淫魔がゆく ~転生淫魔の聖女的楽園建国計画~(旧題:転生淫魔による立身出世と楽園都市建設計画) 作:アスタロット
ルンビニィの里に、暗い影がやってきた。
村の入り口に不穏な空気を醸し出す、五人の男たちが唐突に現れたのだ。
彼等は黒いローブを纏い、胸に教会の徽章がある。
教会の異端審問官だった。
何事かと村長が怯えながら対応する中、彼らは一人の女性を求めた。
「この村に、銀の髪をした怪しい女がいると聞いた。そいつを出せ」
村人たちは慌てふためくが、女は自ら進み出た。
審問官たちは女を村の外れにある、古い小屋へと連れ込んだ。
その瞬間、ユーリが叫びながら飛び出した。
彼は女に愛の告白をした、村の青年である。
「待てっ!姉さんを連れて行くんじゃねえ!!」
若い体で審問官の一人に掴みかかろうとしたユーリは、顔面を強烈に殴られ、地面に叩きつけられた。
「下郎の民が!我らの聖なる行いを邪魔しおって!!よもや貴様が異端ではないのか!」
それでも彼は這いずりながら必死に叫んだ。
「やめろ! やめてくれ!!銀の姉さんは何も悪いことしてねえ!村のみんなの大事な人なんだよ!!みんなの……みんなの……姉さんなんだよ!!」
血の混じった涙を流しながら、ユーリは地面を叩き、声を枯らして叫び続けた。
「ユーリ!?やめて下さいっ…お願いします…大丈夫、ユーリ…私は、大丈夫ですから…」
小屋の扉が閉まる。
中から、男たちの低い笑い声と、女の抑えた苦しげな声が、断続的に漏れ聞こえてきた。
ユーリは小屋の前で膝を抱え、嗚咽を漏らしながら何度も頭を地面に打ち付けた。
「くそ……くそっ……!俺が……俺が弱いから……!姉さんが……あんな奴らに……!俺のせいだ……全部俺のせいだ……!!」
時間が、恐ろしく長く感じられた。
やがて、小屋の扉が開いた。
審問官たちは満足げな顔で出てきて、村長にじゃらじゃらと音が鳴る子袋を投げつけた。
「信心深い女であったがゆえ、今回は見逃す。これはその、信仰に対する恩賜である。ゆめゆめ神への信仰を忘れるでないぞ…ハッハッハッ!」
審問官たちが去った後、村人たちが小屋に雪崩れ込んだ。
女は床の上で、ぐったりと壁にもたれかかっていた。
銀の髪は乱れ、頰や首筋には指の跡や痣がいくつも浮かび上がっていた。
服は大きく乱れ、身体の至るところに男たちの残した体液がべっとりと付着し、肌を汚していた。
むせ返るような悪臭が、小屋の中に充満していた。
「姉さん……!」
村人たちが息を呑む中、ユーリが真っ先に駆け寄ろうとした。
「姉さん…ッ!!大丈夫か!?」
その瞬間、女は弱々しく手を伸ばし、ユーリを制した。
「……触らないで……ユーリ……私……今、とても汚い……触ったら……あなたまで汚れてしまう……」
その声は掠れ、震えていた。
村の女達は男衆を直ちに下がらせた。
そして素早く動き、熱い湯を沸かし、柔らかい布で女の身体を丁寧に拭き始めた。
体液を拭い取り、痣や擦り傷に薬草を塗り、乱れた髪を優しく梳いた。
その最中だ。
女は静かに目を閉じ、胸の奥に強烈な違和感を覚えていた。
(……おかしい……)
身体は痛いはずだった。
腰も下腹部も、激しい痛みと倦怠感に襲われているはずだった。
なのに内側から、熱い活力がじわじわと満ちてくる。
心臓の鼓動が少しずつ力強くなり、疲労していた筋肉に力が戻っていく。
輪され、散々汚された直後だというのに、むしろ体調が良くなっている。
まるで、男たちから何か大切なものを吸い取ったかのように。
(どうして……?私は……傷つけられたばかりなのに……なぜ、こんなに……身体が、軽い……?気持ち悪い……この感覚……何なの……?)
女は唇を強く噛んだ。
不気味で、得体の知れないこの感覚に、強い嫌悪と困惑を覚えていた。
まるで自分の身体が、自分自身ではないかのような。
そんな異物感。
村の女衆が介抱を終え、温かい毛布をかけた頃、女は弱々しく微笑んだ。
「……ユーリ……みんな……心配かけて、ごめんなさい……私は……大丈夫……大丈夫ですから……」
その夜、女は一人、静かに空を見上げていた。
胸の奥で疼く違和感は、なかなか消えなかった。
「私は……こんな屈辱に、慣れていた……?それとも……これは……私の身体が……何か……おかしい……?」
銀の髪が、月明かりに青く照らされていた。