淫魔がゆく ~転生淫魔の聖女的楽園建国計画~(旧題:転生淫魔による立身出世と楽園都市建設計画) 作:アスタロット
ダキはいつものように、特別室から夕暮のワクビスを静かに見下ろしていた。
街の賑わいは、まるで彼女のためにあるかのようだった。
ダキはワクビスを影から十分に支配した。
政治面ではケベック子爵を支配し、政策の意思決定に深く関与した。
経済面ではガレント商会を筆頭に、ワクビスの商人組合のネットワークを掌握。行政との癒着関係を加速させた。
花街は完全に支配し、冒険者組合は忠実な顧客兼取引先となった。
市民は慈善事業を積極的に行うダキを、聖女様として崇めている。
ケンティウス司教という、教会内部の保険も手に入れた。
政治、経済、花街、冒険者、市民、そして教会…
この街のあらゆる要素が、彼女の掌の上で踊っていた。
しかし、ダキは満足していなかった。
「一地方都市の支配など、所詮は通過点に過ぎない」
彼女は盃を回しながら、王都への足がかりを具体的に思い描いていた。
第一の手、ケベック子爵の昇進工作
彼を”平時に地方を豊かにした辣腕代官”として中央に売り込む。
リゾート計画を大々的に成功させ、王都の貴族たちに「木の花」の特別招待状を送る。
夫婦で来る貴族を、表向きは上品な保養、裏では完全なサービスで虜にする。
ケベックが王都で地位を得れば、彼を代理人として中央の派閥に影響力を広げられる。
第二の手、木の花 王都支店の構想
これがダキの最も重要な野望だった。
ワクビス本店で培ったノウハウを、そのまま王都に持ち込む。
高級温浴施設を表向きの顔にしつつ、裏では最高級のソープランドを展開。
王都の有力貴族や官僚、富裕商人たちを対象に、個室浴場を多数用意した超高級コースを設ける。
特殊ローション、魔法による温度調整、極上のマットプレイ。
ワクビスでは実現できなかった規模と贅沢さを追求する。
「王都の中心部に土地を確保できれば理想的だ。最初は小規模でも構わない。徐々に規模を拡大し、王都の花街全体を掌握する…それが”木の花王都進出プラン”」
第三の手、商人組合の中央進出
ガレント商会を通じて、王都の有力商会と提携・癒着。
高級香油、癒しの薬草、特別コースの裏サービスを慎重に広げていく。
経済的なネットワークで、中央の貴族や官僚の弱みを少しずつ握る。
第四の手、教会ルート
ケンティウス司教を介して、この教区から本部へのパイプを強化。
彼の功績もでっち上げて、昇進を工作。
ルティオンはまだ使える駒として、リースへの影響力を期待できる。
失敗すればそれまでだが、その時は勇者を切り捨てれば良い。
ダキの唇に、冷たくも、満足げな微笑みが浮かんだ。
「さあて、本当の勝負は、これからだ」
その瞬間——
ドンッ!!
ドアが、凄まじい音を立てて叩き破られた。
黒いローブを纏った男たちが、雪崩れ込むように部屋に入ってくる。
先頭に立つ男の胸には、教会のシンボルである銀色の徽章が輝いていた。
「ダキ……貴様には、淫魔の特異個体である嫌疑がかかっている。よってこれより、貴様を聖浄異端審問局が拘束する」
ダキの指から、盃が滑り落ちた。
高価なクリスタルは床に激突し、派手な音を立てて砕け散った。