もしもアロナがエロナだったら   作:ゴールドハーブ

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イベント:アロナの祭壇

『むむむ……いちごミルク……』

 

 シャーレのオフィスにて。先生は書類と格闘しながらアロナのつぶやきを聞いていた。

 

『先生! いちごミルクが飲みたいです!』

「"の、飲んだらいいんじゃないかな"」

『キヴォトス産のいちごミルクが飲みたいんです』

「"……AIなのに?"」

『AIでもいちごミルクは飲めます!』

「"えぇ……?"」

 

 そんな会話をしながら、今日は自然な発音をするアロナだな、などと先生は考えていた。このアロナ、やはりAIなのか、時折機械音声のような声で喋るのだ。しかしその割には、また妙なことにキヴォトス産のいちごミルクが飲みたいなどと言い出したのだが。AIとはいったい……。

 

『それにやっぱり、シャーレにもアレが必要だと思うんですよ。ネットで注文しておいたので、受け取りをお願いします。あと、いちごミルクを買ってきてほしいです』

「"いちごミルクも一緒に注文すればよかったんじゃ"」

『そんな情緒のない……』

 

 

 まずシャーレに届いたのは、木の机が一つ。教室で黒板の前に置いてありそうな机である。それからテーブルクロスとキャンドルライト。テーブルクロスは白地に金色の刺繍が施され、それはまさにトリニティの雰囲気を纏っていた。

 先生は、同梱されていた納品書の金額に冷や汗をかいた。

 

「"すっごく高い……これ大丈夫なのっていうかお金はどこから……"」

『私の個人資産なので問題ないですよ』

「"……お金も持ってるんだね"」

『本物のろうそくは管理が面倒だと思ったので、キャンドルライトにしておきました。さあ、祭壇を作りましょう!』

「"祭壇……? この机と、このテーブルクロスで……?"」

『簡易的な祭壇なので仕方ありません。あんまり重いと先生が潰れちゃいます』

「"潰れないよ!"」

 

 机が重いだけで潰れる、とは。相変わらず、先生にはアロナの言い回しが時々よく分からないのであった。

 

 

 先生はアロナに促されるままに祭壇を設置した。と言っても、机にテーブルクロスを敷いて、キャンドルライトを乗せただけなのだが。

 そしていちごミルクである。先生はエンジェル24で購入したのだが、その際にもレッドウィンター産はだめとかいうアロナのこだわりがあった。何でも、奴らはプリンに全力すぎて、いちごミルクの品質がなっていないことがあるのだとか。AIは味にもうるさかった。しかしコンビニ産なのはいいのだろうか。

 先生はふと、自分は何をやらされているのだろうかと我に返った。冷静に考えて、AIのためにコンビニでいちごミルクを買ってくるって何だ……。この祭壇は、いったい何のために? 先生は手に持ったいちごミルクを見つめた。

 

「"……それで、どうすればいいのかな。四次元ポケットにでも入れるの?"」

『いえ、それは先生専用です。祭壇にいちごミルクを置いて、私に祈ってください』

「"?"」

 

 これもまた何をやらされているのかよく分からないが、言われた通り、先生は試しに祈ってみた。すると……

 

 いちごミルクは消えた。

 

 そして祭壇のテーブルクロスは薄い水色に染まり、金色だった刺繍は桃色に変化した。それはまさに、アロナの色であった。

 

「"え……!?"」

『成功です! ありがとうございます、先生!』

「"ちょ、ちょっと待って! 今怪奇現象が発生したんだけど!? ……え?"」

『またまた~、大げさですよぉ。私の祭壇ができただけじゃないですか。これくらい、キヴォトスじゃよくあることです』

「"う、うーん……そうかな……そうなのかな……"」

『うまー』

「"……"」

 

 いちごミルクはアロナに届いたらしいが、先生は頭を抱えたかった。

 

『さて、私からは何をあげましょうかね。何か欲しいものはありますか?』

「"欲しいもの……いきなり言われても"」

『金塊とかどうでしょう? 金ならたくさんありますよ~』

「"絶対持て余すからやめて?"」

『先生の好きそうなもの……うーん、この辺かなあ』

 

 アロナがそう言うと、祭壇の上におもちゃの像が現れた。台座に剣が刺さっている。

 

「"本当に出てきた……フィギュア?"」

『フィギア『伝説の剣』です。この辺は専門外なんですけど、どうですか?』

「"どこかで見たような……"」

『岩に刺さった剣を抜いて、というシチュエーションは有名ですよね』

「"……ありがとう"」

 

 鍔の形からして、先生はどこぞのゲームで見たような気がしたが、それはそれとしてもらっておくことにした。

 

『あとは、この辺も重要でしょうか。常備薬です』

 

 次に送られてきたのは、玉虫色に輝くポーション。見るだけならとても綺麗ではある。

 

「"きらきらしてるけど、これ薬なの?"」

『聖なる癒し手ジュアのポーションという、最高級の回復ポーションです。飲めばどんな傷だって一瞬で治るくらいの効力を持ちます。バリアはありますけど、うっかり被弾したら危ないですからね。こういった手段も用意しておきたいところです』

「"飲む用なんだ……"」

 

 光る液体とかいう、あまり飲みたくない見た目。その胡散臭い効力については突っ込みきれなかった。

 

『それから。その祭壇にきれいなお水を置いたら、私が祝福してあげます! できればエーテルすら混じっていないきれいな水、純水が望ましいです!』

「"……それはどうも"」

『あ、その反応は信じていませんね? 祝福された水があれば、いろんなものを祝福することができるんですから!』

「"は、はあ……"」

『むむ……祝福にはあまり馴染みがありませんか。効力を高めたり、呪いを消したり、基本的にはいい効果が起きるんですけれど。銃器を祝福すればちょっとだけ威力が上がったり。ただし、時には思わぬ効果があったりで……例えば牛乳を祝福するのは注意が必要です。身長が伸びてしまいます』

 

 身長を伸ばしたいから牛乳を飲んでいる人もいると思うのだけれども。祝福したから身長が伸びるって何だとか、銃の威力が上がるとか、呪いなんて言葉が出てきたりだとか。

 

「"なんていうか……とってもファンタジーだね"」

『優れた科学技術は魔法と見分けがつかないっ……!』

「"科学技術かなあ……?"」

 

 キヴォトスには神秘があふれているらしいとはいえ、アロナが出してくるものはファンタジーのレベルが高すぎる。いったいどういった科学技術があれば、祭壇を通して物質のやり取りができるというのか。そもそも祝福は科学じゃないのでは、と先生は思うのであった。

 

『他にもいろいろとありますが……あまり一度に送りつけるのもよくありませんか。また今度にしましょう』

「"……書類を片付けよう"」

『なら、おまけでバフをあげます』

 

 アロナは知者の加護を詠唱した。先生の頭は冴え渡った。

 

「"おおおぉ……"」

 

 アロナの詠唱で突然冴えわたる頭。やはり魔法ではと思いつつ、先生は仕事に取り掛かるのであった。

 




総決算イベント的な。

・祭壇
神に捧げ物ができる祭壇。重いが熟練の冒険者は軽くして持ち歩くという。
elonaでは捧げ物をする時だけ使用するが……まあやりとりできてもええか(適当)
神様とは夢で会えるらしい。
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