転生淫魔による立身出世と楽園都市建設計画   作:アスタロット

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陥穽

 

目の前に、ダキがいる。

 

彼女とは一両日だが、戦闘で背中を預け合った仲だと俺は思っている。

 

美しく、武の志も高く、素晴らしい剣士だ。

街の組合で燻らせておくのは勿体無いほどに。

 

そんなダキが無防備に、艶やかな肌を俺に晒している。

身体は密着し、互いの熱と汗と体臭が入り乱れる。

それらが焚かれた香と混じり、更に混沌とした臭気が充満している。

 

ふとした瞬間に、ダキがサイドテーブルの上に視線を向ける。

 

「んっ…あら、もう御仕舞いのお時間みたいですね。どうしますか、ルティオン様…また、延長します?」

 

そこには最後の砂粒が穴から滑り落ち、上部のガラス容器が空っぽになった時計があった。

 

俺がこれだけ必死に動いて、ダキに嬌声を上げさせても、彼女は冷静に時間を見ていた。

 

「ぜぇ…ぜぇ…くそぅ…え、延長で…」

 

一方の俺は、ずっと息が上がっている。

これほど苦しいのは戦いでもそうそう無かった。

 

体力は限界、それなのに身体は疼いて堪らない。

 

もっと彼女を味わいたい。

彼女を喰い尽くしたい。

 

俺の思考は霧に包まれていた。

そんな中、こんな楽しみを知らずに今まで生きてきた事だけは後悔していた。

 

「あんっ!ありがとう…ございます」

 

ダメだ、冷静になれない。

俺の意識全てが、彼女のソコに持っていかれるのが分かる。

 

でも

 

まだ足りない。

 

もっと気持ち良くなりたい。

 

 

ああ

 

 

どうしてこうなったんだ

 

 

 

 

ある日の事だ。

リース…いや、聖女に呼び出された。

教会ではなく、彼女の私室に。

 

リースは教会の聖女であり、俺の幼馴染だ。

 

物心ついた時から彼女とはずっと一緒だった。

お互いが成長するにつれ、彼女はとても魅力的になっていった。

以前までは、彼女を家族のように思っていた。

 

けれど、今は違う気がする。

 

なぜかわからない。

部屋に呼ばれただけで、不思議とそわそわする。

そんな浮ついた気持ちで、俺は彼女の部屋に向かった。

 

部屋に行くと、いつも通り彼女は物が少ない部屋で茶を飲んでいた。

しかし、何となくいつもと違う。

 

努めて平静を保っているような…

 

「来たよ、リース。相変わらず”出涸らし”茶を飲んでるのかい?そこまで質素倹約にしなくてもいいと思うけど」

 

「いえ!この茶葉もまだまだ頑張れます!あと三回くらい!」

 

「ほら、良い茶葉を持ってきたから。これで美味しいのを飲みなよ」

 

そんな彼女に呆れながら、茶葉の入った袋を渡す。

 

「ありがとうルティオン。また在庫が増えたわ」

 

「あのさぁリース…いい加減お茶を消費しないと、茶葉が積み上がるだけだぞ」

 

「ルティオンがくれたお茶だから…大切に飲みたいんです!保存もききますし!あ、ルティオンも飲みます?淹れましょうか?ホラ、これなんか二回目で贅沢品ですよ!」

 

そう言いながら、リースは部屋の中で干されている小袋を指差している。

おそらく、二回目の贅沢品が入っているのだろう。

 

「だから”出涸らし”はやめろって。はぁ…で、話って何?」

 

「二回目が一番美味しいのに…んんっ!!ルティオン、私的なお願いがあります。ワクビスへ向かって下さい」

 

彼女から切り出された話は、任務の依頼だった。

なぜか分からないが、少しがっかりする。

依頼なら教会に呼び出して、正式に出せばよかったのに。

 

「急にどうした、リース。君が預言した災厄は、調査隊によって終息宣言が出た筈だろ」

 

「ワクビスに向かったウォーラン兄妹が消息を断ちました」

 

柔らかかったリースの雰囲気が、聖女らしく厳粛なものに変わる。

 

俺は意外な知らせを聞いた。

ウォーラン兄妹とは何回か任務を共にしたから分かるが、彼等は優秀な冒険者だった。

そんな彼等の連絡が途絶えるのは、何か大事があったに違いない。

 

「何だって!?いやいや、もしかしたら…災厄にやられたかも」

 

ウォーラン兄妹が災厄の犠牲になったとは考えたくなかったが、消息不明の原因はこれしか有り得ない。

 

「今回の災厄は”人喰い沼”です。沼の跡地には溶かされた犠牲者達、彼らの遺留品が多数あったそうですが…ウォーラン兄妹の物は無かったようです」

 

「なら、一体どこに…そう簡単にやられる二人じゃないのは、君だって知ってるだろ」

 

「それが分からないから不安なのです。聖女として再調査の依頼を出すにしても、終息宣言を出した調査隊…彼等の面子があります。だから私的なお願いなんです」

 

