淫魔がゆく ~転生淫魔の成り上がり~(旧題:転生淫魔による立身出世と楽園都市建設計画)   作:アスタロット

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再会と再開

 

ユーリがワクビスへ旅立ってから、およそ二週間が経っていた。

 

その間の私に、手を休める暇はいっさい無かった。

 

ザグレフ一味の規律教育、周辺の賊の討伐や調伏、軍事訓練、砦の修復、開墾、水路工事etc…

やるべきことが山積みで、毎日が目まぐるしかった。

 

私はほとんど眠らずに動き続けていた。

魔物の肉体でなければ、過労死するのは必至だ。

 

「もしユーリがエザルドたちを連れてこれなかったら……?最悪、彼らが捕まり、口を割ったりしたら……そうじゃなくても…時間がかかり過ぎたら…?きっとこの砦は瓦解する。ザグレフたちも見限るだろう……また、すべてを失う……?」

 

不安が私を焦らせていた。

 

肉体は魔物として疲れにくいはずなのに。

精神的なプレッシャーが、肉体を疲弊させる。

 

焚き火の前で膝を抱えて座りながら、私は独り俯いて呟いた。

 

「……やる事が……やる事が多い……!!一人で全部回してるようなもんじゃないの……あー…ブレーン……参謀が欲しい……優秀な参謀が!!はぁ……どこかに落ちてないかなぁ…官兵衛殿とか崇伝和尚とか…あっ…できれば天海僧正みたいな人が良いなぁ…」

 

傑物がそこら辺に居る筈が無い、そんな事は百も承知だ。

だが現実逃避は止まらない。

 

「ああ…もしユーリが失敗したら……どうしよう……」

 

私は髪を乱雑にかきむしり、独り言を続けた。

 

「だあ゛ーっ!!忙しい!忙し過ぎる!!……もういっその事、私がワクビスへ行けば……!!いやいや、髪色が違うとは言え、面が割れている…さすがに危険すぎる…ダメだぁ……もう無理だぁ…あぁ…早く来てくれ、ユーリ……何としても、絶対に……」

 

その翌日の夕暮れだ。

ようやく待ち望んでいた一行が、やってきた。

 

私は砦の入口で、遠くから近づいてくる一団を迎えていた。

行商に紛れてここまで来たのか。

ガレントが同行しており、何となく分かった。

エザルドがうまくやったようだ。

道中も問題なかったのだろう、皆表情は明るい。

 

反対に彼らを出迎える私は、激務と不安のせいでかなり窶れていた。

 

髪は少し乱れ、全身は疲労感に包まれ、肩に力が入っていない。

 

ユーリは砦の変化を見て目を丸くし、駆け寄ってきた。

 

「師匠……!?これ……俺が行っている間に……こんなに……!?」

 

エザルドも驚いた顔で周囲を見回した。

 

「……へえ。ただの廃墟だと思ってたのに……随分と頑張ったのね、あんた」

 

彼らのために、色々と頑張った甲斐がある。

私は疲れ切った笑みを浮かべ、声を少し震わせながら一行を迎え入れた。

 

「……おかえり、ユーリ。本当に……よく戻ってきてくれたわ……私は……ずっと不安だったのよ。もしユーリが失敗したら……エザルドたちが来てくれなかったら……この砦は、すべてが崩れてしまうんじゃないかって……毎日、それが頭から離れなくて……」

 

私はユーリを抱きしめて、心から彼に感謝した。

 

「あっ!?むぐぅっ…!?っぷはぁ…し、師匠…ふごっ…む、胸…胸があたって……あっ…師匠の…匂い…うっ」

 

感謝の印に、オッパイ当ててんのよ。

 

私はご褒美でユーリを抱きしめたまま、エザルド達に向けて言葉を続けた。

 

「……ありがとう。本当に……ありがとう。エザルド……みんなも、来てくれて……心から感謝するわ。正直……もう限界だった……貴女たちが来てくれたおかげで、やっと……やっと息が出来る……」

 

エザルドは私の窶れた顔を見て、眉をひそめた。

 

「あ、あんた…大丈夫?随分と疲れてるじゃない。顔色が悪いわよ。私たちが来るまで、ずっと一人で抱え込んでたの?」

 

私は苦笑いしかできなかった。

 

「ええ……気を使うのが一番疲れるのよね……もうバレてるから言うけど…肉体は魔物だから平気。けど……不安で眠れなくて……でも、もう大丈夫……みんなが来てくれたから……」

 

ストレスは魔物を殺すのだ。

正直、どこかの森でひっそりと暮らした方が、生きるだけなら楽だと、何回後悔したことか。

 

そのくらい不安だった、本当に。

でも、これでエザルドたちも、その家族も、すべて私の手中に収まった。

 

これで、次の段階に進める。

 

 

一行が砦の広場に足を踏み入れると、ザグレフとその一味が遠巻きに様子を窺っていた。

 

私は疲れた体を無理やり引きずるようにして、エザルドの前に立った。

 

「……本当に、来てくれてありがとう。家族も一緒に連れてきてくれたのね……思ったより大所帯で、少し驚いたわ。ガレントも、本当にありがとう」

 

「滅相もありません。まさかダキ様も、本当に生きていらっしゃるとは…驚きました。本当にご本人で?」

 

「さぁ?どうかしら。その判断は貴方にお任せするわ。いずれにしても…色々と苦労かけた事でしょう…ごめんなさい。いずれ貴方にも、必ず報いてみせるから」

 

エザルドは腕を組み、いつもの強気な目で私を睨みつけている。

しかし、その視線には心配の色が混じっていた。

 

「当たり前でしょ。あんたが死んだと思って散々泣いたんだから……今度は勝手に死んだりしないでよね。それに、さっきも言ったけど…顔、相当やつれてるわよ。本当に大丈夫なの?」

 

私は小さく笑って首を振った。

 

「気疲れが少し溜まっただけ。ユーリが無事に戻ってきて……みんなも来てくれたから、もう大丈夫よ」

 

その後、私は一行を案内しながら、簡易的に整備した宿舎と食料庫を見せた。

 

子供を抱いた女性、年老いた親を持つ者も何人かいる。

彼らの不安げな顔を見て、私は言った。

 

「ここはまだ未完成だけど……安全は私が保証する。食料も当分は持つように手配してあるわ。そして……」

 

私はエザルドを少し離れた場所に連れて行き、小声で続けた。

 

「貴女たちには、特別な報酬を用意してある。ただし……それは後で、ゆっくり話しましょう。今はまず、休んでもらうことが優先ね」

 

エザルドは私をじっと見つめ、ため息をついた。

 

「……あんた、相変わらず何か企んでる顔してるわね。まあいいわ。あたしたちはもう、あんたについてくって決めたんだから。ただし、慰み者扱いは絶対に許さないわよ?」

 

「ふふっ、わかってるわ。貴女たちは『木の花』の誇りある娼婦たち……そのプライドは、私が一番よく知っているもの」

 

これで、ようやく基盤が整った。

ザグレフたちへの報酬も確保できた。

次は彼らをどう統制するか。

そして…これから重要なのは、より強固な力にするための”儀式”を、エザルドに持ちかけるタイミング。

 

その夜、久しぶりに女性の声が混じる賑やかな声が響いた。

私は少し離れた高台から、それを見下ろしていた。

夜風で髪がなびく中、私はやっと落ち着いて笑う事ができた。

 

覇道でも王道でもない。

我が邪道は、始まったばかり。

これからが、本当の勝負だ。

 

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