後方支援者面で行けない宇宙世紀   作:乾燥海藻類

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閑話 「ホワイトベース発進」

「ホワイトベースは、オデッサで使った方がよろしいのではないですか?」

 

ジャブローの大会議室で、ひとりの将官が疑問を呈した。

今の議題は、ホワイトベースをどう使うかということだった。原作と違い、この世界のホワイトベースはさしたる活躍をしていない。

赤い彗星を撃退し、大きな損傷を受けずに艦とMSをジャブローまで運んだという功績はあるが、敵のエースを次々と撃破したわけではない。

 

またペガサス級はすでに4隻が実戦投入できる準備が整っており、V作戦の要とも言える量産型MSも順調に生産が開始されている。

ホワイトベースにこだわる理由はほとんどなくなっていた。

 

「ジオンの、ジャブロー攻撃隊の司令官を知っているかね?」

「ガルシア・ロメオでしょう。ああいった小物には、長く司令官でいて欲しいものですな。だからこそ、泳がせておいたのでしょう?」

 

と、将官は鼻を鳴らした。

ガルシアはジャブローに対して嫌がらせをする程度で、本格的な攻勢を行ったことはなかった。ジャブローの進入口が突き止められなかったという理由もあるが、積極的に攻略しようという意思が見られなかったため、連邦軍もMSの生産の目途が立つまで放置していたのだ。

 

「潮目が変わったのだ」

 

厳かに、レビルは告げた。

居並ぶ将官たちが息を呑む。

 

「オデッサが陥落すれば、ジオンも焦る。乾坤一擲とジャブローに戦力を集められても面白くない。無論、撃退はできようが、要らぬ犠牲を払う必要もない」

 

レビルの言葉に熱が入る。V作戦は彼の肝煎りの作戦だったのだ。だからこそ、ホワイトベースには活躍してもらいたいという私情も多少は入っていた。

 

「南米全域を我が連邦軍の勢力下とする。そのために、ホワイトベースには役立ってもらおう」

 

そう締めくくられ、会議は終了となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「作戦は極めて単純だ。我々は正面から進軍し、カラカスを制圧する」

 

床に表示された電子地図の一点を差し棒で示しながら、ブライトは告げた。

 

「てーのが、表向きの作戦でしょ?」

 

とカイがおどけたように答える。

 

「その通りだ。我々は敵のMS部隊を引き付け、可能ならば殲滅する。俺たちが敵部隊を引き付けている間に、迂回した友軍がカラカスを制圧する」

「囮ってわけですね。わかってはいましたが……」

 

不安そうにハヤトがこぼす。ジャブローにいる間、シミュレーターはみっちりとこなしたが、いかんせん実戦経験が足りていない。

 

「そして、聞いている通り連邦軍の主目的は、オデッサの奪還だ。カラカスへの進軍は、北米部隊の目を引き付けるという理由もある」

 

ホワイトベースがジャブローに直行した影響か、ガルマが生存し、北米の混乱はなく、戦力も安定している。キャリフォルニアベースの工廠ではグフやドムが生産され、各地の戦線に投入されていた。

 

「では、各員配置に付け。定期便が帰り次第、攻撃を開始する」

 

こうして、カラカス攻略作戦が開始された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へへっ、こりゃすげえや。撃てば当たるってモンだな」

 

ジャブローのMS射出台から姿を現したカイは、ガンキャノンの正面モニターを見ながらニヤリと笑った。

整然と帰路を飛ぶガウの編隊は美しくもあったが、狙いを付ける必要もないくらいの的である。

ロックオン完了を告げる音が鳴り、カイはトリガーを引いた。

ガンキャノンの両肩に装備された240mm低反動キャノン砲が火を噴く。本来なら装備されているのはビームキャノンであるが、地上で運用するにあたり実弾兵器に換装されたのだ。

 

同時にジョブの乗るガンキャノン、リュウとハヤトの乗るガンタンクからも砲弾が発射される。さらにはジャブロー部隊の量産型ガンタンクも攻撃を加えている。

数機のガウが後部から煙を上げながら墜落した。

 

「反撃してはこねぇか」

 

ガウの編隊はいつもの定期便である。MSなど搭載してはいないだろう。反転することなく、ガウは速度を上げて空域を離脱していった。

キャノンとタンクはガウが射程外に出るまで攻撃を続けた。そして砲撃音が止んだ頃、ホワイトベースから通信が入った。

 

「キャノン、タンクは所定の位置に移動してください。回収後、追撃に入ります」

「あいよ。よろしく、セイラさん」

 

カイは軽快に返答した。

キャノンとタンクを回収したホワイトベースはカラカスを目指して進軍する。メガ粒子砲でガウに追撃をかけるが、弾薬も空でMSも積んでいないガウには追いつけるはずもなかった。

 

しばらくすると、ガウと入れ替わるように陸上部隊が南下してきた。

MSの編隊もあり、戦闘はここからが本番と言える。

ブリッジでオペレーターを務めるセイラ・マス曹長は、格納庫のガンダムに通信を繋げた。

 

「ケンプ大尉。敵の陸上部隊の排除をお願いします。揚陸艦が3隻、MSは60機ほどが確認されています」

「了解だ、セイラさん」

 

飄々とした返答が返ってきた。

付き合いはまだ数か月程度だが、彼は終始こんな調子だった。とはいえ、軟派者というわけではない。ジャブローまでの道中は民間人や子供たちにも気を遣っていた。

これは余裕というものだろう、とセイラは感じていた。

 

「ウィリー・ケンプ。ガンダム、発進する!」

 

カタパルトに押し出され、ガンダムがジャブローの空に舞った。

 

 

 

 

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