淫魔がゆく ~転生淫魔の成り上がり~(旧題:転生淫魔による立身出世と楽園都市建設計画)   作:アスタロット

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『木の花』の女たち

 

ダキがワクビスで処刑されてから『木の花』の状況は悲惨なものだった。

 

かつては高級店として賑わっていたこの場所は、今や見る影もなくない。

 

看板は色褪せ、客足は激減。

 

ダキという最大の看板を失ったことで、上客の多くが離れていった。

 

残った客は質が落ち、単価も大幅に低下。

 

「魔物が経営していた店」という話が広まり、新規の客も寄り付かぬ。

 

一方で、行政や教会による締め付けも苛烈を極めていた。

定期的な監査、寺銭や税の不当な増額、営業時間の制限、あらゆる制約が店の営業を締め付けた。

 

エザルドが必死に店を守ろうとしているが、経営は赤字続き。

 

商人組合や冒険者組合との関係も悪化して、材料費や護衛費は増える一方。

従業員への給金も遅れ始め、キャスト達の士気は著しく低下していた。

 

エザルドはカウンターに肘をつき、ため息を吐いた。

 

「……もう、限界かしら。このままじゃ、店を畳むしかないわ……」

 

『木の花』では、そんな暗い日々が続いていた。

 

 

 

 

ユーリはザグレフが選んだ二人の護衛と共に、砦を出てしばらく。

 

森を抜け、街道を進みながら、彼は何度も師匠の言葉を胸の中で繰り返していた。

 

(師匠……俺、絶対に失敗しない。エザルドさんたちを、ちゃんと連れて帰る……!) 

 

同行者の一人、屈強な男が低い声で言った。

 

「坊主、顔が強張ってるぞ。緊張しすぎだ」

 

もう一人の、道に詳しい瘦せ型の男も苦笑した。

 

「まあ、焦るな。ワクビスはもうすぐだ。おめぇ、顔は知られてねえんだろ?なら変に目立たなきゃ、問題はねぇはずさ」

 

ユーリは小さく頷いたが、心臓の脈は不安で速まる一方だった。

 

(世間では、師匠は死んだ事になってる……それなのに、生きてて、銀髪になって……本当に、エザルドさんたちが、信じてくれるかな……)

 

三人は無事ワクビスへ到着した。

そして人混みに紛れ、花街へと足を踏み入れた。

 

そうして歩みを進める中、やっと目的としていた『木の花』と書かれた色褪せた看板が見えた。

瞬間、ユーリの足が自然と速くなった。

 

同行者二名を店の出口付近に待たせて、店内に入る。

すると、馴染みのある甘い香りが鼻をつく。

ダキの身体と似た匂い。

 

カウンターにいた女性が、こちらを見て眉をひそめた。

 

「誰?新顔ね…どのコースが良いかしら?」

 

ユーリは深く息を吸い、手紙を彼女に差し出した。

 

「えっと、エザルドさん……ですか?師匠からの手紙を預かってきました」

 

「は?アンタだれよ?それに師匠ってなに?あのねぇ…客じゃないなら、帰って欲しいんだけど…こっちは仕事中なの…おわかり?坊や」

 

「お、俺はユーリといいます。師匠の名は、ダキ」

 

エザルドの表情が一瞬で凍りついた。

 

「……は?」

 

ユーリは言葉を続けた。

 

「師匠は生きています。銀髪になって、アジトで待っています。みんなを……連れてきてほしいと」

 

エザルドは渡された手紙を握りしめ、震える声で言った。

 

「……ふざけないで。私は……あの人…いえ、あのバケモノが焼かれるところを、この目で見たのよ……?そうよ…それこそ、灰になるまで!!……それなのに、生きてるって……どういうこと……?冗談でもそんな事は言わないで!!!」

 

エザルドはカウンターを手のひらで叩き、そう叫んだ。

店内にいた他の娼婦たちも、ざわつきながら近づいてきた。

 

「エザルドさんが信じてくれなったらコレを…って」

 

ユーリはエザルドに木箱を渡した。

彼女はそれをユーリから奪い取り、乱暴に開けた。

 

中から出てきたのは、明らかに使用済みのパンティーだった。

 

「……は?いったい何のつもりよ……?」

 

彼女は一瞬、嫌悪の表情を浮かべたが、次の瞬間だった。

パンティーを鼻に近づけた途端、身体がびくりと震えた。

 

「ふぐぅ……んんっ!?」

 

くん…くんくん…

 

エザルドはパンティーを両手で握り、顔を深く埋めるようにして嗅いだ。

 

スゥーッ…ハァーッ…

 

「ん……っ……この匂い……!」

 

彼女の瞳がとろけ、頰が真っ赤に染まっていく。

 

「はぁ……っ……あのバカの……このメス臭……くっさ…頭がクラクラする……箱に入れる直前まで履いてたやつね、コレ……このシミがある部分……まだ匂いが残ってる……」

 

エザルドは我慢できなくなったように、パンティーを鼻と口に押しつけ、深く深く嗅ぎ続けた。

 

すんっ…すんすんっ…

 

「んふ……っ……くっさぁ……でも……最高……

この下品で、むせ返るような……あの人の匂い……ああ……やば…頭おかしくなる……」

 

彼女の太ももが小さく擦れ合い、息が荒く熱を帯びていく。

 

エザルドはしばらくの間、満足するまでパンティーに顔を埋め、夢中になって匂いを嗅ぎ続けていた。

 

他の娼婦たちが呆然と見守る中、エザルドはようやく顔を上げ、潤んだ目でユーリを睨んだ。

 

「……はぁ……はぁ……間違いない……あの女のアソコの匂いよ……ダキは生きてる……本当に生きてるのね……」

 

彼女はパンティーを胸に押し当て、照れと興奮を隠すように乱暴に言った。

 

「……ふざけないでよ……死んだと思って散々泣いたのに……こんな下品な証拠で信じさせるとか……ほんっとうに最低な女……」

 

エザルドは深く息を吐き、決意を固めた声で続けた。

 

「……行くわよ。あのバカのところに。ただし、条件があるわ。『私たちは慰み者じゃない。娼婦として、ちゃんと対等に扱え』って言うからね」

 

その日の以降、『木の花』はもぬけの殻となった。

 

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