『B級最強(ただし縛り中)』 ―防衛任務では本気出す変わり者攻撃手―   作:天使

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6話

 数日後。京也はいつものようにランク戦にも出ず、訓練室の片隅でひとり黙々と射撃・移動・回避のループを繰り返していた。

 その動きは機械的で、淡々としているが、目だけは獲物を狙う猛禽のように鋭い。

 ふと、通信端末がけたたましく鳴った。防衛任務の緊急招集だ。

 京也は無言で端末を握りしめ、わずかに口角を上げた。

 

「……やっと、か」

 

 街の南区に大型ネイバー反応。B級以上の全員に出動命令が下っていた。

 現場に急行すると、既に複数の隊員が布陣している。香取隊、小南、そして綾辻の姿もある。

 

「アンタ、またランク戦サボってたくせに、防衛の時は来るのね」

 香取が眉をひそめながら声をかける。

 

「仕事だからな」

 京也は短く返すと、手にしていたカスタムされたレイガストを構えた。刀身部分は極端に短く、代わりに銃口が埋め込まれている異様な形状。

 

「その変な武器……本気モードってやつ?」

 小南が興味津々で覗き込む。

「そう思いたきゃ思え。……始めるぞ」

 

 次の瞬間、路地裏から巨大な甲殻型ネイバーが姿を現した。

 全長五メートルはあろうかという巨体に、複数の刃状の脚。装甲は厚く、正面からの攻撃は弾かれる。

 

「前衛は私と香取! 京也、回り込んで!」

 小南の指示に合わせ、京也は地面を蹴る。

 だがその動きは直線的ではない。わざと瓦礫を踏み、壁を蹴り、視線の死角を縫うように跳ねる。

 

 ネイバーの刃脚が振り下ろされる寸前、京也は懐に潜り込み、レイガストの銃口を装甲の継ぎ目へ押し当てた。

「……散れ」

 低く呟き、圧縮弾を至近距離から撃ち込む。

 轟音とともに甲殻が砕け、ネイバーの動きが一瞬止まった。

 

 そこを小南と香取が同時に斬り込み、装甲を剥ぎ取る。

「ナイス!」

 香取が珍しく笑みを見せるが、京也は無言で次の動きに移っていた。

 

 背後からもう一体、犬型ネイバーが飛びかかってくる。

 京也はわずかに首を傾けただけでその牙を避け、逆手に持ったレイガストで喉を貫く。

 その動きに一切の無駄がなく、まるで長年の狩人のようだった。

 

 戦闘はわずか五分で終わった。

 ネイバーの残骸が煙を上げる中、綾辻が京也に近づく。

「……やっぱり、本気のあなたはすごいわね」

「別に。これが普通だ」

 そう言いながらも、京也の視線は遠く、何かを思い出しているようだった。

 

 ふと香取が口を開く。

「ねえ、なんで普段はあんな縛りプレイしてんの? 本気出せばA級でもやっていけるでしょ」

 

 京也は少しの沈黙のあと、短く答えた。

「……前に、一度だけ本気で戦って、大事なものを失った」

 それ以上は語らず、彼は踵を返して歩き出す。

 

 小南も香取も、それ以上追及はしなかったが、三人の間に妙な空気が残った。

 その背中を見送る綾辻の瞳は、いつもより長く京也を追っていた。

 

 ――京也の過去と「縛り」の理由。

 それはまだ誰にも明かされてはいなかった。

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