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