「まあ、調査隊の中にお歴々がいたらしいから、その配慮は分からなくは無いけど。そこまで心配なら、預言って事にして再調査を依頼すれば良いじゃん」

 

「神からの御言葉以外、私が預言を授ける事は許されません」

 

「変な所で真面目だなぁ」

 

「お願い、ルティオン。頼れるのは貴方だけなんです」

 

リースは俺の手を取って、上目遣いで俺に乞い願う。

俺の心臓が煩くなったのが分かる。

こうなると俺は断われない。

 

「うっ………はぁ、分かったよ。で、具体的に俺は何をどうすれば良い?」

 

「ありがとうルティオン!それでですね…

 

 

 

 

森の調査を終えワクビスに戻った俺は、気づけば吸い寄せられるようダキが紹介した店に行き、予約表に名前を書いていた。

予め彼女から詳しい所在地を聞いていたので、それは迷う事なく済んだ。

 

偶然にも、翌日の早い時間に予約にする事が出来た。

宿屋に帰った俺は、そわそわしてその晩よく眠れなかった。

 

そして翌日…

 

「いらっしゃませ。ご予約ありがとございます、ルティオン様」

 

「なっ!?なんで君がこんな所に!?」

 

店で俺を出迎えたのは、つい先日、俺と共に森で戦った女性の剣士…ダキだった。

 

「私、商売女ですから」

 

「冒険者とは嘘だったのか?」

 

「勇者様相手に嘘なんて恐れ多い。私は間違いなく、ワクビスの冒険者です。それに加えて、この店の主でもございますれば」

 

「君ほどの者なら、身体を売らなくても十分以上に食べていけるだろ!なんでこんな事を」

 

「まぁまぁ、手前の事情などお気になさらず。せっかくお越しいただいたんですから。それに、童貞…捨てたいんでしょ?」

 

「ッ!…悪いけど、一時とは言え、戦友だった君を抱く訳にはいかない。それにリース…やっぱり彼女にも不義理だ。お金は置いてくから、じゃあこれで」

 

「あら、良いのですか?勇者様とあろう者が、この程度の事で恐れ慄いて…みっともない。それに、奉仕をせずに代金を受け取る事は出来ません」

 

「なら、今回の予約は取り消してほしい」

 

「ええ、ええ、それも結構です。ですが、勇者様。直前での予約を取り消し…それこそ相手に不義理では?それに、貴方のソコは、貴方の仰る事とは別のご意向があるようですけど♡」

 

ダキは視線を俺の下半身に移しながら、手を絡ませ身を寄せる。

その動きに一切の澱みは無い。

気づけばダキは両手足を蔓の如く、俺の身体に絡み付かせていた。

 

「なぁ!?」

 

「ここであった事は、誓って他言致しません。どうか、憂いのないよう。リース様のためにも、大人としての階段を昇り、技を磨いて下さいまし」

 

「あっ!がっ…な、なんだコレ…」

 

彼女は吐息を込めて、俺の耳元で囁く。

耳から頭、頭から背中、背中から腰へ。

心地の良い痺れが走り、身体が僅かに痙攣する。

 

「んふ……ふぅーーーっ♡」

 

「ぐっ…ぎぃっ…」

 

湿った吐息が耳穴に流れ込む。

身体が震える。

 

「あはぁ、お耳がお好きなようですね…特に、右耳…」

 

「わ、分かった!分かったから!さっさと終わらせよう!」

 

「ええ!ええ!勇の者は、そう来なくては!では、一人前の男子になってもらいますね♡さぁ、こちらに…」

 

俺はダキに腕を引かれ、妙な匂いの香が満ちる奥の部屋に入った。

 

俺はそこで、童貞を捨てた。

 

女性の身体は最高だった。

 

柔らかいし、匂いも、味も良い。

俺を優しく包み込んでくれるかと思えば、強烈に求めるよう刺激してくる。

 

延長に延長を重ねて、大金を失ってしまった。

 

でも構わない。

 

ふと思い返す。

 

ダキと”する”のが、なぜあんなに抵抗があったのか、理解できない。

 

ダキの身体を、もっと早く知っていれば良かった。

 

聖女には、調査に関して順調に進んでいる旨の文を送っている。

 

彼女から貰った滞在費は、とうに使い切った。

 

宿屋のランクを随分と下げて、ダキへの費用を捻出した。

追加の経費を請求するにしても、額がおかしい。

だから偶然組合にいたダキに相談した。

 

店でしている最中では、恥ずかしくて言えなかった。

 

「馬鹿者…ルティオン、お前は阿保か。お前の腕前なら幾らでも稼ぎようがあるだろう。“この街のために貢献したい”…組合で、そう言えば良い。それだけで難しい依頼を寄越すだろうさ。今となっては、私も毎日冒険者をする訳にはいかないからな。それと…今の私は冒険者だ。店でやるような受け応えは期待するな」

 

結果、俺はワクビスの冒険者組合で依頼を請ける事にした。

 

これでまたダキを味わえる。

 

あれ、何のためにここに来たんだっけ

 

まあいいか

 

 

 

 

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