淫魔がゆく ~転生淫魔の聖女的楽園建国計画~(旧題:転生淫魔による立身出世と楽園都市建設計画) 作:アスタロット
リースが去った後もダキへの拷問は容赦なく続いた。
そして数日後、教会本部地下の大審問広間にて、異端裁判が執り行われた。
中央の被告台に、鎖で厳重に拘束されたダキが立たされていた。
髪は乱れ、顔には拷問の痕が残り、かつての威厳は完全に失われていた。
裁判長が冷たい声で告げた。
「被告ダキ。貴様は上位淫魔の特異個体であるとの嫌疑に対し、如何なる弁明があるか?」
ダキは掠れた声で答えた。
「……私は……淫魔などではない……ただ、街のために……」
その瞬間、審問官の一人が大声で主張した。
「今被告は、自ら淫魔であると認めた!記録に残せ!」
ダキの目が見開かれた。
「待て……私はそんなことは一言も」
しかし、審問官たちは次々と罪状を述べた。
「被告はウォーラン兄妹を自ら殺害し、捕食したと認めた!」
「人喰い沼の災厄を自ら喰らい、力を得たと認めた!」
「山賊の根城で、大量の人間を食い散らかしたと認めた!」
ダキは鎖の中で必死に抗弁しようとしたが、声はかき消された。
審問長が重々しく頷いた。
「もはや淫魔の変異体と認めざるを得ない。変異体は、村一つを消滅させた記録もあり、極めて危険な存在である。到底存在が許される者ではない」
審問官の一人が声を張り上げた。
「そうだ!被告は、まさにこの変異体に該当する!!聖人の仮面を被り、ワクビスの街を欲望で穢し、多数の人間を食らったことは明白!これは死に値する重大な異端行為である!」
ダキは鎖の中で唇を噛み締め、静かに笑った。
(……全部……封じ込めやがって…私は一言も自白などしていないというのに……)
審問長が最終判決を下した。
「被告を上位淫魔の変異体と認定し死刑とする。処刑方法は、ワクビス中央大広場にて公開焼却。これにて閉廷とする」
ダキは虚ろな目で天井を見つめながら、心の中で呟いた。
(……裁判など……最初から茶番だったなあ……本当に腐っている……)
♢
「淫魔ダキは、聖人の仮面を被り、ワクビスを欲望で穢した。故に、当該魔物がいたこの地で、悪魔の仮面を剥ぎ、罪を晒し、浄化の炎で焼き払う。これが神の意志であり、教会の正義である」
ワクビスの街に上記の布告がなされた。
拘束されたボロボロのダキは、馬車で再びワクビスに戻された。
♢
ワクビスの中央大広場は、異様な熱気とざわめきに包まれていた。
処刑台の上に引き出されたダキは、両手を高く掲げられて鎖で吊るされている。
ダキの纏っていた白い衣装はすでに引き裂かれ、豊かな肢体が衆人環視の下に晒されている。
上級審問官の合図で、数名の屈強な酷吏が彼女を取り囲んだ。
「や……やめ……!み、見るな……!」
ダキの叫びなど無視され、男たちは容赦なく彼女の身体を弄び始めた。
胸を強く揉み、股を下品に割り、敏感な部分を衆目の前で晒した。
群衆が騒然とする中、ダキの顔は羞恥と屈辱で真っ赤に染まった。
淫魔としとの力を封じられたダキは男達は輪され、その悉くを辱められた。
(……私が……この私が……自分の街で…衆人の前で……こんな、無様な姿を……晒されている……)
その屈辱が頂点に達した頃、酷吏たちが槍と剣を手に取った。
「浄化の儀、第一!」
最初の槍が、ダキの肩を深く突き刺した。
「ぐあぁっ……!!」
鋭い痛みが身体を貫く。
続けて二本目の槍が脇腹を、剣が太ももを切り裂いた。
いずれも祝福を施されたものである。
血が滴り落ち、ダキの白い肌を赤く染めていく。
「熱い……痛い……!やめて……もう……やめてぇ……!!」
彼女は鎖に繋がれたまま激しく身をよじったが、逃げられない。
かつてワクビスで頂点に君臨した女の、惨めで残酷な公開処刑だった。
審問官が冷たく告げた。
「これで罪を洗い流せ、淫魔。浄化の儀、第二!」
ダキは大きな柱に磔にされた。
手足を大きく広げられ、釘で打ち付けられる。
「うぎぃっ……あっ…があぁぁあ……!」
流血は続き、ダキは惨めな姿を群衆に晒し続けられた。
そして…
「浄化の儀、第三!」
浄化の炎が、たちまちに燃え上がった。
炎はダキの足元から這い上がり、全身を包み込む。
焼ける痛みと、槍や剣で受けた傷の痛みが混じり合う。
彼女は喉を鳴らし限界まで絶叫した。
「あぁぁぁぁぁっ……!!熱い……痛い……痛いっ……!!私は……頂点に……いたのにぃ……!楽園を……夢見て……いただけ…なのに……!こんな……衆人環視で……辱められて……刺されて……焼かれて……終わるなんて……!!」
ダキの瞳から大粒の涙が溢れ、壊れたように泣き叫んだ。
「あ……ああ…無駄だった……私の……すべてが……無駄だった……私は……ぁぁ……やだ…死にたくない…まだ死にたくない…あぁっ…あぁぁぁぉぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
炎が彼女の全身を飲み込み、髪を焼き、肌を焦がし、全身を浄化していく。
その瞬間——
パキン……パキパキパキッ!!
何かが砕ける音が連続して響いた。
ダキの頭部から美しい角が二本生え、背中から大きな羽が広がり、腰からは長く鋭い尻尾が激しく暴れ出した。
群衆から恐怖の悲鳴が上がる。
ダキは炎の中で、壊れたように笑いながら叫んだ。
「はは……はははは……!見ろ……これが私の本性だ……!私は淫魔だ……!」
炎は容赦なく彼女の身体を飲み込み、角も羽も尻尾も激しく燃え上がった。
最後に、ダキは小さく、力なく呟いた。
「……リース……お前を……絶対に……」
炎は容赦なくダキを焼き続けた。
遂にその身体は、浄化の炎の中で灰燼と帰した。
ダキの遺灰を回収しようと、審問官が焼け跡に近づく。
すると、一陣の風が吹いた。
灰が風に舞う。
残るのは磔に使用された、黒焦げの柱のみ。
灰は風に乗る
遠く遠くへ
そして、それは
かつて賊の根城であった、砦跡へ辿り着いた