転生淫魔による立身出世と楽園都市建設計画   作:アスタロット

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異変の森

 

リラクゼーション”木の花”にも、常連客が増えてきた。

そんな得意客の一人が、冒険者のリュディだ。

彼は筋骨隆々で粗野な男だった。

ワクビスでも、腕の立つ方の冒険者である。

 

リュディは平素から女性に対して、粗暴な扱いを繰り返していた。

それも街の数少ない娼婦達に知れ渡り、お断りの要注意客としても悪名高い男だった。

彼は彼女達と同様に、店ではダキを性奴隷のように抱いた。

 

そんな仕打ちにも関わらずプレイの時間において、ダキはリュディを心から愛した。

恋人がするように彼を求め、妻のように彼に尽くした。

リュディが求める言葉をかけ、彼がダキに期待する行動を先んじてやった。

結果、彼女の”慈愛に満ちた奉仕”により男は愛に目覚めた。

 

彼はダキの店へ通い始めてから、粗野な立ち振る舞いは鳴りをひそめた。

リュディは不器用ながらも、女達に対して努めて優しくあろうとした。

組合の受付嬢に女性への贈り物のアドバイスを求めた時は、そこに居合わせた皆が大いに驚いたものだ。

そして仕舞いには、ダキに不恰好なプロポーズまでする始末。

 

その申し出に対して彼女はリュディのプライドを傷付けないよう、極めて丁重に断ったが。

 

“私のような商売女で終わるほど、あなたの器は小さくない”と。

 

リュディは心底残念がったが、あっさりと引き下がった。

ダキは上客を一人失ったと考えた。

しかし彼女の予想に反して、彼は変わらず熱心に木の花に通い続けダキへ愛を囁いた。

 

そんな男が、ある日を境にぱったりと来なくなった。

 

ダキは彼を心配した。

しかし、リュディは冒険者。

組合が斡旋する依頼の中には、商隊を護衛する内容もある。

長期遠征で不在なのだろうと彼女は考え、冒険者仲間にも尋ねることはなかった。

 

 

それと同時期。

街では、ある難事件が冒険者組合の上層部を悩ませていた。

“深き森”と呼ばれるエリアへ向かった冒険者が、立て続けに消息を断っているのだ。

 

深き森は広大な森林であり、最寄りの街はワクビスである。

森の奥には珍しい素材があるものの、強力な魔物も跋扈している。

ゆえに、そこへ向かった者の中には、帰らぬ者もいる。

しかしその数は、組合が無視できないものだった。

 

森で異変が発生した可能性がある、と組合の上層部は考えた。

 

そこで行政と協議した組合は、街から支援を受けて調査を実行した。

大量発生した魔物が森から溢れ、街へ侵攻してくる可能性もあるからだ。

 

組合は冒険者から優秀な人間を選りすぐり、調査隊を編成し、森へ向かわせた。

しかしその調査隊も甚大な被害を被った。

森から無事に返ってきた冒険者は、僅か一人。

 

その生還者による証言で、明らかになった事がある。

 

・森にいた動物や魔物が激減している事。

・水源として利用していた泉の面積が、以前よりかなり大きくなって森を侵食している事。

・泉の精霊に襲われて自分以外が殺された事(通常水の精霊はそこまで強力ではないし、害意は無い)

・殺された仲間らが、泉へ引き摺り込まれた事。

・泉に引き込まれた者は溶けて消えていった事。

 

以上の事から街と組合は重大事案”人喰い沼”の発生と認定。

その討伐を決定した。

 

“人喰い沼”は泉の精霊の特異個体とセットで存在する水辺の異変である。

泉や沼の水そのものが、動き出して襲ってくる訳ではない。

生物を溶かす水が、脅威であることに変わりはないが。

 

問題は、その主(あるじ)たる泉の精霊が、積極的に人や動物を襲い獲物を泉に捧げるのだ。

供物の地肉は、水に溶かされ泉の養分となる。

養分を得た泉は、沼となり湖となる。

その規模によって精霊も強化される。

 

危険水域の拡大を止めるには、特異個体を消滅させるしかない。

そのため早期討伐がセオリーだ。

 

過去、水辺が大きくなり強化された人喰い沼の精霊は、勇者一団によって討伐されたのが最後の記録。

人喰い沼は極めて稀にしか発生しないが、その危険性は最上級。 

冒険者組合や王国でも、資料でしかその存在を確認していない。

しかしその脅威度から、古より警告されている災厄である。

領土を巡る者同士が、これを発見すれば互いに手を取り対処する程度には。

 

しかし今、平時であるワクビスの戦力は心許ない。

街を守護する兵士の練度も低い。

向かわせた所で、餌をやりに行くようなもの。

結果として、王国と教会から専門家集団の派遣を待つこととした。

よって行政と冒険者組合の対応は、深き森へ立ち入りしないよう市民と冒険者へ注意喚起するまでにとどまった。

 

 

その水は澄みわたり、潤いを求めた生命が時折やって来る。

しかし、泉に近寄り生き永らえた者はいない。

 

その泉に湛えられた水は、命を溶かし喰らう。

その泉は、近寄る全ての生命を脅かす。

人だろうと、魔族だろうと、獣だろうと、魔物だろうと。

 

そんな恐ろしい泉に棲む、美しい女。

そう見えるソレは、泉の水で形造られ意思を持った、水または泉の精霊である。

泉の精霊は、人や魔族による泉への立ち入りをゆるさぬ訳でない。

むしろ生命を誘い込む。

 

その泉は、力ある生命を好む。

それゆえ魔物をはじめ、人間や魔族は泉の精霊により積極的に泉へ叩き込まれる。

生死を問わず。

彼らは漏れなく泉の養分となるだろう。

取り込んだ生命力が増えると共に、泉は拡大して森を侵していく。

 

本来泉の精霊は、男を誘惑し番(つがい)になる事を望む。

しかし、この精霊は特異個体。

目的は、ひたすらの拡大。

生命を取り込み、広がる脅威。

 

それは清らかな泉などではない。

生命を糧に広がる、生命の脅威であった。

 

 

無謀にも、そこへ単独で向かった剣士が一人。

女冒険者にして、リラクゼーション”木の花”の主人であるダキであった。

 

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