淫魔がゆく ~転生淫魔の成り上がり~(旧題:転生淫魔による立身出世と楽園都市建設計画) 作:アスタロット
ーエザルドへー
久しぶりね、驚かせてごめんなさい。
私は生きている。
灰から甦り、銀の髪を持ってこの地にいるわ。
率直に話しましょう。
すでに、『木の花』がないかもしれない。
教会や街の締め付けが強まれば、店を続けていくのは困難でしょう。
それでも、もし今も貴女達が健在なら、提案がある。
私は国境にあるアジトを起点に、自分の国を興すつもりよ。
そのために、貴女たちが必要。
要点は以下の通り。
1. 私のもとに来なさい。 将来、私が建国する際の基盤となる場所になる。 私が貴女たちを守る。 移動中はユーリと護衛が同行する。 到着後は、安心して暮らせる環境を整えておく。 私が生きていることがバレた場合の追及からも、責任を持って守る。
2. 仕事は、すでに手駒にした男衆の相手をしてもらう事。
彼らは実戦経験はあるものの、多少無作法。 私が到着するまでに、ある程度躾けておくつもりだから安心して。
3. 希望する者には報酬の一つとして、永遠の若さと美貌を与える。老いも、衰えも、異性に相手にされなくなる恐怖も、すべてから解放してあげる。 ただし、大きな代償もあるので無理強いはしない。自分の意志で選びなさい。
4. 家族を養っている者がいるなら、纏めて連れてきなさい。私の方で面倒を見る。安心して連れてくるといい。
5. もしワクビスに残ることを選ぶなら、『木の花』は好きにすればいい。 ただし、当面の間は支援を期待しない事。
また、私の生存と居場所は決して口外しないこと。 口外した者は粛清する。
エザルド。
貴女は私の右腕として、特別に期待している。
貴女が来てくれれば、他の者たちもついてくるはず。
私は待っている。
ー貴女の愛するご主人様よりー
追伸
私からの贈り物、喜んでもらえたかしら?
それを使って自慰活動も良いけど。
また会えたら、もっと楽しませてあげる。
それじゃ、また。
♢
パンティーの放つ芳しい香りにより、エザルドは大いに興奮した。
冷静になったエザルドは、ユーリから手渡された手紙をカウンターの上でじっと見つめていた。
しかしダキの使いを名乗る少年ユーリは、肝心の詳細に関しては何も言わない。
手紙を読み終えた彼女の指が、わずかに震えていた。
「ッ!?…あのバカ……最後まで人を揶揄って!…はぁ」
彼女は深く息を吐き、店内にいる他の娼婦たちを呼び集めた。
「みんな、聞いて。大事な話があるの」
エザルドは手紙の内容を簡潔に伝え、ダキが生きていること、そして国境付近にある砦跡で待っていることを説明した。
店内は一瞬、静まり返った。
キャストの一人が震える声で言った。
「……姐さんが、本当に……?……本当に生きてるの……?」
別のキャストも信じられないという顔で呟いた。
「でも……姐さん…処刑されたはずじゃ……」
エザルドはダキが履いていたパンティーを軽く掲げ、苦笑した。
「この匂いで、間違いないわ。あのバカにしか出せない…鼻をつく、すっごく下品な匂いよ」
彼女は皆を見回し、強い口調で続けた。
「私は行くわ。ダキのところに。……みんなは、どうする?このままここに残るなら、残ればいい。でも正直に言うわ、ここはもう限界」
女たちの表情が一様に曇る。
皆、店の危機的な経営状況は十分に理解していた。
「店に対する締め付けは日増しに強くなる一方。客は減る、給金は遅れる……このままじゃ、遠からずこの店は潰れるわ」
エザルドは少し間を置いて、静かに続けた。
「あいつは、希望する者には永遠の若さと美貌を与えると言っている。どんな方法かは知らないけどね。……でも、私は行く。アンタたちも行くなら、家族ごと連れて来なさい。あいつなら、ちゃんと面倒を見てくれるはずよ」
店内に長い沈黙が落ちた。
やがて、一人のキャストが口を開いた。
「……私も行く。このまんまじゃ、野垂れ死によ。そんなのイヤ」
次々と、手を挙げる者が増えていった。
「私も……このままじゃ先が見えないもの」
「他は?店に残りたい子はいる?いないの?」
エザルドは皆を見回し、力強く頷く。
皆が、設備が整った「木の花」から去るのを決意した。
それほどまでに、彼女たちは追い詰められていた。
「わかった…『木の花』のメンバー全員と、その家族を連れて行くわ。……多人数になるから、移動は慎重にやらなきゃいけない」
彼女はユーリに向き直った。
「ユーリ、って言ったかしら?全員で行くわ。家族も連れて。ただし、大人数の移動は目立つ。そうね……ガレントさんを頼ろうかしら。あの人が協力してくれれば、行商に紛れて移動できるはずよ」
ユーリは驚きながらも、嬉しそうに頷いた。
「はいっ!!わかりました!師匠も喜びます、ありがとうございます!」
♢
その後、エザルドはガレント商会を訪れた。
ガレントは応接室で彼女を迎え入れ、丁寧に頭を下げた。
「お久しぶりですね、エザルドさん。突然のご来訪、驚きました。何かお困りごとでも?」
エザルドはストレートに切り出した。
「ガレントさん、率直に言うわ。私と仲間で、ワクビスを離れたいの。詳しい事情は今は言えないけど…教会の目が厳しくて、このままじゃ店を続けていくのが難しくなってきた」
彼女は少し前傾みになり、声を低くした。
「そこで提案があるの。新たなビジネスチャンスよ」
「…ほう。どうぞ、続けてください」
「国境近くに、新しい交易ルートを開拓できるかもしれない。私たちと一緒に、行商の形を取って向かってくれないかしら?私たちもそれに混じって同行するわ。最低限の護衛はこちらで用意する。向こうに着いたら”信頼できるビジネスパートナー”を紹介するから」
ガレントは指を顎に当て、考え込んだ。
「新たなビジネスパートナーですか……魅力的なお話ではありますが、いかんせんリスクも大きいですね。いきなり、そんな大掛かりな移動を……」
エザルドは即座に畳みかけた。
「危険は承知よ。でも成功すれば、今の苦しい状況を打開するきっかけにもなるはず。何なら行商は見掛け倒しでもいい。どう?今のあなたにとっても、悪い話じゃないと思うんだけど」
ガレントは長い沈黙の後、ゆっくりと息を吐いた。
「……わかりました。エザルドさんのご依頼ですし…無下にはできませんね。ただし、詳細は移動中に伺わせていただきます。可能な限り協力しましょう」
「ありがとう、恩に切るわ。できる限り急ぎで頼むわね」