『砂が多いですねー』
「"アビドス高校はどこ……"」
『すみません、先生。どうやらマップがずっと更新されていない状態だったみたいで……この辺りにあるとは思うのですが』
発足したばかりのシャーレに届いた、アビドス高等学校からの救援要請を受けることにした先生。シャーレの初任務だと意気揚々と出発したのは良かったのだが、アロナのナビに従ってたどり着いた先は、アビドス高校の生徒どころか人の気配すらない場所であった。
一応、アロナの示した座標には校舎らしきものはあったが……砂に埋もれ、しっかりと閉鎖されていて、今は使われていない様子。アビドスは広すぎて、街のど真ん中で迷って遭難する人もいるらしいという噂のことを、もっとしっかり考えておくのだったと先生は後悔していた。
『まあ、初心者が食料の準備を忘れて餓死するのはあるあるですよね』
「"しにたくないよ!"」
『いざとなったらこのスーパーアロナがなんとかしますから、大丈夫ですよ!』
「"……スーパーアロナ、アビドス高校までの道案内をお願い"」
『すみません、よくわかりません』
◇
アビドス高校を探してさまよい歩き、日が暮れたので野営して、次の日。
『先生! 誰かいますよ!』
「"人がいる……おーい!"」
「……? こんなところでどうしたの?」
「"ちょっと遭難しちゃって……はは"」
「……遭難する人って本当にいるんだ」
『そうなんです』
偶然にも、ロードバイクに乗った少女が通りがかったのだ。アロナのサポートによりまだ余裕はあったとはいえ、ようやく人を見つけることができて、先生は少し安心した。
「"お店もないし、人もいないし"」
「ああ、ここは元々そういう所だから……お店なんかはもっと郊外のほうにあるよ」
「"えっと、アビドス高校ってどこにあるか分かる?"」
「アビドスに用があるの? ……その服は、連邦生徒会の?」
「"シャーレの先生だよ"」
「……そっか。久しぶりのお客様だ」
その少女は、探していたアビドス高校の生徒だった。彼女の名前は
「私が案内してあげる。えっと……ロードバイクならすぐそこ、なんだけど」
「"乗せてもらえたりは……"」
「これ一人乗りだから……でも、徒歩だと少し時間かかっちゃうかな。うーん……」
『乗馬スキルさえあれば……』
乗馬スキルがあったら何なんだ……。先生はアロナに突っ込みを入れたかったが、シロコがいたのでスルーせざるを得なかった。
◇
「わあ、シロコちゃんが大人を誘拐してきました!」
「ええっ!? ついにやっちゃったの!?」
「やってない」
先生とシロコは、どうにか一人乗りのロードバイクに二人で乗ってアビドス高校に到着した。アロナは先生が良い空気を吸っていたのを見ていたが、何も言わずにスルーしてあげた。
来客が珍しいのか、大人が来たと騒ぐアビドス高校の面々に、シロコから下ろしてもらった先生はスッと立ち上がり挨拶をした。
「"シャーレの先生です、よろしくね"」
「連邦捜査部『シャーレ』の先生!?」
「わあ☆ 支援要請が受理されたのですね! 良かったですね、アヤネちゃん!」
「はい! まさか本当に来ていただけるとは……! 早くホシノ先輩にも知らせてあげないと……」
「私、起こしてくる!」
結構な歓迎ぶりであった。それだけ、アビドスの状況が厳しかったということでもあるのだが。
「"補給品があるんだけど、どこに置けばいいかな?"」
「……? 私が持ちますよ~」
先生の手荷物は少なく、あまり補給品を持ってきている様子には見えず。ノノミが先生の言葉の意図を考えていると、先生はシッテムの箱を取り出して言った。
「"それじゃあここで……"」
『はい、開きますね』
先生がそう言うと、なんと突然、空間の裂け目が現れたのだ。先生はそこから補給品をドサリドサリと取り出し、それを周りで見ていた生徒たちは目を白黒させた。
