さて、ララァを回収できたのはよかったが、ひとつ問題があった。ララァは俺のことを知らないらしいのだ。
ならば、あの時俺にガンダムに乗れと言ったのは、どこのララァなのか。
あの少年と同じような、上位存在のララァなのかもしれない。
……自分でも何を言ってるのかわからなくなってきた。そもそも上位存在ってなんだよ。
まあとりあえずララァとアムロは確保できた。後はシャアを殺さずに上手いこと一年戦争を駆け抜ければハッピーエンディングに辿り着ける。
しかしなんで俺はこんなことをやっているのだろうか。
改めて考えてみても、やっぱりよくわからない。
あの空間で見た、シャア、アムロ、ララァが3人揃って一年戦争を終えるというのも、俺が予測した
"黒幕"の正体だってまだわからないのだ。
本命は、あの少年だ。
浮世離れした少年で、神様とか宇宙の創造者とか、そういう存在なのかもしれない。彼が納得するエンディングでないと、砂上の楼閣を崩すように宇宙を崩壊させている……のかもしれない。
対抗はララァ。
超常の能力を持ちながら、それを意識しておらず、制御もできていない。いわゆるハルヒ的能力。だがララァにそんな設定あったかな? ニュータイプ能力の暴走だとすれば、本当にニュータイプが何でもありになってしまうが。
夏休みがループするように宇宙がループしているのかもしれない。
大穴でアムロかシャアってところか。
まあやってみるしかなかろう。行けるところまで行くさ。
ガンダムのことはテム博士に任せて、ジャブローに帰ってきてからはジョブ、カイ、ハヤトたちと一緒に戦闘シミュレーターに明け暮れていた。
どうやらカイもハヤトも軍人になることを選んだようだ。ふたりともサイド7で両親を亡くしており、ひとりで生きる道を軍人に見出したのだろう。
危険な職業だが、食いっぱぐれることはないからな。
そんな日々を送っていると、ホワイトベースに任務が与えられた。
「カラカスを攻める」
ブライトが神妙に告げる。
床に表示された南米の地図、かつてはベネズエラの首都だった街だ。そこはジオンのジャブロー攻撃軍の司令部がある場所だ。
「制圧する必要はない。いや、できるようならやってみるが、主目的は時間稼ぎだ」
「時間稼ぎって、何のためにですか?」
とハヤトが疑問を口にする。
だがブライトの答えは淡白なものだった。
「すまんが、それはまだ教えるわけにはいかないんだ」
「なんだよそれ。ブライトさんは俺たちに目的も教えてくれないわぁけ?」
頭の後ろで手を組みながら、不貞腐れたようにカイがこぼした。
「スパイを警戒しているのさ。そうだろう、ブライト艦長」
「……ケンプ大尉の言う通りだ」
「へっ、こん中にスパイがいるって? 俺たちも疑われたモンだ。なぁ、ハーヤト」
にやけながら、カイはハヤトの肩を掴んだ。ハヤトはちょっと嫌そうに体を離そうとしている。
「任務の直前になれば伝える。あと、聞いていると思うが、部隊も増強される。ケンプ大尉の下に2名追加だ。着任は3日後となる。データを送っておくので、各自端末で確認しておけ。では解散」
本日はそれで解散となった。
自室に戻り、送られたデータを確認する。
ひとり目はジャック・ベアード少尉。機体はRX-78GP00、ガンダム試作0号機? GPシリーズじゃねーか! 4年はえーよ! どうなってんだ?
いや、0号機ってことは、もしかしてGP計画ってこの頃から構想はあったのか?
まあいい、次だ次。
ふたり目はシイコ・ミカゲ少尉。機体はRX-78GP00Z、ガンダム試作0番機? こっちもGPシリーズじゃねーか! しかも0号機と0番機って紛らわしいな。コンセプトが違うからか? つか試作機ばっかりよこすなよ。ホワイトベースは実験部隊じゃねーぞ!
しかしこの短期間に2機もガンダムを開発するとは。テム・レイ、やはり天才か。
ジャック・ベアードは、たしか遊園地のアトラクションが出展のキャラだったかな? ジムに乗ってたような気がするんだけど、詳しくは覚えてないな。行ったこともないし。
シイコ・ミカゲは全く覚えがない。俺の知らない外伝系のキャラなのかもしれない。
ところでスレッガーさんは赴任してこないのだろうか?
「ガンダム部隊か」
ガンダム3機編成というのは確かに目立って囮としては役立つだろう。たぶん、それが狙いだろうな。
戦力の増強は嬉しいが、俺が隊長とはね。さて、上手くやれるかねぇ。
◇
3日後、ジャック少尉とシイコ少尉が着任した。
自己紹介がてらシミュレーターで対戦したのだが、うん。やっぱりこんなモンだよな。
「2対1で、3分持たないなんて……」
呆然とジャック少尉が言葉を漏らす。シイコ少尉は無言で眉をひそめていた。
「敗因は、なんでしょうか?」
と、シイコ少尉が訊いてくる。
「その前に訊きたいんだが、ふたりはMSの戦闘シミュレーターをどれくらいやった?」
さすがに実機に乗ったことはないだろう。今の連邦軍でMSに乗れるのはV作戦に関わったテストパイロットくらいだ。ジムの実戦配備はまだだが、シミュレーターに落とし込むことくらいはしているだろう。
ふたりとも戦闘機の経験はあるみたいだが。
「一応、200時間くらいです」
「私も、同じくらいです」
「そうか。敗因はふたつだ。セオリー通りの動きだったということと、連携を取ろうと意識するあまり、逆に隙ができてしまったということ。まあいきなり連携を取れというのも、無理な話だがな」
そんなことができるのはニュータイプくらいだろう。ジャック少尉はニュータイプっぽい顔つきをしてるけども。
「キミたちの乗るガンダムは、ジオンのザクとは比べものにならないくらいの高性能機だ。先ごろ配備されたグフと比べてもな。だが上手く扱えねば、たやすく落ちる。マシンガンで傷はつかなくても、バズーカやヒートホークの直撃を喰らえば、あっさりとな」
ビーム兵器の配備はもうちょっと先だ。
ふたりはまだ未熟だが、操縦にセンスは感じる。テストパイロットに選ばれるだけの力量はありそうだ。