「ぬううっ、殺人的な加速だ!」
機体背部に取り付けられた大型ジェットパックにより、ガンダムは短時間ながらも飛翔能力を得た。Gファイターは犠牲となったのだ。
しかしなぜ俺はこんな鉄砲玉みたいなことをしているのだろう。誰が悪いんだ? ジェットパックを開発したテム博士か? こんな作戦を思いついたブライトか?
うーん、8:2でブライトだな。機会があれば殴ってやろう。
ジオンの地上部隊が見えてきた。敵MSの大多数はザクのようだ。航空部隊はいない。ドップもルッグンもいなければ、ドダイに乗ったザクもいない。両端に陸上艦が見える。あれはギャロップだな。メガ粒子砲を2門備えた強力な高速陸戦艇だ。
中央には玉ねぎに4本の脚が生えたようなMAがいる。アッザムだ。こっちにも配備されていたのか。
「アッザムリーダーは厄介だな。まずはアレを仕留めるか」
ネタが割れた兵器に引っかかることもないと思うが、友軍に説明するのも面倒だ。それに空を飛ばれてメガ粒子砲をまき散らされるのも脅威だしな。
アッザムは強力な移動要塞ではあるが、飛行時間に制限があり、エネルギーも大量に使うため長期戦には向いていない。
眼下のアッザムに向けてライフルを構える。が、高速で飛行しているせいか、照準がぶれる。
「やはり厄介だな、空気というやつは。そこだっ!」
ライフルを放つ。ビームの矢が突き刺さり、アッザムは大破炎上した。
次はギャロップを狙う。砲塔がこちらを向き始めるが、射角を取るのに手間取っているようだ。
しかし対応の早いザクの何機かが、こちらに向けてバズーカを放っている。だがそんな弾など当たりはしない。
ライフルを2射。直撃。ギャロップが爆散する。旋回してさらに2射。もう1隻のギャロップも沈黙した。最後に脚部のミサイルポッドを、眼下のザクに向けて無照準で全弾発射。ミサイルの雨が地上に降り注いだ。
そのままジオン部隊の上空を駆け抜け、ジェットパックとミサイルポッドをパージする。
「こちらケンプ、戦艦はすべて排除した。これより挟撃して掃討戦に入るぞ」
『ホワイトベース、了解。MS隊を出撃させます。ケンプ大尉、お気を付けて』
「了解。ありがとう、セイラさん」
ミサイルの雨でどれだけのザクが沈んだかわからないが、残り50機は下らないだろう。
戦いは数だよ兄貴とはいうが、やりようはある。というか、どうも敵は浮足立っているように見える。
まあ戦艦2隻とMAをあっという間に撃破されたのだ。無理もない。
あのどちらかが旗艦だったのは明白だ。指揮官を失っても、隊長がしっかりしていれば戦線は維持できる。それに万が一の場合を想定して、指揮権を引き継ぐ者は決めているはずだ。
しかし立て直す隙を与えてやるほど、俺は優しくない。
ビームライフルのエネルギー量を考えても、挟撃しながら味方と合流する方が無難だな。
砲撃音が聞こえた。キャノンとタンクの砲撃だろう。
さすがに味方の砲撃に巻き込まれるのはマヌケ過ぎる。俺はザクを掃討しながら戦場を斜めに突っ切った。
◇
『隊長、ご無事で!』
「ああ、シイコ少尉。作戦は順調のようだな」
シイコ少尉の駆る
『大活躍でしたね、隊長!』
少し遅れて、ジャック少尉が姿を見せた。
機体背面に2基のドラムフレームを設置し、武器マウントアームを介して多数の装備が使用可能となっている。右側のドラムフレームには大型ビーム・ライフル、左側にはレドーム状のミノフスキー粒子干渉波検索装置を装備している。
ミノフスキー粒子干渉波検索装置とは、ミノフスキー粒子によって発生する電波障害の度合いを検出・分析することによって、物体の大きさや位置をおおよその形で判明させることができるといった装置だ。
ただミノフスキー粒子の対症療法的に開発されたもので、完全な技術ではない。その物体が何なのか判別できるものではないし、地形データの入力も必要であるため、はっきり言って要らないと思っている。
まあ現場の人間が振り回されるのはよくあることなので、適当にデータ収集しておけとジャック少尉には言ってある。
今は使えなくても、技術が発展して何らかの形で実を結ぶというのはよくあることだ。
『敵の通信を傍受したんですが、どうやらアッザムとかいう機体に司令官がいたみたいです。中央の玉ねぎみたいな形のヤツです』
司令官が前線まで出張ってきてたのかよ。まあそういうタイプの司令官もいるか。勇敢さがアダとなったな。
『こちらホワイトベース。ケンプ大尉、聞こえますか?』
セイラさんから通信が入った。
「こちらケンプ。なにかありましたか?」
『別動隊がカラカスの包囲に成功したそうです。これからオープンチャンネルで降伏を呼びかけます』
「了解」
勝負あったか。
「ジャック少尉、シイコ少尉、聞いた通りだ。無駄に殺すなよ。捕獲した武器も、あとで役に立つ」
『了解』
わずか一度の攻防で、カラカス攻略は決定的となった。