「結局G.Bibleは必要なわけだよ。あーあ、あの時アリスと一緒にG.Bibleも回収しとくんだったなー……」
先生とゲーム開発部は、G.Bibleを求めて再び廃墟へとやってきていた。今度はユズも一緒、もちろんアリスもいる。廃墟をさまようロボットたちを、また相手にしなければならないというのは気が重いところであった。
「"今更だけど、普通にゲームを作るのはだめかな"」
「う、それは……今の私たちの実力じゃ、どうせボロクソに言われて終わりだと思う。それじゃあ廃部は回避できない。どうしても、G.Bibleの力が必要なの」
「うん……本当に、ひどいコメントがいっぱいで……」
「ユズちゃん……」
◇
以前に来た工場へと侵入すると、アリスが自分が案内すると言い出した。本人もよく分かっていないようだが……何故か、どちらに行けばいいのか分かるらしい。
行き着いた先にあったのは、電源の入った1台のコンピューターであった。
「起動してる……え? ホラーゲーム始まった?」
:Divi:Sion Systemへ、ようこそお越しくださいました。
:お探しの項目を入力してください。
「か、勝手に文字が出てきたんだけど……!」
「ひぇ……」
廃墟にあるのに何故か1台だけ起動しているコンピューター。近づくと反応したかのように文字が浮かび上がる。ユズが怖がる一方、アリスは前に出てモニターを覗き込んだ。
「G.Bibleと入力してみましょうか?」
「ま、待ってアリスちゃん! どうみても怪しいよ!」
お探しの項目を、と表示されているのだから入力してみようと言い出すアリス。その怪しさについてはよく分かっていないようだが、アリスが入力するよりも先にコンピューターが反応した。
:おかえりなさいませ、AL-1S。
「!?」
「や、やっぱり私たちのことを認識してるよね……!」
「AL-1S……アリスの、本当の名前。あなたは、AL-1Sについて知っているのですか?」
:あなたが目覚めてくれて、大変嬉しく思います。
「……この工場の管理AIか何かなのかな。ねえ、G.Bibleについて知ってたら教えて!」
表示された文字で若干怖さが薄れたのか、アリスの隣に出てきてG.Bibleについて尋ねるモモイ。さらにキーボードを使って「G.Bible」と入力、モモイは高らかにエンターキーを押した。
:検索中... ヒット。
:名称:G.Bible コード:遊戯
:廃棄予定のデータです。このデータが必要ならば、保存媒体を接続してください。
「コード、遊戯! これだよこれ、見つけた!」
◇
廃墟で手に入れたG.Bibleにはパスワードがかかっていて、内容を閲覧することはできなかった。しかし、こういう時にとても頼りになる「ヴェリタス」というハッカー集団がミレニアムには存在する。モモイはG.Bibleのパスワードの解除をヴェリタスにいる友人、
なお、G.BibleをモモイのゲームガールズアドバンスSPのメモリーカードに保存したところ、容量が足りずにデータを消去されてしまった。これについてはヴェリタスでも復元不可能とのこと。モモイは悲しくなった。
「モモ、これのパスワードを直接解析するのは難しそうだよ。普通にやったらかなり時間がかかるかも」
「そんなー! それじゃミレニアムプライスが終わっちゃうよー!」
「Optimus Mirror Systemっていう、『鏡』って呼ばれてるツールがあればいけると思うんだけど、ついこの間セミナーに没収されちゃったんだよねぇ」
「おのれセミナー、またしても立ちふさがるというのか! ここに、今私の目の前にG.Bibleがあるというのにっ……!」
G.Bibleを前にして諦めきれないモモイ。ちょっとだけ返してもらえないかな、いやこっそり忍び込んで……などと悪いことを考え始めるが、しかしその時ヴェリタスの部室に訪問してきた者がいた。
「邪魔するぜー」
「邪魔するなら帰ってよ!」
「威勢の良いこった。ここにヴェリタスから入学したやつがいるって聞いてな」
「……ヴェリタスからってどういうこと? ……うん? ヴェリタス
「あっ」
ヴェリタス
「あんたがアリスだな? セミナーがお呼びだ、ついてきてもらおうか」
