もしもアロナがエロナだったら   作:ゴールドハーブ

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これが真のアウトロー!

『ブラックマーケットはいいですよねー。大量の粗悪品の中に混じる、まさに珠玉の掘り出し物を見つけたときの、あの感動! できれば運のいい日に見て回るのがおすすめです! 値段が高すぎて、買えないときもあったなあ……。多少治安が悪いところもありますが……ま、大丈夫ですかね。スリには気をつけましょう。余裕があれば、変装セットでも用意しておくと万全です』

 

 手がかりを求めてブラックマーケットまで来たところ、突然アロナが何かを語りだした。危険な場所だというのに、どうしてそんなにウキウキしているのだろう……。運のいい日って具体的にどういう……。よく分からないので先生はスルーした。

 ブラックマーケットはとても大きく、街一つぶんくらいの規模があるという。みんなアビドスからはあまり出たことがなく、辺りを物珍しそうに眺めていた。ちなみにアヤネはアビドス高校から、オペレーターをしつつ通信で参加している。するとそこに、銃声とともに一人の生徒が逃げてきたのだった。

 

「うわああ! まずっ、まずいですー!!」

「あの制服は……トリニティ?」

 

 キヴォトス三大校の一つ、トリニティ総合学園の制服を着た生徒がチンピラに追われている。トリニティにはお嬢様が通うイメージがあり、どうやらそこを狙われたらしい。とりあえずチンピラどもは対策委員会が撃退した。

 なぜトリニティの生徒がこんな危険なブラックマーケットにいるのか。そう問えば、ペロロ様の限定グッズを探しているとの言葉が返ってきた。限定生産100体、モモフレンズのキャラクター「ペロロ」とアイス屋のコラボぬいぐるみだという。ノノミはモモフレンズを知っているようで、二人で盛り上がっていた。

 

『ここにもブラックマーケットの魅力を知る者が……!』

 

 彼女は阿慈谷(あじたに)ヒフミ。キャラクターグッズのためだけに、こっそりと学園を抜け出してこんなところまで来た、なぜかブラックマーケットの事情に妙に詳しいヒフミを加えて、一行はブラックマーケットを探索することにした。

 

 

「はあ……何も見つからない……」

「おじさんも疲れちゃったよー。もう歳かねぇ」

「私たちとあんまり変わらないでしょ!」

『先生は大丈夫ですか?』

「たい焼きでも食べて休憩しましょうか。私がご馳走します☆」

 

 情報を求め、あちこち探し歩いて数時間。結構色々な所を探索したのだが、しかし何の情報も見つからず、疲れた一行は休憩することにした。

 

「……妙ですね」

「おじさんはヒフミちゃんがこんなにブラックマーケットに詳しいのが妙だと思うよ」

「あう……」

「話の腰を折らないの」

 

 ヒフミはとてもブラックマーケットに詳しかった。そのヒフミの案内があって、何も見つからなかったのである。

 

「ここまで情報がないなんて。絶対どこかで取引されているはずなのに……誰かが意図的に隠している?」

「うちの襲撃に使われたものだしねー。後ろ暗いことだろうし、うまく隠されちゃったのかも?」

「いえ、ここまで徹底して隠蔽するのは相当大変なはず……不自然です」

 

 ヒフミ曰く、ここに集まっている企業などはある意味開き直って悪さをしていて、普通はこんなに情報が見つからないことはないのだという。それに、アビドスに襲撃してきたのは頭の軽そうなヘルメット団だったのに、その痕跡が全く見つからないのも不自然であった。

 

「例えば、あそこのビル。あれがブラックマーケットに名を馳せる闇銀行です」

「闇の銀行……な、なんかちょっとむずむずしますね?」

『ただの貯金箱かもしれませんよ』

「あの銀行も、まさに犯罪組織であるという話でして――」

 

 キヴォトスで行われる犯罪の15%の盗品があそこに流されているとか、それがまたここで違法な武器や兵器に変えられて、さらに別の犯罪に使われるだとか。銀行自体がそういった、犯罪を助長する存在であるという。

 

「ひどい! 連邦生徒会は一体何やってんの?」

『…………』

「理由はいろいろあるんだろうけどねー」

 

 そうして闇銀行について話していると、アヤネが武装集団が接近してくることに気がついた。それをこっそり隠れながら観察していると、マーケットガードに護衛された現金輸送車が、その闇銀行へと入っていくのが見えたのである。そして、その現金輸送車に乗っていたのは、対策委員会が今朝利息を支払ったあの銀行員であった。

 

「……どういうこと? 私たちが返したお金が、ブラックマーケットの闇銀行へ……犯罪資金になっていたってこと? 何で!?」

「そういえば、いつも返済は現金だけでしたよね。それはつまり……証拠が残らないよう……」

 

 状況証拠もあった。返済なら普通は振り込みで済むだろうというのに、毎月わざわざ現金輸送車で取りに来ていたのだ。自分たちが頑張って稼いだお金が犯罪に使われていたと知って、対策委員会のみんなは愕然とした。

 

「ま、まだそうと決まったわけでは……ハッキリとした証拠もないですし。さっきサインしてた書類なんかがあれば分かりそうですけど……でもそれはもう銀行の中で……」

「それだー! ヒフミちゃん、ナイスアイデア!」

「……ええっ?」

 

 

「申し訳ありません、融資の承認は下りませんでした。陸八魔アル様の、今後のご活躍をお祈り申し上げます」

「は?」

 

 金欠の便利屋は、ブラックマーケットの闇銀行まで融資を求めてやってきていた。しかしその承認は下りなかったのだけれども。

 