「"ふぅ……はい、これ補給品"」
「わあ☆」
「え……? い、今どこから出したんですか……!?」
「"四次元ポケット? から。キヴォトスの技術ってすごいよね"」
先生は四次元ポケットをキヴォトスの技術だと思っているが、しかしそんな技術はキヴォトスにはなかったりする。アロナは先生の勘違いを正さなかった。
「聞いたことないけど……これが大人の力……。ん、大人ってすごい」
「……いやぁ~すごい大人が来たもんだ。目が覚めちゃったよ。これだけあれば、しばらくは持ちそうだねー」
「あっ、ホシノ先輩!」
「"いやいや、このタブレットの機能だから。すごいのはこっち!"」
『そうです、これがアロナちゃんの力です!』
ホシノと呼ばれた生徒も起きてきたようだ。と、そこでシロコが何かに気づいた。
「ん……? 来たかも。性懲りもない」
「またあいつら来たの? まったくもう……。先生のおかげで弾薬も十分あるし、ぱっぱと追い返すよ!」
襲撃だ!(敵勢力:ヘルメット団級)
◇
「クソ、撤退だ! 逃げるぞ!」
「奴らにはもう弾薬がないんじゃなかったのか?!」
「出直してくる」
カタカタヘルメット団と名乗る集団を撃退したアビドスの生徒たち。補給さえあれば、この程度の相手なら楽に蹴散らすことができるようだ。
「あらためてご挨拶します、先生。私たちは、アビドス対策委員会です」
ヘルメット団を追い返し、一行は改めて自己紹介をした。委員会で書紀とオペレーターを担当している1年生の
先生は、シャーレに送られた支援要請の理由を聞いた。対策委員会とは、過疎化が進んでしまったアビドスを蘇らせるために有志が集った部活であるということ。アビドス高校の全校生徒5人全員が参加し、一丸となって頑張っていること。しかし人が足りず、お金も足りず、借金まであるらしい。それなのに最近では、何故かヘルメット団の襲撃も増えていて、学校を守り切ることすら難しくなってきているのだという。
「そこでおじさんに一つ案があるんだけど……奴らの前哨基地を襲撃しちゃわない?」
「"前哨基地とかあるんだ……"」
「最近できちゃってねぇ。そこを拠点にしてこう何度も襲撃に来てるみたいでさ、面倒だし追い払っちゃおうよ。奴らが消耗している今がチャーンス」
「い、今ですか?」
「良いと思います。あちらも、反撃するほど物資があるなんて思っていないでしょうし」
「ん、今から出発しよっか」
アビドスの現状を聞いていたはずが、いつの間にかヘルメット団の前哨基地を攻撃する作戦が決まっていた。これからすぐに攻めに行くらしい。対策委員会はとても身軽なのであった。
「"キヴォトスって物騒だよねぇ"」
『慣れてください、先生』
◇
対策委員会の面々は、カタカタヘルメット団のアジトを破壊して学校に帰ってきた。
「すごくうまくいったねぇ。うへ~、これで賞金があったら最高だったんだけどねー」
「"やっぱり借金のほうも大変なんだ"」
「あ、ホシノ先輩、それは……」
「まあ……先生に話したところでどうしようもない問題ではあるんだけどさ。話しておいたら、何かいいことあるかもよー?」
「で、でも! 先生は結局部外者だし……今まで大人はみんな、誰も助けてくれなかったじゃない! それどころかアビドスから逃げてどっか行っちゃうし! 今更……っ! 私は認めない!!」
話しているうちにヒートアップしてしまったセリカは、そのまま部屋を出ていってしまった。見かねたノノミも様子を見に出ていった。アビドスの問題は、その原因が原因なだけに解決が非常に難しく、なかなか手を差し伸べてくれる者がいなかったのだ。
「セリカちゃん……」
「……えーっと……それで、この学校の借金なんだけどね。……9億円ぐらい、あるんだよね」