◇
ヴェリタスの部室にやってきたヤンキーメイド――
「どうしよう、アリスは大丈夫かな……」
「今の人、C&Cのネル先輩だよね……」
C&C、通称「メイド部」はミレニアム最強の武力集団……と、ミレニアムの生徒たちに認識されている。当初の予定では、表の顔がメイド、裏の顔が特殊部隊のはずだったのだが。ネルはそのC&Cの部長であり「最強」と名高い、そんな先輩にアリスは連れて行かれてしまったのだ。
「あなたたちねぇ……ミレニアムの生徒でもない子を、偽装してまで部員にするなんて何考えてるのよ!」
「ゆ、ユウカ……」
「先生も! 知っていたなら教えて下さいよ!」
「"ご、ごめんねユウカ"」
詳細は聞かされていなかったものの、とりあえず謝る先生。アロナは頭をかいた。
「はあ……まあいいわ。それで、ゲームの制作は順調?」
「えっ? あ、あの、アリスのことは……」
「C&Cから聞いてないの? アリスちゃんなら転入学試験中よ。よく分からないけど、セミナーは既に転入学には乗り気みたい。ま、モモイでも入れるんだし、あんまり心配しなくていいでしょ」
「……私でもって何さ!」
◇
「あなたがアリスちゃんね? かわいー! さ、座って座って」
「C&C総出で試験監督かよ、かったりぃなあ」
「あ、あの……」
「アリスさん。これから試験を行います。ミレニアムに入学するためのものですから、頑張ってくださいね」
「試験……わかりました。勇者になるための試練ですね!」
Q. 名前を教えて下さい
Q. 「ちょうてんさいびょうじゃくびしょうじょ」を漢字で書きなさい
超天才病弱美少女
Q. 「巣窟」の読みを書きなさい
そうくつ
Q. 1日にどのくらい電池を消費しますか?
アリス、乾電池は食べません!
Q. 「まさか~ろう」を使って短文を作りなさい
モモイはいま逆さまにされているだろう。
Q. 「かりに~ならば」を使って短文を作りなさい
光に闇が備わるならば、最強に見えるだろう。
Q. 世界を滅ぼしたいと思いますか?
勇者は世界を滅ぼしたりはしません。
Q. ハッキングは得意ですか?
アリスにはよく分かりません。
Q. 四次元ポケットは使えますか?
いいえ。アリスはネコ型ロボットではありません。
Q. イオナズンは使えますか?
残念ながらMPが足りないので使えません。
アリスもいつか、使えるようになってみたいです!
「……なんだこの問題」
「まあ、全く試験なしで編入というのもよくないということでしょう。さ、カリン。次は射撃試験です」
「こっち。ついてきて」
◇
「ところでユウカ。実は、ちょーっとお願いがあるんだけど……」
「……。何だか嫌な予感がするんだけど」
「あの、ね? ヴェリタスから没収した『鏡』ってやつなんだけど……ちょっとだけ、ちょっとだけでいいから貸してくれない?」
「はあ!? そんなこと出来るわけないでしょ! 大体何のために必要なのよ」
「お願い! ゲームを作るのに必要なの! 参考資料にパスワードがかかってて見れなくって……」
「規則を曲げるわけにはいかないわ。素直に諦めなさい。パスワードがかかった参考資料って何よ、そんなものどこから持ってきたの……」
「そこを何とか~! お慈悲を~~!」
「ひっつかないでよ鬱陶しい!」
ユウカのふとももに縋りつくモモイ。だが、没収した物をこんなことで返していては示しがつかない。
「ふふっ、それならばいいアイデアがありますよ」
「ノア!」
◇
「コユキー、いるー?」
「なんですかユウカ先輩。……お? 大人がいますね!」
「"シャーレの先生だよ"」
「先生! 私、先生って初めて会いました!」
ミレニアムの反省部屋に軟禁されている問題児コユキ。軟禁とは不穏だが、非常に倫理観がなくしょっちゅう問題を起こすため、またミレニアムの機密情報をいろいろ知っているために処置は妥当とのこと。
「ちょっとこれのパスワードを解除してあげてほしいんだけど」
「えぇー、めんどくさいですねぇ……」
「お願い、ゲームを作るのにどうしても必要なものなの! これあげるから!」
「……お菓子がいっぱい! 私に、くれるんですか? いいでしょう、パスワードくらい楽勝です!」
