『B級最強(ただし縛り中)』 ―防衛任務では本気出す変わり者攻撃手―   作:天使

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1話

三門市の空は、春の光が柔らかく街を包んでいた。

だが、防衛都市に住む者にとって、この静けさはいつ崩れてもおかしくない。

氷室京也は、駅前のベンチに腰掛けていた。

右手にはタブレット、画面には新型トリガーの構造図。

ボーダー本部からの正式な開発資料ではない。仲の良いエンジニアから「面白い試作品ができた」と見せられた未承認データだ。

 

「……うん、この駆動部、絶対すぐ壊れるな」

ぼそりと呟き、京也は図面に赤いラインを引く。

 

彼はB級アタッカー──ただしチームには属していない。

縛りプレイのような制限を自分に課し、あえて全力を出さない戦い方でランク戦をこなす変わり者だ。

今日もこのあと訓練室に籠もるつもりだった。

 

その時、街中にけたたましい防衛警報が鳴り響く。

通りを歩いていた人々が一斉に避難誘導の方向へ走り出す。

京也は小さく舌打ちし、タブレットを鞄にしまった。

 

「……今日は訓練の日じゃないんだけどな」

 

耳元の通信端末が自動的に接続され、本部からの指令が届く。

《南地区に大型ネイバー出現。周辺B級・C級は速やかに現場へ向かえ》

 

大型、しかも市街地中心部。

彼が普段守る“縛りルール”を守っていたら、味方が危ない。

京也の口元がわずかに歪む。

 

「仕方ない、防衛任務だ。今日は……外すか」

 

南地区の交差点。

すでに小南桐絵が双月を構え、跳躍してネイバーに斬りかかっていた。

横合いから香取葉子が高速で踏み込み、連撃を叩き込む。

そして後方では綾辻遥が通信と援護射撃を担当していた。

だが、相手は全身を甲殻に覆った大型クラウソラス型。

硬い装甲に攻撃が弾かれ、二人の攻め手が鈍る。

 

「……ちょっと遅いじゃない!」小南が叫ぶ。

「今来たとこだ」京也は肩を竦めながら、スイッチボックスを起動した。

 

装備スロットに次々と光が走る。

その構成は、普段の彼なら絶対に使わない重量級の近接+中距離射撃トリガーの混合。

防御も機動力も削って火力に全振りした、本気仕様だ。

 

「綾辻さん、カバーお願い」

「え、あ、はい!」

短く返事を聞き、京也は一気に前へ。

 

彼の動きは、普段のランク戦での彼を知る者なら誰も想像できない速さだった。

ステップで装甲の死角へ潜り込み、至近距離から旋刃弾を撃ち込む。

甲殻がひび割れた瞬間、小南が斬り込み、香取が突きを決める。

だがネイバーはまだ健在。咆哮を上げ、尾を横薙ぎに振るう。

その軌道を一瞬で見切り、京也は香取を抱きかかえて回避。

次の瞬間、彼はトドメとばかりに双月改を一時的に起動し、装甲を一刀両断した。

 

甲殻が砕け、ネイバーは粒子となって消滅する。

 

「……なんなの、あんた。普段の噂と全然違うじゃない」香取が息を整えながら睨む。

「俺は縛ってるだけだよ。防衛の時だけは別」京也は淡々と答える。

小南はニヤリと笑った。

「面白いじゃん、あんた。今度のランク戦、私とやってみなよ」

 

京也は軽く手を振って、その場を去ろうとする。

「遠慮しとく。今日は訓練室が俺を待ってるんでね」

 

その背中を、三人の視線が追っていた──。

 

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