「(うぐぐ……情けない……キヴォトスいちのアウトローになるって心に決めたのに、何でこんなところで祈られているわけ?)」

 

 便利屋68には信用が足りなかった。アルは無言で憤った。

 アルがそうしていると、突然銀行内の電気が消えた。パソコンも消えて、全ての電源が落ちてしまったようだ。辺りはざわついた。そしてそのざわめきをかき消すかのように、銃声が鳴り、覆面をつけた何者かが銀行内に押し入ってきたのである。

 

「全員その場に伏せなさい! 持っている武器は捨てて、早く!」

「大人しくしてないと、蜂の巣になりますよ☆」

「あ、あはは……みなさん、ケガしないように伏せていてくださいね」

 

 それはまさしく銀行強盗であった! 電気が消えたのは、警備システムの電源を落とすためだったのだ。

 

「うちのリーダーのファウストさんはおっかないんだぞ~! ここを襲撃するって言い出したのもファウストさんなんだから~」

「ファウストって、わ、私ですか? 私がリーダーなんですか!? 言ってないですよね!? 確かに私の言葉がきっかけではありましたが!」

「我ら覆面水着団! 私はクリスティーナだお♧」

「水着は一体どこから来たの、誰も着てないでしょ!」

 

 襲撃しながら騒がしいそれを、偶然居合わせた便利屋たちは遠巻きに眺めていた。

 

「あれってさ……あの子たち何やってんの?」

「て、敵ですか!?」

「いや、狙いは私たちじゃないみたい。今は関わらないでおこう」

「銀行強盗だなんて、大胆だねー」

 

 社長を除いた3人は様子見を決め込んだ。

 

「そこのあなた、このバッグに入れて。少し前に到着した現金輸送車の……」

「はっ、はいい! な、何でも差し上げますから、命だけは!!」

『黄金様は要りません』

「そういうのはいいから、集金記録を……」

「(ブラックマーケットの銀行を襲っちゃうなんて……! や、ヤバい……カッコイイ……!)」

 

 一方でアルはアビドスのやつらであることに気づかず、その所業に目を輝かせていた。アウトローに憧れるアルの目には、闇銀行を襲う銀行強盗は非常にカッコイイものに映ったようだ。

 

「確保した」

「よ、よし! 全員撤収です!」

「アディオ~ス☆」

「や、やつらを捕らえろ!! 一人も逃すな!!」

 

 

「……撒いた?」

「いえ、まだです……もっと遠くまで離れないと……」

「(なんか重いなあ)……あっ」

「どうしたのー、シロコちゃん?」

 

 集金記録だけのはずなのに、なんだか妙に重たいバッグを開けてみると、そこには札束が詰まっていた。軽く1億円はありそうな量である。なんと、意図せず銀行強盗が成功してしまったのだ。

 

「シロコ先輩、現金を盗んじゃったの!?」

「いやこれは……銀行の人が勝手に……目当ての書類はちゃんとあるし」

「でも、こ、これさえあれば、借金がかなり楽に……!」

「ちょ、ちょっと待ってください! そのお金、使うつもりですか!?」

 

 このお金があれば、借金が返せる……そう言うセリカに、しかしホシノは強く反対した。

 

「さすがにね~、これを使うのはナシだよ。いくらお金が必要だからって、そんなことしたら本当に悪人と同じになっちゃう。そんな方法で借金を返すことに慣れちゃったら、それはもうアビドスじゃない。ただの犯罪者集団だよ」

 

 借金を返すだけならば、ノノミの持つ、燦然と輝くゴールドカード……すなわち、ノノミの実家の力で返すことができたという。しかしホシノはそれを断った。きちんとした方法で返済をしない限り、アビドスはアビドスではなくなってしまうから。だから、頂くのは書類だけだ。そう言ってホシノはみんなを説得した。

 

「でも、このお金はどうするの?」

 

 

『私にいい考えがあります!』

 

 

 

「いたぞ! こっちだ!」

「お尋ね者だ!」

「のこのこ現れるとはな!」

 

 少し人通りの多い場所に戻って来た覆面水着団は、そこで追いかけてきたマーケットガードに見つかってしまった。しかし……

 

「いくよ~、それー!」

「持ってけドロボー☆」

「あはは……ドロボーは私たち……いえなんでも!」

 

 そこで、盗んでしまったお金をばらまいたのだ!

 ここはブラックマーケット、裏社会に潜む者たちが集う街である。そこでこんな事をすれば……

 

「ラッキー!」

「金を撒いてる奴らがいるぞ!」

「カネだあーーーー!」

「ああっ! それは銀行から盗まれたお金です! 持っていかないでください!」

「うおおおお拾え拾えー!」

「こら! マーケットガード仕事しろ! 金を拾うな!!」

 

 辺りはたちまち大混乱に陥った! そして、その混乱に乗じて覆面水着団は行方をくらませたのだ!

 

「す、すごいわ……! 銀行強盗を成功させておきながら、まるでお金が目的じゃないとばかりにばら撒いちゃうなんて! これが真のアウトロー……! わあ……わああ……!」

 




ごめん大将。お金、なくなっちゃった……。

・ブラックマーケット
ブラックマーケット(店)に投資すると、並ぶ装備の数が増える。
また、プレイヤーの運が高いと品質が高いものが生成されやすくなる。

・黄金
バグアイテム。世界の終末を知らせるものとして、まことしやかに噂されている。

・ランダムイベント《発狂した金持ち》
街を歩いていただけなのに、なんか所持金が増える。ラッキー!
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