「……9億6235万円です」
『なかなかの金額ですね。税金でなくてよかったです……』
こうなった原因はアビドスの砂漠にあると、アヤネは語った。数十年前から、アビドスの郊外にある砂漠で大規模な砂嵐が起こるようになったのだという。そのせいで街が砂に埋もれてしまい……対策として多額の資金を投入せざるを得ないのに、砂嵐は止まず、人口は減る一方。融資をしてくれる銀行もなかなか見つからず、結局、悪徳金融業者に頼るしかなかったという。
「まあ、そういうつまらない話だよ。あんまり気にしなくていいからねー。仮に借金がなくなったとしても、それだけで全部解決する話でもないしさ」
「"できることがあれば協力するよ。一緒に頑張ろう"」
「ありがとー、先生」
◇
麺屋「柴関ラーメン」。先生は対策委員会のメンバーに連れられて、お昼ごはんを食べにやってきていた。ここはアビドスでは有名なラーメン屋で、他の自治区からも訪れる人がいるほどだという。
「み、みんな……どうしてここに……!?」
「うへ~やっぱここだと思った」
本日はアビドス高校の自由登校日なのだが、大抵みんな学校に来るらしく、セリカ以外は全員登校していた。そしてそのセリカが何をしていたのかといえば、この柴関ラーメンでアルバイトをしていたのだった。ホシノは心当たりがあったらしく、それでここに来てみようと言い出したのである。
「先生までいるし……くっ……」
「最近いないと思ったら、ここでアルバイトしてたんだね」
「ほらほら、セリカちゃん。席に案内してー?」
「うう……それでは、広い席にご案内します……こちらへどうぞ……」
バイト姿をみんなに見られながら、しぶしぶ席へと案内するセリカ。店内は混んでいて、なかなか盛況のようだ。
「アビドス名物、柴関ラーメン! どのメニューも、めちゃくちゃ美味しいんだよー! 先生は何にするー?」
『私もラーメン食べよー。えっと、生麺は……』
アロナもラーメンを食べたくなったらしい。先生はAIもラーメンを食べるのかとツッコみたい気持ちをこらえた。
「アルバイトさん☆ おすすめのメニューはなんですか?」
「どれも食べたことあるでしょ! ……まあ、おすすめっていうなら柴関ラーメンがいいんじゃない? 看板メニューなんだし」
「じゃあ、チャーシュー麺をお願いします!」
「…………はい」
柴関ラーメンをおすすめされ、即チャーシュー麺を頼むノノミ。それはボケなのかそうでないのか。先生のために聞いたのだろうと思うことにし、セリカはツッコみたい気持ちをこらえた。
「ところで、みんなお金は大丈夫なの? もしかして、またノノミ先輩に奢ってもらうつもり?」
「大丈夫大丈夫ー、そのために先生を連れてきたんだし」
「"え?"」
「私は大丈夫ですよ☆ このカードなら、まだまだ余裕ありますし」
「"だ、だいじょうぶ……だよ?"」
「わぁい」
ノノミに払わせるわけにはいかないかと、先生は支払いを受け持つことにした。ノノミにはゴールドカードが、先生には大人のカードがあった。キヴォトスでは、カードによる決済が発達しているようである。
セリカはよく働いているようで、みんなはセリカの働きぶりを眺めながら過ごした。
「はい、特製味噌ラーメンお待ち! これで全部ね」
「うへ~セリカちゃんかわいいユニフォームだよね。服でバイト決めたのー?」
「ちょ、ちが……早く食べて! 麺が伸びるよ!」
「はーい。いただきまーす!」
わいわい騒ぎながら、みんなでラーメンを食べた。アロナは良い予感がした。
・乗馬スキル
elonaでは少女にも乗馬できる。「この生物は乗馬用にちょうどいい!」と表示される。
・税金滞納
ノースティリスでは税金滞納は重犯罪。殺人よりも重い……!