都内某所、「割烹たちかわ」
この一室で、ある二人の政治家が酒を酌み交わす。
しかし、その席は対座しておらず、隣り合わせ。
この者達を知らぬ者が見れば、まるで見目麗しい女性が老人を接待しているように見えるだろう。
しかし、内情は全く異なる。
老年の男性は、石倉重五郎(いしくらじゅうごろう)
首相経験者で、石倉派を率いる与党の重鎮である。
一方の人物は新興政党”性政党”の党首、立川荼吉夫(たちかわたきお)。
性活動の活性化を公約とする、異色の政治家である。
容姿は女だが、立派な成人男性である。
共に議会で権謀術数を巡らす政治家だ。
「本日はお越し下さり有難うございます、石倉先生」
「こうやって、ワシと立川君が一献酌み交わすのも久しいな。また美人になったか?」
「冗談はおやめください先生、私男ですよ?とはいえ、ええ…まぁ…これでも、新興宗教の開祖ですから。努力していますよ、色々と…」
「努力、か…それと、近頃は随分と世間を賑わせているじゃあないか。経歴詐称ならまだしも、地上波で連日のごとく、年齢と性別を疑われている議員は君くらいだよ」
「ふふふっ…いくら私を調べ上げても、公表している以上の事は出ませんと申し上げているのに。揚げ足取りの皆さんは、ご苦労な事です。ちゃんと中年の男性なんですけどね」
「それが信じられんから、みな騒いでいるんだろうよ。世の男女から、渇望の眼差しで見つめられるのはどんな気分かね?まるでアイドルじゃあないか」
「ええ、まぁ悪くはないですね。そういえば先生もお試しになりたいとか?我が秘術を」
「ふむ、実を言うと…ワシもこの歳になって、衰えて行くのが怖くなってきてな。少しでも若さを取り戻せるなら、ワシは君にいくらでも協力を約束しよう」
「まあ!それは大変ありがたい事です。では、この後、我がサロンへ信徒がお連れいたしましょう。そこで施術いたしますので」
「我が党を犠牲に、若さが手に入るのなら安いものよ。それに、我々は政権の座に長らく就き過ぎた。緩慢な壊死を眺めるよりは、この辺でサッパリと介錯してやるのが情けというものだ」
「あらあらまぁまぁ、先生も残酷な事を仰る。ですが、先生がメディアに露出している限りは、見た目がガラリと変わるような踏み込んだ施術は出来ませんが…いかがいたしましょう?」
「政権は君らに譲るから、うまく野党と連携しろ。ワシはその責任を取って引退し雲隠れする。その際には、頼んだぞ」
「ええ、もちろん…約束は守りましょう。オプションでお好みの女性の容姿にも出来ますが、どうします?安心して下さい、陰茎は付いたままですから」
「いや、それは遠慮しておこう。女の肉体には興味が無いからの」
「さようでございますか。あんっ♡…先生ぇ、ちょ、まだ料理が」
石倉が立川の身体をまさぐる。
「君のせいで、ワシも妙な”癖”に目覚めてしまってのう。その責任を取ってくれても良いのではないかね。それに…ここの従業員は皆、君の信者だろう?何をしても外には漏れんのは、最高じゃあないか」
「先生クラスになると、まだまだお盛んなのですね。んもぅ、仕方ありませんか…よいしょっと…うふふっ♡」
後日、野党の性政党により内閣不信任案が提出された。
当初は与党の反対多数により、不信任案は一蹴される目測であった。
しかし、与党の石倉派議員が賛成に回ったことで状況が一変。
内閣不信任案が可決。
政府は内閣総辞職ではなく、解散総選挙を選択。
与党の公認を得られない石倉派の議員は、多くが性政党へ鞍替えし当選した。
結果、与党は歴史的な大敗。
石倉重五郎は政治に混乱を招いたとして、一連の責任を取って政界から身を引いた。
その後石倉は、政治の表舞台に一切姿を現す事はなかった。
♢
リラクゼーションマッサージ店『木の花』。
オープンして暫く経つが、経営は軌道に乗った。
客足も順調だ。
サキュバスが満足する程には。
常連も出来た。
特に、二人の守衛さんは私に貢いでくれる。
彼らが選ぶのは、いつも高額の本番コースだ。
生活費まで削っていないか、さすがに心配になったので遠回しに”あんまり来ない方が良い”って忠告してやると…
「俺の心配をしてくれるなんて、なんて良いオンナなんだ。やっぱ最高だよ、アンタ」
って言われる始末。
しかも二人とも同じ反応。
彼らにはもう少し、自分を大切にして欲しい。
そんな二人からある日、面白い話を聞いた。
金の少ない客は、私のマッサージだけ受けた後に別の安い店で抜いてもらっているそうだ。
まぁ、どの風俗を使おうが私は知らん事だが。
どうせコキ捨てるなら、私にしてほしかった。
サキュバスには、栄養になるし。
今の所は、”食事”には困っていないので何も言わないけど。
精液の欲望に負けて、マッサージコースで”抜き”をやると噂になる。
だから私は絶対にしない。
安い店とも思われたくないしね。
冒険者として組合に行くと、野郎共からいつもセクハラをされた。
これには早々に慣れた。
店で身体売ってる女が堂々と冒険者活動をしているんだ、そりゃあネタにもなる。
受付嬢にも同情されたが、風俗嬢と冒険者はそれぞれ必要だからやっている。
風俗は、栄養補給と金稼ぎのため。
冒険者は、経験値稼ぎと金稼ぎのため。
お外でのナンパやセクハラ行為に関しては、徹底して塩対応だ。
それが無くても、基本的には冷たい性格のキャラクターで通している。
箸にも棒にもかからない女が店では媚びへつらう、と考えばプレイが一層捗るというものだ。
実際に利用者からは、かなり高評価を頂いている。
一方、理想的な店舗にするため温浴施設の拡充は急務だった。
泡姫プレイや、プレイ後の清潔を保つのは必須。
浄化魔術という便利な聖魔法もあるらしいが、サキュバスの私に適性があるか微妙なところだ。
水魔術を習得するまでは、桶に水を張り汚れを拭き取るのがせいぜいだろう。
幸いにも、その水魔術をゲットする目処も立った。
今まで無茶をして強い魔物とバトルしてきたので、この身体も強くなっているはず。
おそらくだが、ヤツにも勝てるだろう。
あぁ、早く喰ってモノにしたいなぁ。