ゲーム開発部が食べる予定だったお菓子をもらって気分が良くなったコユキは、あっさりとG.Bibleのパスワードを突破した。これが黒崎コユキの持つ異能であり、そしてその力ゆえに、ミレニアムでは危険人物としてマークされている。
『パスワードが全くの無意味に……危ない力ですね。監視がつくのも納得です』
「自己解凍されて……もうパスワードはないみたいですね!」
「これでやっと、G.Bibleが私たちの手に……! ありがとう! 私たちの作ったゲームもあげるね!」
「にははは! ゲーム作り頑張ってくださいね~」
コユキに渡されたゲームとはもちろん、例のゲームである。
「あなたたちのゲームって……」
「まあまあ、プレゼントを取り上げるのも無粋ですし、いいじゃありませんか」
「……ノア、分かって言ってるわよね?」
「さて、何のことでしょう♪」
◇
「アリスー! 頑張れー!」
「アリスちゃん頑張ってー!」
「光の剣を使った対人戦。C&Cが相手なら大丈夫だろうし、いいデータが取れそうだね」
「おい。見せもんじゃねえぞ!」
ネルとアリスが戦うことを何処かから聞きつけてきたギャラリーたち。ゲーム開発部のほかにもエンジニア部が、試合のデータを記録しに来ている。
「リーダーもがんばれー!」
「アスナ! 何でそっちにいるんだよ、試験監督はどうした!」
「ギャラリーを守るのも試験官の仕事だよー!」
「はあ……ったく、やりにくいなぁ……」
たくさんのギャラリーに見守られながら試験官として戦うというのは、普段の任務とは別の意味のプレッシャーがかかるのであった。
「イベント戦闘ですね!」
「初めに言っておくが、あたしに負けたからって不合格になるわけじゃねぇ。が、手を抜けば……分かってるな?」
「……勝ちます!」
「ほう、やる気だな? ……アスナ」
「測定器の準備はOKかな。それじゃ……はじめ!」
「……光よ!」
試験開始早々、アリスは光の剣を放つ。威力は高いのだが、しかしネルには当てられずに華麗に回避されてしまう。後方で着弾して砂煙が上がった。
「火力だけはありそうだな」
「も、もう一度……ううっ!」
「おらよ!」
ネルは2丁のサブマシンガン、ツイン・ドラゴンを連射。アリスは光の剣を盾にしつつ、遮蔽へと退避。隠れてチャージして、飛び出して撃つが……その攻撃は読みやすく簡単に見切られてしまい、反撃を食らってしまう。
「あ、当たりません……!」
「デカい武器ってのは、相応に扱いにくいもんだ」
『命中の低い攻撃は、簡単に見切られてしまいますからね』
ネルは試すように移動を繰り返した。アリスも攻撃を当てようとするのだが、アリスの攻撃は当たらず、ネルの攻撃には被弾してしまう。アリスにはダメージが溜まっていった。
「ひか……移動します!」
「……さて、その武器の弱点。火力は高いが……近づかれたら撃てねぇよな! さあ、どうすんだ?」
『レールガン持ちに隣接。定跡の一つですね』
撃てば自分まで巻き込まれるほどの近距離。アリスは一方的に攻撃を食らってしまうかに思われたが――
「いいえ! ……光よ!」
「!?」
アリスは地面へと光の剣を発射した。
「ストップー! 大丈夫!?」
「ああもう、無茶しやがる」
「リーダーは問題なさそう、アリスちゃんは……」
「ううっ、HPが減って動けません……戦闘不能です……」
「アリスー!」
試験はアリスの自爆で終了となった。戦いについては素人だが、ギャラリーがいる方には撃たなかったのを、ネルは分かっていた。
「……ま、悪いやつじゃなさそうだな」
「はい。試験は合格とのことで、こちらの学生証を渡してほしいとのことですが……保健室に運ぶほうが先ですね」
「私が背負っていこう」
「……もう学生証があんのかよ、仕事早すぎだろ」
染料を投げるマキというのを考えたが、入れられる場所がなかった……
・見切りスキル
命中が低い攻撃を華麗に回避する。
・ウティマさん
強力な銃★《レールガン》を持っている。
レールガンは強いのだが、安定版では隣接していれば撃ってこない。
開発版では確率で撃つようにAIが改良された。しかし弾薬を盗むという方法があるらしく……。