淫魔がゆく ~転生淫魔の成り上がり~(旧題:転生淫魔による立身出世と楽園都市建設計画) 作:アスタロット
ルンビニィの里を離れて数日。
私はユーリを連れて、ようやくあの場所に戻ってきた。
ここは私がこの世界に蘇った場所、かつて賊の根城だった場所。
今は完全に廃墟だ。
崩れた石壁、黒く焦げた木材の残骸、所々に残る血痕。
拠点として居着いていた賊いなくなってから、尚更荒廃が進んでいるはず。
相変わらず寂しい光景だよ。
私は砦の中央に立ち、ゆっくりと周囲を見回した。
「ようやく戻ってきた。ここから、再び始まるか…」
ユーリは荒れた景色を見て、少し不安げに言った。
「し、師匠。ここ、すごい荒れてますね。本当にここを拠点にするんですか?」
私は小さく笑って答えた。
「おい!この馬鹿野郎!よく聞け、いいか。ここをキャンプ地とする!」
「えぇっ!?ば、馬鹿野郎なんて、師匠酷い…」
い、いけない。
テンションが上がって巫山戯過ぎた。
「ごめん…一度言ってみたくて」
「?は、はぁ…」
「ん゛ん゛っ…ここは私が灰になって、また生まれた…思い出の地?因縁の地?…まぁそんな感じの場所よ」
私は崩れた壁に手を置き、冷たい微笑みを浮かべた。
ここからすべてをやり直そう。
私はユーリに向き直り、淡々と言った。
「まずはこの砦跡を最低限住めるようにしましょう。壁の修復、水場の確保、簡単な柵……ユーリ、力仕事も修行の内。ほら、手伝いなさい。やる事は山積みよ」
ユーリは少し不安げにしながらも、力強く頷いた。
「わかりました師匠!俺、力仕事は得意です」
数日間、私はユーリと一緒に朝から晩まで砦の整備に没頭した。
かつて政治をしていた私が、まさか廃屋からやり直しとはね。
まあ、DIYとか好きだから良いんだけど。
早くステップアップして、都市計画したいなぁ!!
そんな感じで、前世の知識を少しずつ使いながら、効率的に作業を進める。
ユーリは素直に働き、石を運び、木材を切り、柵を組む。
時々私がアドバイスを入れると、素直に聞き入れて修正する。
ある夕方、汗だくで石を運ぶユーリを見て、私はふと言った。
「……ユーリ。何度も聞くようで悪いんだけど、あなた本当に、私についてきて後悔しないの?」
ユーリは石を下ろし、真剣な目で答えた。
「後悔なんて、しません。師匠がどんな人でも……俺は、師匠の側にいたいんです」
私は小さく笑った。
私を好きになんてならなければ、これから苦労せずに済むのに。
「……あなたって本当に…本っ当に馬鹿ね。これから結構な修羅場をくぐることになるわよ?マジで死ぬわよ?」
ユーリははっきりと言った。
「……それでも、俺は師匠の側にいたい」
私はユーリの純粋な瞳を見て、少し後ろめたくなった。
「…ありがとうね。私も、その想いに応えるとしましょう」
その夜、私はユーリに言った。
「この砦をある程度整えたら、周辺の山賊を吸収します。まずは近くにいるザグレフ一味という賊の集団。最近力を付けてきた勢力らしいわ。ユーリ、一緒に来なさい。これは修行よ、命を張ったね」
ユーリは目を輝かせて頷いた。
翌日、私とユーリはザグレフの隠れ家に乗り込んだ。
この砦にいた賊共が全滅してから、周辺で頭角を現しはじめた荒くれ者の集団だ。
私達はツーマンセルで攻め込み、瞬く間に山賊たちを追い詰めた。
私は徒手で容赦なく敵を無力化し、ユーリも必死に後方を支える。
やがて、頭目のザグレフが前におどり出た。
筋骨隆々の体躯に相応しい、巨大な棍棒を構えている。
「……待てぃ!!このままじゃあ全滅だ。一騎打ちを申し込む!俺が勝てば、そうだなぁ…女ァ!お前の身体を好きにさせてもらう!」
私はザグレフを見据え、ユーリに言った。
「よろしい…ユーリ、お前が相手をしなさい。教えを忘れるな」
ユーリは緊張しながら木刀を構えた。
ザグレフの力任せの攻撃を、ユーリは私の教え通り間合いを外して躱し、隙を突いてカウンターを入れる。
重い攻撃を何度も読み、効率的にダメージを与えていく。
十数回の打ち合い。
最終的に、ユーリの木刀がザグレフの喉元に突きつけられた。
この短期間でここまで成長するとか、物語の主人公かよユーリ。
かなりの嫉妬心を覚える。
まあ、それはそれとして。
ザグレフは膝をつき、悔しそうに頭を垂れた。
私は静かに歩み寄り、冷たい声で言った。
「約束よ。お前たちは今から私の教えに従いなさい。欲望を肯定し、心の枷を外す……私の信徒として」
ザグレフは深く頭を垂れた。
「……わかった。お前が本物の強者なら、俺は喜んでその下につく。だが、俺らにも生活がある。しっかり養ってもらわねえと、困るぜ?」
私は小さく微笑んだ。
「もちろん、最低限の報酬は約束する。それに…もし成果を挙げた者がいれば、酒池肉林を味合わせても良いわ。それが特別な成果なら、私自ら…」
「ッ!?…し、師匠!!それは、俺も入りますか?」
「「…えっ?」」
私とザグレフの間に、ユーリが割って入ってきた。
「俺が活躍すれば、その酒池肉林ってのをくれますか?」
「なんでい坊主…強えクセして処男か?」
ユーリに負けたにも関わらず、ザグレフは揶揄うような目で彼を見る。
「はい!師匠は、将来のお嫁さんのために”初めて”は取っておけ、って言うんですけど。俺は…師匠に捧げたいです!」
「へえ…可愛いお弟子さんが、そう言ってるぜ。なぁ、お師匠さん?」
クッソやろう。
コイツ、私達に負けたクセして図々しいなあ。
まあ、それくらい図太く無いと賊の頭目なんてできないか。
「まあ、成果を挙げたなら…」
ユーリも少しは成長した、精神も。
このザグレフは経験も統率力もあるし、図太い。
こうして、ザグレフ一味は最初の信者として、私の配下に加わった。
砦の労働力は、これでようやく形になり始めた。