『B級最強(ただし縛り中)』 ―防衛任務では本気出す変わり者攻撃手― 作:天使
三門市西端──郊外に広がる倉庫群。
普段はトラックの行き交う物流の要だが、今は閑散としている。
その理由は空気を震わせるサイレンと、警告を繰り返す拡声器の声だ。
京也はトリガーケースを片手に、現場に到着した。
すでにC級部隊が避難誘導と簡易バリケードの設置に当たっている。
彼らの後方で、二人のB級隊員がネイバーと交戦していた。
黒い甲殻を纏った中型バムスターが二体。
前脚の鋭い鉤爪がコンクリートを削り、咆哮とともに跳躍する。
「また面倒なのが出てきたな」
京也は肩の通信端末を起動する。
《こちら氷室、現着。状況を》
『綾辻です。香取さんと二人で先行してますが、正直きついです!』
『あんた早く来なさいよ! 一体は押さえてるけど、もう一体が暴れてる!』
通信が切れた瞬間、倉庫の陰から香取葉子が飛び出してきた。
彼女の槍型トリガーがバムスターの足を絡め取るが、相手はそのまま体重で押し潰そうとする。
「避けろ!」
京也は駆け出し、腰のハンドガン型トリガーを構える。
弾丸がバムスターの脚関節に食い込み、動きが止まった隙に香取が距離を取った。
「遅い!」香取が叫ぶ。
「十分間に合ってるだろ」
軽口を返しつつ、京也は戦況を一瞥する。
もう一体は倉庫の屋根上、綾辻が必死に援護射撃を繰り返している。
弾幕で押しとどめているが、突破されるのは時間の問題だ。
「香取、左のやつは任せろ」
「アンタ一人でやる気? 無茶でしょ」
「無茶じゃない。俺のルール、一つ外すだけだ」
香取が眉をひそめる。
「ルール?」
「接近戦での二段攻撃禁止──これが俺の縛りのひとつだ」
そう言い終えると同時に、京也は腰の双月改を展開した。
重い金属音とともに二本の刃が両手に収まり、ブーストの光が走る。
普段の彼なら、一撃で間合いを離す単発戦法に徹する。
だが今回は違う。
一閃目──右斬り上げで甲殻を裂き、動きが止まった瞬間に、
二閃目──左からの水平斬りで装甲を切断。
甲殻が砕け、内部のコアが露出する。
そこへ旋刃弾を叩き込み、バムスターは粒子と化して消滅した。
「……二段、えぐいな」香取が呆気に取られて呟く。
「防衛任務だからな。必要ならやる」
だが休む間もなく、残った一体が綾辻の防衛ラインを突破。
その巨体が彼女に迫る。
「下がれ!」
京也は一気に距離を詰め、二段攻撃の構えを取る。
だが相手は素早く回避し、尾の一撃を繰り出した。
「っ──!」
咄嗟に旋刃弾を撃ち込み、尾を弾く。
そのまま香取が後方から槍を突き込み、甲殻に亀裂を入れる。
京也が再び二段攻撃で畳みかけ、綾辻が最後に狙撃を命中させた。
バムスターは崩れ落ち、やがて消滅した。
「……ふぅ」香取が大きく息を吐く。
「やっぱアンタ、縛り外すと化け物ね」
「そんな大層なもんじゃない」
「で、他にはどんなルールがあるの?」
「秘密だ。全部教えるほど、俺はおしゃべりじゃない」
綾辻が小さく笑った。
「でも……今日も助かった。ありがとう」
「礼はいい。それより、撤収だ」
京也は双月改を収納し、普段の眠そうな目に戻る。
だが、その瞳の奥にはまだ戦場の鋭さが残っていた。
縛りの理由も、数あるルールの全貌も、まだ誰も知らない──。